第7話 燃え上がるようなレベルアップ
「…………〈火球〉」
【ピャギアアアア!!】【ギギギギギギ!!!】【ギチギチギチギチ!!】
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
「……指数関数的にレベルが上がっていきますわ。一面真っ赤ですが」
〖地獄絵図ピヨ。……森が真っ赤に燃えているピヨ〗
ダンジョン内でも、効率よくレベルを上げる方法はある。
渋谷ダンジョン「リョクショクの森」エリア名物。通称″虫焼きレベリング″。
火魔法が使える探索者を中心に、虫系統のモンスターを効率よく焼いて倒していくレベルアップ方法の1つなんだ。
【ピャギアアアア!!】【ギギギギギギ!!】【ギイャアアア!!】
スライム、ゴブリン、虫系のモンスターたちの断末魔が聞こえるような気がするけど。これもレベリングのためだから仕方ないね。
「火力が高すぎて、6階の森は火の海だね。隠し宝箱も最初に回収しておいて良かったね。宵宮さん」
「はい! レベルもかなり上がりましたし。次の7階に進んでも良さそうですわね」
「うん。そうしようか……早く進まないと俺たちも巻き込まれるしね」
下りた階の隠し財宝や希少なドロップ品を回収。
それが終わったら、俺たちに襲いかかってきた虫モンスターに火魔法をぶつける。
後は、勝手にモンスターが色々なところで暴れ回って各階のダンジョン内が火の海と化して俺たちは勝手にレベルアップするんだ。
おまけに5階ごとに居るフロアボスも勝手に暴れ始めて、火に焼かれながら自滅するため、
フロアボスのドロップ品を回収したら、急いで次の階の転移門に入ってさよならバイバイ。
20階までは森林エリアが続くため、この方法で半自動的に楽してレベルアップしていく。
◇
そして、現在は渋谷ダンジョン20階。
フロアボス「女王蜂」と対峙しているんだけど。
【ピピイイィ!!!】
【【【ギギギギギギ!!!】】】
【――――――!!? ギイィィイ!!】
女王蜂」の巣に向けて放った〈火球〉が、乾いた巣内に簡単に燃え広がっていく。
そして、指揮系統を失ったキラービーたちは、火だるまになって、キラービーのマザーである女王蜂へと群がり、女王蜂の身体を燃えていく。
そんな状況を少し離れた場所で見ている俺たち。
〖地獄ピヨップ。……我の渋谷ダンジョンが地獄の業火に焼かれてるピヨ〗
哀愁漂う表情で、燃え盛る20階エリアを見つめるスザク。
「宵宮さんが、新しく覚えた「天幕」ってスキル本当にすごいね。隠密効果もあるから、モンスターにも探知されないよ。本当にすごいスキルだね。宵宮さん」
「あ、ありがとう。でも、こんなとんでもレベリング方法がありますのね。わたくし知りませんでしたわ」
「あ〜……いや、まさかここまで効率よくなるとは思ってもなかったんだ。右腕から出す〈火球〉の威力が高いおかげかな。ハハハ」
乾いた笑い。俺はそう笑うしかないくらい各階の森はよく燃えたんだ。
【ピギイイィィ…………】
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
そんなことを話している間に、女王蜂が絶命した。
スキル発動―――「巾着袋」「心眼」
絶命したタイミングに合わせて、俺は2つのスキルを発動。周囲に落ちている使えそうなドロップアイテムや武器を回収していく。
「よし! 20階もクリア。燃え死ぬ前に転移門に飛び込もう。宵宮さん、スザク。手を!」
「は、はい! 天照さん!」
〖待ってピヨ。置いていかないでほしいピヨップ!〗
炎の勢いが増して、転移門に届く寸前。俺たちは20階〜21階の間にある安全地帯へと辿り着いたんだ。
ちなみに″虫焼きレベリングでの成果はこんな感じになった。
◇
天照陽光
レベル40
スキル 模倣 巾着袋 心眼
火魔法(初級)雷魔法(初級)
宵宮カノン
レベル37
スキル 福音 補助 天幕
水魔法(初級)
回復魔法(初級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル2
◇
【毎度ありなのね〜! 十二万エンお渡しなのね〜!】
「どうも。ありがとうございます」
安全地帯にある不思議存在の道具屋で、手に入れたドロップアイテムや必要の無い武器を売って、新しい武器や防具を買い揃えた。
「まさか、渋谷ダンジョンの攻略を始めて、経ったの6日で防具がフル装備になるとは思いませんでしたわ」
〖馬子にも衣装ピヨ〗
「なんですか?……貴方は芋虫みたいな装備を着けているじゃないですか」
〖こ、これは、陽光に防御力が上がると言われたから着ただけピヨップ!〗
この安全地帯で買える「巨蜂鎧装備一式」に身を包んだ宵宮さんが、感嘆の声を漏らした。
ちなみにスザクは、巨幼虫の糸で編んだ糸服を着せてあげた。
「異常なレベルアップのおかげだね。……これなら、最初の目的地点であるダンジョン50階に急いで駆け上がった方がいいかもね」
「50階ですか。……そうですわね。ダンジョン攻略もまだまだ序盤の序盤ですし、少し急いだ方がよろしいですわね」
「うん。そして、50階に駆け上がるうえで一番のネックは……」
「40階フロアボスのミノタウロスですか」
「…………39階までに、レベルを最低でも60以上まで上げようか。こっちは人数も限られているからね。できる手は全部やっておかないと」
「…………了解です」
〖…………ピヨ?〗
俺も宵宮さんも一瞬だけ暗い表情になった。
40階フロアボス「ミノタウロス」。
このモンスターは、渋谷ダンジョン最初の難関として有名で、推定4人以上のパーティー編成で挑むべき敵なんだ――――
◇◇◇
一方その頃、渋谷ダンジョン入口付近。
天照陽光と宵宮カノンを半殺しにして見捨て、渋谷ダンジョンから脱出を図った、陽光の元仲間たちは迷っていた。
「…………………くそ、出口が見つからねえ」
「……なかなか出口に辿り着きませんね。アキラさん」
「うるせえぇ!! そんなの分かってんだよ! 黙れ! オオツキ!」
「は、はい! すいやせん。アキラさん」
「…………………チッ! 分かってりゃいいんだよ。くそ禿げやろう」
クラン「フレア」の新しいリーダーになったアキラは、全ての荷物を後方支援担当のオオツキに持たせ、ダンジョン内を一番先頭を歩き出口を探している。
「…………………」
そんなアキラの姿を苦々しそうな表情で、睨み付ける補助職のオオツキ。
「あ〜し、喉乾いてきたかも〜! オオツキちゃん。水頂戴〜!」
疲れきった顔で、荷物持ちをしていたオオツキから残り少ない水が入った水筒を受け取る魔法職のサユリ。
「お、おう。ちょっとずつ、大切に飲めよ。……正直、ここを出れるか分からなくなってきたからよう」
「サンキュー、……え?……マジ?」
「しっ! 静かにしろって……あの新リーダーは駄目だ。この変な歪んだ空間を歩き回ってから《《1時間》》くらいで、取り乱し始めてる」
「…………新リーダーのくせに情けな。陽光くんなんて、索敵、付与、気配遮断とかなにも言わなくてもやってたのにね。アキラくん。できないんだ。情けな〜!」
「んだとっ! くそ女! 丸聞こえだぞ。ゴラァ!!」
「あっ!? 道に迷ってるからって、ワタシに当たらないでくんない? たかだか出口を探すのに、なんで《《1時間》》もかかってるのよ! バカなんじゃないの?」
「んだとぉ!? 俺様の腰ぎんちゃくのくせにうるせえんだよ!」
「なんですって!?」
険悪なムードになった時だった。オオツキが2人の間に入り、仲裁を行った。
「ちょ、ちょっと、2人共。こんな場所で喧嘩するなんてよくないですぜぇ。せっかく、これまでどんな探索者も手に入れられなかった「星玉」の1つ太陽宝玉を手に入れたんです。今さら、仲間割れはよしましょうぜ」
「………お、おう。そうだったな。すまねえ。サユリ」
「う、ううん。こっちこそごめん。……なんか、この空間に居ると感情が可笑しくなっちゃって」
「感情?……お前もか。俺様もイライラが収まんなくてよう」
「…………感情?……もしかして俺たちダンジョンの呪いにかかったんじゃないですかね?」
オオツキは、そう言うと自身の身体に異変がないか確認し始めた。
「んなわけがあるか。俺様たちは、日本最難関とされる渋谷ダンジョンを踏破したんだぞ。そんな俺様たちが、今さらダンジョンの呪いになるわけないだろう」
「そ、そうよ。変なこと言わないでよ。オオツキちゃん」
「………す、すいやせん。そ、そうですよね。ハハハ」
この時、この3人の中でオオツキだけが気がついていた。
自分たちが誰かの手によって、この渋谷ダンジョンの出口付近から出られなくされていることを、だけどそれを言ってしまえば、暴力的な性格のアキラに殴られると思い。このやり取り以降、オオツキは渋谷ダンジョンを脱出する間、アキラとサユリに話しかけることはなかった。
◇
渋谷ダンジョン出口
「…………アイツ等。ウチの幻術にまんまと掛かってるよ。真莉愛」
「《《若》》が居ないのは、何故なのでしょうか? 心配です。凛さん」
「さぁ? アイツ等ぶっ飛ばして聞くしかないかも」
『天照家 陽光の専属忍者 凛』
「……そうですね。瀕死の重傷を負わせましょうか」
『天照家 陽光の専属メイド 真莉愛』




