77話 横断
「まだ着かないんですかー?」
「まだですよ。さっきから何回聞くんですか?」
「いやー。そろそろって言うのに全然つかなからじゃないですかー」
「そろそろですよ。もう少し待っててくだいね。」
「はーい」
僕らが馬車の旅を始めてからすでに3ヶ月以上が経ち、
地図の上ではそろそろ着きそうなのだが一向にそれらしい景色はない。
木々が生い茂る中でひたすら道沿いに進む。
分かれ道も無かったし道を間違えるって事はないと思うのだが…
「魔法が使えれば空を飛んでみてくるんですけどね」
「そうですねー。……あ」
「ん? パフェさん?どうしましたか?」
なんだ?何か思いついたのか?
朗報だと良いんだけど…
「こういうのはどうでしょうか?」
「お断りします」
「な!? まだ何も言ってないのに!」
いや、このパターンはどうせ僕の事を投げて周りを確認してみれば…
みたいな内容でしょ?
やだよそんなの…
「ソラ君が、私の事を空に放り投げてもらおうと思ったのに…」
「そっちですか!?」
「え?」
身長差20センチ以上。
もちろんパフェさんの方が高身長…
どうやって投げらろと?
「てっきり僕が投げられるのかと思いましたよ」
「女の子相手にひどい!」
「いや、…女の子って歳じゃないでしょう…」
「うっ…」
「それに、パフェさんには鬼人パワーがあるでしょう?」
「まぁ、確かに……投げられなくはないですね」
ほら見ろ。できるじゃねーか
「じー」
「いやですからね? …」
うわ、両手を広げて近づいてくるよ
「ちょっ、運転中なんだから手を離さないでください」
「じー」
ジリジリこちらによってくる。
なんだよ。来るなよ。
ガシッ!
腕を掴まれた。
「ひぇー!」
「良いではないか、良いではないか」
抵抗するが腕力で無理やり引っ張られる
そのまま抱き寄せられて膝の上に乗せられる
ポヨン
後頭部に膨よかな感覚が…
「パフェさん?」
「ソラ君は良い匂いしますね」
「そうですか?この世界にきてからシャンプーなんてほとんど使ってないんですけどね」
「そうなんですか?まぁ、使っててもすでに旅を始めて3ヶ月ですからね。この匂いはソラ君そのものの匂いでしょう」
「はぁ」
「クンカ、クンカ。落ち着きます」
人の匂いで落ち着いて欲しくないものだ。
匂いを嗅ぐ為に強く抱きしめられて、後頭部にも柔らかいものが押し付けられる。
「ねぇ。私じゃダメなの?」
「その話ですか?旅が終わるまで待ってください」
「むー。こんな美人が誘惑してるのに?」
「それと、これは関係ないですよ」
ほらほら、あからさまに押し付けない
あたればいいってもんじゃないですよ?
僕は触りたいんですよ。モミモミしたいんですよ
って、何考えてるんだ?
(ウケる。これが人間の修羅場ってやつか?)
(引っ込んでろよ)
(ハハハ)
相変わらず【悪魔】は面白そうな時に出てきて
それ以外はどこかにいってる
あれかな?魔界とかあるのかな?
今度聞いてみよう
「街も見つからないし、今日はこの辺で野宿にしますか」
「いやいや、まだ昼過ぎてすよ」
「まぁまぁ」
そう言ってパフェさんは馬車を止めよう…
っとさせるか
パフェさんの持つ手綱を握り馬に止まらないように指示を出す
「あら?私とドライブしたいのね?」
「いや、車じゃないし」
「ふふふ。ホテルはどこかしら?」
ダメだこの人早くなんとかしないと…
「おおー」
「見えましたね」
あれから3時間ほど馬車を走らせると、やっと街らしき物が見えてきた。
チョコ様の国にある街の周りは荒野だったので遠くからでもよく見えたが、ドレイブという国の周りは森に覆われていて近くまでなかなかわからなかった。
厄介なのは街に近づけば近づくほど木が高くなっていることだ。
背の高い木が日光をより多く吸うように葉を広げ、背の低い木が隙間から日光を吸収する為に枝を伸ばす。
結果、僕らが今走っている道はほとんど日が当たらず見通しが悪い。
そんな見通しが悪い道を走っていると遠くで鉄道の音が聞こえてきて
だんだんそれが近づいてくるなーと感じていると
木の陰からいきなり外壁があらわれたのだ。
流石に森の中にある街といっても、木に登られて外壁を越えられたら意味がないので、周囲の木々はすべて切り倒されているようだ。
魔大陸に最初に来た時とは違いきちんとした道を通ってあるのですぐに外壁の歩行者用の入り口を見つけた。
外壁の一部がトンネルのように削られ、鉄柵のような扉で奥に衛兵のような人?が見える。
「やっと着きましたね」
「えぇ、長かったはね」
扉の前に止めて2人とも馬車降りる
衛兵もこちらに気がついたようで数名が扉の向こう側で待機している
ぱっと見そこまで警戒されているようには見えないな…
「馬車とは珍しいな。どこから来たんだ?」
「私達は冒険者でして、東の国からやってきました。」
「おぉ!冒険者か!すまないが冒険者カードを見せてもらっていいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
冒険者カードを手渡してあげる
そういえばチョコ様の国の名前を聞いてなかったけどなんて言うんだろう?
よく考えたら王様の名前すら聞いてなかった気が…
(東の国ってなんですか?まさか国の名前忘れたんですか?)
(ぐぅ)
(ドルツヴァイですよ。ドルツヴァイ王国。ちなみにチョコ様の名前はドルツヴァイ=チョコですよ)
(へぇー。でもほら?ここから3ヶ月以上かかる国の名前を上げるよりも警戒されませんよ?)
(まぁ、確かにそれもそうですね)
(結果オーライ的な?)
(はぁ…)
まぁほら、過去に囚われない的な?
……
嘘ですごめんなさい
「【魔王殺し】!? こりゃたまげた。もしかして勇者様ですか?」
「いえ違いますよ。私達はただの冒険者です。
まだ旅を続けるのですが、この街にやらせてもらってもいいでしょうか?」
「あぁ、それは構わない。大歓声だ。なぁ?」
「おぉ!」
「勇者様とは、すげぇーな」
「こいつは運がいいな」
んー。この魔大陸のシステムがよくわからないな
整理すると…
個人の成し遂げたい思いに魔力が応え、個人に力を与えられた存在=魔王(EXスキル魔王を所持)
複数者達の成し遂げたい思いに魔力が応え、個人に力を与えられた存在=勇者(EXスキル勇者を所持)
魔大陸の国の王=魔王(偶像の存在)
魔王を倒す存在=勇者(国民の希望)
この街の者達に僕が言われているのは最後の勇者という意味なのだろうか?そう言う意味では魔王グリードを倒したことにより僕も勇者の部類に入るのだろうか?
ま、現状でいえばEXスキル【魔王】や【勇者】スキルは持ってないから大丈夫だろう。
「ささっ。勇者様!」
「こちらへどうぞ」
街の衛兵が柵の扉を開けて街の中に招き入れてくれる
外壁の中はドルツヴァイ王国よりも建築物が進んでないように見える
例えて言うなら地方都市見みたいな?
衛兵に案内されるままに街の一角に作られた建屋に馬車を止めて
必要な荷物を回収する
ここからは魔列車による移動の予定なので馬車関連のものは諦めて置いていくことにする。事前に荷物を整理しておいてよかった。
3ヶ月付きあってくれた馬ともここでお別れかな?
んー。特に印象にないな
「冒険者ギルドに立ち寄ってもらってもよろしいでしょうか?」
一通り荷物を整理して外に出ると衛兵2人が待っていた。
特に断る理由もないので承諾して案内してもらう
街並み自体はレンガ造りの建物がいくつもある
少し中世的だが、街灯やお店の中から見える家電?(あとで知ったが魔家電というらしい。そのままかよ)は、人間の大陸よりも進んでいる印象がする
「お待ちしておりました。冒険者様方」
「「はい?」」
こちらもレンガ造りの冒険者ギルドに入ると、
そこでは白髪交じりの年老いた男性と、その男性の左右に若そうな女性が並んでお辞儀している
ギルド長と受付嬢かな?
「どうしましたか?」
「話すと長くなるなりますので個室の方へお越しください…」
「はぁ…」
えー、今夜止まる所も決めてないのに、長話されるのはやだなー
と、思ったが、周りのスタッフや冒険者の顔つきを見ると余裕のなさそうで、深刻そうだ。
ま、最後の馬車で野宿でもいいかな?
個室に通されるとソコは立派な部屋だった。
よくある社長室的な感じ?
机の前にあるふかふかソファーに通される。
ふぇ〜、見た目通りのふかふかさだった。
体全身を包み込むような感覚に襲われる
あー。寝れる。
「待たせたな」
偉そうな人物が部屋に入ってくる
黒髪で右目に眼帯をして無精髭を生やす、ムキムキのおっさんだ。
ギルド長?チンピラ?
「ほう、【魔物殺し】と聞いたから人数の多いパーティかと思ったが2人とは…相当の実力者なのかな?」
「いえいえ、私達は旅の者でその途中でたまたま魔王討伐に居合わせただけです」
パフェさんが返答してくれる。
どうせ僕が答えたってボロが出るだけだと思うので素直に様子をみることにする。
「たまたまとなぁ?それはあれか?魔王グリードか?」
「そうですね」
ありゃ?
パフェさんがあっさり認めた。
「くくくッ。面白いな。
素直に答えるとは…」
「はい。隠してもしょうがないことでしょ?
なら、嘘がバレた時のリスクよりも、正直に話して信用を勝ち取った方が良いと思いました。」
「バレる前提で考えるとは…
その業界に詳しいか、バカか…どにらかな?」
「私は知るべく事は調べているだけでさすよ」
「ハハハハハ。知るべく事か…気に入った。俺の名はグラン。
この街のギルド長をやっておる。よろしくな」
んー。
状況が掴めない。
どう言う事だ?
(この者は【真実の魔眼】を持っています。)
(しんじつのまがん?)
なにそれ?
厨二くさっ!
(この世界には魔眼があるのはご存知ですよね?)
(初耳です)
(ww)
(おい)
バカにされた?
くぅー
(詳しい説明は後でしますが、この者に嘘をついてもバレる。
と、言う事を覚えておいてください)
(わかりました。それで素直に答えたですね)
(そうです。)
「よろしく、お願いします。」
一応返事をしておく…
「おお、そっちの少年がやっと喋ったな。喋れないんかと思ったぜ」
「そんな事ないですよ。」
「そうだろうな。大方そっちのお嬢ちゃんと念話で内緒話をしてたって所だろ?」
「そんな所です。それで?話って何ですか?」
別に騙すつもりは無いが、
馬鹿正直に話をして続けてこちらの手の内を明かす必要も無いだろう
「ん。まぁそうだな。
別に探り合いがしたくて読んだわけじゃねえ
冒険者ってのは隠し事の一つや二つあって当然だからな」
「ははは」
笑ってごまかす
嘘はついていない。
魔眼の効果がどの程度かはわからないが、下手に嘘をついている事がバレた所でなんともならないから問題ないだろう。
「さっそく本題に入るぞ…
実はこの街の周りの魔物が活発化してな…
ギルド長らしい男が説明する。
そこで初めて知ったが、この街はドルツヴァイ王国の最東端にある街、ホルンと言う街らしく、
街から東には広大な森が広がり、森から攻めてくる魔物から国を守る立ち位置らしい。
その森を横断してきた僕らって……
まぁ、それもあってギルド長に呼ばれたらしい
で、最近は北の方で戦争が勃発した影響なのか、森の魔物が活性化してきて対処に追われていたらしい。
魔物退治の依頼かな?
と、思ったがどうやら違うらしい。
最近。
森の魔物を統括する魔物が現れたようで、魔物の攻撃が計画的になり対処に難しくなったそうだ。
すでに4名の冒険者に死者が出たらしく、そのうちの3名は女性冒険者らしく発見された時には息はあったが悲惨な状態で自らの意思で生きることをやめたらしい
けしからん。
と、ここまでが前振り。
「正直、お前らが魔物を統制している魔族じゃないか?」
「違いますよ」
「そうですね、私達はではないです」
疑われてしまった。
まぁ、そりゃそうか…
「そう……か…うん。どうやら違うらしいな。
わかった。疑ってすまなかった。」
「いえいえ」
さっき一瞬目が赤く光った気がする。
今のが魔眼の発動かな?
嘘ついていないから大丈夫なはず…
大丈夫だよね?
「では、君たちに依頼だ。
この街の森を調査して原因を調査せよ」
「………」
「おいっ 返事はどうした?」
「労働条件も提示せずにどう言う事ですか?
私たちはあくまで冒険者です。国の騎士でもなければ慈善事業でもありません。行動には適切な対価を要求します。」
おー。
パフェさんが言い切ったよ
かっこいいー。
「フン。良い答えだ。」
このオッさんさっきからなんか偉そうだな。
いや、実際偉いのか…
「討伐報酬はすまないがその魔物によって値段が違うから各所はできないが
危険手当として金額をプラスしてやろう」
すいません。
まだまだ仕事が忙しく更新ペースが遅いです
1週間に1回は更新するように頑張ります




