51話 教会
線路の周囲に光り輝く柱が立ち並ぶ…
あれ、ビルだね。パッと見10F以上ありそうだ。高いなー
なんだろう、異世界に来たのにこの現実感…
住宅地の裏を線路が通っているのか、ここから街の住人は見えない。
洗濯物が干してあるのとか見ちゃうも異世界か疑うよね
線路に沿って進む。しばらく進むと駅が見えてくる。
「すいませーん」
いや、正攻法ですよ。線路からそれて街に潜り込んだってそこからこそこそ行動しなければならない。
どうせこそこそするなら、先に堂々と相手の正面に出て状況を確認する。
国王の言うように魔王の国なら確かに問題ある行動かもしれないけど、この街並みを見る限りそれだけではない気がするのだ。
確実に異世界人がいる。
もしそうなら種族の違いはあれどこちらに手を差し伸べてくれる可能性もある。
そんなわけでホームに上がりたまたま近くにいた駅員っぽい男性に声をかける。
「ん?どこから声が…お前!どこから来た!」
見た目は普通の人間…あ、こっち振り向いたらおでこに角あるよ。
鬼ですか?
鬼ですね~
鬼が出ちゃいましたね~
いや、特に深い意味はないですよ。
それよりも重要な事。
あちらの言葉がわかったのだ。最悪言葉が通じない可能性もあったはそれは解決…
それはね。
いや、なんで向こうの言葉がわかったかって日本語だったのだ。
いやー、懐かしいね。この世界の言葉って知識としての物だからあんまり親しみがもてないんだよね。
「えっと、僕はソラって言います。迷子になってしまって。」
「おお、そうか…それより大丈夫か?線路に落ちてしまうなんて…気を付けろよ」
うん、思ったより警戒されていない。
一応ホームにいるほかの乗客は一見人間ぽいけど、耳が動物の物だったり、尻尾が生えていたりしている。
亜人ってやつだろうか?
逆に言えば人間も一見亜人っぽいからそのままでもだませるかなって思った。
まぁ、嘘は言ってないよ。
「はい。気が付いたら荒野で目を覚ましまして…正直それ以前の記憶が曖昧で…」
「荒野って…もしかして魔列車からおちたのか?」
「これ、魔列車って言うんですね」
「ふむ、どうやら記憶喪失なのかもしれないな…」
うん、いい感じにことが運ぶ。
それにしても魔列車か…魔+列車ってことは普通の列車もあるのだろうか?
いや、異世界人が作ったから動力が魔力ってことで名付けて普通の列車はないのかもしれないけど…
ダメだ、考えだしたらきりがない
「よし、とりあえず事務所にこい。その後医者に連れて行こう」
「は、はい…」
「あ、俺はこの駅の駅員のドリアだ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
うん~。
医者はまずい気がするな。さすがに人間ってばれちゃうよね?
駅員の後についていき改札?のような物の隣にある部屋に通される。
「まだ、ちょっと仕事が忙しいからこれでも飲んで待っていてくれ」
「ありがとうございます」
カップに入った黒い飲み物を手渡され、ドリアさんはホームへ行ってしまった。
「どうしましたか?迷子ですか?」
「はい。…気が付いたら荒野に居まして」
「それは大変ですね。どこに向かっていたかとかってわからないのかした?」
「ごめんなさいそのあたりの記憶が曖昧で…」
部屋にいた女性の駅員?の方にも声をかけられたので事情を説明?する。
この女性は耳が漫画とかで見るエルフみたいにピヨーンって横に長い
髪の毛も緑色でそのまんまエルフだ。
(まぁ、漫画の知識だけど)
「おいしい」
「そう?それはよかったわ。まぁ私が淹れたわけじゃないけど…」
ドリアさんから渡された飲み物はココアだった。
この世界にもココアがあるのか…カカオ豆があるってことはチョコレートもあるのかな?
そう言えばこの世界に転移してきて甘味をほとんど見ていないことに気が付く。
あるのがフルーツくらいだ。
あ、一応ホイップクリームもあったかな?
って、結構見てるじゃん。
「おまたせ。やっとピークが終わった。カレー後は任せていいか?」
「えぇ。いいわよ。この子よろしくね」
カレーってこの女性の名前か…
ずいぶん美味しそうな名前だな。
なんだかんだ言いつつカレーさんとお話をしてこのあたりの情報は教えてもらった。
なんでもこの街は魔大陸の中心部から東へ少し行った街、ドワンと言う街らしい。
人口的には少ないが魔大陸の中心の町(ハローって言うらしい)の近くにあり、おおきな中継駅れしい
また、荒野で魔法が使えなかった理由についても聞けた。
各町には集魔石と言う物が設置されていて、街の周囲から魔力を集めているらしい。
あつめた魔力を街内に還元して街での生活を裕福にしているとのことだ。
なんて迷惑な…
てかそれって環境破壊とかじゃないのだろうか?
そのあたりのことを聞こうと思っていたらドリアさんが来てしまった。
もうちょっと仕事しておけよ。
あ、それと駅ってことで列車は1時間半に1本らしいけどそれでもかなりの魔族?亜人?が改札を通った。
どういう原理だかわからないが自動改札になっているようで、勝手に部屋の前を行き来している。
もしかしたら魔大陸にも証明書カードが存在しているのかもしれない。
いや、むしろここまで異世界文化があることを考えると魔大陸発祥の魔法なのかもしれない。
スキをみて確認してみよう
「よろしくお願いします。」
「おう。じゃぁついてこい」
ドリアさんの後についていき駅を出る
うんー。前世の街に似ている気はするがどこか違うような気もする。何だろう?いろんな所が微妙に違うのかな?
駅前のロータリーにバス停があるがソコに止まっているのはバスではなく
岩で出来たような頑丈そうなゴーレムが馬車を引いている
些細な所だと、道に信号がないとか…
街灯があるがその先に付いているのは光輝く魔石だったりしている。
しかし共通点も多くあり、例えば魔族の服装は前世とほとんど同じだ。軽装ではあるが革鎧を着ている僕が若干浮いている。
いや、一周回ってファッション?
そんな感じだ。
「街並みがそんなに珍しいか?」
「はい。見たことないものばっかりです」
「これは重症だな。医療魔法で治せればいいが…」
なんだよ医療魔法って
医療なんだか魔法なんだかわからない。
無詠唱魔法の一種なのかもしれないな。
「ドリアさんはご家族とかいるんですか?」
「あー?両親の事か?まだ生きてるぞ。嫁はまだいないな」
なんでもいいから今のうちに情報を集めておく
この後場合によっては医者で正体がバレるかもしれない。
こちらを信用してくれているうちに聞ける事を聞いておこう。
「お前は?って、記憶喪失じゃわからないよな」
「両親はいた気がするのですが…嫁は…」
「嫁はいないだろう。その年で嫁をもらっていたら驚きだ。どこぞの王様かって感じだぜ」
「ですよね…」
危うく王様になりそうであったが最近はなんとか回避できそうである。
いや、カグラさん自体は可愛くて素敵なんだけどね
そう言えば今日で1週間くらいあってないな。
どうしているかな?
無事だと良いんだけど一瞬見えた王都では火が上がっていた。見間違いである事を祈ろう。
「ほら、ついたぞ」
「ここですか…」
なんか思っていたのと違う
ここ、教会ですけど…
医療施設とかを想像していたからな…
コンクリートで出来たビル街の一角にポツンと庭付き教会が、現れたのだ。
「おう。んじゃ行くぞ」
「はぁ」
途中で抜けだす事も視野に入れつつドリアさんの後に続き中に入る…
扉を開けると、教会の中もまんま教会だった。
なんだろう、部屋を横切る通路とその横にはベンチが並んでいる。
あれだな。予想だけどこの建物って異世界人が建てたのだろう。日本人の勝手なイメージで作ってそうな作りなのだ。この部屋も結婚式等で見える建物の作りだし。
まぁ、本当のところはわからないけどね
「どうされましたか?」
「駅で迷子を保護してな。どうやら記憶がないらしいので見てもらうと思ってな」
入り口のところに立っていた白衣の女性に声をかけられた。ピンク髪で猫耳だ。
ココと同じ種族なのだろうか?
「そうですか…只今の時間ですと医療長は外出しております。あと半時間で戻って来られると思いますのでこちらでお待ちください」
「はい。わかりました。」
「それじゃ俺は駅に帰るからあとよろしくな」
「ドリアさん。ありがとうございました」
「気にすんな。困った時はお互いのさまだ」
そう言ってドリアさんは今入ってきた扉から外に出て行った。
魔族って悪いやつかと勝手に思っていたけどそうでもないんだな。
「さて、本当のところ、あなたは何者?」
「なんのことですか?」
場が一気に静まる。
あれ?周りを見るといつのまにか他の人がいなくなってる。
入り口にいた白衣の女性に声をかけられたので誤魔化す。
「嘘は仰らなくて良いですよ。」
「はぁ」
さて、どうしたものか…
「あなたは人間ですよね?しかも、勇者じゃないですか?」
「はい。魔族ではないですね。勇者ではないですよ」
「魔族ではない…そうですか。その言い回しをするということは人間なんですね。
今後のために教えておきましょう。そもそも魔族とはなんなのか……」
ほう。耳より情報ですね。
「この世界に生きる生物には必ず魔力を生成する器官があります。その事はご存知出すよな?」
「はい」
「人間も、魔物も、亜人も持っています。もちろん魔族も持っています。では魔族と亜人、そして人間の違いとはなんなのか…
人間は魔物の因子を持たない人類です。
亜人は体のどこかに魔物の因子を持った人類です。
ここまでは大丈夫ですか?」
「はい。あのー、あなたは…」
「チョコです。私の名前」
…あれかな?亜人は名前が食べ物が多いのかな?
「チョコさんは亜人なんですよね」
「そうですね。私は猫という動物の因子を、持っています。ほら、この耳」
チョコさんは猫耳をピクピク動かしてアピールする。
「可愛いですね」
「そうでしょうか?私はこの耳に慣れてしまってよくわからないですね。」
「はぁ」
なんか気になる言い方だったけど特に突っ込まないでおく。機会があったら聞いてみよう
「では、魔族とはなんなのか…それは、
魔族は体内に魔石を持った人類です。
亜人が動物の因子だったのに対して魔族は魔物の因子、正確には魔物の因子を、持った魔石を体内に宿した人類です」
「はぁ。」
「そして厄介なのは魔族のほとんどは魔物の因子を受け継いだ我々が他の人類を統べるべきと考える者が多いという事でしょうか。
今のところ魔族自体の数が少なくほかの亜人で連携を取って押さえつけている状態です」
なんか国王から聞いた話しとだいぶ違うな
そのあたり聞いてみよう
「魔族の国ではとかはないのでしょうか?」
「そうですね。人間からしたら亜人も魔族も同じなんでしょう。そう思われている事は知っています。
この大陸にはいくつかの国がありますがそのほとんどは亜人の国ですよ。魔族の国は基本的にはありません。
しかし国の中枢には魔族が関わっていた。と、いう事はよく聞きます」
「なるほど…こちらも大変なんですね」
「そうですね。そして一番厄介な事がありまして、その事を含めてあなたに今お話しています。」
「僕に何かして欲しいんですか?」
「はい。魔王を討ち取ってください」
「はい!?」
いきなりの急展開。
これは直感だが僕がここに転移させられたのはそれが原因なのではないだろうか。そんな気がする。
「僕で出来る事なら協力できますが…僕は勇者では無いですよ?」
「それは予想外でした。それは困りましたね。しかしすでにここまで話してしまいましたしそのあたりの事をお話ししましょ」
「魔王とは一種の進化です。
人間、亜人、魔族。その三者が自信の存在を神により認められた時、新たな人類の発展のために進化すると言われています。
なぜ進化するのか…
それは自身の意見を武力により押し通す為。
必然的に複数の意見を持つ者。つまり、複数の魔王が生まれるのです。」
「なるほど、では勇者は?」
「勇者はそんな魔王の横暴へ対抗する為に生み出されたスキルだと言われています。」
「つまり、亜人の勇者や…場合によっては魔族の勇者も存在するんですか?」
「そうなりますね。まぁ、魔族の勇者の場合には結局ほかの魔王を退けていたら魔王になっていた…って事が多いみたいですけど」
なんかよくある展開ですね。
部下の為に良くしようと頑張るが、いざトップなったら己の権力に溺れてしまった……みたいなこと
「なるほど。急展開過ぎて若干話について行けて無いんですけど、まずはひとつだけ質問いいですか?」
「どうぞ」
「あなたは誰ですか?」
「私は、…この国の女王です」
・・・
は?
さらなる混乱を招く




