かつてのピアニストはトレードマークなるものがあった。
そういや、最近のピアノ弾きはそんなことあるんだろうか?と冷静になってしまったころーんさんです。一昔前はバッハ弾き、ショパン弾き、ベートーヴェン弾きといわれて活動していたのも、もう数十年前の話です。
わたしも今楽譜棚をごそごそと調べてみましたけど、いろんな作曲家がはさかってて何の統一性もありませんよ。
ララモエラーが棚を全部ドビュッシーにしちゃうとか、あのひとはそろえるのがすきですからねえ。
でもほかの4人はそんなことないですねえ。
で。
もうイヴォンヌ・ロリオ先生が亡くなって9年たっちゃいました。もう少しで10年です。
すらあっーしゅさんは「弟子でもないのに先生っていうなよー!彡/(^)(^)」とにっこにこで嘲笑してくるのですが、ほっといてください。わたしはロリオの弟子ではありませんが、「さんづけ」で終わることのできない人です。
ロリオ先生は一般的にはですね、メシアン弾きだといわれています。
本人もそう思ってます。メシアン本人が模する鳥の鳴き声を背景にしたプロモーションヴィデオまで作ってました。
彼女の演奏をよく聞くと、ある時期から急に変わりました。ちょっとふくよかにべたっとした音へ。この経緯はすらあっーしゅさんが仕入れてきたアーメンの幻影の6枚組SPセットに、その兆候は表れているのですが、78回転時代はさほどメシアン弾きで徹底してたとは思えません。
ところが、旦那の株がものすごい勢いで上がる、世界に誇れるレヴェルまで行ってしまう、世界中から弟子が集まるといった事態に発展し、メシアン弾きとしての立場を捨てることはできなくなっていきました。
そのメシアン弾きになるまで、べたついたバターのような音になるまえ、彼女はどんな演奏をしてたでしょうか?
写真を見ればわかりますが、先生はもともとかなりスマートな方でした。
つまり
スマートな人がピアノを弾けば、太った方よりもシャープな音が出るはずです。先生も、シャープな音の時代があった、ことがついに分かったんです。
VEGA録音全集1956-1963のDisc2には、なんとリストのピアノソナタロ短調があります。先生がこれ弾いてたんですよと言っても、ほとんどのロリオファンには想像できないかもしれません。Vegaにいた時代は7年弱ほどでしたが、事務所の命令とは思えないものを次々と吹き込んでいます。
このリストのピアノソナタ、今の人はロリオ先生のこの演奏をどう思うのでしょうか?
あと、ここを見てるなろう読者もこれを聴いてどう思うでしょうか?
、、、
率直に申し上げますと、「意外にも過剰な表情付けを行わず、さっささっさ進んでしまって、これでいいの?」って印象の方が多いと思います。もちろんリストの楽譜通りにあっという間に終わってしまうSiki Belaさん(せみころーんさんはこの人の話をすると止まらないそうです)ほどではないですが、それに近いくらいです。
もちろん30分なんて余裕で切ってしまい、28分50秒。
編集はやはりやってたみたいで、途中でおかしな切れ方のところがあったから、そこは切り貼りだったんでしょう。でもそういう編集行為があろうがなかろうが、解釈としては実に正統派。
なるほどなあ、こうやって弾けばプリミエ・プリだったのかなあ、とか考えちゃいました。優等生の演奏ですよ。ちょっと編集の切り貼り中に残っちゃったミスタッチもありますが。
で
これを聴いてて思うのは、「ロリオ先生の時代のほうがあっさり済ましてしまってもなんも言われんかった」ということです。
今のリストのピアノソナタの流行りの演奏は、とかく後期ロマン派みたく感情過多で、何を言いたいのかわからないほどにまで引き延ばされちゃってる。そうなると、みんなそれをなぞっちゃうんですよねー。
Disc6に収録されたブーレーズのピアノソナタの二番、バラケのピアノソナタ、ベルクのピアノソナタ、全部コントラストはほとんどつけない。さっさと指だけで弾いてしまう。バラケに至っては40分を切っています。
こうやってバラケのソナタを弾かれると「ハンマークラヴィア級の」なんて形容詞は不要だったんじゃないかと思うほどです。バリフのオルガンソナタ程度の密度でしかありません。さらっさらです。
せみころーんさんは「安川加壽子さんはこのひとになりたくて、なれなかったんだ」と言ってますが、同感です。おそらくロリオがショパンの舟歌を弾いてもあっさり6分で終わっちゃったんじゃないでしょうか?
ただあ、、
「リストのピアノソナタをこうやって弾くのは、へいおまち!って寿司を一貫だけ出すのと一緒で、片方でも食えないことはないが、やはり一度の注文で二貫はいってなあかんのやっ!」という超弩級表現志向のすらあっーしゅさんの原理主義には私はついていけません。
でも
すらあっーしゅさんとせみころーんさんは二人そろって「ロリオにはアルベニスのピアノソナタを入れてほしかった!絶対に名演間違いなしだったのに惜しいっ!」って言ってまして。これはわたしもなあるほどなるほどと感心してしまいました。




