第30話 400階層・連戦の土蜘蛛
二足歩行の牛鬼?
フロアボス「土蜘蛛」は四足歩行のモンスターだったはず。なのになんで……
「進化してる?」
【ダラハハハ!! そりゃあ、進化もするだろうよ。なんせ、99階層分の経験値だぜ? クゾカキイィ、小娘……いやはや、会えて嬉しいぜ。ぶっ殺してやるうぅ!!】
怒りはごもっとも、一周目の渋谷ダンジョン攻略では、「土蜘蛛」を行動させないために、パーティー全員で一斉に襲いかかって倒したんだ。
「天照さん。どうしますか? 私たちは先ほどの戦いで消耗しておりますわ」
「うん、分かってる。……99階層分のレベリングキャンセル……ライトニングとの戦いで俺たちが上がって来た所を狙って来るなんて、思ってもみなかったよ」
【はっ! 言い訳はいいから殺り合おうぜ! こっちはおまえ等を殺れればなんでもいいんだよ! 〈滅未蜘蛛〉】
土蜘蛛がライトニングと同じ動きを……自身の支配エリアの全てを殺したとしたら、そのレベリングはいったいどこまで積み上がったんだ?
(ダラハハハ!!! 死んだ! 死んだ! 俺様の一撃で全員死にやがった!! ダラハハハ!!)
〖ピヨップ?……なにこれピヨップ? 我以外が死んだ記憶ピヨ?……陽光!! あの技受けちゃ駄目だピヨ!! 皆死んじゃうピヨップ!!!〗
スザクが叫んだ?
……こんな切羽詰まった状況で、スザクは俺に対して冗談は一切言わない。
スキル発動―――「心眼」「瞬動」
エクストラスキル発動―――「陽ノ神楽」「異空生活」
「天照さん? いきなりなにを?……」
「……マスター?……」
【キュウウウ!!……】
〖ピヨップ!? 陽光、なにをするピヨ?〗
【ダラハハハ!! てめえ等全員死ねやああああ!! 〈死滅具円〉】
ボスフロア全域の床におびただしい毒が散布されていく。
この毒は危険だ。吸い込んだら、即死する。
【……………………死骸も残さず死にやがったか。流石は俺様の死念の毒、強力過ぎ……】
「〈火点右合致〉」
【ぐぎぃ!?】
天井から落ちた勢いのまま、油断しきた土蜘蛛の右目に向けて、火の牙突を躊躇なく放つ。
【ぐギギギギギギっ!!! こんのクゾカキイィ!!】
「くっ! 〈火舞伎舞踊〉」
怒り狂う土蜘蛛の拳が俺へと襲いかかって来るところを間一髪で躱す。
そして、心眼で土蜘蛛のステータスを確認した。
◇
土蜘蛛
レベル1450
◇
「…………レベル1450?………俺よりも高い」
【たりめえだぁぁあ!! 大ボケがああああ!! 〈吐竜旋〉】
口から岩の槍を吐き出した? 避けないと。
「つっ!……〈瞬光〉」
【………ダラハハハ。避けやがった。避けやがった。反応速度は相変わらず速えな。てめえよう】
……間一髪。
しかし、この二周目の鬼蜘蛛が俺よりもレベルが高いなんて。
「……いったいどれだけのモンスターを殺したんだい? そんなにレベリングするなんてさ」
【あ〜? んなもん10万超えてから数えるかよ。ボケがぁ……俺様たちモンスターは、てめえ等探索者よりもレベルが上がりにくいから苦労はしたぜえぇ。まぁ、そのせいで99階層全てを犠牲にしたがな。ダラハハハ!!!!】
喋りながら時間を稼ぐ。
ここまでは犠牲者0。
エクストラスキルの天照剣術で〈天照〉を発動して、このボスフロア限定で時を止めた。
その後、スザクを残した全員を「異空生活」の中に避難させて、俺自身はスザクを抱えてダンジョンの真上へと飛び上がって、土蜘蛛の攻撃が終わるのを待っていたんだけど。
正直、土蜘蛛の右目を潰せたのは大きい。これで土蜘蛛から視界の半分を奪えたんだから。
【あ〜ん?………なんだなんだ? 俺様を消したクソガキ様が冷や汗か? 俺様の右目を潰せただけで大喜びか?】
「………………」
【応えろや! クソガキ……ダラハハハ!! まぁ、良い……今は気分が良いから特別に許してやるぜえぇ……しかしよう。おめぇ、忘れてねえか?】
「? 何がかな?」
「俺様は土《《蜘蛛》》だぜぇ、蜘蛛には目が8個もあんだろうがよぉ! 小せぇガキでも分かる常識だぜえ!! 〈斑目蜘蛛〉 ダラハハハ!!」
《《1つしかないはずの》》土蜘蛛の目が、顔中に現れて7つに増えた?
いや、本人がさっき言っていた通りじゃないか。土《《蜘蛛》》なんだ。残りの目が7つあるのは当たり前か。
「レベルはあちらが遥かに上。視界も右目を潰した先ほどよりも全方位に向けられるようになるとはね」
【ダラハハハ!! それに加えて連戦だなぁ。おいっ! レベルがかなり上がって、体力と魔力は戻ったようだがよう。……その日の精神力までは戻せねえよな?】
……土蜘蛛の奴。計算してこの状況を作ったのだろうか? 配下を殺してレベルアップして、知能まで上がったみたいだ。
土蜘蛛というフロアボスは、前回の攻略じゃあ、そこまでの頭の良さはなかった。
「全く。厄介だね」
【それなら、簡単に俺に殺されちまえ。クソガキ。ダラハハハ!!】
勝ち誇ったように笑うね。
「レベルの差は、これまでの知識と経験で補う。…………参る」
【参るだあ? なにを昔の武士みてえなこと言ってやがる! クソガキよおおぉ!! 〈万雷蜘蛛〉】
口から大量の蜘蛛を吐き出してきた。
「………全て燃やす。〈火出口二刀流・焔〉」
自分の中の記憶を甦らせる。かつて強かった自分を、今の弱くなった自身に投影する。
失ってしまった経験の記憶を糧に、これまで得てきた幾千幾万の反復の戦いを思い出す。
《《自身の中の甘いスイッチを切り替えた》》。
「カグチの炎刀」を、一振から二振りへと《《分離》》させ、ボスフロア全ての床に炎を撒き散らす。
【………なんだ? クソガキの雰囲気がさっきと全然違……】
「隙だらけだよ。………〈執刀火刖〉」
先ずは、増えた目を潰す。
【あぁ? なに、あわてて急接近してきてんだ。そんなの見え……見え?】
ドスッ!……ドスッ!……ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
戦いでは、敵の視界を奪うのが定石。
土蜘蛛の七つの目を容赦なく切り刻み失明させた。
【だぁあ!? がああああ!! クソガキ!! てめえ!! 何しやがる!? 〈蜘蛛ノ大刀〉】
「………ここをっ!! 〈紅蓮ノ大刀〉」
土蜘蛛の口から鋭利な刃が現れ、俺へと襲い掛かる。そんな突然の攻撃を冷静に見極めて、「カグチの炎刀」の一振で防ぎ、もう一振でカウンターを右腕に喰らわせる。
【………………目を封じた所で見えんだよ!!
なめんなあぁ!! クソガキ!!】
エクストラスキル発動――――「牛蜘蛛目玉」「八蜘蛛」
土蜘蛛の背中から二本の両手、二本の両足が出現する。
「………関係ない。右側を叩き切る!」
【ああああぁ!? あんだと? ごがあ!?】
エクストラスキル発動――――「天照剣術(免許皆伝)」「鳴神自在」
「〈火雷ノ大刀〉」
うるさいので、一振を土蜘蛛の口へ、もう一振を二本の右腕に切りつける。
【だぎゃああああ!!! てめえ……俺の右腕を……】
スキルも発動――――「模倣」
「……うん。君の二本の右腕は良く馴染む。ありがたく頂いておくよ。土蜘蛛」
【……ぶっ殺すっ!!】
「模倣」スキルで、土蜘蛛の右腕を奪った。
今から試しに使ってみようかな……
◇
天照陽光
レベル1308
エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在 異空生活 悠久右腕 地外変動
スキル 模倣 心眼 業物 瞬動 調伏(上級)
火魔法(特級)雷魔法(特級)
土魔法(特級)闇魔法(初級)
宵宮カノン
レベル1305
エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛 守護天使 麒麟疾走
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(特級)風魔法(特級)
光魔法(上級)
回復魔法(特級)
守護獣・雷幻馬
人魚のアリア(アリスドール)
レベル301
スキル 加護 天女 疑似水
魔法 天照と宵宮の魔法の上級者魔法まで使用可能
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル9
スキル 隠密 物真似 治癒 変身
◇




