80話 下
【射出】
自身にかかる重力や、運動ベクトルを操作する魔法。
いつもの先制攻撃。
いや、先制ではないか…どちらかというといつも後手に回っていふ気がする。
もともと小さい湖だ。一瞬で距離を詰めて手刀による突きを放つ。
「ちょっ、はやっ!?」
「な!?」
勇者シロは腰にかけていた刀のような武器を抜き去り、武器の中心で受け止める。
突きの直前に指を魔力で覆ってガードしているためこちらにダメージはないが、受け止められるという予想外の展開に一瞬固まる。
「おや?スピードタイプが動きを止めたら終わりだよ?」
「くっ!」
刀や翻して勇者シロがこちらを斬り返してくる。
体を引っ込める事で一撃目は回避する
「あら?今の避けるの?」
勇者シロは首を傾げながらニ撃、三撃と斬りかかってくる。
【体内加速】による体感時間を加速させる事であえて距離を取らずに近距離で回避し続ける。
「俺の攻撃が当たらない!?なら…」
「させない!」
刀を上段に構えてスキルを放とうとしてくる。
そんな明確なスキを見逃せるほど僕は甘くない。
直前の回避した時の体のひねりを生かして相手の腹を突き飛ばすように蹴りを放つ。
案の定、蹴りによる吹き飛ばしにより相手は体勢を崩す。
こちらは蹴った反動を使い一度下がる。
「【絶刀・三ツ葉斬撃】」
無理な体勢から放たれたスキルによる斬撃は幻によ刃が三つに分かれて先程まで僕がいた場所を襲う。
斬撃は地面に直撃し大きな水しぶきを生み出す。
一瞬、お互いの視界が途切れた事を利用し一気に距離を詰める
【体内加速】による吹き上がる水を目であいながら右側から回り込むように距離を詰める。
「【絶刀・二連斬撃】」
「え?」
右手に魔力を集めて攻撃を仕掛けようとした時に、水しぶきの奥から斬撃が放たれる。
完全に予想外。
だって上段から地面に刀を振り下ろしているのだ。
明らかに追撃できる状態じゃなかった。
斬撃により一気に水しぶきも払われる。
さらに斬撃は終わらない。
振りきったはずの刀が再度振られる
これ以上の長時間ほ【体内加速】の使用は魔力残量的に厳しくなる
もう一度勝負を仕掛ける為に右手でためた魔力を使い一瞬、手のひらサイズの防御壁を生み出して斬撃を奥に流す。
斬撃自体は大した威力もなく問題なく受け流せた。
そのまま腕を前に突き出し勇者シロにひっかくように触れる
【体内加速】【重力魔法】
さらに自身の加速を早める。すでに周囲の16倍。
そして触れた相手にかかる重力を増加させる【重力魔法】を発現。
勇者も倒れこまないように必死に耐えるが、さらに【重力魔法】を重ねがけしていく。
【体内加速】は自身のみにかかる魔法だ。自身から離れない物に対しては発動されない。
例えば僕が勇者にかかる重力2倍にする魔法を10秒間発動さるとする。
そには5秒詠唱が必要だとする。
通常の状態では5秒間の魔法詠唱後に再度詠唱しても5秒かかる為、同じ魔法を重ねがけしようとしても効果は5秒間しか続かないし、この状態の場合2倍×2倍で4倍の重力を乗せることしかできない
(まぁ、それでも今日はだけど)
しかし、僕は【体内加速】×16倍を使用している。
単純にだが他の人が5秒間詠唱する間に16回も同じ魔法が放てる
そして魔法による効果は僕の体内から離れる為に
現実時間として効果が適用される。
つまり触れられた瞬間なら体を押しつぶすような力が全身にかかるのだ。
触れられたは回避不可能……の、はずなんだけど?
「【バースト】」
勇者から強力な魔力爆発が起きる。
やられた。空気中の魔力は吸収されるから魔法による攻撃はないと思い込んでいた。
一瞬で消える魔力もその発動の瞬間は確かに存在する。
正直効率はよくないし、射距離も短い。
しかし魔力の衝撃波は全方向に放たれた。
ほぼゼロ距離だった為回避不可能だ。
気がついた時には不可視の魔力の衝撃波をくらい僕は思いっきり突き飛ばされ空気中にいた。
空中で体勢を整えながらもなんとか湖に着地(激突)する
「休ませませんよ。【瞬地】【絶刀・三段突き】」
なんとか起き上がるが、
一瞬で距離をつめられ手に持つ刀による突きが目の前に迫る。
「【手刀 一閃】」
手刀にやる武技を発動させて右手で1段目の突きの軌道をズラして直撃を回避する。
勇者シロは突きによる伸びきった体勢を、まるで巻き戻しているかのように腕を引っ込め、引っ込めた腕に再度体重を乗せ突きを放つ。
そういう事か、僕の【体内加速】のように自身の体内に魔法をかけているのか…
先程被弾したこので解けてしまった【体内加速】を再度発動させる。
【体内加速】×4倍
突きの速度が目に見えて遅くなるのを感じながら、無理やり仰け反った体勢を元に戻しつつ、左手に魔力を集める
「【物理障壁の陣】」
自らの左手に魔法陣を描き突きを受け止める
【体内加速】を使用した自分の体に魔法陣を書き込む事で時間差による通常よりも強力な障壁を作り出せる
「「くっ」」
そこで初めて勇者シロの顔を見る。
美少年…とまではいかないがごく一般的な男子の顔だった。
でもどちらかといえばイケメンなのかな?
白髪がやけに似合っている。
勇者シロは攻撃を突き通せなかった事に苛立ちを覚えたのか顔を歪ませる。
こちらは思ったよりも突きの威力が強く、一撃で魔法陣が砕けてしまった。正面からではなく、角度をズラすようにして受け止めた事でなんとかなった。
しかし勇者シロの武技【絶刀 三段突き】はな 名前の通りなら後一回突きが来る。
それに備えて【体内加速】をさらに発動させる
相手の動きが遅くなるのを確認しながら体勢を整える。
予想通り勇者シロは魔法による無理やりの挙動で刀を引いて再度突きを放ってくる
すでに恐るに足らず
16倍まで加速された状態で相手の動きをしっかりと確認すれば何も問題はない。右手に魔力を集めて先程と同じように【魔力障壁の陣】を発動させる。
時間差による強度は先程よりも高くなり問題なく耐えられるだろう。
そう思いながら突きの角度をズラす為に手を前に出す。
狙うのはカウンター。
右手で軌道をズラして左手【手刀】を発動させて勝つ。
………
予定通り相手の突きを右手でいなし、そのまま距離を詰めて左手で【手刀】の発動を準備する
もらった。
その瞬間、なぜか勇者シロは笑っていた。
いや、ニヤついていた…うん、この表現の方がいいかもしれないな
なぜ?
その答えはすぐに出た。
「《マジックキャンセラー》」
気がつくよりも早く、僕の体は後ろから突き刺さされていた。




