76話 敵
「【飛剣】えくすかりばー」
突如、白く発光した光の刃がこちらに襲いかかる。
咄嗟に武技【受け流し】では間に合わないと判断し光の刃を回避する
が、その直後普通の人体では追うことの出来ないような速度で接近されて斬撃を振るわる。
体をひねり胴体に当たるのを僅かに晒すだけで精一杯。
本当に人間かよ
(いてぇ)
(だから言ったのでよ。流石に3対1は不利です)
(いや、4対1でござるよ)
脳内で会話をしつつ、自分の状態を確認する
右腕に両足をやられたか…
魔法で低空飛行しながら距離を取る
流石にやばいなこれ…
意識が…頼むルシファー
(了解しました)
「ここは、撤退しましょう。、次に会う時にはソラでも容赦しませんよ」
「いかせねぇよ」
「させません!」
どうやら私の半身を切り落とした少年は倒れてしまったようで、残りは勇者2名と黒い飛び道具使いの女性ですか…
ここで3人を始末するのは簡単ですが、
それをすると魔王に怒られそうですね
「【ホーリーウィンド】」
背中に翼を生やし、さらに魔法の風を発生するさせてる
翼を広げ、光の風を受けて勢い良く飛翔する。
地上からいくつかの砲撃魔法が飛んで来るがすでに高度をかせいでいる為避けるまでもない。
その後、全身に回復魔法をかけて蘇生させる。
まったく、好きなだけ戦って私に尻拭いさせるのやめてもらせませんか?
(すないな)
(起きたんですね。変わりますか?)
(いや、ちょっと考えたい事があるんでそのまま侍の国まで移動してもらってもいいか?)
(まぁ、私は構いませんが…)
コタロウ。それが俺の名前だ。
人間の大陸、そこの東端にある侍の国で生まれた。
侍の国ってなんだよ。
すごいネーミングセンスだろ?
どうやら〝転生者〟が作った国らしく、
転生者達の元の世界には侍って生き物がいて、それを参考にしたそうだ。
酷いのはネーミングセンスだけじゃない。男子は自分の呼称を拙者と呼び、語尾にはゴザルと付けないといけないのだ。
どんな罰ゲームだよ。
と、まぁ、なんでこんな事を思っているかと言うと
ある日、僕の心の中にもう一人の自分が現れたのだ。
二重人格ってやつだろうか?
そいつ曰く、自分の事を【悪魔】だと名乗ったり、しまいには僕事を【魔王】だと言う。
わけがわからない。
しばらくは心の病気かと思い、頭に響く言葉を全て無視し続けた。
(私の事が聞こえてますよね?)
(聞こえてないフリしても意味ないですよー)
(別に病気じゃないですよー)
そんな生活が1ヶ月近く続いた。
流石に毎日いつでもどこでも頭の中で女性の声が聞こえるってのは辛い。病みかけていた時に事件が起きた。
最愛の妹のエルサが人斬りに襲われた。
なんでも父さんと覇権争いをしている相手らしく、幸いにもその場に居合わせた回復魔法師のお陰で一命を取り止めた。
しかし、残念な事に実行犯は捕まえられたがすぐに自害。
差し向けた者がどいつなのか確かな証拠を上げることはできなかった。大元に証拠を突きつけられないようなら次にいつ襲われるかわからない
(復讐ですか?お力お貸ししましょうか?)
そんな八方塞がりの時に状 自称悪魔の声に耳をしてしまった。
「この状況、……解決できるのか?」
(私にかかればすぐですよ)
「なら……」
それが【悪魔】ルシファーものはじめての会話だった。
彼は、いや、彼女は淡々と証拠集めを行いわずか数時間で確かな証拠を集めてしまった。
その証拠を父さんに渡して抗議を行うように催促をした。
これで妹の安全が守られると思った。
しかし、その翌日。
父さんの汚職が明るみに出た。
信じたくなかった。
父さんがそんなことするわけないと…
【悪魔】に相談してなんとかしてもらおうとしたが、犯罪者の息子とレッテルを貼られて話をまったく聞いてもらえなかった。
(これは妹さんと国を出た方が良いですね)
「そうでゴザルか…家族と相談してみるでゴザルよ」
幸い。妹はまだ小さく、状況がわかっていない
母さんに相談して留学という形で国を出る事にした。
アネモイ王国の都市、そこの学園に留学し落ち着いた頃、悪魔が口を開いた。
(さて、そろそろ協力の代償を払ってもらいましょう)
「何が欲しいでゴザルか?」
まぁ、自称悪魔に助けを求めたんだ。
見返りなし、なんてことは無いとは思っていた。だから素直に命を差し出すつもりで了承した。
(私はあなたから何かを奪ったりはしません。少し協力してほしいだけです。)
「協力?それは僕にできることでゴザルか?」
(いえ、今の貴方では出来ません。
ですので記憶を植え付けさせてるもらいます…)
気が付いた時には自分の中にもう一人の記憶がある
その記憶の、持ち主はすでにこの世には存在しない。
その記憶の持ち主は【魔王】を名乗り、【聖女】の率いた冒険者によって討たれた。
その記憶の持ち主は、生前、最後の瞬間に自身の記憶を過去に送った。
それは魔王だから出たのか、その男だから出来たのかはわからない。しかし自らの野望を果たす為に記憶を自分に付いていた悪魔の1人に渡して過去は送った。
そう。その魔王には2人の【悪魔】が憑いていた。
1人は
自称、天使の力を持つ、ルシファー
もう1人は
自称、変態鬼畜のアスモデウス
ルシファーは基本無関心に観測するだけだが、重要な局面では適切なアドバイスをする。
アスモデウスは人の命を欲し、その礼として大量の魔力を本人に分け与える。
死の瞬間。ルシファーの助言により魔王の記憶を隔離して過去は飛ばした。そしてその記憶が今。僕の元へ植え付けられた。
それは転生者の記憶。
何百回も転生を行い、その転生のたびに忘れる事が出来ずに記憶を保持し続けた者の記憶。
その瞬間。自分はとんでもない記憶を継承してしまったと気が付いた。しかし、時すでに遅し、
その記憶は自我に芽生え、次第に逆らう事が出来ずに徐々に自分の自我が失われていく。
あぁ、せめて妹だけは…
「ソラ殿はエルサに懐かれたでゴザルな」
不自然な方だけどソラ殿に託す事はできたでゴザルかな?
後は出来るだけこの魔王の邪魔に専念するでござる
薄れていく意識でそう決意するが、
魔王は決起の瞬間までコタロウを演じた。
まれに意識を取り戻すが演じられるコタロウをただ眺めることしかできない。
(ねぇ?ルシファーさん?)
(どうしましたか?)
(貴方は何故こんな事をするんですか?何故この記憶の持ち主に協力するんですか?)
(何故でしょうね?それは楽しいからじゃないですかね?)
(楽しい?)
(えぇ、私達【悪魔】は人の中に住んで絶対に死にません。それこそ【悪魔】へ助けを求める人が居続ける限り死ぬことはありません。
だからこそ、私達は退屈を嫌うんです。
アスモデウスが人の死の瞬間に快楽を感じるように、私は…
そうですね。その転生者の記憶にあるような〝ロールプレイングゲーム〟をしているような者です)
あぁ、結局この悪魔、ルシファーも狂っているんだな…
悪魔はどうしたって悪魔なのか…
【悪魔】により【魔王】の記憶を植え付けられ、
徐々に僕の記憶と魔王の記憶が混ざりあっていく。
最初のうちはなんとか抵抗して自我を保った。
しかし何百回分の転生者の記憶である。自我を保つ事自体が難しい。
その事に気づいた時にはすでに手遅れになっていた。
体を乗っ取られるのではない。拙者、…僕自身が魔王になっているのだ…
(ルシファーさん。侍の国まであとどれくらいですか?)
(徒歩で1年。飛行で1週間です。どうしますか?飛行に切り替えますか?)
(いや、天使の力による飛行は目立つからな…
時間がかかっても歩いて行こう)
(わかりました。自分で歩いてもいいんですよ?)
(めんどくさい。任せた…)
現在。アネモイ王国を抜けて侍の国に向けて歩いて移動中だ。
前述した通り飛べば早いが目立つ。出来れば今は目立ちたくないのだ。
それにしても、ルシファーの見つけてくれたこの体の持ち主、なかなかいい体をしている。いや、エロい意味じゃないよ?
(誰に話しかけてるんですか?)
(うるさい、ほっとけ)
あの冒険者に殺される直前。ルシファーの提案で【時間魔法】を使い、俺の記憶とスキル【悪魔・ルシファー】を過去に送った。
なので正確には自分が死ぬ瞬間は見ていない。まぁ状況的に十中八九死んでるだろう
ルシファーが良さそうな人間を見つけて記憶を植え付ける事で、俺の自我を再度目覚めされる事ができた。
意識の融合もほとんど完了してこの体自体は俺の物になっている。
しかし、いくら体を手に入れても【時間魔法】により過去に送れたのは記憶とスキル【悪魔】だけだ。
【魔王】としての能力自体が蘇っているわけでは無く、この者、コタロウの能力を使いながらだったので思うようには行かなかった。
当初の予定では英雄的な武器【勇者の武器】シリーズの刀を手に入れて、現国王を殺して魔族の力をアピール。
その後、魔大陸に向かい、人間なんて弱い。と、言う情報を流して戦争を仕掛けさせようと思ったのだが…
残念ながら【勇者の刀】を入手することも、国王を殺す事も出来なかった。せめてどちらかだけでも達成していれば、魔大陸に戻った時に有利に交渉できたのに…
(まぁ、人間に記憶を移植した為に無意識の内に情が湧いたのかも知らないですね)
(おいおい。俺は元人間だからな?前回が魔族だっただけだ。)
まぁ、すぎてしまった事は仕方ない。
すでにあの少年に二敗。おそらくこれ以上やってもこのままでは勝てないだろう。
一度引いて力を蓄える
そう決断してまずは侍の国に向かっているのだ。
一応、この体の実家もあるし、前世の俺の記憶を元に色々蓄えがある
(しかし運命的ですね。過去に飛んでも、自分を殺した少年に邪魔をされるなんて…)
(それについてはルシファー。お前のミスだぞ?)
(それはひどいですね。魔大陸であなたを殺した青年が少年時代に人間の大陸にいるなんてわかりませんよ。)
まぁ、それもそうか。
あの少年。ソラと言ったか。
コタロウの意識が混在している時に何度か関わりを持ったみたいだが…そこを有効活用できないたろうか?
(ルシファーさん。いや、ルシファーは俺の名前か…おい悪魔。)
(自分で勝手に私の名前を名乗っておいて何ですかその言い草は)
(ハハハ。そうでした。それで…ルシファーだから…ルシちゃん)
(〝ちゃん〟はやめてください。せめて〝さん〟でお願いします)
では、改めて…
(ルシさん。気になる事があるんですけど良いですか?)
(はい。なんでしょう?)
(ここは俺が死んでから何年前ですか?)
(2年前です)
(あれ?やはりそうですか…)
(どうしました?)
(実はですね…
おかしいのはあの少年。ソラの事だ。
記憶にある自分を殺した少年は14、5歳だった。
しかしこの体で敗北した少年は10歳。
同じソラという少年には間違いない。しかしたった2年であそこまた成長するだろうか?
どちらの年齢に関してはこの大陸では決まって10歳で学園に入学する事から間違いない。
ではあの少年は?
兄弟とかだろうか?
(少年ソラ……確かにおかしいですね。
しかしあの少年から放たれる魔力は間違いなく同じ者のものです)
(そうか…ではやはり…)
(ん?なんですか?)
悪魔は結論を急がせる
(あの少年も時を遡っているのではないだろうか?
しかも、俺のような記憶とスキルの一部しか過去へ送れないのではなく、自分の体を完璧に過去へタイムスリップをできるのかもしれない…)
(いやいや、流石にそれはないんじゃないでしょうか?)
悪魔は否定する
しかしそれしか考えられない
あの少年は【時間魔法】の使い手だ。
(そろそろつきますよ?)
(お?わかった。体の操作をこちらに回してください)
少し冷たい風を顔に受けながら目を開ける
そこには白い、巨大な扉が見える。
その扉に手をかけあげようとするが開かない
まぁ、そりゃそうかか
衛兵に声をかけて中に入れてもらう。
さて、アネモイ王国の王都を出発してから約1年。
つはり、
この記憶の持ち主が死ぬまで後1年を切った。
別にその死を改変するつもりはないし、おそらくできないだろう。
魔王グリードの記憶は僕が引き継いでるので今更助けたところで、それこそタイムパラドックスが起きてしまう。
俺の目的は変わらない。
人類の滅亡。
その為にできる事を今からする。
今の俺には【魔王】としての力が無い。
つまりは無鉄砲に魔族で人間の国に攻めた所で返り討ちにあうだけだ。そうさせない為に…
まずはこの侍の国を掌握する。
(ルシさん。協力してね)
(もちろんです。)
すいません。
相変わらず仕事が忙しく次回更新は未定です




