第27話 山脈の旅時を思案して
〖ピヨピヨ〜! 順調ピヨ〜! 進撃だピヨピヨ〜!〗
「クスクス〜! スザクちゃん、面白い〜!」
「〖ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ〜!〗」
最近、魔道車の中は騒がしい。
そして、それを大人しくさせるのは、だいたい宵宮さんの担当になってきてる。
ドスッ!ゴスッ!
〖ピギャア!?〗
「キャア!?」
「うるさいですわ! いつも静かなキリンみたいに、静かにできないんですの? 貴方たちは!?」
【…………キュゥ】
「あら、ごめんなさいですわ。キリン、起こしてしまいましたわ」
【キュゥ……】
小さいヌイグルミのような姿に縮んだキリンが、宵宮さんに頬擦りしている。
すごく絵になる光景だ。
「ほああぁ!! 可愛すぎますわ〜! 私、貴方が守護獣で最高過ぎますわ〜!」
【キュウィ♡】
宵宮さんとキリン。
どうやらお互い相性が良くて、仲もすこぶる良好みたいだ。
〖痛いピヨ〜!……なんで頭を叩かれるピヨ〗
「グスングスン……私もアリスドールなのに痛覚があるから、頭を叩かれたら痛いのよ。グスングスン」
……今日も皆元気そうでなにより
そして現在、渋谷ダンジョン285階層まで到達。
フロアボス「雷竜」と戦うはずなんだけど。
【ギャシャアアアアア!!!】
『敵感知確認、排除します。排除します。………〈大十字〉を発動……発射3前……2……1……発射します』
ドゴオオオオオオオンンン!!!
【………………ゴギャアラ!?】
『敵対反応消滅。撃破成功しました。目的に向けて再発進致します』
〖ピコンッ! タラタタッタタッタラ〜!〗
これで大抵のフロアボスは倒せて、さらにレベルアップまでするんだ。
この魔道車色々と可笑しいよ。旅は楽だけどさ。
外敵の対応は、魔道車に任せて、最近は、魔法練習やスキルの鍛練に時間を使っている。
各階層のレアなドロップアイテムを見つけたら下車して拾いに行ったりね。
「285階層クリアか。順調過ぎて怖いな。……安全地帯で少し話し合おうか。皆」
そう順調過ぎる。
ダンジョン意思、いやダンジョンは常に公平だ。
……いつもなら、かなりのレベリングをしてから次の階層に進むのに、今回はそれを全然できていない。
俺の計画だと、この300階層内でレベル900位到達していないと安心できないんだ。
モンスターの出現率が悪すぎるんだよね。
意図的にやられてるとしか思えないんだ。
「どうしたものかな。鉱石や宝石は沢山見つかっても、強くなれないままだと、このままじゃダンジョン攻略が詰み始める………考えないと」
普通の探索者なら、ダンジョン攻略が順調だと楽観視する傾向がある。
でもここは渋谷ダンジョン内。
イレギュラーが当たり前のように起こる人外魔鏡なんだ。
◇
285階と286階層の間の安全地帯。
【最近、雷エリアで変わったことが起こってないかなのね?】
「えぇ、なんでもいいんです。些細なことでも。知っていることがあったら教えて下さい」
【ん〜……ウチ等はお外に出れないからね〜! あんまり知らないのね】
【ほうね〜! お外に出たら狙われるのね。ウチ等はモンスターに嫌われてるものね〜!】
【その代わり探索者さんたちは、ウチ等になにもしないから、好い人なのね。金払いも良いし、ダンジョン食材も分けてくれるからね】
「………えっと、あの変わったお話は?」
【おっと、ごめんなさいなのね。変わった話ね。…………そうね。最近の雷エリアは騒音がうるさいのね】
「騒音……ですか?」
【うんなのね。モンスターとか稲妻がすごいのね。なんなのね、あれ。ご近所迷惑なのよね】
【そうそうなのね。モンスターの断末魔の声が夜中すごくうるさかったのね】
【嫌になっちゃうのね〜!……でも最近はあまりきこえないのよね】
「最近はですか。……分かりました。ありがとうございます。これ、お礼の「トントン鉱石」です。受け取って下さい」
【【【まぁ、綺麗なのね! ありがとうなのよね。旦那さ〜ん!】】】
不思議存在からの聞き込み調査。
雷エリアの騒音。
そして、最近各階層のモンスターの数も少ないと思っている今日この頃。
「…………………………」
思考を巡らせる。
最悪のケースが考えられる。
それを打破するにはどうすべきか考え始める。
「天照さん〜! 今日は同じ部屋で私と一緒に眠りま………」
「ごめん、宵宮さん。……今日は1人で寝させて。部屋の中で1人になりたいんだ」
「…………は、はい。畏まりました。……レベルアップが滞っているからですわね?」
俺の耳元でスザクたちには聞こえないように話す宵宮さん。流石、相棒《宵宮さん》。俺の悩みに気がついてる。
「うん。想定してたよりもレベリングできてないからね。打開策を考えたいんだ」
「了解しましたわ。……今夜はゆっくり思考を巡らせて下さい。私の天照さん」
「うん、ありがとう。宵宮さん」
宵宮さん。本当に良い娘だな。こんな女の子と付き合えたら人生最高なんだろうな。
…………その日の夜は、1人で色々と考えながら過ごした。どうすれば不足している経験値を手に入れられるかを。
◇
天照陽光
レベル806
エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在 異空生活
スキル 模倣 心眼 業物 瞬動 調伏(初級)
火魔法(特級)雷魔法(特級)
土魔法(初級)
宵宮カノン
レベル803
エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(特級)風魔法(特級)
光魔法(初級)
回復魔法(特級)
守護獣・雷幻馬
人魚のアリア(アリスドール)
レベル91
スキル 加護
魔法 天照と宵宮の魔法の上級者魔法まで使用可能
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル8
スキル 隠密 物真似 治癒 変身
◇
◇◇◇
雷エリア294階層。
暗雲、豪雷が響く悪天候なエリア。
現在、大虐殺実行中。
【ぐぎゃあああああ!!! ライトニング様がご乱心だああぁ!! 逃げろおぉ!!】
【止めて下さい! ライトニング様!! 同族に手をかけるなど!!】
【嫌、嫌あああああ!!】
ドスッ!
雷を帯びた剣を右手に持ち、同じ種族の仲間たちを殺し続けるのは、雷エリアの支配者『雷霆のライトニング』。
「……………許せ。これも天照陽光に復讐を果たすための過程なのだ。……つまり全ては必要なことなのだ」
堂々と仲間を殺して、笑みを浮かべるライトニング。
【ひいぃぃ!! この同族殺し! なんでこんな酷いことができるんだ! 貴様はそれでも雷人族の次期当……】
ドスッ!
「……………うるさいぞ、ご老人。そんな些細なことは最早、どうでも良いのだ。このライトニングの願いさえ叶えばよい。それこそが渋谷ダンジョンの総意なのだからな。アハハハ!!!」
294階層の全モンスター全滅。
天照一行がこの階層に降り立った時には、雷エリアの支配者ライトニングよって大殺戮が終わった時であった。




