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第20話 150階・バルザロッサの頼み

「〈水鎖縛ウォーターチェイン〉天照さん。縛りあげましたわ。止めをっ!」


「うん! ありがとう。宵宮さん!」


 現在、150階層。


 フロアボス「海底船長バルザロッサ」戦。


 終盤。


「なぜ、そんなに無抵抗なんですか?」


「いいから………心臓をちゃんと狙え」


「つっ! 〈雷撃刀ライトニング・スラッシュ〉」


ドスッ!


 バルザロッサの心臓に向かって、雷撃の刀を深々と刺した。


 俺たちが150階層に着くなり、戦闘開始。


 彼は最初の攻撃をして以降、俺たちになんの攻撃もせず俺たちに敗れた。


「………よし。海底海賊バルザロッサはこれにて死んだ。少年よ。「調伏」スキルは使えるな?」


「は? なんでそれを貴方が知っているんですか?」


「カグチ戦で見た。……それを使って、それがしに仮の調伏をしてくれ……急がないと仮死状態にもなれずに死ぬ」


 フロアボスモンスターからの懇願こんがん。意味が分からない。


「…………」


〖ピヨ。我からもお願いするピヨップ。陽光、バルザロッサは水のエリアの守護者。なにか深い理由があるんだピヨ〗


「裏切り者の不死鳥フェニックス様」


〖誰が裏切り者ピヨップ!! お前たちが我の許可なく勝手にフロアボスとして復活したんだろうがピヨ!! 陽光! やっぱり、こいつは悪しきモンスターピヨ! さっさと止めを……〗


スキル発動────「調伏(初級)」


〖ピヨ~? 我の話をなぜ、さえぎるピヨップ? 陽光〜!〗


「え? 本当に死にそうだったので、急いで「調伏」スキルを使っただけだけど。なにか言った?」


〖……なんでもないピヨ。陽光のスルースキルは高過ぎピヨ。冗談が通じない時がありすぎるピヨップ〗


 スザクが落ち込んでいる。

 バルザロッサを救ってほしいと、スザクが言っていたから救ったのに、なんで悲しいんでいるんだろう? 情緒不安定かな?


「…………ふぅー、これで延命措置はできたか。助かったぞ。仮の主」


「それで? なんで一方的に俺たちに倒されたんですか? バルザロッサさん」


「………原因はあれだ」


「あれ?」


「私ですの?」


 バルザロッサは、水魔法で〈人魚姫マーメイル〉になっている宵宮さんを指差して告げる。


「渋谷ダンジョン200階層は乗っ取られた。175階層のフロアボス「サンゴ」によってな。そしてアリア姫の力は、そこの娘へとサンゴの能力によって《《強制的に譲渡され》》たのだ」


「乗っ取りに譲渡ですか?」


「意味が分かりませんの。急展開過ぎますわ」


 うん。宵宮さんの言う通り、急展開過ぎて本当に意味が分からない。


「………カグチとアリアは親友同士でな。499階層て会議か終わった後、もしもカグチがピンチになった時に駆けつけるとアリアは言ったんだ」


 ……アリア。たしか、水の五大厄災の一体。


 カグチのピンチに駆けつけるか。

 それが本当だったら、2人同時に相手にすることになったわけか。


「………さらに激怒したのがサンゴでな。言い争いになったのだ。そして、油断しきっていたアリアはサンゴに負けて廃人化。力の大半を奪われ、「人魚姫マーメイル」の力も奪われそうになった時に、アリアは最後の力を振り絞って下の階層へと飛ばしたのだ」


「その力が私の中に逃げ込んで、私の中で原初オリジンの魔法に変化したんですの?」


「それで廃人化したアリアさんは、裏切り者のサンゴの操り人形になり、水のエリアを乗っ取られたというわけですか? それを俺たちを利用して解決したいと?」


「理解が早い子供たちで助かる」


 

 あり得ない話ではない。

 ダンジョン内では、知能が高いモンスター同士の小競り合いや、支配地域の主導権争いが日常茶飯事と聞いたことがあるとか。


 それに渋谷ダンジョンの「五大厄災」のどれかの力を手に入れば、担当フロアのボスとして君臨し、思うままに生きていける。


 あの傲慢な性格のカグチが良い例かな。


「……どうされますか? 天照さん」


「俺たちは各フロアボスを倒して、転移門ゲートを潜れればそれだけでいいからね。ダンジョン内の小競り合いに構っている余裕はないかな」


「そう……ですわよね」


 探索者はダンジョン攻略ができれば良いだけなので、通過点でしかない100〜200階層のフロアのモンスター関係に関わるメリットがない。


 それに、もしかしたらバルザロッサのお願いが罠だという可能性も残っているわけで。


「申し訳ありませんがこのお話は……」


〖任せるピヨップ! バルザロッサ!! 我ら、クラン「スザク」が貴様のお願いをささっと解決してみせるピヨップ!!〗


 は? ちょっと、スザク。なにを勝手なことを言って……


「お、おお!! 本当か? それは助かる。人魚姫様を……アリア様を……助けてくれ。感謝する……ありがとう……ありがとう」


〖任せるピヨップ! 全ては我の主、陽光が華麗に解決してみせるピヨ〜! ピヨピヨピヨピヨ〜!〗


「感謝する……本当にありがとう。裏切り者の不死鳥フェニックス殿」


 スザクの両手を持ちながら、膝を着いて涙を流すバルザロッサ。


「モンスターの罠かもしれないんだけどね。こんなの見せられたら承諾するしかないね」

「ですわね。雛鳥の勝手な判断ですが、バルザロッサさんの真摯しんしな姿を見せられたら、断ることもできません」 


 こうして、俺たちはバルザロッサのお願いを聞くことになったんだ。






 数時間後、バルザロッサの大泣きはやっと収まった。


「………少し感情的になってしまった。すまない」


「少し!? すごい泣いていたような」

「そうですわ。両目から涙が滝のように流れていましたわよ」


「………気のせいだ。それよりも、それがしのお願いを引き受けてくれたお礼をまだ話してなかったな」


〖お礼ピヨップ? なにかお宝でもくれるのかピヨ?〗


「………うむ、そうだな。199階層までの安全な航路及び、某が持つ海底大艦隊を味方に付けさせよう。渋谷ダンジョン水のエリア限定だがな。勿論、君たちのレベリングも手伝うつもりだ。各フロアのモンスターやボス戦にも仮参加し、サポートする」


「それは……」

 

 なんという破格な対応だろう。

 「海底船長バルザロッサ」は、『人魚のアリア』の右腕的存在。


 そんなネームドモンスターが俺たちの味方になって、一緒にダンジョン攻略をしてくれるとなると、200階層までのダンジョン攻略がかなり楽になる。


「それで? 私に宿った「人魚姫マーメイル」はどうしますの? 奪い返したりしませんの?」


「……いい。その力は貴殿を主と認めたのだ。これから上手に使うといい」


「そう……ですか。感謝致しますわ」


「うむ。それよりも、今は憎きサンゴの討伐だ。あいつがアリアと200階層を占領しているせいで、アリアはモンスターとして死ぬこともできず、復活することができないのだ。サンゴから解放されれば、アリアは再び「人魚姫マーメイル」を発現できる。彼女の解放が重要なのだ」


 ……モンスターはダンジョン内で死んだ場合、時間はかかるけど生き返る可能性がある。

 

 ただ、なにかの理由で捕まっていたり、仮死状態にあると、なにもできないまま自身の能力を他のモンスターに利用される時があるとか。


「サンゴというモンスターは、『人魚のアリア』の力を《《生かしたまま》》使いたいんですね?」


「………そうだ。サンゴの奴は、アリアが持つ「ダンジョン移動」のスキルを使って、この渋谷ダンジョンを自身の所有物にしようと企んでいるのだ」


天照あまてらす陽光ようこう

レベル595

エクストラスキル 陽ノ神楽 天照剣術 鳴神自在

スキル 模倣 巾着袋 心眼 業物 瞬動 調伏(初級)

火魔法(特級)雷魔法(上級)

土魔法(初級)


宵宮よいみやカノン

レベル594

エクストラスキル 豊穣ノ知 良妻 最愛慈愛

スキル 福音 補助 天幕 結界 

水魔法(特級)風魔法(上級)

回復魔法(上級)


スザク(不死鳥フェニックスの雛鳥)

レベル8

スキル 隠密 物真似ものまね 治癒 変身


バルザロッサ(仮調伏及び仮死状態)

レベル消滅済み

エクストラスキル アリアの守護者 正す者

スキル 海賊船 操る者 海底の支配者

 





◇◇◇


 200階層ボスフロア『アリアの劇場』


「バルザロッサの奴、殺られちゃったのか〜! やっぱり復活しても威勢いせいだけの雑魚ざこだったね〜! 弱っ!」


【…………くすくす……くすくす……私は笑うことしかできない人形……くすくす……】


「アハハ、だいぶ壊れてきたね。アリア様〜!……でもさ。壊れるまえにアンタの全てのスキルは頂くよ。だってボク、この渋谷ダンジョンの新しい王様になりたいからね。クスクス〜!」



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