第11話 「渋セン」の強者達
渋谷ダンジョン51階からの地形は、河川エリアになっていて、出てくるモンスターも魚系統が多い。
【シャアアアア!!】
「〈雷光〉」
【……シャアギャ!?】
瞬殺。
魚系統のモンスターが雷属性に弱いとはいえ、こちら側とのレベル差が100以上違えば勝負にすらならない。
これなら、150階層辺りまでなら、無双できそうな勢いだ。
「レベリング、金策、基礎値アップ。それがまとめてできる「スライムアイランド」はやっぱりすごいね。流石は隠しステージだったよ! 〈雷光」
【ギャシャア!?】
50階で手に入れたドロップアイテム「魔物引き寄せの腕輪」で、モンスターが俺たちを襲うように仕向けて、それを簡単に倒して更にレベリング。
これを何度も繰り返しながら階を上がって行き、200階到達前にはレベル400に上がっているように調整していく。
〖ピヨピヨピヨピヨ!! 哀れなモンスターたちピヨップ! わざわざ我々に近づいて、ドロップアイテムとダンジョン食材に早変わりするとは、なんとも愚かな奴らピヨ。ピヨピヨピヨピヨ!!〗
「……雛鳥。貴方って本当に良い性格してますわよね。〈水槍〉」
俺の肩に乗りながら、スザクは高笑いして、それを見ていた宵宮さんは呆れた顔で、襲って来るモンスターを倒していく。
「隠し宝箱を回収したらどんどん階を昇って行こう。今日だけで20階は上がりたいからね」
「天照さんのために、私頑張りますわ!」
〖小娘の言葉は、陽光に対しての下心……邪念にしか聞こえないピヨ。気をつけた方がいいピヨップ。陽こ……グエップ!? か、身体を握り潰すなピヨ。小娘〜!〗
「それならば、お黙りなさいな。雛鳥」
〖……否定しないってことは、下心満載なんだピヨ。気をつけるんだピヨップ。陽こおおぉぉ!!! 助けてピヨ!!〗
「うん。頑張って、スザク」
「それでは、本格的なお仕置きを開始しますわ。雛鳥」
〖なんて酷い扱いピヨ〜!〗
いつものやり取りをしながら、次の階へと進む。
凄まじいレベリングはできた。
後は、このまま回収すべき物を回収しながら、慎重にダンジョン攻略をしていこう。
そして、宵宮さんを必ず地上に帰してあげないと────
◇◇◇
ここは渋谷ダンジョンの近くに設置されている、″日本探索者センター″の本部。通称『渋セン』。
そして現在、『渋セン』本部の会議室で、緊急会議が行われていた。
その会議室には3名のベテラン探索者がソファーに座り、緊張した面持ちで話し合いが行われている。
「トリプルS級クラン「フレア」が星玉『太陽宝玉』を人類史上初めて入手した吉報から、かれこれ1時間15分経ってんのに、なんでそれ以降連絡が途絶えてんだ? 金剛本部長さんよぅ」
この怒った口調で話す人物。赤髪、高身長の男「赤羽 飛黒」。
「…………いや、2通目の連絡は来ているぞ。七星歴・太陽天照陽光は、ダンジョン配信者・宵宮カノンと共に行方不明になった……と」
飛黒の怒りが込もった言葉に、冷静な口調で返す人物。銀髪、端正な美女の名は「白銀 真白」だ。
「ちっ! だから、それが可笑しいって言ってんだっ! あの天照がしくじって、行方不明になるなんざあり得ねえだろう!? 陽光はオレの教え子だぞっ!」
「……………それはそうでしょうけど。今の渋谷ダンジョンは入り口が入れません。救助にもすぐには行けません」
「テメェッ!! んなの分かってんだよ。だが、オレの門下にいた奴が行方不明なんだよ。冷静でいられると思ってんのか? あんっ!?」
「…………そこをなんとか抑えて下さい。無理に、現在の変異した渋谷ダンジョンに進入するのは得策ではありません」
「お前っ!! それでも陽光の同期かぁ!? 白銀 真白!」
ベテラン探索者同士での一触即発。そんな状況になりそうな時、2人のやり取りを静かに見ていた大柄な男がいきなり叫び声を上げた。
「活っ!!!!」
「「!?」」
「…………とりあえず。落ち着け2人共。天照なら心配ない。泥を啜ってでも生きようとしてるだろうよ。あいつの生命力を2人とも知っているだろう? だから大丈夫だ。多分」
筋骨隆々の大男。この男こそが、日本探索者センター″の本部長「大門寺金剛」である。
「……大門寺のおっさんが言うなら、少し我慢してやるぜ」
「……………取り乱して申し訳ありません。大門寺本部長」
「おう。落ち着け落ち着け。一応な、日本政府からは救助班やら、ベテラン探索者を集めての天照たちの捜索チームは組んでいる最中でな」
「…………随分と迅速なのですね。《《日本政府》》は」
「世界初の星玉『太陽宝玉』の入手だからな。天照のクラン「フレア」から取り上げたいんだろうよ。……まぁ、無理だと思うけどな。天照の部下たちが、変異前に渋谷ダンジョンに向かっている。天照家に渡るのが落ちだ。……アキラの馬鹿野郎たちが、なにか変な行動をしたら別だが」
「アキラだぁ!?……あぁ、運良くS級探索者になれた陽光の腰巾着共か」
「…………あぁ、あいつ等は同期だからと、天照の人の良さをいいことに寄生していた。だからオレぁ、星玉を目の前にして、なにをするか分からない危険な奴らだから、「おれの愛娘の真白と新クランを作れ」と言ってたんだがな。フラれちまった」
「…………パパ。それをこの男の前で言わないで下さい。恥ずかしい」
「おぉ、すまんすまん。それよりもママは元気か? そろそろ再婚しようって、ママに言ってくれないか? 真白」
「…………まだ無理って、昨日言ってましたよ。パパ」
「…………マジか」
「けっ! こんな時に親子団欒しないでくれよな。……陽光。お前、大丈夫なのかよ? 師匠として心配だぜぇ」
赤羽飛黒は、窓から見える変異中の渋谷ダンジョンを見て暗い表情を浮かべていた。
◇
渋谷ダンジョン55階。
フロアボス「鮭男」。
【ぎひひひっ!!! オ……ン……ナ……オ…ン…ナ……】
「下卑た笑い方ですわね。キモいですわ。天照さんは、そんな目線を私に1度も向けたことがありませんことよっ!」
〖それはあまりにも悲しい現実ピヨな。小むす……ギュピィッ!? 中身が飛び出ちゃうピヨップ。小娘〜!〗
「ならば、お黙りなさい。雛鳥」
良いところのお嬢様でもキモいって単語を使うんだね。宵宮さん。
「良いコンビだね……それにしても、モンスターも知性を帯びてきてるね」
今回の戦いは、宵宮さんとスザクに任せて俺は静観中。
50階層以降、ダンジョンを上っていくにつれて、モンスターの知能指数は段階ごとに上がっていく。
中には、完全にその国に発生した人間の言語を理解して、使いこなすモンスターも存在するんだ。知能が高すぎて探索者を騙すサキュバスや、妖狐と呼ばれるモンスターもいる。
「内部もどんどん複雑になるし、俺と宵宮さんが離ればなれになった時も想定して、スザクと組んで戦ってもらってるけど。余裕そうだね」
「〈双剣水弾〉」
〖物真似───〈双剣水弾〉ピヨップ!!〗
【……ぎ……ぎごおおぉ!! ざ……げ……がぁぎゃぁ!?】
「倒せましたわ!」
〖やったピヨ! 小娘〜!〗
「〖いえ〜い!…………なにするピヨップ!?〗なにをしますの!?」
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
うん、OK。一方的な戦いだった。
倒すのに2分位かかってたけど、及第点かな……チームワークはガタガタだけど、最後にハイタッチしてたし仲良しな証拠。
これなら各々のスキルや魔法を使った合わせ技もできそうだね。
「……このまま、75階を上った安全地帯まで駆け上がろうか。「アリスドールの右脚」を回収したいからね」
その後、俺たちはわずか半日で75階まで進み、これまでの慎重な歩みが嘘のように渋谷ダンジョンを進み続け。
渋谷ダンジョン内にある海エリアへと辿り着いた。
◇
天照陽光
レベル260
エクストラスキル 陽ノ神楽
スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物 瞬動
火魔法(上級)雷魔法(中級)
宵宮カノン
レベル259
エクストラスキル 豊穣ノ知
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(上級)風魔法(中級)
回復魔法(中級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル6
スキル 隠密 物真似 治癒
◇




