第22話 200階層水の内戦 海賊艦隊と珊瑚の岩礁
現在、魔道潜水艦内。
「………ヨーホー!! ここまでよくぞ、某に付いて来てくれた。今日は決戦! 水エリアの平和が決まるかの瀬戸際である! 必ず勝ち! アリア様を救い出す! そして、平和な海を取り戻すのだ!!」
【おおおっ!! サンゴの馬鹿にギャフンっと言わせてやるっすよ】
【バルザロッサ提督! 万歳〜! 絶対に勝つ〜!】
【こんだけの戦力があれば簡単に勝てますよ】
〖ピ、ピヨ。コイツら、揃いも揃って、なんで負けフラグ的な台詞しか言わないんだピヨップ〗
魔道潜水艦内に居るのは、バルザロッサ海賊艦隊の副船長たち。
現在、200階層のボスフロアへと進んでいる。
決戦前の最後の作戦会議中なんだ。
「………天照殿。先に今回の報酬を渡しておこう。「人魚姫の指輪」と「バルバロスの宝玉」だ」
バルザロッサは、青色の指輪と青黒い怪しい光を放つ玉を俺へと手渡した。
「!……バルザロッサさん。これは!?」
「もしも、今回の作戦が成功した場合、貴殿たちは次のステージに強制的に進むことになるだろう。だから、先に渡しておく。それを持っていればダンジョン内で役に立つだろう。この先の旅……いや、もしかしたら別のダンジョンでも使う時があるやもしれぬ。今回の旅でお前たちは信用できると分かった。持っていてくれ」
「は、はぁ、それは嬉しいですが。ありがとうございます」
……この人は、自分がなにをしたのか分かっているんだろうか? まさか自身の命とも言える物を探索者の俺に差し出すなんて、尋常じゃない覚悟だと思えた。
「………全海賊艦隊に告げる。作戦は先ほど話した通りだ。……そして恐らく奴は化物と変わり果てているだろう。用心しろ、奴は本物の化物だ。不意打ちとはいえ、奴はアリア様に勝ったのだからな」
【【【アイアイサ〜! バルザロッサ船長〜!】】】
「よしっ! 各自、自分たちの持ち場へと移動せよ!」
数十人のモンスターたちが自身が引き連れている船へと戻って行く。
「士気は上々ですわね。負ける気しませんわ」
「うん。そうだけどさ。……座礁のサンゴって、こんな大戦力で立ち向かわないと勝てない相手だったかな?」
以前、200階層アリア戦の時は、あまり広くない部屋で「人魚のアリア」と戦った。
それが二周目の今回の200階層は、とにかく広い。まるで、《《今回の戦いのためにダンジョンが200階層の部屋を広げた》》ように思える。
「………ダンジョンの意志か」
バルザロッサと組んでのダンジョン攻略は順調に進んでいる。
彼の配下のモンスターたちはしっかりとした意志疎通ができ、俺たちに一切の危害を加えなかったので、魔道潜水艦に招きいれて食事などもした。
その代わりサンゴ側のモンスターたちは、執拗に俺たちを攻撃してきたけどね。
まぁ、そういったモンスターは、バルザロッサたちと共に倒してどんどん階層を進んで行ったんだけど。
「なんだか急いでいませんか? バルザロッサさん。階層攻略の時も、どんどん行こうとずっと言ってましたよね」
「………"子を思う親の気持ちだな"」
「はい?」
「………貴殿にも、自身の子供ができればいずれは分かるさ。この短い旅で分かった。貴殿たちは優しいもの達だったのだな。一度目の遭遇の時は気づかなかった。もっと早く知りたかったものだ」
「バルザロッサさん?」
バルザロッサさん、どうしたんだろう? 俺の右肩を優しく触ると悲しそうな顔をするなんて。
「!………見えて来たか。トルマリン艦隊! 目の前に隠れている裏切り者に向かって、砲撃を開始せよっ!」
突然、叫び出したバルザロッサさんは、魔道潜水艦から見える《《なにも見えない場所》》に向かって、砲撃を放つように部下へと告げた。
【【【アイアイサー!! バルザロッサ提督!!】】】
ドオオオオンンン!!!
いくつかの艦隊から砲撃音が聞こえ、海底内に響き渡る。
「あれは?……岩礁の塊?」
「……天照さん。200階層にあのようなギミックはありましたか? 私、あまり覚えていないのですが?」
「いや、無かったはず。そもそも、あれはモンスターなのかな?」
俺と宵宮さんは、目の前の光景を見て絶句していた。大きい……大きすぎる白色の岩礁が俺たちの目の前に、突然姿を現したんだ。
【アハハハ!!! ボクがアリア様をどうやって殺すか吟味している間にやってくれたね。裏切り者のバルザロッサ。ボクの眷属を倒して大艦隊を連れて来てくれちゃってさ。美味しい経験値なんだからさ】
白色の岩礁から気持ち悪い子供の声が聞こえてくる。
〖バルザロッサ、なんだピヨップ!? あのキモいモンスターは? 我は渋谷ダンジョンの主だが、あんなモンスター知らないピヨ〗
「………知らないのも無理がないぞ。不死鳥殿。あれはダンジョン反転の時に生まれ悪しき存在。自我が悪意に染まった反転モンスターなのだからな」
〖は、反転モンスターピヨ?〗
反転モンスター?……おそらくだけどカグチと同じような状態ということかな?
【バ、バルザロッサ提督〜! 何なんすか? あの化物は〜!】
【あ、あんなのが新しい水エリアの支配者?】
【キモいですけど。喋ってるですけど。嫌なんですけど】
バルザロッサ海賊艦隊から、白色の岩礁に対しての凄まじい悪口がバルザロッサが彼らに持たせている"念話機"を通して聞こえてくる。
「………それならば勝つしかないぞ。サンゴの奴は、おそらく某たちを全滅させ。この戦いで得た経験値を使って、アリア様を殺す気なのだからな。そうだろう? サンゴ!!」
【あはっ! なんだよ。そんなところにいたのかよ。バルザロッサ……「水夫の護り貝」。こんなのがアリア様を守ってたら、ボクが彼女に止めをさせないから、外から来た連中に助けを求めに行けるもんね。厄介な物を残していなくなってくれたものだよ。君は】
「………今さら気づいても、もう遅いわ! こちらは最高戦力、貴様はたった一人にまで追い込んだ。覚悟しろ! アリア様を裏切った「座礁のサンゴ」!!」
【うざぁ……彼女が雑魚過ぎるのが悪いんだろう。まぁ、いいや、君たちがアリアを殺せるように岩礁に打ち上げといてあげるよ。アハハハ!! だから、さっさと彼女を殺してほしいんだ。ボクが新しい水の五大厄災になるためにね】
サンゴがそう言い終えると、白色の岩礁の真ん中辺りから、青色の貝殻が現れ、その貝殻が開くと中から眠ったまま横たわる「人魚のアリア」が現れた。
「………アリアッ!! 全艦隊! サンゴの岩礁へと集中砲火を浴びせてやれ! 撃てえええぇ!!!」
【【【アイアイサー!!!】】】
バルザロッサ率いる全艦隊から、一斉に砲弾が放たれていく。
そして砲弾が当たった白色の岩礁には、《《黒い煙幕》》が周囲を覆い始めた。
【?……なんだこの黒い靄みたいなやつは? 前が見えない!? バルザロッサ……なにをしたんだ?】
サンゴの声が海底内に響き渡る。
焦っている? たかだか、岩礁の周辺が見えづらくなっただけで?
「………副艦長たちに告げる。作戦通り、各副艦長にバルザロッサの権限を委ねる。このまま、サンゴの注意を外側に反らしていてくれ」
【アイアイ〜スッ! バルザロッサ船長〜! 人魚姫様を必ず救って下さいす〜!】
【……生きて戻って来て、バルザロッサさん】
【死ぬ気で攻撃を仕掛け続けます。バルザロッサ提督〜!】
バルザロッサの頼みを聞いて、船員たちが次々に応援の言葉を告げていく。
「慕われているんですね。皆に」
「………長年連れ添った部下たちだからな。それよりも、すまないが、この魔道潜水艦で、行ってほしい場所があるのだが。頼む」
俺に頭を下げるバルザロッサさん。
あぁ、この人は本当にモンスターなのかな?
理性と礼節の塊みたいな人だ。主人である人魚のアリアを救うために必死になれる人。
「はい! 行きましょう。バルザロッサさん。貴方の大切な人を救うためにっ!〈電撃重砲〉」
俺は魔道潜水艦を操作して、白色の岩礁の急所に目掛けて特大の雷魔法を出力した。
すると岩礁には大穴が空いた。
そして、岩礁の中へと魔道潜水艦を猛スピードで走らせた。
◇◇◇
ドゴオオオオオオンンン!!!
【はぁ!? な、なんだいきなり!? ボクの城《岩礁》に大穴が空いた? なんで?】
「………見つけた!! アリア様を解放しろ!! サンゴオオォオオ!!! 覚悟しろおぉ!!」
魔道潜水艦が止まり、出口の扉が開いた瞬間だった。バルザロッサは怒りの表情を浮かべて、腰に帯刀していたサーベルを抜いて、サンゴへと襲いかかったんだ。
突然の出来事に戸惑っているサンゴ。
その見た目は、十代位の少年に見える。身体は硬そうな岩肌のような皮膚に覆われている。
【ハァ!? バルザロッサ? なんでお前がこんな所……があぁ!?】
サンゴの右腕が、バルザロッサが振り下ろしたサーベルで切断されて宙へと舞った。
スキル発動────「模倣」
「………無知な子供が、主を裏切り、広大な水エリアを支配しようなど笑止千万。貴殿はここで某が引導を渡してやろう」
【ぐぎゃあああああ!! ボクの右腕が失くなったああぁぁ!?】
すかさず、「模倣」スキルでサンゴの右腕を奪う。
サンゴの右腕から大量の……青色の液体が流れ出てくる。あれがサンゴの血液なのかな?
「………エスピナの口車にまんまんとハマりおって、恥を知れ小僧!! 貴殿がダンジョン内で復活できぬようにしてやろう」
【グギギギ……いきなり現れて、ボクの右腕を奪ったくせになんて言い草だ。なんなんだよ。お前……お前には関係ないだろう。これはアリアとボクの問題だ! お前には、迷惑をかけてないんだから、ボクが水エリアの新たな主になるのにお前は関係ないだろう! バルザロッサ!! 〈小岩礁撃〉】
「………愚かな。貴殿は近距離の戦いが苦手だろうに。〈海竜〉」
バルザロッサは、サンゴが放った岩礁を簡単に防ぎ、大きな海竜へと姿を変貌させていく。
青き海竜、バルザロッサ本来の姿に。
【なぁ!? バルザロッサ、お前!! 自分がなにをしているのか分かってるわけ? モンスターが原初に帰るなんて、馬鹿なんじゃない?……ごああああぁ!?】
「………黙れ。格下……〈海流〉」
【がぁああああ!! ボクの身体が……胴体から下がないいぃ!?】
「………勝手に叫んでいろ雑魚が。そして、某の最愛なる娘を返してもらうぞ」
【ああああぁぁ!! 右腕がない! 胴体もない!! ボクの身体を返せよぉ! バルザロッ……】
ドシャッ!
………サンゴの身体は、巨大姿に変わったバルザロッサが尻尾をなぎ払うと、それにぶつかり岩礁の壁へと叩きつけられた。
そして、サンゴの意識はそれっきり途絶えた。
「………その耳障りな声は聞きとうない。………アリア様……いや、アリア………本物のアリアは……ここか」
バルザロッサは岩礁の床を足で粉々に砕き始めた。そして、その床の中から青色の貝が姿を見せ、バルザロッサはその貝を慎重に開けた。
「…………………」
「………あぁ、アリア。某の生前の娘のアリア……最後に会えて良かった……傷もない……汚されてもいない……某の大切な娘。無事で良かった」
救い出したアリアを見つめて、涙を流し始めるバルザロッサ。
「バルザロッサさん!! 早く魔道潜水艦艦の中に来て下さい! この200階層は変異し始めてます!」
「逃げましょう! 岩礁のサンゴは倒したのです! 次の階層へと向かいましょう! バルザロッサさん」
〖……………バルザロッサ〗
俺たちは、彼に早く戻って来るように告げる。
「………天照殿。宵宮殿。不死鳥殿。某の願いを聞いてくれて感謝する。そして、最後に……アリアと再会させてくれてありがとう。君たちは某の娘を連れて次の階層に進んでくれ。娘を頼む」
「は? バルザロッサさん? いったいなにを?」
「渋谷ダンジョンよ………天照殿との「調伏」パスは、娘に引き継ぐ。水エリアを汚した代償は某に」
バルザロッサさんの身体が青く光輝き出す。
「これは……カグチが消えそうになった時と同じような現象? 駄目です! バルザロッサさん。早く、魔道潜水艦の中に避難して……アリアがいつの間にか、船内に移動してる? バルザロッサさん!」
「………天照殿。貴殿の渋谷ダンジョン再攻略成功願っている。そして、再攻略された際には娘も再び目を覚ますだろう。………だから、ぜひとも成し遂げてくれ。渋谷ダンジョン完全攻略を、貴殿たちならそれができると、某は信じている。さらばだ」
「バルザロッサさん!!!」
…………彼はそう告げると、青色の粒子となり姿を消していく。
そして、俺たちは気づいた時には、200階〜201階層の間にある安全地帯に移動していたんだ。
◇
天照陽光
レベル701
エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在 異空生活
スキル 模倣 心眼 業物 瞬動 調伏(初級)
火魔法(特級)雷魔法(上級)
土魔法(初級)
宵宮カノン
レベル699
エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(特級)風魔法(上級)
光魔法(初級)
回復魔法(上級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル8
スキル 隠密 物真似 治癒 変身
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