定期演奏会が全部アジアの作曲家かあ。
そんな未来も遠くない。アジアの作曲家ばっかりやりつつあるせみころーんさんですどーもーとってとっててとてとてとて。
今日は進境著しいPiyawat Louilarpprasertさんを紹介します。
Louilarpprasertさんについては特段の説明が、もはや不要であるかと思われます。アジアで認められたのちにロシアのスロニムスキー作曲賞で第一位、そこからあらゆる国際作曲賞を総なめにしており、来日実現も遠くないでしょう。イギリスで藤倉大に学び、これからがとっても楽しみな方です。2020年代は彼の時代になるでしょう。2019年7月現在はイギリスを離れ、アメリカのコーネル大学の博士課程にいます。
silhouette。わからなくない。アジアの作曲家に多い、書式の不備、というものが全くないことに驚かされる。こだわりだけで全部押し切る体力もあってどこも元気いっぱいだが、楽器の数が減ると、やや説得力が減じるシーンもあり、ピアノの扱いには苦戦していた。
Pixels。もうアジアだからこう来るんだろう、などという思い込みは古語になるのかもしれないと思わせた一曲。オーケストラの扱いも既に手馴れており、半音階進行が入ってくるあたり良く響いて面白かった。リズムが四つ割りを好むのも、師匠からの影響かと思わせるが、マウスピース奏法だけで語ってしまうセンスは彼ならではのもので書き損じは見られない。
アジア人でこれだけレヴェルの高いサックス協奏曲はポール・チハラ以来ほんとに久しぶりで、残るべき才能だと確信している。
Poem of Souls and Cremation。タイ楽器を使っているが、それなら西洋楽器も7平均律でやる根性がどこかにあるとさらに高くなっただろう。サックスの多用が目立つ。強い音でも割れないのが素晴らしい。(強音になるとつい意図しない割れが目立つ作曲家が多い。)オスティナートになると、なんとなーく西村朗風になるが、音色が全く違う。
Hacked, Stressed, Terminated。木山光の影響は全世界に及んでいるが、これもその一つである。微細音ばっかりになっていた1990年代の反動というものはもはや珍しくもなんともないのだが、この反動に追従するアジア人はさほど多くない。ヨーロッパのダルムシュタット系の雑音が何となく上品に入ってくることが多いのに対して、こちらのほうが獰猛である。どちらをとるかというと、僅差でこっちをとりたい。
play...hack。かつてアメリカに渡る作曲家は、アメリカの保守的なアカデミズムに屈さなければならないタンドゥンが勉強していた古くよくない時代があったが、ジョン・ケージ没後そのようなことはもはや起きようがない。アジア人だろうが、平気でエレクトロニクスを使う。即興的な音色センスはやはりアジアのもので、ヨーロッパ人だとこのように繊細に組み入れることは難しい。
P(l)ay your Sin in Hell。彼は副科でトロンボーンを吹いていたことがあり、吹き物は弦楽器に比べてうまい。この使用法ならギターではなく別の楽器を使ったほうが、と一瞬迷ったが、やはりギターでしかこれは達成できない。タイの楽器ではないカヤグムやアエジャンの奏法を豊かに生かした秀作に映った。
Illegal。クリスチャンロバが開拓した奏法に拠っているが、響きの空間がロバよりも断然広い。重恩奏法もあまり成功しない例が多い中、よく健闘した。この作品はぜひ別の団体の演奏で聴きたい。日本の団体でも普通に吹けるはず、と思ったが、ところどころ演奏困難なシーンもある。ティースノートが非常に痺れる。
Tango。ハープシコードでこういうことをやる人にルーマニアのミレアヌがいたが、ミレアヌとは違って響きはくどい。これも奏者が優秀ならどう演奏が変わるのか聞いてみたい。中盤からがかっこいい。
from inside...Aristotle。最も印象が良かった作品。自作自演なのだが、ミュートの中に異物を入れており、それを攪拌するシーンは強烈で、グロボカールやフルカーソンの両氏にもみられないものであった。この異物が、弦楽器のコル・レーニョと相性が良く、思いついた時点で彼の勝ち。文句のつけようがなかった。
Ungezogenes Kind。この曲も雑音奏法。ただし、記憶に残ったのは微分音を使用した後半。
4.32’。タイトルがいいよね。こういう演劇的なセンスのある人物が詰まらなくなるわけがない。途中でくそみそテクニックの登場人物が出現したことに驚いた。日本のオタク芸は世界中に拡散している!
“NONE” (Sound of Kingdom)。ヤング的に始まるが、すぐ金属雑音にとってかわるあたりが彼の味なのだろう。
以上ざっと見渡しても、習作レヴェルだから聞くに値しない、なんて作品が一曲もないことがすごいですね。横の辛口ころーんさんも、この水準には絶句しておりました。アメリカ合衆国の大きなオーケストラで彼の名を見ることは間違いがないでしょう。




