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第6話 リョクショクの森へ


 現在、5階と6階の間の安全地帯セーフティーゾーンに立ち寄っている。装備や休息を取るためにね。


【へいらっしゃい! 何ようで? お客様】


 不思議なことに世界中に点在するダンジョン内には、宿屋、武器屋、道具屋を営む″不思議存在アンタッチャブルズ″と呼ばれる存在が人たちが安全地帯セーフティーゾーンには滞在しているんだ。


 フードを被ったり、魔道士の格好をした謎の存在、彼らの正体を知ってはいけないことに探索者の間ではなっていて、それが暗黙のルールになっている。知るととんでもない目にあうとか。


「武器を買ってもらいたくて、それと装備も買えるものがあれば、今出します」


 スキル「巾着袋」の中から大量の武器やいらない物を取り出し、不思議存在アンタッチャブルズに手渡した。


【オ、オオオォ!! 多いね。多いね。……こりゃあ買い取りしがいがある。……ガラクタばかりね】


「まぁ、倒したのはゴブリンばかりですからね」


【ふ〜ん。そうなのね。まぁ、うちはだいたいなんでも買うからね。「なまくらの短剣」「なまくらの鈍器」…………全部合わせて、2000エンね。それでよろしいね?】


「あ、はい。それでお願いします。それと、そのお金で「毒針」を300個、「抑えの布」、「鍋の蓋」を2つ、「鉄の短剣」を2つ売って下さい」


 エンは勿論、日本円「エン」のこと、ちなみにダンジョン内のお金は、その出現した国の貨幣で取り引きできる。なぜかは知らないけど。


【あいよ〜! じゃあ、買い取りと売ったもん差し引いて、お兄さんには800エンを渡しとくよ。毎度ありよ〜!】


 こうして、俺は少しのお金と新しい道具を揃えた。


 その後、道具屋を出て、すぐ近くにある宿屋へと向かった。






「ここは安全地帯セーフティーゾーンだし、今日はここに1泊していこうか。宵宮さん」


「は、はい! 天照さんと宿屋での初夜ですが。よろしくお願い致しますわ」


 俺が1泊を提案すると宵宮さんは椅子に座って、土下座を始めた。何してるんだろう? この人。


「よ、宵宮さん。何してんの?」


〖止めるピヨッ! 淫乱小娘! 陽光ようこうが困ってるピヨップ! 我が主を物理的に困らせるじゃな……ギィヤップッ!?〗

「誰が淫乱小娘ですの? わたくしは、これでも名家の生まれですのよ。それにこんな乙女の顔になるのは天照さんの前だけですわ」

〖身体を握るなピヨッ! 身体の中の身が飛び出ちゃうピヨップ!!〗


 ……駄目だ。いつも通りのコントが始まってしまった。


「宵宮さん。武器用の「鉄の短剣」と盾用の「鍋の蓋」を買ってきたから渡しておくね」


「ま、まぁ! も、申し訳ありません。こんなわたくしのために天照さんがプレゼントをっ! 一生の宝物にしますわ! ありがとうございます!」

〖ギエピヨッ! そんな豪腕で我を締め付けるなピヨッ!……握り潰されるピヨップ……ガクッ〗


「そんな大袈裟な。最初の安全地帯セーフティーゾーンで買える装備だよ。そんな装備」


「いいえ、それでも嬉しいですわ。わたくしが憧れている天照さんからのプレゼントですもの。本当に感謝しておりますの」


「まぁ、元は一緒に集めた武器を売ったお金で手に入れた道具なんだけどね。……でも、そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」


「はい! 家宝にいたします」


 宵宮さんは本当に良い人だな。

 それに、さっき聞いて分かったんたけど、まさか同い年とは思わなかった。


【お客さん。お客さん。今日は泊まっていくね? 1晩1部屋で5エンね。晩ごはんと朝ごはんもついてくるね】

【外は暗くて危険ね。泊まって休んでいった方がよくね?】


 宿屋の受付にいた不思議存在アンタッチャブルズが、俺たちに話しかけてくる。


「それじゃあ、2部屋で10エン払います。よろしくお願いします」


【【お毎度ありね〜!】】


「えっ!? ちょ、ちょっとお待ち下さいまし! 1部屋2人で泊まった方が安くすみますわ。天照さん! 今後のダンジョン脱出のためにも、なるべく出費は抑えるために……」

〖黙るピヨップ! 淫乱小娘! お前の魂胆なんて見え見えピヨップ!! 喰らえくちばし! 主は我が守るピヨッ!!〗


 ドスッ!と宵宮さんの光るおでこにスザクの嘴が見事に刺さった。


「ほぎゃあああ!! なにしますの? この雛鳥はぁぁあ!!」


「ハハハ、大道芸かな?」


【今日はなんだか賑やかね〜! 久しぶりのお客さんで嬉しいね〜!】

【ダンジョン反転してから閑古鳥だから嬉しいね〜!】


「閑古鳥? つまり地上からのダンジョン探索者は入って来てないんですか?」


【ん〜? それは分からんのよね。ウチ等は、たまたま渋谷ダンジョンで働くために転移門ゲートでやって来ただけだからね】

【そうそう。それ以上のことを知らなくていいのよ。ウチ等は、働ければ幸せだからね】

【【ね〜!】】


「そうなんですか。教えてくれてありがとうございました」


 その後、俺は宵宮さんとスザクと別れて、今夜泊まるための1部屋へと向かった。


「さっき買った「抑えの布」の布で《《急激に変化した》》右腕に巻いてと……うわぁ、やっぱり普通のゴブリンの腕よりも大きい。それでいて、もう身体に馴染んでる」


 「抑えの布」。ある一定の身体の部位に巻くと筋肉を萎縮させて、力のコントロールをより繊細に扱うことができる効果がある。

 初期で手に入る道具のため、新人探索者にはあまり知られていない。


 俺は2週目なので、渋谷ダンジョン内のことは知り尽くしてる。安全にダンジョン脱出できるならなんでもする。


「右腕が左腕くらいの大きさになった。……力が溢れてる。それに「転換コンバート」」


 俺がそう告げるとエメラルドゴブリンの腕が、変化して無くなったはずのゴブリン腕へと変わった。この操作方法はエメラルドゴブリンを倒した時に知ったんだ。


「前に《《手に入れた》》右腕も消えてない。この「模倣」ってスキル。俺が考えているよりもとんでもないスキルだ。……スザクはこんな壊れたスキルを俺に渡すなんて、なにしてんだか……」



「なんで、わたくしが泊まるお部屋に来てますの!? この串刺し雛鳥は!」

〖仕方ないピヨッ! 陽光が部屋に鍵を閉めたから入れないから、仕方なく小娘の部屋に来ただけピヨップ!!〗


 宵宮さんとスザクが隣の部屋で暴れている。


「……疲れたし寝よう」


 隣の部屋のお祭り騒ぎを子守唄に、その夜は久しぶりに熟睡したのだった。


◇◇◇


 次の日の朝、ダンジョン攻略4日目。


 渋谷ダンジョン6階 リョクショクの森にやって来た。


 この6階層から、スライムやゴブリン以外のモンスターも出現するようになってくる。


「……それにしても、天照さんは……盾だけ買ったんですのね。武器は買わなくて良かったのですか?」


「うん。大丈夫かな。なんたって「翡翠の鉄剣」が手に入ったからね」


 エメラルドゴブリンを倒した後に、手に入れたドロップアイテム。綺麗な緑色に光る「翡翠の鉄剣」。レアドロップ品だ。


 5階フロアボスを倒したと同時に解禁されるのは、モンスターからのドロップアイテム、宝箱などが出現するようになるんだ。


「綺麗な剣ですわ。天照さんにとてもお似合いですの」


「あ、ありがとう。宵宮さん」


 ……なんで、宵宮さんは俺の全てを肯定的に見てくれるんだろうか? 謎だね。



【ギギギ!!】【ギチギチ!!】


 宵宮さんと会話に集中していたら、モンスターが近くまで迫って来ていた。


「……来るね。宵宮さん。今回は後方支援でお願い。このフロアのモンスターなら、俺が対処した方が早くレベルアップできるからね」


「了解ですわ!」

〖…………助けてくれ、陽光。この小娘、とんでもなく寝相が悪かったピヨッ……眠いピヨップ〗

「お黙りなさい。雛鳥!」


【ギギギ!!】【ギチギチギチギチ!!】


 巨蜂キラービー巨幼虫ワームー


「いきなり襲いかかって来るとはね。それじゃあ、「翡翠の鉄剣」の切れ味から。フンッ!」


【ギチギチ!?……ギィィ……】


 勢いよく突っ込んで来たワームーに、タイミングを合わせて「翡翠の鉄剣」を振り上げた。


 するとワームーの身体は真っ二つに切れて、絶命した。


「切れ味が凄い。それとレベルアップしたか火魔法は……〈火球ファイアーボール〉」


【ギギギギギギ!?……ギ……】


 一瞬で仲間が殺られて、驚いていたキラービーに向けて〈火球ファイアーボール〉を放つ。


 以前よりも火魔法の威力や発射速度が上がっていたため、火球がキラービーに当たると同時に、キラービーの身体は火だるまになって燃えてしまった。



〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗


「簡単に倒してレベルアップと……前のフロアよりも強いモンスターだから経験値が多く入ってるから、上がる速度が速いのかな?……それと新しいスキルまで発現してる」


天照あまてらす陽光ようこう

レベル21

スキル 模倣 巾着袋 心眼

火魔法(初級)

宵宮よいみやカノン

レベル20

スキル 福音 補助 天幕

水魔法(初級)


スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル1

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