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第3話 二週目特典(ギフト)

「〈火球ファイアーボール〉」


【ピギャアアア!!】

【ビギアアァ!!】


 再びベビースライムを、落とし穴まで誘導して穴の中へと落とす。


 そして、穴の中へと火魔法を放ちベビースライムを倒すと……


〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗



天照あまてらす陽光ようこう

レベル4

スキル 模倣

火魔法(初級)



「またレベルが簡単に上がった。……ベビースライムを倒して出た魔石も回収っと」



 ステータス画面を細かく確認していく。


体力8

魔力10

攻撃力6

防御力7



 全ての力を失って鑑定スキルもないため、細かいステータスはこれ以上確認できない。


 それとレベルが上がったおかげで体力と魔力が回復できた。



「宵宮さんの方はレベルアップできた?」


 異常なレベルアップ速度。これが俺以外の人でも起きるのか知りたいと思い、宵宮さんに質問する。


「……は、はい。ベビースライムを4体倒しただけで、レベルが2つも上がりましたわ。それに今まで覚えることができなかった水魔法の初級も、いきなり覚えましたの」



宵宮よいみやカノン

レベル3

スキル 福音

水魔法(初級)



 宵宮さんのレベルアップは、俺よりもレベルの上がり方がほんの少だけ遅い。


 それでも普通のレベルの上がり方よりも、レベルの上がり方が異常に早いかな。


 普通はベビースライムを倒して、レベルを1から2に上げる場合には、個人差はあれど10体以上は倒さないと上がらないのに。



「レベル一桁で火魔法や水魔法なんて普通は覚えないのに、こんなに早く覚えられるなんて驚きだよ。しかも、モンスターの強さは変わっていない。得られる経験値が増えたのかな?」


「分かりません。……分かりませんが。不死鳥フェニックスさんは、去り際に「それでは反転を始める。ダンジョンを再攻略し、初期の力で地上を目指すがいい。挑戦者たちよ」と言っていました」


「初期の力で地上を目指す……あの可笑しな石像は俺たちを試している? ダンジョンには意志があるとは言われるけど。……いや、それにしてはレベルアップの上振れが常軌じょうきいっしてる。理論上、このままダンジョン踏破なんてことになれば、とんでもないことになるよ」


「ですわね。……無事に地上へと戻る頃には、大量の換金アイテムも手に入っていることでしょうし。その後は、2人で静かに暮らすのも悪くありませんわね」


「ん?」


「はい?」


 ……宵宮さんとの会話が噛み合ってない気がしたけど。気のせいかな?



「とにかく、今はできるだけレベルを上げて次の階に備えようか。不死鳥フェニックスから与えられたスキルも検証して使えるようになっておきたいしね」


「了解ですわ。それでしたら、ある程度レベルが上がり次第、ゴブリン狩りを致しましょう。ゴブリンはベビースライムよりも経験値が手に入る上に初期武器もドロップしますから」


「……ゴブリン狩り」


 たしか、宵宮さんは名家のお嬢様だったはず。お嬢様がゴブリン狩りって、物騒な言い方だ。





◇◇◇


 ゴブリンの性格は、直情的なベビースライムと違って狡猾で残忍。


 女性探索者の血肉が好物で、見つけた場合は本能のまま近寄り、身ぐるみを剥がすとか。


 そして、倒した場合は巣に持ち帰る習性があるとか。捕まった女性探索者がどうなるかというと……それは気分が悪くなるので語りたくない。



「だからって、宵宮さんが囮にならなくても」


「天照さんは片手がありません。そんな状態でゴブリンの群れを倒せないと思いますけど?」


「それは……そうだけど。作戦も無しに、初期のステータスでゴブリンの群れに戦いを挑むのは危険だよ」


「ベビースライムをあれだけ倒して、かなりのレベルが上がったと思いますが。足りませんか?」


「いや、レベルは多分足りる。……けど《《数》》は全然足りないかな」


「《《数》》……ですの?」


「うん。俺たちのね」



 ゴブリンは群れることを好む。不良少年のように。



【ギギギ……】【ギギ……】【ギィ!】



 ゴブリンたちは、少し茂みが生い茂った場所にたむろしている。とても暇そうに。


「3体ですわね。………あのゴブリンたち、周囲への警戒が薄すぎませんこと?」


「わざとだろうね。何体か別に隠れてる」


「あら? もう鑑定スキルを覚えたんですの?」


「……いや勘かな、第6感。今までの経験と知識からくる勘」


「それは、信用するしかありませんわね」


 

 宵宮さんは、俺の意見を素直に聞き入れてくれた。考え方が柔軟ですごく助かる…流石、A探索者さんだ。


 そして、俺の全ての力を失ったけど、《《産まれた時から》》の15才からダンジョンで過ごした経験と知識は残っている。


「それを存分に発揮して、ゴブリンたちを倒そうか」




 5時間後。ダンジョン内は暗くなり始めていた。太陽は存在しないくせに、日の満ち欠けは外と同じように起こるんだ。


 そんな《《真っ暗》》になり始めたタイミングで、俺たちのゴブリン殲滅作戦は始まった。


「〈水球ウォーターボール〉」


パシャッ!


 【ギィ?!】【ギギ……ギャア!?】【ギギィ!!!】


ゴブリンさんこちら手の鳴る方へ、ですわ」


【【【ギギギ!!!】】】


 ゴブリンは、あらゆる種族に関係なく〝雌”を発見すると過剰反応して興奮し、襲いかかる習性がある。


「……なにも考えずに向かって来ますわね。単純で助かりますわ」


 宵宮さんを捕まえようとゴブリンたちは宵宮さんに向かって走って行く。


 それを確認した宵宮さんもとある場所へと走り出した。


【ギィ!】【ギアア!】【ギギギ!!】


 そして案の定、茂みの奥に隠れていた別個体の群れのゴブリンたちも続々と現れて、宵宮さんを捕まえようと走っている。


 ショキカ草原のゴブリンは、痩せこけていて体格も4、5才児位の大きさのため、どう考えても宵宮さんとの距離間は埋るわけもなく。宵宮さんは捕まらないだろう。


「レベルアップして目も、身体能力も上がりやくすくなってるなんて、こんなの再試練じゃなくて、超強化の特典ギフトじゃないか。……とっ、そろそろ俺も行かないと……〈火球ファイアーボール〉」


【【【ビギアアァ!!】】】


「ほらほら。ベビースライムたち。やり返したかったら、かかってきな」


【【【ビキュアアアア!!】】】


 俺は、数十体でたむろしていたベビースライムたちに向けて、〈火球ファイアーボール〉を撃って挑発し、走り出した。


「直情的な性格で本当に助かるよ。君たちは」


 数分走ると、スライムたちを倒していた岩場へと到着し。


 目の前には宵宮さんと、宵宮さんを追いかける……数十匹のゴブリンたちが、こちらの方へと走って来るのが見えた。


「天照さん!」

「うん! 俺の身体に掴まって!」

「はい!」



 合流と同時に宵宮さんが俺の腰辺りをおもいっきり抱き付いた。そして、俺は左手で岩場の上の方へと登って行けるつたを掴むと、勢いよくジャンプして、岩場の岩盤へと移動した。


【【【ギギギ!?】】】

【【【ビギアアァ!?】】】


 完全に暗くなった状態で突然、追いかけていた対象《俺たち》を見失って困惑するモンスターたち。


 ちなみに、ショキカ草原のベビースライムとゴブリンはとても仲が悪く遭遇でもすれば、すぐにでも……


【【【ビキュアアアア!!】】】

【【【ギギギギギギ!!!】】】


 簡単に同士討ちを始めるんだ。


 そして、その戦場となる場所は、元は2メートル位の落とし穴がいくつかあった場所で、そこは、宵宮さんの水魔法(初級)で作った水で簡易的な泥沼にしたんだ。


 そうとも知らずにモンスターたちは暗い場所と足場で身動きが取れなくなっている。



「暗くても上からだと、微かな身動きは把握できますわね。〈水球ウォーターボール〉」


「うん。それに思ったよりもかなり多く誘き寄せられた。これなら次の階に行っても大丈夫なレベルアップができそうだね。〈火球ファイアーボール〉」


【【【ビギュアアア!?】】】

【【【ギャアアアア!?】】】



 モンスター同士で攻撃し合いながら、上の方から魔法が飛んでくる。


 そんな状態が1時間くらい続いて、モンスターたちは全滅した。



〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗


「やった。レベルが上がった」

「私もですわ。……流石、私の天照さんです。完璧な作戦でしたわ」


 ……宵宮さんが、ずっと俺に抱き付いていて離れてくれない。それに顔が林檎みたいだ。なんでだろう?


「そ、そう。……それよりもステータスオープンっと……」



天照あまてらす陽光ようこう

レベル9

スキル 模倣 巾着袋

火魔法(初級)

宵宮よいみやカノン

レベル8

スキル 福音 補助

水魔法(初級)



「……一気にレベルが5も上がった。それにスキル巾着袋? 収納系かな?」

「わたくしは、4も上がりましたの。愛の力ですの」

「……あぁ、福音のスキルかな?」

「……違いますけど」


 宵宮さんの冗談はさておき。


 このダンジョン内、やっぱり異常だ。探索者《俺たち》の成長速度が速すぎる。


「あれ? スキル「模倣」が発動するくらいの魔力値に達してる。……使ってみるかな」


スキル発動―――「模倣」


〖ピヨップ!……模倣スキル発動確認。『ゴブリンの右腕』を模倣し、主に授ける。ピヨップ!〗


「は?」


 ……黄色いヒヨコが現れたと思えば、俺の右腕に、さっき倒したはずのゴブリンの腕が生えてきたのだった。


〖ピヨップ! 我は世界七大ダンジョンの1つ。渋谷ダンジョンを統べる不死鳥フェニックス・スザク。不憫な貴様が心配で主と認めてやる。喜ぶが良い。ピヨップ!〗


「……は? ピヨップ?」


 マスコットみたいな、可愛らしいヒヨコが現れた。


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