マレーシアと、マレー系中国ってのは、やっぱちがうのかなあ?
昨日のアジアの作曲家の出来のよさに気をよくしたせみころーんさんですどーもーーーとてとてとて。
今日は引き続きアジアの作曲家、マレーシアのYii Kah Hoeさんを紹介しようと思います。
Yii Kah Hoeさんは1970年生まれ。マレーシアというとKee Yong Chongの華麗な成功があるので、マレーシアの作曲家はつい多くの人材が隠れがちになるのですが、このYii Kah HoeさんはChongとは別のよさのある人です。
頭角を現したのはやはり21世紀に入ってから。
中国本土の発想法と近いが、やはりどこかが違っていて、インドネシアやベトナムあたりの音色感に近い。
Opening of the Stageも一聴して、やはり先輩タン・ドゥンの影響は隠せないが、途中からタンとは全く異なる世界を見せつけてくる。オーケストラの書法は伝統的だが、響きは獰猛で食いつきが良い印象。
The Green Walk。やはりマレーシアも書式のアカデミズムがあるのか、ゆったり入ってからいきなり盛り上がるのは何人かのマレーシアの作曲家に共有されているようだ。
Bayang。普通に中国楽器アンサンブルのアカデミズムをそのまま参照している。日本の吹奏楽に近い。しかし、スライディングトーンのセンスは全くもって日本にないもので、その点だけは面白かった。
Inner Voices II。普通に日本の尺八奏者のレパートリーにしてもらいたい作品。直球勝負で集中力は高い。旋法的な感覚の差を思い知らされた。
Wild Cursive。出世作。ヴァイブの使い方は普通で驚くことはない。途中からは弦楽器群はかなり忙しそう。密に書き込まれている箇所は感心した。疎の瞬間にも気を配ってくれるとなおよかった。
ここまで眺めてみて、アジアの作曲家は普通に自然音のエンヴェロープを、直輸入してるんだなってのがよくわかるんですよね。それを抜けたからトータルセリーが生まれたんですが、なかなかセリー的な受容はアジア系に難しいものと考えられます。
マレーシアも、やはり良くも悪くも民族主義が顕著で、Tazul Izan Tajuddinさんも日本デビューの時はバハサマレーシア語を使用しておりました。民族的なものがバックにあります、というとそれでまずは第一段階は通過、そんな時代がまだあったんですよね。
で、このYii Kah Hoeさんもマレー的自然がバックにあるかもしれないけれど、Tajuddinよりは抽象化された結晶に興味があるのか、音が停滞するんですよね。TajuddinのVN曲は獣のように吠えまくっておりましたが。
これらの民族主義を東南アジアが脱した時に、何か面白いことが生まれるかもしれない。そういうのをマレーの若手全員に感じます。
さてとつづきつづき。
Reflection。Gehuって楽器を私はあんまりよく知らないのですが、これふつうにチェロ8重奏にしたら流行るんじゃないか?「チェロでも変わらんやろ」と横のころーんさんが突っ込んでました。普通に西洋楽器のようにハーモニクスグリッサンドを使っている。後半のほうがせみころーんさんの好みです。
Cheers。個人的に大変面白く聴きました。アントニオ・ツィメルマンが電話を使ってたのに近い。微細な音色効果はやはりヨーロッパ人ではなく、ヨーロッパから離れた人物のほうが得意なのは間違いがない。
赤道雨林。Ruanも西洋のギターで代替されることが多い楽器で、この書式だとギター四重奏でやっちゃう人がいるかもしれない。音の選び方が鄙びているのが印象に残った。ハ長調なのか、ハ調なのかよくわからなくなる瞬間が面白い。
Buka Panggung。これはどうやっても西洋楽器オーケストラには置換できない。こういうものを使うと格段に冴える。勢いで書いちゃってるシーンもあるが、彼にとっても誰にとっても良い音響の連続。
Echoes in the Mountain for Nose。単純な描写の音楽、かな、と思ってると現代的な描写にとってかわるあたりが彼の売りなのだろうと思われる。マレーシアが近代化に要した時間はどれくらいだったか、日本の倍を超えたのではないか?でもそんなことを、今、誰もが悩まなくていいのだ。日本人よりもよっぽど音楽性に富んだ曲を書いているではないか。
ざーっと見渡すと、Kee Yong Chongより生臭く攻めてくるあたりが彼の個性なんだろうと思います。Chongは1990年代にベルギーに渡ってしまったので、中国楽器のアンサンブルで売りこむことができなかったんですよ。しかしYiiさんは最初から西洋楽器と中国楽器の両刀で育ち、なおかつ自力でヨーロッパにまでたどり着いた。この辺の受容の差はあるみたいです。
実はYiiさんは2017年に来日経験があるのですが、名フィルあたりが彼に正式に委嘱をするべきですよ。




