第29話 ライトニングの計算外
「〈雷鳴拏魔羅〉」
「「〈風竜舞〉」」
「くそっ!……また防がれたのだ。」
「隙ありっ!! 〈火竜の大刀〉」
「キュウウゥ!!! 〈一角雷点〉」
「ぐぅぉ!?……ぐああああぁ!!」
〖一番美味しい一撃は我が頂くピヨップ!物真似────からの〈雷鳴拏魔羅〉ピヨオオォ!!〗
ズバンッ! ドゴオオオオンンンッ!!!
スキル発動────「模倣」
「……………おのれっ!! スザク、お前えぇ!! わたしの右腕をよくも………回復しない? なぜなのだ?」
〖戻らなくて当然ピヨ。貴様たち「雷竜人」の超回復への対策ピヨップ。右腕なら、陽光の新たな力として持ったピヨ〗
「………何だと? それはどういう事なのだ!? スザク!!」
周囲を見渡す。
そして、わたしを殺した憎き天照陽光の可笑しな右腕には………さっきまでわたしの元にあった雷纏いし右腕が付いていた。
「………すごい。これが雷モンスター最高位・ライトニングの右腕」
くそぉっ! くそぉっ! わたしの右腕が超回復しない?
奪われた?
どうなっているのだ?
なぜ、「人魚のアリア」と「雷幻馬」が奴らの仲間になっている?
当初の予定では2人と1匹のはずだった。
それが現実は五対一。あまりにも理不尽過ぎるではないか。
「…………君、血の臭いすごいね。〈火炎ノ大刀〉」
いつの間に間合い入られたのだ? 気配すらなかった。いや、今はこの極大の炎の大刀を防がねば。
「くっ!! 〈雷障壁〉!!」
わたしの絶対防御の雷壁を軽々と破った?
そもそも、何故に天照陽光がカグチの力を使える? こんなこと以前戦った時はなかった現象だ。
(………悪いけど。塵になりなよ。〈太陽球〉)
(ぐあぁぁぁ!! わたしの身体が焼きつくされていく!?)
くそっ! これでは以前と同じ二の舞になるのだ。
どうにか戦いの風向きをこちらに向かせねば。
「そのためには、天照陽光の仲間を狙う……」
「させないよ。〈炎縛縄〉」
火魔法で縄状の火縄を作り出した?
こいつ、カグチの力を存分に振るえるのか。厄介な!
「なめるなっ! 〈雷爆散〉」
「! 皆、離れて!」
避けた? 雷が拡散することを気づかれた?
可笑しい。この技は天照陽光に1度も見せたことがない技だぞ。
裏切り者のアリアや雷幻馬が、わたしの技をバラしたか?……いや、そもそも教えてもいない。普通、違う派閥のモンスターで情報交換などしないものだ。
「…………ならばお前の仕業か! くそ鳥!!!! 喰らえっ! 〈雷落雷〉」
〖ピヨップ? な、何のことビヨオオオオオ!!! 陽光〜! なんで守ってくれなかったんだビヨップ〜!ビビビビビビ!!!ジビレルピヨップ〜!………ピヨピヨピヨピヨ〜!〗
「よしっ直撃!……聞いてないだと?」
あのアホ鳥はたしかに不死性はある。
だが、ちゃんとダメージは喰らえはずだ。なのに無傷?……待て待て待て待て。
たしかに不死鳥はお調子者でバカだが。あんな耐久性があるわけがない。
……どんなスキルを使った?
「隙ありですわ。アリアさん! 〈風槍〉」
「クスクス……了解よ。〈風槍〉」
「!……くそ、今度は攻撃魔法を……〈大雷縁〉」
この程度の技なら、左片腕だけでも防げる。
隙を見て屠れる。
問題は……
「〈炎火口〉」
「やはり、お前を一番先に始末しなければ、この場を打開できぬか。天照陽光!! 〈疑似雷腕〉」
奪われた右腕に右腕の形をした雷を纏わせる。
「腕が生えた?」
「応急措置なのだぁああ!! 〈雷帝劍〉」
そして、雷腕を剣の形へと変えて、憎き天照陽光へと振り下ろすのだ。
ズドオオオオオオンンン!!!
「がはぁ!?」
「天照さん!」「陽光ー!」
浅はかな、隙がありすぎるのだ。
モンスターが右腕を奪われようが、奪われたことに対しての対策など幾らでもあるのだ。
「ダハハハ!! がはぁ!?だと? わたしを殆んど一撃で屠ったはずの天照陽光が、がはぁ!?だと。お前……どれだけ弱くなったのだぁ!? ダハハハ!! 死ね! 死ね!」
「がぐぅ……〈炎球ノ守〉」
炎を盾を作り、防ぎ始めたか。
これが本当に、わたしを一方的に蹂躙した天照陽光なのか?
「ダハハハ!! 笑える。とても笑えるぞ。天照陽光! お前、守る者がいるせいで弱くなりすぎたのではないのか? わたしのように、自身の親族さえも殺して経験値に変えればよかったものを」
「なん……だって? それはどういう……ぐぅ!?」
「言葉通りなのだ。わたしは、わたしが支配する雷エリアの同族や支配下にあるモンスターを皆殺しにし、今の力を手に入れた! このようになああぁあ!! 〈雷極〉」
「があああああああ!!」
天照陽光の苦しそうな顔。
良い……とても良い顔なのだ。天照陽光!!
これもあいつの助言を聞いたおかげなのだ────
(………ふむ。天照陽光を完璧に仕留める方法ですか)
(そうなのだ。お前は博識な管理者なのだろう? その方法を教えるのだ)
(……貴方。目が……)
(? なんなのだ?)
(…………いえ、なにも。そうですね。……こちらも探索者と同じモンスターを倒して、レベリングするしかありませんね。とくに貴方の同族は高い経験値を保有していますので、戦って屈服させられば)
(そうなのか。殺せば良いのだな。了解したのだ……感謝するのだ)
(は? いえ、殺すなんて一言も言ってませんよ。ライトニング……行ってしまった?………しかし、あのライトニングの目。何者かに支配されている? カグチとアリアいい、いったいこの渋谷ダンジョン内で何が起こっているというのですか。不死鳥様)
…………あいつ。最後に何か言っていたのだ。
何を言おうとしていたのだ?
いや、今は、それよりも天照陽光とその仲間を殺してしまのだ。わたしよ。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺してしまうのだよ。
…………あれ? わたしって、こんな性格だったっけ?
「…………〈終炎心落〉。悪いけど、隙だらけだったからさ。心臓止めさせてもらったよ」
「…………そう……なのだな」
「うん」
わたしの心の臓に天照陽光の刀が刺さっていた。刀から、内部へと炎が侵入してくるのが分かる。これを浴びつつけたら死ぬことも分かる。
…………どうやら考え事にふけていてしまったようなのだ。
【ライトニング様!! お止め下さい!!】
【わたしが強くなるために死ねなのだ】
【ぎゃあああ!!】【ライトニング! 止めてくれ。俺たちは友達で、があああ!?】【ライトニングちゃん! 元に戻ってよ。ライトニングちゃ……いやああああ!!!】【ライトニング様あああぁ!!】
そして……今も思い出す。
同族……いや、わたしを慕ってくれていたモンスターたちの断末魔の声を────
「……………君は、俺が「調伏」してあげれば、カグチみたいに仮死状態になって助かるけど」
「……………いや、良いのだ。こんな性格……汚染された状態で生き続けたくない。わたしが皆殺しにした同族や配下に悪いのだ」
「……そう。分かった」
「うむ」
短い会話だった。短い会話だったが……彼がわたしを心配してくれていたのが伝わってきた。
あぁ、そうか。
まずは彼を殺そうとするのを努力するのではなく。
彼を理解し、仲間たちと協力して《《彼らをどう攻略するかを考えなけらばならなかったのだな》》。
「……………天照陽光」
「ん?」
「予想外な展開になってしまったが、わたしを圧倒し《《見事》》だった」
「そう……ありがとう」
「愛想がない奴なのだ」
「まぁ、君は俺の仲間を攻撃した敵同士だからね」
「……そうか」
こいつ。案外話しやすい奴だったのだな。通りでアホ鳥やアリアが手を貸すわけなのだ。
わたしも、もう少し早く天照陽光に出会っていれば、何か変わったかもしれないな。
「わたしはもう消滅する。次の階層に上がるが良い。……それとわたしを倒した褒美として、雷エリア全階層の経験値と宝物はやろう。受け取れ」
「それは……ありがとう」
エクストラスキル────「異空生活」
「これで良し、わたしの全ては天照陽光に引き継がれた。……お前の渋谷ダンジョンの成功を祈ってい……」
「ライトニングちゃん!」【キュウゥ!!】〖貴様、死ぬのかピヨップ? ライトニング!〗
「………アリア、キリン。済まないのだ。今回は《《何か》》に汚染された。渋谷ダンジョンの後のことは任せる」
「ライトニングちゃん。……うん!」【キュウウウウ!!】〖……無視されたピヨ〗
「…………アホ鳥」
〖ピヨップ!? なんだピヨップ。ライトニング〗
「あらゆる文句は言いたいが、お前の渋谷ダンジョン反転は正解だったかもしれない」
〖ピヨップ? ライトニング?〗
「………気をつけろ。何かが可笑しい。これまでにない驚異がダンジョンで起きるか………」
「ライトニングちゃん!」【キュアアアゥゥ!!】〖ライトニング!〗
「消えた。……行こう。彼の意思を無駄にしないために、次の階層に進むんだ。それに主を失った雷エリアはじきに崩壊する可能性がある」
〖わ、分かったピヨップ。陽光。アリアは「異空生活」に、キリンは小娘の元に戻るピヨ。2人は我の両足に捕まり飛ぶぞピヨップ。ピヨピヨピヨピヨ〜!〗
「これで300階層踏破ですか」
「うん。これで残り200階層だ」
〖次は301階層。どんどん進むピヨップ〜! ピヨピヨピヨピヨ〜!〗
◇◇◇
ライトニングは倒し、次は土エリアへ……いや、その前に安全地帯で戦いの疲れを癒そうと思っていたのに────
【だと思うよな? させねえよ! 馬鹿がぁぁ!! そして、ようこそだなぁ。おいっ! 400階層 「土蜘蛛の陣」決戦連戦の始まりだ。ごらああああ!!!】
300階層の転移門潜ったこの先は、土エリア・400階層支配者である土蜘蛛が待ち構えていたんだ。
「………こいつもまさか」
【おうよ! 考える頭は一緒だよな? てめえ等にさせねえよ。レベリングなんてな! 復讐してやるぜ!! 天照!!】
『龍脈の土蜘蛛』
◇
天照陽光
レベル1308
エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在 異空生活 悠久右腕 地外変動
スキル 模倣 心眼 業物 瞬動 調伏(上級)
火魔法(特級)雷魔法(特級)
土魔法(特級)闇魔法(初級)
宵宮カノン
レベル1305
エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛 守護天使 麒麟疾走
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(特級)風魔法(特級)
光魔法(上級)
回復魔法(特級)
守護獣・雷幻馬
人魚のアリア(アリスドール)
レベル301
スキル 加護 天女 疑似水
魔法 天照と宵宮の魔法の上級者魔法まで使用可能
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル9
スキル 隠密 物真似 治癒 変身
◇




