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第28話 300階層・雷霆のライトニング


 287階層からモンスターが殆んど居なかった。


 ただ、これまでの階層とはあきらかに違う光景は広がっていた。


 モンスターの死骸が地面に転がっていたんだ。


 そして、俺たちは全くレベリングできないまま、299階層までダンジョンを上って行った。


〖ピヨ……アイテムも散らかり放題ピヨ。誰がこんなモンスター殺戮を行ってるピヨップ?〗

【キュゥ……】

「スザクちゃんじゃないの?」

〖なんでピヨップ! 我は争いを好まない、ラブ&ピースな不死鳥フェニックスピヨッ!〗

「渋谷ダンジョンを反転させといて、よく言うわね。クスクス…ね〜! キリンちゃん」

【キュルルウゥ!!】

〖なんだとピヨ〜!〗


 皆も驚いている。

 やっぱり、モンスターから見ても、この光景は異常なのか。


「酷いですわね。……まるで地獄にいるみたいですわ」


「明らかに意図的に全滅させてるしね。これは俺たちの邪魔しているのは確定かな」


「ですわね。……最後の最後までモンスターに襲われませんでしたものね」


「うん。次で300階層、雷エリアの支配者との戦いか。……黒幕と対峙って感じかな」


 俺たちは魔道車から降りて、300階層に繋がる転移門ゲートへと入って行った。






◇◇◇


 渋谷ダンジョン300階層到達。

 

 雷エリア『雷撃の峰』


 フロアボス・「雷霆らいていのライトニング」




 300階層に入った瞬間だった、全方位から落雷が降ってきた。



「……………待っていたのだ。そしてお別れだ。修行不足の挑戦者たち。〈豪雷音ごうらいおん〉 ね」


 不敵にほくそ笑む、フロアボスが立っている。 

 こっちはそう来ると思って想定して動いているとも知らずに。


「来たっ! 宵宮さん! キリン! 頼む!」


「はい! キリン! 出番ですわ!!」


【キュウイイィィ!! 〈雷方位封らいほういん〉】


 雷耐性がある雷幻馬キリンによる鉄壁の守り。


 これにより、「雷霆らいていのライトニング」の初手の攻撃は完全に防げた。


「…………お前は雷幻馬キリン? 何故、お前がここに存在しているのだ? 死んだはずではなかったのか? なぜ、生きているのだ?」


 やっぱりライトニングは把握していなかった。

 キリンが俺たち側についていることを────


「想定外が起こって戸惑っているところ悪いけど、戦いを開始させてもらうよ。〈火牛右腕刀ファイアーシェフナイフ〉」


 右腕に持った「カグチの炎刀」を炎を纏わせて振るう。


「………お前! 天照陽光!! あの落雷の雨の中、なぜ生きている!! 〈雷刀・極〉」


 ライトニングは俺の攻撃に素早く反応し、右手に持っていた刀に雷を帯びせて、俺の攻撃を受けた。


「やっぱり。俺のことは覚えているのかい。ライトニング……俺の刀に触れたね。爆発しなよ。〈火爆〉」


「なんだと!? それではお前も巻き添えに……がああぁぁ!!」


 刀が触れ合った瞬間。

 「カグチの炎刀」が大爆発を起こしてライトニングを吹き飛ばした。


「「〈水壁ウォーターウォール〉」」


 宵宮さんとアリアのダブル〈水壁ウォーターウォール〉で俺へのダメージは無い。


「……悪いけど。俺たちはチーム戦を想定して戦っているんだ。防がせてもらったよ」


〖ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ!! ライトニングは相変わらず油断しやすいピヨップな。さぁ、陽光。ライトニングも倒したし、次の階層に向かうピヨップ〗


「…………いや、まだまだピンピンしてるみたいだよ。彼は」


〖ピヨ?〗


 ここの地形は山脈の頂き、吹き飛ばされて峡谷の真下に落ちたと思ってたんだけどね。


「〈雷霆迅雷〉!! 天照陽光!! お前!! 全然変わっていないのだな。ずる賢く小技などばかりに頼った攻撃を多用する卑怯者だ!」


 暗雲の雲に乗って戻って来た?

 あんな技、ライトニングは一周目で使ってなかったような。


「クスクス……マスター、多分彼、変異してるわよ。ダンジョン汚染ってやつね」


「ダンジョン汚染?」


「そうそう。私も掛かったダンジョンね。まぁ、私の場合は眠ってしまったから、そこまで酷くはなってなかったけど。ライトニングちゃんの場合は手遅れね。誰のせいなのかは分からないけど、精神も肉体もお馬鹿さんになってるわよ。あれ、ぜんぜん笑えないわね」


 アリアは空を飛ぶライトニングを見ながら、真剣な表情をしていた。


「ダンジョン汚染?……それはカグチと同じような現象かな?」


「あー、カグチちゃんもなっちゃってたの? 酷い話ね。可哀想〜、クスクス……私みたいに助けてくれる人はいなかったのかしらね? クスクス」


「………アリア」


〖陽光!! なにを普通に喋ってるピヨップ! ライトニングが来てるピヨヨ!!〗


 スザクのげきが飛ぶ。

 おっと、そうだった。今はライトニングとの戦いに集中しなくちゃ。


「分かってる!! 宵宮さん!」


「はいですわ! 〈花鳥風月フルール・ブルーム〉」 


 今回の戦いでは、防御の全てを宵宮さんに任せることにしている。


「簡単に防がれた!? 何なのだ? お前たちのレベリングは確実に邪魔したはずなのに、どうしてそんなに強くなっているのだ? サンゴとの戦いの時はそこまでの強さはなかったはず!」


 そして、俺はというと。


「攻撃担当……〈火牛奮闘・右腕〉」


「ごばぁ!?……ごあああああ!!」


ドガアアアアアンン!!


 油断しきっているライトニングの顔面に右ストレートの顔面パンチを喰らわせた。


「流石、ミノタウロスとカグチの右腕が合体した右腕。とんでもない破壊力だね」


 階層を進んでいくごとに、色々な敵の右腕を「模倣」でコピーして手に入れてきたけど。


 今のところ一番馴染むのは、この「火牛の右腕」かな。


「………ちゃんと強くなれていますわね」


「うん。これも不思議存在アンタッチャブルズに相談したかいがあったよ」



 つい二週間前の出来事。

 俺はライトニングの策略にどう対処するかを、安全地帯セーフティーゾーンの宿屋で悩んでいたんだ。




「………駄目だ。どう考えても、レベルアップが必要だ。300階層を越えられたとしても、同じような手を使われ続けたら、これ以上のレベルが上げられなくなる」


【あらあら、旦那さん。どうしたのね? こんなお時間にね?】


不思議存在アンタッチャブルズさん」


 深夜、1人食堂で水を飲んで独り言を言っていると、1人の不思議存在アンタッチャブルズに話しかけられた。


【ええぇ!? ダンジョン内でレベリングできないのね?】


「そうなんですよ。階を上るごとに出現するモンスターが明らかに数を減らしていて」


【…………なるほどなのね。だから、旦那さんはウチ等にヘンテコな質問をしていたのね】


「ヘンテコな質問……」


【しかしなの〜ね! それは明らかに不正なのね。とんでもないモンスター不正なのよね】


「モンスター不正……」


【ムムム、どうしようね。ウチ等は見守ることしか許されてないから、探索者さんのお手伝いはしてあげられないのね】


「それ知っています。ダンジョンの意思というやつですよね?」


【そうなの〜ね!……だけどもだけど! 今回はモンスター側の明らかな不正なのね。………少し待っててなのね】


 不思議存在アンタッチャブルズはカウンターにあった黒電話の受話器を持つとゆっくりとダイヤルを回し始めた。


「……あの黒電話。いつの間にあそこにあったんだろう」


プルル……プルル……プルル……


 小さい音だけど受話器からは電話をかける音が聞こえてくる。


ピッ!


【あっ! お久しぶりなのね〜! 運営さん。緊急事態、緊急事態が発生したのね〜!………そうなのね。渋谷ダンジョンのモンスター側が経験値の不正自給をしているのよね】


 誰かに繋がってのかな? 

 かなり親しそうに話してるみたいだ。


『───────!?』


【え? 旦那さん側が不正してないのかなのね?……それはね……】


 してる。主にスザクが俺たちをレベルアップさせれるようにしまくっている。

 あれ? もしかして、それもダンジョン運営とかいう人にバレたらまずいのでは。


「あ、あの、不思議存在アンタッチャブルズさん……」


【……それはまったくないのね〜!】


「え?」


【そうなのね。逆に旦那さんたちからはダンジョン食材を貰ったり、店のゴミを押し付けて助かってるのね。良好な関係なのね】


 あれ? かばってくれた?


『!………───────!!』


【え? あの部屋に案内して使わせてあげてなのね? 良いのうね?】


『──────!!!』


【そ、そうなのね。本当は不死鳥フェニックスが勝手に経験値をいじってるけどね】


 あ、バラしちゃった。


『───────!!』


【……フムフム。そんなのとっくの昔に知ってたのね。そう、おとがめなし。むしろ、二周目なら、当然の特典……そして、モンスター共はなにを好き勝手にやってんだと。上はお怒りなのね?……うん。分かったのね〜! それじゃあ、旦那さんたちをモリモリ鍛えて利用して、渋谷ダンジョンを安定させるのね。ボス、ありがとうなのね〜! バイバイね〜!】


ガチャッ!


「あ、あの……どうなりましたか?」


【喜ぶのね旦那さん。明日の朝から、うちのお店の秘密の部屋で地獄の特訓で、レベリングモリモリして上げるのね】


「モリモリレベリング? いや具体的に」


【禁則事項なのね。アンタッチャブルなのよね〜! 明日から楽しみなのね。おやすみなさいね〜!】


「アンタッチャブルって……名前じゃないの?」


 ……そして、不思議存在アンタッチャブルズが言っていた通り、次の日から俺たちの壮絶なレベリングが始まったんだ。


 次の日


【ここは、不思議存在アンタッチャブルズとボスに認められた者しか入れない秘密の部屋なのね】

【他の探索者さんたちには内緒なのね】

【沢山、沢山居るから気をつけてなのね……それじゃあ、入ってなのね〜!】


「こんな部屋昨日あったかな?」

「………とんでもない気配を感じますの」

「………クスクスって……笑えないんだけど」

〖なんなんピヨ? なんなんピヨップ? あの化け物たちはピヨ〗


ガチャッ!


【【【ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアオオ!!!!】】】


「「「〖ぎゃあああああああ!!!〗」」」


 そして、俺たちは不思議存在アンタッチャブルズの地獄の特訓で、強制レベリングの日々を送って強くなれたんだ。


天照あまてらす陽光ようこう

レベル1006

エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在 異空生活 悠久右腕 地外変動

スキル 模倣 心眼 業物 瞬動 調伏(中級)

火魔法(特級)雷魔法(特級)

土魔法(上級)闇魔法(初級)


宵宮よいみやカノン

レベル1005

エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛 守護天使 麒麟

スキル 福音 補助 天幕 結界 

水魔法(特級)風魔法(特級)

光魔法(初級)

回復魔法(特級)

守護獣・雷幻馬キリン


人魚のアリア(アリスドール)

レベル201

スキル 加護

魔法 天照と宵宮の魔法の上級者魔法まで使用可能


スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル9

スキル 隠密 物真似ものまね 治癒 変身


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