第21話 アリア救出準備の日々
まさか二周目攻略で、フロアボスと共に渋谷ダンジョン五大厄災の1人『人魚のアリア』を救出することになるとは思わなかった。
バルザロッサの頼みを引き受けた俺たちは、150階〜151階層の間にある安全地帯で、今後のことについて話し合っていた。
ちなみにダンジョン内のモンスターは、不思議存在に嫌われていて、「調伏」スキルで調伏状態でいないと安全地帯に侵入するとこもできない。
なので、バルザロッサとは150階で一旦別れて、151階で合流することになった。
彼は『人魚のアリア』の配下なので、渋谷ダンジョンの水エリアの150階〜200階層までなら好きに移動できるとか。
それと149階のその下の階には行けないのは、ダンジョンの意志が働いているとも言っていた。
「80階で遭遇した女の子が、200階層のボスだったなんて、……なぜ、今まで忘れていたのでしょうか?」
「遭遇した時に、幻覚系の魔法をかけられていたんじゃないかな? 基本的に、モンスターは自身の統括フロア以外での殺傷行為は許されてないとバルザロッサさんも言っていたしね」
たぶん、俺たちがアリアと対峙した時に、宵宮さんの身体に何かしらの魔法が発動するように仕掛けがされてたんだと思う。
「そんな仕掛けをした子が、自身の配下に倒されてしまうなんて、ダンジョン内のモンスター社会は厳しいのですね」
「……どこの世界も弱肉強食の世界だからね」
渋谷ダンジョン、世知辛い世の中だ。
〖ピヨピヨ〜! 新鮮なダンジョン食材を沢山あげたんだから、我のためにどんどん料理運んでくるんだピヨップ〜! 我は腹が減ってるピヨ〜!〗
【使い魔くん、邪魔なのね。ダンジョン食材を貰ったのは旦那さんたちからなのね。君ではないのね。消えるのね】
【出汁殻にもできなそうな貧弱な食材には用はないのね〜!】
【旦那さん〜! ダンジョン食材ありがとうなのね〜! お礼に「アリスドールの頭」をプレゼントするのね〜!】
〖き、貴様ら……我をもっと敬えピヨップ! 我は渋谷ダンジョンの主なんだピヨ〜!〗
【【【嫌なのね〜!】】】
〖ハモるなピヨ〜! ピヨオォオオ!!〗
スザクが不思議存在に遊んでもらってる。楽しそうでなによりだね。
「今回の話をまとめようか」
「はい。私が将来、天照さんの妻になるという話ですわね」
「……違うけど」
「ジョークですわ」
「それと、ずっと俺の右手を握ってる手をそろそろ放そうよ。宵宮さん」
「放したくありませんの」
「…………そう。それなら仕方ないかな」
「はいですわ! ウフフ、天照さ〜ん!」
「はいはい……」
最近の俺は宵宮さんに甘い。
いや、同い年の男女がダンジョン内で、一ヶ月以上一緒に旅をしていれば親しくもなる。
そう! 親しくなって当然なんだ。……そう最近の俺は宵宮さんに甘くて、ものすごく彼女を意識している。……ような気がする。
「コホンッ! 俺たちの目的は変わらない。渋谷ダンジョンの再踏破」
「そうですわね。それにはまず、海エリア200階層を抜けて次の峡谷エリアへと進まなくてはいけません」
「うん。バルザロッサさんの件で199階層までには簡単に行けると思う。厄介なのは最後。人魚のアリアを裏切った「サンゴ」討伐だね」
「今回も相当レベリングしなければいけないんでしょうか? バルザロッサさんが味方ならば、あの方の部下であるモンスターもこちら側に付きますよね?」
「……それはあまり期待しない方がいいかな。今の渋谷ダンジョンは変異した二周目のダンジョン。なにが起こるか分からないからね。自分たちの戦力だけで、水エリアの推定ラスボスであるサンゴに勝てるように準備しておかないといけないよ」
「了解ですわ。私、天照さんのために頑張りますわ!」
「うん、ありがとう。宵宮さん」
自然と見つめ合う俺たち。……なんだろう。このなんとも言葉にしづらい雰囲気は……幸せ空間ってやつかな?
◇
そして、翌日の151階層。
「放てえぇぇ!! 勇敢なる海の海賊たちよ!!」
【【【了解です!! 船長!!】】】
ドガアアアアアアアアンン!!!
【ギギギイィ!?】【グギャアアア!!】【ゴキゴ……】
俺たちが乗る魔道潜水艦の周辺には、骸骨男や腐魚人といったモンスターたちが乗る幽霊海賊船が、何隻も海底を泳いでいる。
「まさか、こんな多くのダンジョンモンスターとダンジョン攻略するなんて、長い探索者経験で初めての体験だよ」
「皆さん、やる気に満ち溢れてますわね。……それに、どうやら同じ仲間扱いなので、あの方たちが野生のモンスターを倒すと、勝手にレベルアップしますわ」
〖ウムッ! 苦しゅうないピヨップ!! どんどん倒して我らのために馬車馬のように働くピヨ〜! モンスター共!!ピヨピヨピヨピヨ〜!〗
スザクは日の丸扇子をどこからか取り出して、いつもの謎の舞を喜びながら踊っている。
「なんという外道発言なのでしょう。こんな雛鳥が渋谷ダンジョンの主だから、モンスターの反乱が起こるんですわ」
〖ピヨ〜! 聞こえているピヨップ! 小娘〜! いつもは温厚な我でも、今の発言は流石にブチギレピヨ〜!〗
「まぁ、私は事実を言っただけですわ。外道鳥さん」
〖ピヨ〜! 許せないピヨップ!!〗
「〖─────!!!〗」
宵宮さんとスザクがいつものじゃれ合いを始めた。
「………ふむ、天照たち。昨日はゆっくり休めたようだな。良かった」
【バルザロッサ船長。あんなガキ共が助っ人なんて大丈夫なんすか?】
【仮死状態で契約なんて、リスクデカすぎません?】
【人魚姫様は心配ですけど。サンゴ野郎の配下モンスターまで倒したら、負けた時俺たちアクアスライムに変えられて甦る気しかしませんよ】
「………それでは、なにもしないでサンゴの傘下に降るか? 下った瞬間、奴に喰われて渋谷ダンジョン内で復活することなく、本当の死を迎えることになるぞ」
【ひぇ! それはいやっす】
【……頭がイカれてるサンゴの野郎なら、やりかねねえな】
【アクアスライムに変えられるより、嫌ですね】
「………なら、さっさとサンゴの配下たちを倒し続けよ。各階で殲滅しながら、残りの艦隊と合流し、アリア様をお救いしに行くのだ」
【【【アイアイサ〜! バルザロッサ船長〜!】】】
そんな様子を俺は魔道潜水艦の窓から見つめていた。
「バルザロッサさんの配下モンスターはすごいね。皆普通に意志疎通ができるなんてさ」
〖ピヨ。この渋谷ダンジョンでは、長として率いているモンスターの知略が高いと、その配下のモンスターの知略も少し上がるピヨップ〗
「へ〜! 渋谷ダンジョンにそんな秘密があるんだね。それは知らなかったかな」
〖……ただ、今回の渋谷ダンジョンは反転したせいなのか、すごく変ピヨ。異質ピヨップ〗
「変?……もしかして、それは『太陽宝玉』が渋谷ダンジョンから失くなったからかい?」
〖ピ……分からないピヨ。分からないピヨが。嫌な予感はしてるピヨップ。陽光と小娘が、この反転した渋谷ダンジョンを踏破してくれないと、渋谷ダンジョンに大変なことが起こるかもしれないと、主の我は思ってるピヨ〗
「大変なことですの? それなら、今まさに起こってますわ。それは雛鳥が変な舞を舞っていることですわ」
〖なんだとピヨップ!! 我は久しぶりに陽光と真面目な話をしてるんだピヨ! 邪魔するなピヨップ。小娘〗
「それならば、普段から私と天照さんのダンジョン攻略の話し合いに参加して下さい。……ほらほら、辛気くさいお話はここら辺でお仕舞いですの。休憩室で休んできなさい。雛鳥」
〖な、なんだピヨ? 小娘が今日はなんだか優し気がするピヨップ〗
宵宮さん。
渋谷ダンジョンのことで落ち込んでいるスザクを気にして、休ませてあげようとしてるのか。
優しい心遣いだな。
「そうだね。スザクも長い潜水生活で疲れてるだろうし。眠ってていいよ。次の安全地帯に着いたら起こしてあげるからさ」
〖陽光まで……分かったピヨップ。お言葉に甘えて、ちょっとだけ眠らせてもらうピヨ。ありがとう、小娘、陽光〜! ピヨピヨピヨピヨ〗
……こうして、俺たちはバルザロッサの力を借りながら、一気に渋谷ダンジョンの195階層まで上って行き。
道中で、バルザロッサの配下モンスターと合流。モンスターを倒しながらレベルアップを重ねて、対サンゴ専用の装備を揃えて、水エリア最後の戦いに挑むことに備えることにしたんだ。
◇
天照陽光
レベル656
エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術(免許皆伝) 鳴神自在
スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物 瞬動 調伏(初級)
火魔法(特級)雷魔法(上級)
土魔法(初級)
宵宮カノン
レベル654
エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻賢母 最愛慈愛
スキル 福音 補助 天幕 結界
水魔法(特級)風魔法(上級)
回復魔法(上級)
スザク(不死鳥の雛鳥)
レベル8
スキル 隠密 物真似 治癒 変身
バルザロッサ(仮調伏及び仮死状態)
レベル消滅済み
エクストラスキル アリアの守護者 正す者
スキル 海賊船 操る物 海底の支配者
◇




