69話 魔王②
「時間魔法?」
空間が歪んだ。しかも今のは空間だけではなく時間もズレた気がする。
周囲には体をバラバラにされた者や体の一部が急激に老化した者が転がっている。
前者は物理的に死んでいて、後者は体の急激な変化に対応できずに自壊している。
明らかにオーバーキルだ。
僕の時間魔法の【空間斬撃】よりも高度な魔法な気がする
いや、魔法じゃなくて武技かな?
どちらにしろかなりやばそうだ。
これが魔王の実力だろうか?
とっさにかがんで回避することができたが、それができなかった兵士はすでに肉片なってしまった。
「コレを避けるなんて。さすが勇者だな」
「え?・・・僕のことですか?」
「お前以外にだれがいる?」
「いやいや、僕は勇者じゃないですよ。転生者であることは認めますけど…」
「あ? 勇者じゃなきゃなんでここにいるんだだ?」
いや、なんでって聞かれても…
あなたの討伐依頼を受けて
って言ったら怒るかな?
「勇者じゃない…
ってことは、お前も魔王か!」
「はい?」
なぜそうなる?
ただの冒険者です。
とか、言ったら怒るかな?
「俺の魔法を避けたとなれば、戦闘センスは一級品だ。
やっぱり俺に協力しないか?」
「断ります。今の魔法、あそこまでする必要ありますか?」
流石にめのまえてあれだけの虐殺をみて、はい協力しますなんて言えない。
「おいおい、俺の魔法をみて怖気付いたか?
だいたい俺は魔王だぜ?命を狙われてるんだ。
ならば返り討ちにあうことも当然あり得るだろう?」
「それはそうですが…」
「だいたいお前だって俺の部下を虐殺しただろう
よく人のこと言えるな。まぁ、俺は人じゃ無いけどな」
「……」
同じ冒険者を虐殺したり犯したりしたのはそっちの方が先だからね?
まぁ、討伐しに来たからには返り討ちにあうことまで仕方ないと言えば仕方ないけどね
アニメでそんなセリフあったな
撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ
だっけ?
「あーも、めんどくせぇ。もういいや、死ねよ」
「!?」
魔王が一瞬で僕の方に近づく。
早すぎて見えなかった。
わかるのはなにかが近づいてきている。と言う感覚だけ。
【体内加速】
自身の体内時間を加速させて周りが遅れているように見える。
「へぇ、お前も時間魔法が、使えるのか?」
「!?」
血こちらに近づく魔王の拳を間一髪で回避して返しに
「【ファイアドライ…!?」
僕の右手が弾け飛んだ
「なん…て?」
「悪いな。俺には魔法は聞かねーぜ?」
くっそ
痛みをこらえながら後ろに【射出】しようとして、
それをやめる
仕方なしな後ずさりしながら距離をとる
「フン。やはり感は良いな」
「少し魔王については聞いていますので…」
まぁ、とっさに反撃しようとしてくらっちゃったけどね
回復を魔法を使うこと訳にもいかずかぶれた服を使い血を止めようとするがうまく結べない
「ハハハッ…手伝ってやろうか?」
「なんで襲ってこないんですか?」
「そんなの決まってる。人が苦しんでいる姿を見るのが楽しいからだ
ほら?痛いだろう?ククッ」
クソキャラだなコイツ
絶対コロス
「ほらほら、早くしないため出血しすぎて死んじまうぞ?」
魔王は僕の周りをうろつきながらニヤニヤして冷やかしてくる
なんとか止血して魔王の方を見ると満面の笑みで指から魔法を放つ。
「ホイ」
「くっ!」
転げ込む様に側転をした回避をする
指から放たれた光線の様な魔法は僕の後ろに存在した木々を容赦なく切断する
本当に魔法かよ
明らかに今のはビームだったぞ
しかも無詠唱。
「ほらほら避けろよ」
「くそっ」
魔王が今度は左手から極太ビームを放つ
なんとか立ち上がりさらに横に飛んで回避しようとするが左足のスネあたりから先を持っていかれる
足の切断面は高熱で焼かれた為か出血はしていない
くそ、いてぇ
転がるように移動して地面に落ちていた剣を杖代わりにして立ち上がる
魔法もダメ
こんな体じゃ剣もまともに振らない
おまけに相手は光線使うし、僕の体内加速にも関係なしと言わんばかりについてくる
どうする?
(ソラ君、聞こえる?大丈夫?)
(!?)
念話が届く
チョコ様からだ
(チョコ様、逃げてください。現在魔王と交戦中です)
(え?なら、私達も……)
(ダメです。今は逃げて下さい)
実際、ここにチョコ様が来たら奥の手の【射出】も使えない。いや、【射出】を使った瞬間に僕の体が弾け飛ぶかもしれないんだけど…
(良いですか?魔王には魔法が効きません
それどころか魔法を奴の前で使うと自壊してまうんです
それに魔王自身も強力な魔法を使います。チョコ様じゃ勝てません
すでにB班も全滅、どこかの騎士団の様な兵士も全滅しました。中途半端な戦力じゃ勝てません)
(そんな…)
なんとかチョコ様を説得して逃げさせなければ…
こんなんまともにやったって勝てない
なら………
「フッ」
「ん?なにがおかしい?すでに全身ボロボロで頭もおかしくなったか?」
なに
簡単な事じゃないか
「まともにやって勝てないなら…
まともにやらなければ良いだけじゃないか…」
「フッハッハッ
いいねー、流石人間だ。俺も人間だった時にそれくらいはっちゃけられれば良かったんだがな?」
魔王が高らかに笑いながら宣言する
「いいか、死ぬ前にいいことを教えてやるよ
この世界はゲームじゃない、主人公なんていないんだ」
そんなことわかってる
今まで苦しい事も何とかなっていた。
その時その時に誰かに助けてもらっていた。
「お前はここで死ぬ
俺以外の誰にも看取られる事なく」
僕は、……
死なない…
「行くぞ魔王」
「おう、来いよ。返り討ちにしてやる」
【改変魔法】
→【漆黒の炎】
剣に魔力を通し、事実を改変させる
触れたもの全ても燃やす炎。
その炎を作り出す空間を剣を中心として作り出す
「あん?」
おそらく、魔王の魔法自爆は、対処を認識する必要がある
さっきの騎士団の魔法隊に対して魔法の発動を、許していた。
つまり自動発動ではないのだ。
まぁ、推測でしかないのだけど、それもこの魔法が発動できた事で証明された。
【漆黒の炎】は全ても燃やす
それは光さえも…
最初は黒い炎って厨二だなって思ったけど違かった。
炎が黒いのはダミーだ
本当は光さえも燃やしてしまう空間を誤魔化しているのだ。
そして光を喰らう
それはその空間そのものを認識できない
生き物の目は光の反射によって認識している
その光を全て喰らっている為黒い何かを、認識することが出来ない。
認識出来ないものは無効化できない
それが証明された
「小賢しい」
魔王が再度、極太の光線を放つ
しかしその光線は漆黒の炎に触れると同時に消えて無くなる。そして光線の魔力を喰らった漆黒の炎は勢いを増す
まぁ、正確には漆黒の炎を生み出す空間の範囲が広がったのだけどね
「な!」
光線が無効化された事で魔王も多少同様する
その先に【射出】を行い距離を、つめる
まだ逃げる場面じゃない
今は攻める時
今やらなきゃいつやるの?(笑)
魔王が漆黒の炎をサイドステップで回避する
よし、賭けには勝った。
サイドステップの回避位置に事前に待機して魔法の発動の準備をしていたのだ
「【手刀・突】」
「無駄だ!」
魔王が僕の武技を自壊させようと認識してくる
しかしすでに武技の発動は始まっている
【改変魔法】
→【魔力喪失】
僕の左手を中心に空気中の魔力全てを消し去る魔法を発動させる。あくまでも空気中の魔力だが、魔王の自動発動の魔法には有効なはずだ。
黒龍老人の話では魔王は周囲の魔力が勝手に魔法を発動させるらしい。つまり空気中の魔力を、全て無くせば魔王としての魔法は使えないのだ
「くらえ!」
武技によって強化された突きが魔王の脇腹に食い込む
魔王が苦しそうな顔をしながら僕を睨みつける
「やはりお前も魔王か!」
「……」
腕を引きながらその反動を使いながら蹴りを放ち、迎撃される前に、蹴って後方へ移動する
「古い魔族の古文書で、読んだことがある
魔力に愛された王を真の魔王。覚醒魔王と呼ぶ。
覚醒魔王は魔力を司る者には最強の存在となりうると…
そして、こうも書いてあった。
覚醒魔王同士の戦いの時にはお互い、魔力に愛された方が勝つと……」
いや、僕は魔王じゃないからね?
まぁいい方向に転びそうな勘違いなので、様子を見よう
「俺の魔法が無効化されたという事はお前の方が魔力に愛されているという事か?
ならば……」
一度引いてくれると助かるんですけどね
「お前を殺す」
生存フラグキター!
「させないわ!【爆炎弾】」
「援護します!【ファイアショット】」
って、何で来たの!
チョコ様とパフェさんが木の陰から現れて魔法を放つ
しかし、というか当然だが両者の魔法は魔王に当たる前に四散する
「逃げてって言ったのに!」
「そんなこと言われたってあなたを置いていけ……
その傷なに!腕と足が…」
「コイツ……」
チョコ様が僕の腕と足がないのに気づき近づいてくる
パフェさんは頭からツノを生やして怒ってくれる
あ、ツノは比喩じゃなく本当に生えている
「フハハッ…猫と鬼か…悪くない。」
「よくもソラさんを!」
パフェさんが無謀にも特攻する
巨大な大剣で魔王に斬りかかる
頭に血が上って脳筋になったのか、
先ほどの念話を聞いていたのか最低限の魔王対策はしてくれているようだ。
魔王も面白がって落ちている剣を拾い上げパフェさんと剣の打ち合いを楽しんでいる
そのスキに【漆黒の炎】を発生させてその影に隠れるようにしてチョコ様に【ヒール】をしてもらう
「ありがとうございます。助かりました」
「まだ、手が治ってないわ」
「そんな暇はないですよ」
流石に【聖女】というかだけあるのが回復魔法は素晴らしい
焼けた足から新しい足が生えて来て1分ほどですぐに元通りになった。
【漆黒の炎】を解除するとパフェさんが息を切らしながら剣を振っている。辛そうだ
「はぁ、はぁ、なんでぇ、はぁ、そんな細いのでぇ…」
「くくっくっ、出かければ良いってわけじゃないんだぜ?
ほら、ここなんてどうだ!」
「くぅっっ!」
【射出】
「なにやってんだ!」
「あん?」
【射出】で加速して飛ぶように魔王にタックルする
すでに半裸のパフェさんがその場に倒れこむ
「すみません。私はここまでのようです」
「休んでてください。あとは僕がやります」
「はい…」
(チョコ様、パフェさんと木の陰行って回復したください)
(まだ腕が……)
(必ず戻ります。だから今は回復していてください)
(すみません。私がもう少し時間を稼げていれば…)
(パフェさん、助かりましたよ、足があるだけで歩けます
さっきまではそれすら出来なかったんです。本当に助からました。)
頬を染めるパフェさんを想像しながら魔王に手刀放つ
先ほどの同様に【改変魔法】による【魔力喪失】で武技の無効化を防ぐ。
魔王も剣を払うように振って攻撃してくるが腰をひねり回避
そのひねりを活かして回転蹴り
蹴りは剣の腹で受け止められてしまい、反動で後ろに飛ばされてそうになるが【射出】を使用して僕にかかる運動ベクトルを改変する
一瞬の魔法で魔王に自壊させられる前に魔法を終了
そこから地面を蹴って拳を放つ
【射出】による運動ベクトルの操作
【体内加速】による通常の8倍の速度による攻撃
【改変魔法】による相手の魔法の無効化
その三つをフル活用して魔王を、タコ殴りする
蹴り、殴り、突
数百発打ち込んで距離をとる
いくら早く動けても体力は有限だ。
「なかなかッ
ならば……【時空斬撃】」
魔王が先ほどの見せた広範囲魔法を放つ
「【手刀・突】【空間斬撃】」
斬撃ではないが武技により無理矢理【時間魔法】の【空間斬撃】を放つ。
時間と空間を切り裂く魔法と空間のみを切り裂く魔法
普通にぶつければ前者が勝つ
空間を切り裂く魔法そのものの時間を切り裂いてしまうのだから
あくまでもこの勝負は同条件による魔法の発動の場合だ
今、魔王の放った【時空斬撃】は広範囲の面による時間と空間を狂わせる魔法。空間を狂わせれば切断できるし、時間を狂わせれば人体の不具合を発生させる
対し、僕の【空間斬撃】は 空間そのものを切り裂き別の場所へ繋げる
今回は突の為、空間に穴を開けた。
その穴は触れたもの、全てを飲み込む
もちろん魔法も……
「なかなかやるな」
「正直しんどいんで撃たれてくれませんか?」
すでに周囲はチョコ様とパフェさんの隠れた一帯を残し全てなぎ倒されている。
僕の作り出した穴が【時空斬撃】の盾となり、なんとか防げた。
「悪いが俺には後がないかもしれねぇんだ。
今度転生しても再び魔王にならるかどうかわからない。それどころか魔族に生まれるかどうかもわからない
今世で決める。絶対にな!」
魔王が叫び両手から極太の光線をクロスにして生み出す
光の戦士かよ!




