第10話 50階 幻島のスライムアイランド
次の日の朝。
【毎度ありね〜! 「毒針」999個、「牡牛の装備」「イールの水着」「牡牛の頭具」なのね。それと「毒針」は悪いけど、ウチでの在庫はこれしかないのね。許してほしいのね〜!】
「あ、いえ。多分これだけあれば余裕で足ります。ありがとうございます」
【ん〜! こちらこそ、ありがとうね〜! 昨日はダンジョン食材を提供してくれて、すごくすごく嬉しかったのね。感謝するのね〜! またウチ等の店に立ち寄ってほしいのね〜!】
昨日の夜、道具屋に頼んでいた新装備を買い取り、俺たちはそれを装備すると安全地帯を後にした。
◇
渋谷ダンジョン50階からは、河川エリアにその地形は変わっている。
そして、この50階。通称「スライム河川」
フロアボス「ジュレ・スライム」はとても弱く、前半フロアボスの中で最弱とまで言われている。
初めて、渋谷ダンジョンを攻略した場合、こんな川しか流れていないエリアなんて、気にせず上の階に行くものだけど。
「〈火球〉」
【キュピギャアアアア!!!】
戦闘が始まって、1分弱フロアボスに勝利した。
〖ふっ! 雑魚過ぎるピヨ。陽光〜! さっさと転移門に入って、安全地帯で休むピヨップ!〗
「お待ちなさい。お馬鹿な小鳥さん」
〖誰がお馬鹿ピヨップ! 我がお馬鹿さんなら、お前は年中発情娘……ギエエップ!?〗
「……お黙りなさい。おアホな雛鳥。絞めますわよ」
〖も、もう。首は絞めてるピヨ。助けて陽光ピヨ……この小娘は危険……ピヨ……ガクッ〗
スザクが意識を失った。
スキル発動――――「心眼」「瞬動」
《《見えない場所を見落とさないように》》目を凝らす。
ここが渋谷ダンジョン攻略のもっとも重要な瞬間。見落とせばダンジョン踏破の難易度は爆上がりしてしまうんだ。
そして、俺たちにとっての最重要地点を難なく見つけた。
「…………見つけた! 宵宮さん、スザク、行こう。レベルアップの時間だよ」
「まぁ、もう見つけたのですが? 流石は私の天照さんです……わぁぁぁあ!!」
〖…………陽光は小娘のものじゃないピヨ……ガクッ〗
俺は宵宮さんを抱っこして、跳躍した。そして川の真ん中にある「幻の島」へと下り立ったんだ。
【ピキュピキュピキュ!!】
【ピギャア!?】
【ピュルピュルピュル!】
その島には、金色のキンスラ、銀色のギンスラ、銅色のドウスラ……3種類のスライムモンスターが沢山生息していたんだ。
″川の島"、漢字だと中洲と言うのかな?
洪水になったりして、川が運んだ砂や土砂が堆積して形成されたものを言うらしいんだ。
そして、ここもその1つで、「心眼」や「気配探知」のスキルを高レベルで使えないと入れない、ダンジョン特有の隠しステージの1つに数えられていて、その名も「スライムアイランド」!
「宵宮さん。はい、「毒針」。なくなったら言ってね」
「あ、ありがとうございます。天照さん……そのですね」
「ん?」
宵宮さんを地面に下ろして、「巾着袋」から毒針を取り出して、渡してあげた。
あげたけど。
なぜか俺の方を見てもじもじしている宵宮さん。
「…………ど、どうでしょうか? 天照さんが私のために買って頂いた水着。似合っておりますか?」
今の宵宮さんの装備品は、肌の露出面積がかなりあるビキニアーマー。
白色の水着を着たうえで必要最低限の防具を付けるタイプの軽装備。
見た目は防御力は薄そうだけど。
なんとこの装備、渋谷ダンジョンで序盤で手に入る装備の中でもトップクラスの防御力を誇っているんだ。
「うん。すごく似合ってるよ。このダンジョンから脱出できたら、一緒に海デートに行きたいくらい似合ってるよ。宵宮さん」
「海……デート……?」
〖………良かったピヨな。小娘、陽光みたいなイケメンにデートに誘われ……〗
〖お黙りなさい。雛鳥〗
〖………ピギャップ……ガクッ〗
スザクが宵宮さんに折檻され、意識を失った。
「まったく! 失礼しちゃいますわ!」
…………しまった。セクハラ発言だったかな? マリアや凛には、いつもこう言うと「ありがとうございます」って言われて喜ばれるんだけど。
「……あの宵宮さん」
「……きま……しょ……え」
「え?」
「ぜ、ぜひ、この渋谷ダンジョンから脱出したら、一緒にハワイの浜辺でハネムーンに行きましょう。天照さん!」
「ハ、ハネムーン!? いや、なんでそんな話が飛躍して……」
【ピキュ!!】
近くにいたギンスラが俺へと襲いかかってきた。
……そして、宵宮さんは俺の左手を掴むと、自分の小指と俺の小指を無理やりくっ付けて、早口で話し始めた。
「″指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った!″やりましたわっ! 天照さんと切ってはいけない約束を果たしましたわっ! これでダンジョン脱出後も、天照さんとの親密な関係が継続確定ですわ!」
宵宮さんは、小指を見つめながらとても喜んでいる。
「あ、いや。宵宮さん。俺の話を……」
なんて呑気に話しかけている余裕もなかった。ギンスラが来てる。
【ピギュウウ!!】
「つっ! ふんっ!」
【……ピギゥ……ピギ……】
ギンスラが俺の間近まで迫っていたので、手に持っていた「毒針」をギンスラの"核″目掛けて撃ち込むと、ギンスラは一瞬で絶命し、溶けてしまった。
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
レベルが上がった。
ギンスラは1体倒すだけで莫大な経験値が入る出現率が希少なモンスター。
「そんなのがこの「スライムアイランド」には、自然と湧く、レベリングスポット。ここでレベルアップしない手はないよね。宵宮さん、大丈夫だった? 怪我とかしていない?」
さっきから謎行動をしている宵宮さんが、心配で話しかけた。
どうしたんだろう。ドウスラに変な魔法でもかけられたかな?
「は、はい。大丈夫ですわ! 天照さん。必ず生きて、この渋谷ダンジョンを攻略しましょう。私、頑張りますわ〜!」
「そ、そうだね。……頑張ろう」
「はいっ!」
……なんにもなってなかったようで安心した。さっきの謎行動は、なにか特別なスキルを発動するためにやったのかな?
【ピギィッ!!】
「天照さん。危ないですわっ! 「毒針」を喰らいなさい! えいっ!」
【ピギュアッ!?……ピ……】
キンスラが俺たちの方へと突っ込んで来たけど、すかさず宵宮さんが対処してくれた。
「あ、ありがとう。宵宮さん。助かったよ」
「はい! 私が天照さんを傷つけさせませんわ! それと天照さんは誰にも渡しませんわ」
〖………き、気をつけるピヨ、陽光。この小娘。このダンジョン攻略が終わったら、陽光と付き合うとか二日前の夜に抜かしてたピ……ピギャッ!!!……ガクッ〗
宵宮さんがすごくやる気だ。
スザクの身体を握り潰すほどの力で握り、やる気に満ちている。
……あれ? スザク息してないような。気のせいかな?
【【【ピキュアアア!!!】】】
仲間がやられてたのを怒ったのか、希少モンスターである、キンスラ、ギンスラ、ドウスラの群れが、俺たちへと押し寄せてくる。
ちなみに、希少なスライムたちのうち、キンスラはお金をドロップして、ギンスラは大量の経験値をゲット、ドウスラはステータスの基礎値とスキルの質が上がる。
そして、スライムたちの弱点は「毒針」で、スライムたちの心臓部にあたる核に刺せば、一撃で倒せる。
そして、この幻の島「スライムアイランド」では、希少モンスターであるスライムたちが、なぜか無限沸きしてくる。
「よっ……ほっと……」
【ピギャアア!!】【ピギイィ!!】
「はいはいですわ」
【ピキャアア!!】【ピギイィン!?】
〖〖〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗〗〗
【【【ピギャアアアアアア!!!】】】
〖〖〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗〗〗
【【【ピギャアアアアアア!!!】】】
〖〖〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗〗〗
川のせせらぎと共に、スライムたちの断末魔が響き渡る。
この時のために、安全地帯に辿り着くたびに「毒針」を買えるだけ買っておいたんだよね。
【【【ピギャアアイヤアアアアア!!!】】】
〖どんどん始末されていくピヨ……スライムたちの断末魔の叫びピヨ。トラウマになる光景ピヨップ〗
「……一撃で片付けられるね。「毒針」が全部なくなるまで続けようか。宵宮さん」
「はい。……壊れた時に基礎値が1.5倍上がる。"縛りの首飾り装備中″もここで壊しておきましょう」
「そうだね。この首飾りが壊せれば一気にダンジョン攻略が進められるよ」
〖……そして、この2人はなんで冷静にスライムを始末しながら、冷静沈着なんだピヨ? ダンジョン探索者って、ヤバい奴ら過ぎるピヨオォォ〜!〗
そんな戦闘を半日くらい続けて、手元に持っていた「毒針」が全てなくなるまで、スライムたちを倒し続けて、俺たちは51階へと昇って行ったんだ。
◇
天照陽光
レベル251
エクストラスキル 陽ノ神楽
スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物 瞬動
火魔法(上級)雷魔法(中級)
宵宮カノン
レベル249
エクストラスキル 豊穣ノ知
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(上級)風魔法(中級)
回復魔法(中級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル6
スキル 隠密 物真似 治癒
◇




