第4話 ピヨップ! 汝、我を飼え
あぁ、どうしてなのだろうか?
「………宵宮……さ……ん……き……み……だけ……で……も……たす…るがら……」
仲間に右腕を切断され、これまで積み上げてきたモノを全て奪われたというのに。
「………もぅずご……じぃでぇ……すぐぅでぇ……」
他人を助けること躊躇いもなくできてしまうのだろうか?
【………………どうして、瀕死の重傷で人に救いの手を差しのべられるのだ?】
「………ぞれ…が……お……れの……じん……ねん……だか……ら………」
【了解した。必ず救おう、我はお前に興味を持った、我の主と認める。……だから我を外に連れ出し、素敵な世界を見せておくれ】
▽
なんて、そんな回想を突然現れた黄色い雛が語りだしたんだけども。
〖というわけだ。汝、我を飼え……ピヨップ!? な、何をする!? 小娘っ!〗
「………天照さん。この鶏肉を今夜の食料にしましょう。よくものこのこと現れましたわね。わたくしたちがこうなった全ての元凶のくせに。許しませんわ!」
〖は、離せ! 我は神聖な渋谷ダンジョンの神獣だぞ。罰当たりが!〗
「そんなの知りませんわ。天照さん、早速〈火球〉で火起こしをお願いしますわ。わたくしは、この鶏肉を〆《しめ》ますので」
「あ……うん」
〖や、止めろおおぉピヨ!!〗
なんてコントよりも……俺は別のことで意識がいっぱいいっぱいだった。
「……切断されたはずの右腕に感覚がある。しかもこの腕、ゴブリンの腕じゃないか」
4、5歳児の細い腕。色は緑色。
右肩から木の枝葉のように結合して、左腕との大きさがまるであっていない。
〖ピヨップ! 我が与えた「模倣」のスキルで顕現した"仮想の右腕"だ〗
「仮想の右腕?」
〖片腕だけで不便だと思って、陽光に生えさせたのだ。感謝せよ〗
「なにが「感謝せよ」。ですの? 元を辿れば、貴方が天照さんの右腕を奪ったのが原因ではありませんか? ふざけないで下さいましっ! 炎の中にぶちこみますわよ!」
〖ピヨップ! や、止めろ! アホ娘。我は『七星歴・太陽』の守護獣・不死鳥なのだぞ〗
「守護獣ならば、なぜ、私たちが死にかけてきた時に助けてダンジョンの外へと逃がさなかったのですか? 〆《しめ》ますわよ! 不死鳥の丸焼きにして差し上げますわ!」
〖や、止めるピヨッ!!! 動物虐待ピヨッ!!!〗
「止めませんわ。その黄金の尾羽をむしり取りますわっ!」
宵宮さんと不死鳥のスザクと名乗る、俺の守護獣のバトルが始まった。
そして、これ以降2人は犬猿の仲に落ち着いた。
「ゴブリンの右腕……新しい俺の右腕?」
スキル「模倣」を発動させて造り出された「ゴブリンの右腕」は、俺の意思で自由自在に操れる。
軽い短剣や枝に掌サイズの石をくくりつけた鈍器のような武器なら持てそうかな。
「ピヨップ……じゃなかった。スザク、君がくれた「模倣」って力は……」
「せっかく憧れの天照さんと2人きりでダンジョン脱出ができると心踊ってましたのに、何なんですの? 貴方という存在は?」
〖ピヨップ!!! 黙るピヨッ! 我の主に淫乱な目を向かせないピヨッ!〗
「なんですってっ!!」
……駄目だ。宵宮さんと喧嘩していて、こっちの話なんて聞こえてない。
「……試しに色々とやってみるかな。宵宮さ〜ん。火種になる枝葉とか集めてくるから、なにかあったら叫んでね〜!」
「分かりましたわ〜! 天照さん! このっ!」
ブチッ!
〖ビヨップ!? 不死鳥の貴重な尾羽を抜くんじゃないピヨッ!!!〗
「……楽しそうだね」
◇
少し岩場から離れて、ベビースライムを探す。
【ピキュゥッ!】【ピピピッ!!】
「お! いたいた」
色々と検証したいので実験材料になっているもらおうか。
さっきの大規模な戦闘で、ショキカ草原1階のモンスターは、簡単に1人で倒せるようになっていると思うので、ベビースライムたちと1人で対峙して新しい右腕に慣れようと思う。
「倒したゴブリンたちが持っていたのは「錆びた短剣」「錆びた鈍器」……どれも使えばすぐに壊れそうな武器ばかりだな」
【ピキッ!?……ピピィッ!!】
ベビースライムが俺に襲いかかって来る。
けど、動きが遅い。
「右手に短剣を持って振るう!!」
【ピギャアア!!】
短剣を振るった時の違和感はあるけど、なんとかベビースライムの核に攻撃が当たって倒せた。
「左腕との腕幅がかなり違うから、体感が可笑しくなるかな。……慣れるしかないか、《《別の腕になれば》》また感覚が変わってくるかな?」
【ピピピッ!!】
仲間が殺られて怒った、別のベビースライムが俺へと向かって来る。
「……次は鈍器で試してみよう! フンッ!」
【ピギャアアア!!】
ベビースライムの断末魔が暗いダンジョン内に響き渡った。
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
「またレベルが上がった。これで二桁……ダンジョン1階なのに。この現象もスザクに詳しく聞かないといけないね」
俺は、異常過ぎるレベルアップ速度に疑問を持ちつつ、ある程度の検証も終わったため、宵宮さんの元へと戻った。
◇
ゴブリンたちが持っていたバケツのような被り物を鍋の代わりにして、草原に生えていた木の実や茸を使ったソウゲン鍋を宵宮さんが作っていたんだ。
「救済措置?」
〖そうだ。我の独断で決めたことだがな。あまりにも主たちが可哀想と思い。救済措置を行ったピヨッ!〗
「デ、デタラメ過ぎますわ。貴方、お馬鹿さんですの? ダンジョン1階だけでレベルが二桁も上がるダンジョンを造り出すなんて。……わたくしたちが、この渋谷ダンジョンを再攻略した時、きっととんでもないことになってますわよ」
〖……良い。それで、あの悪い奴らを懲らしめてやれピヨッ!〗
「……スザク」
〖我は、陽光の行動と信念に強い感銘を受けた。そして、相棒にすると決めたのだ。これからの戦い頑張っていくぞ。陽光。ピヨップ!〗
「う、うん。よろしく。スザク」
岩場に戻るとスザクは調理されていなかった。良かった。
その後、急激なレベルアップについてスザクに聞いたところ、簡単に解説してくれた。
いわく、スザクは俺が気に入ったから救って勝手に俺の守護獣になったとか。
それで、効率よく俺をレベリングするために渋谷ダンジョンの構造をかなりいじったとか。
「やっていることが、身勝手でデタラメ過ぎますわね。流石は、不死鳥。やることがトンチキですわ。チキンだけに」
〖ピヨップ!! また我を馬鹿にするのか? 発情娘!!〗
「だ、誰が発情娘ですの! わたくしは至って普通の探索者ですわ!」
〖どこがピヨップ!!〗
……スザクが加わっただけで賑やかになったな。
まぁ、夜に宵宮さんと……男女2人だけというのも、まずい状況だったからいいか。
「明日、 1階でレベル11まで上げたら一気に渋谷ダンジョン5階まで進もうと思うんだ。5階までなら、出てくるモンスターも、このショキカ草原1階と変わらないしさ」
「…………そうですわね。ダンジョン反転したとはいえ、モンスターの強さは変わっていないのですから、どんどん上へと進んだ方がいいですわね」
「うん。……勿論、レベリングもしていくつもりだけどね」
「ダンジョン内のトラップやユニークとの遭遇を考えての保険ですね。渋谷ダンジョンの合計階数は500階。脱出になる安全なレベルは600ですか。だいぶ遠いですわね」
「だから、なるべく早く50階に到達しようか。あそこならギンスラが出現するから、そこで一気にレベルアップを図ろう。武器も揃えながらね。渋谷ダンジョンの全フロアのマッピングは頭の中に叩き込んでいるから、場所が変わっていなければ迷うこともないしね」
〖ピヨップ 変えてないから安心するといい。ゲプッ!〗
なんて、ことを自慢げに言うスザク。……スザクの身体少し成長してないかな?
「了解しましたわ。今後、わたくしは陽光さんの良妻賢母として、頑張っていきますわ!」
「……そ、そうなんだ。頼もしい冗談だね。宵宮さん」
「じょ、冗談ではありませんわ! 本気と書いてマジですの!」
〖美味ピヨ! 小娘の作る料理が旨いピヨップ!〗
宵宮さんが、また面白い冗談を言っているよ。
この日の夜は、皆で鍋をつきつつ、今後の方針について色々と話し合い。夜はモンスターの襲撃に備えて、交代で見張りはしながら寝たんだ。
◇
次の日の朝。
近くをうろついていたゴブリンの集団を見つけたので、一方的に倒してサクッとレベルアップ。
次の階へと持っていく道具の整理を行っていたんだ。
「使えそうな道具はほとんどないね」
「小ゴブリンの武器や道具ですもの。仕方ありませんわ。それよりも、昨日の夜はちゃんと寝れましたか? 天照さん」
〖美味しい料理のおかげでぐっすり眠れたピヨッ!〗
「貴方にはなにも聞いていませんわ! お邪魔鳥さん」
〖な、なにするピヨッ!? スザクの尾羽をむしり取るんじゃないビヨップ!!〗
朝からまたじゃれ合ってる2人は仲良しだね。
「周辺のモンスターも倒してレベルアップできたし、一気に5階まで駆け上がろうか。」
こうして俺たちは、できる限りの初期準備を終えると最初のフロアボスが居る5階まで駆け上がって行ったんだ。
◇
天照陽光
レベル12
スキル 模倣 巾着袋
火魔法(初級)
宵宮カノン
レベル11
スキル 福音 補助
水魔法(初級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
◇




