50話 荒野
はい。みなさんおはようございます。
ただ今絶賛行方不明中です。
なんでこうなっているか?
わからない。
現在僕は西に向かって徒歩で移動中です。
え?なんで徒歩かって?
それは1時間前に遡る…
【空駆・改】で空中を移動して周囲を散策しようとするがなぜかきちんとした形で魔法が発動しなかった。
一応足場にする土を発生させることはできるのだが、一瞬にして魔力になり拡散してしまう。
おかしい。
では別の魔法と
【射出】を使うがこちらもうまく発動しない。
木の棒を【射出】してみるが自分の目論む速度がでないのだ。
なんだろう。
ならばと【視界内転移】を発動する。
お、こちらはいつもどおり発動した。
使用魔力量をいつもと同じだ。
エクストラスキルは問題いなく使えるのかな?
一瞬だけ【体内加速】を使用する。
うん。やっぱり発動できた。
やはり通常の魔法がうまく作用しないようだ。
そのあと【身体強化】を使うが問題なく発動できた。
あれ?なんでだ?
よくわからなくなってきた。
それからいくつか魔法や武技を使う。
その結果……
「どうやら魔力を放出する系の魔法や武技がうまく発動できないんですね」
自身にかける魔法は発動できる
いつも使う魔法で現在可能なのが…
・射出(自身の移動のみ)
・身体強化
・思考加速
・体内加速
・無限魔力炉
武技だと
・抜刀斬撃
逆に使えなかったり、効果が一瞬で終わってしまうのが
・攻撃魔法全般
・空駆
・射出(自身以外にかけた場合)
・飛剣
・分剣
いやー。困ったな。
何が困ったって空駆を使えないのが面倒だ。
一応射出で高速移動することは出来るのだが射出による長距離移動は高度があって初めて成立する。
自身を斜め上に射出してもその先に待っているのは落下だ。自身を射出し続けて加速することは可能なのだが魔力燃費が悪すぎる。そう思うと空駆の燃費が良すぎたな。
空中に足場を作りそこを走るだけ。なおかつ作成した足場は魔力に分散して自身で吸収する。
応用として空中で行きたい方向に射出して到着地点や中継地点に足場を作って着地。しかもその足場自体が重力操作で浮かせているので高度から落下するとバネの要領で一度沈み、その反動で射出を使わずに飛び出す事もできる。
そんな訳で現在は【無限魔力炉】を使って戦闘による消費MPを回復させながら西に移動中である。
なんで西かって?
おそらくここは魔大陸だ。
ここに来る途中一瞬だが王都、山脈、和城が順番に見えた。僕がいた森から少し南に移動すれば王都が見える。
そこから山脈がある位置は東の山脈しか思いつかない。
一応さらに南に移動すればそちらにも山脈があるらしいのだがその次に見えた和城のことを考えると東の山脈で間違えないだろう。
そして和城。おそらく侍の国だろう。
そこから海を挟み現在の荒野。
うん。魔大陸だね。
ならば西に向かうのみ。
そんな訳で人間の大陸に戻るのが今のところの目標だ。
国王と話した限りでは魔大陸には魔族がいるらしい。
魔族がどの程度の実力なのかは分からないが
現在の魔法をフル活用できない状態で戦闘になったらかなり不安だ。
場合によっては魔王との戦闘になる可能性もある
目が覚めた位置から4時間ほど歩いただろうか。
最近影を薄めていた生活魔法の【時間確認】なら魔法で正確な現在の時間が確認できる
ここに飛ばされてどの程度眠っていたか分からないが歩っているうちに周囲はすでに暗くなってきた。
若干冷えるな。
こんな時、異世界小説に出てくるような格納魔法が使えれば暖かいコートとかを入れておけたのに…
無いものはしょうがない。
と、思おうとしてもすでに異世界転生を経験した身からすればなかなか気持ちを切り替えられない。
暗くなる前に木の枝を集めてなんとか火をつける。
荒野と言いつつ何だかんだ木がそこそこある。
まぁ、ほとんど枯れているけど…
生前にテレビで見たサバンナとかのようだ。
ライオンの魔物とか出なければいいな。
あれ?これフラグかな?
生活魔法も魔力を放出する魔法は使い勝手が悪い
全く魔法が使えないわけではなく、極端に燃費が悪いようだ。
おそらくだがこの枯れ果てた大地に魔力が吸われているのでは無いだろうか?
僕自身の魔力を使って魔法を使っても、その現象を起こすはずの魔力が大地に吸収されてしまい思うように発動できない。
今までいた人間の大陸。ユーア大陸は空気中に魔力が満ち溢れていた。だから最低限の魔力で魔法を放っても魔法を使うことができた。なりない魔力は空気中から集めればよかったのだ。
しかしこの魔大陸では完全に逆だった。
いつも火をつける魔力の50倍以上魔力を消費してなんとか火をつけた。
食料は何も持っていない。
食料どころか水もないのだ。
まぁ、水は魔力で無理矢理作成して喉を潤したがかなり無駄な事だ。やらないよりはマシ程度……
なんで食料がないのかだって?
王都へすぐに戻るつもりだったから持っていた食料を全てサクラ先輩に渡してしまったのだ。
いや、年上の女性に見栄を張りたかったのだ。
はぁ、なんでこんなことになったんだ?
……
明らかに仮面の男が悪い。
なんなんだよ。
意味がわからない。
考えられるとしてはあの仮面の男は神様の言っていた勇者なのでは無いだろうか?
神様に追われて自重していたのがついに我慢が出来なくなり暴走した?
いやいや、仮にそうでも僕を襲う理由は……
あるか。
神様から僕の情報を聞き出したとか?
それなら僕の名前を知っているのも説明つく。
自重しない勇者は神様からの使徒の僕を見つけ出し、先に仕掛けてきたとかだろうか?
しかし、それではなぜ僕を殺さないでこんな魔大陸まで転移させたのだろうか?
そんな現状意味のない思考を巡らせる
一種の現実逃避。
そうでもしないととても持たない。
そんな思考を巡らせながら眠りにつく……
「ガガガゥ!」
っ!?
なにかの声で目を覚ます。
周りは真っ暗。
すでに火は消えている。
月?明かりでうっすらと4足歩行の魔物が見える。
ひーふーみー
4匹。狼かな?
「【暗視】」
【暗視】魔法を、かけて周囲を見渡す。
動かず気配を消しているのが2匹いた。
全部で6匹か。
この場合獲物にありつけた。と、考えるべきなのかな?
まぁ、僕が獲物になる可能性もあるのだけど…
腰の刀に手をかける…
そこで気がつく。いつも寝るときは咄嗟に使えるようにいつも腰にかけていた勇者の刀がない。
それはそうか、仮面の男に、持ち去られたのだから…
腰の格納石から木刀を取り出そうとして予備がない事を思い出す。仮面の男との戦闘で予備の木刀を使ってしまったのだ。
「どーどーどー」
「グゥルルル」
落ち着かせようと声をかけてみるが、獲物を前にした狼。興奮してしまう。
格納石の中身を確認。
しまったなー。転移させられて一番最初にやる事だった。
動揺していてそこまで思考が働かなかった。
「ヘイ!ポチ!」
「グルルゥウア!」
あ、明るく話しかけてみたらボスっぽい1匹が襲い掛かってきた。
【身体強化】+【体内加速】
狼のような動物の噛みつきを紙一重でかわす。
正確には紙一重でかわすしたようにみせる。なんでそんなことしたかった?
右手でカウンター。
狼っぽい動物(以下、狼)の横腹を思いっきり殴る。
回避中からの一撃なので体重の乗ってない軽いパンチだが、相手も反撃されると思わなかったからなのか、悲鳴を上げながら吹き飛ぶ。
狼が起き上がるより前に移動して思いっきり蹴りを入れる。狼が数メートル吹き飛ぶ。
「きゃん!」
【身体強化】で強化された肉体をフル活用して突き飛ばされた位置に移動してマウントポジションを取る。
そのまま首を両手でしめる。
周りの取り巻き狼が助けようとこちらへ噛み付いてくるがそちらは構わずに首を絞め続ける。
「きゃ」
ボス狼が若干可愛らしさ声を上げるが無視する
左腕に取り巻き狼が食らいつくが、こちとら【身体強化】で物理防御力も上がってる。
そんな魔物ではない狼の噛みつきなど痛くも痒くも……
あれ?めっちゃ牙が食い込んでる。
こいつら魔物?
まじ?
仕方ない。一度首締めを解いて腕に噛み付く取り巻きに1発食らわせる。
顔面を殴られて取り巻き一匹が噛みつきを解く。
そいつの首を持ち遠くに投げる
いやー。【身体強化】って便利ですね。
ほかの取り巻きを睨んで威嚇して自分の下にいるボス狼の首を再度締める。
体重を、かけて押しつぶすようにして気功を潰す。
まだ足りないのかボス狼が暴れ出したので自分に【重力魔法】をかけて自身を重くして圧迫していく
しばらくすると胸を潰されてボス狼が動かなくなった。
いや、素人には首締めとか難しいね。
相手が、魔物だったのもあるけど…
「あー、狼くんたち。僕はお腹が空いてます。でも、こちらは僕1人なのでこのボス狼一匹いれば十分です。
お互いのためにここは引いて貰えませんか?」
って、人間の言葉はわからないか…
と、思ったが元取り巻きの狼は若そうな雄?を、中心に暗闇に消えていった。
「ふう。まずは食料ゲットですね。あ、その前に【ピュアヒール】」
左腕に回復魔法をかける。
若干、ききが悪いが問題なく完治する。
そのあと穴を掘り血抜きをして食べられるそうな部分の肉を解体する。一応学園の冒険者学部で動物の処理の仕方も多少は教わった。
あ、胸には魔石があった。
サイズは小さかったが純度は高そうだ。
この先魔族?の街で売れるかもしれないから取っておこう。あ、あと爪と牙も剥いでおく。
皮は裁縫技術が無いので服には加工出来ないし、血生臭いし、邪魔になるので燃やしてしまう。
魔大陸(仮)1日目はこうして終了した。
なんとか食べ物が手に入ってよかった。
あ、少し肉は残しておいた。
朝の朝とお昼ご飯にはなるだろう。
さすがに夜までもたないかな?
翌朝。
太陽の光で目が醒める。
一応あの後ほかの魔物が襲ってこないか警戒したが結局襲ってくることはなかった。
(疲れがたまっていたのか途端で寝てしまったけど…)
前日も同じように西へ歩く。
方角についてだが【方角魔法】と言う便利な魔法があり、どっちが西だかは一応分かる。
歩くこと3時間。
地平線に何が動く物体が、見えた。
見えた方向へ向かって歩く
2時間くらい歩くとソレが見えた。
すでに太陽は真上に来ている。今度はソレに沿って歩き始める。方角的には北西方向になるかな?
途中、なんとか動く物体を間近で目視するがこちらには気がつかない様子だ。
途中で火を起こし昨日倒した狼の肉を炙りかじる。
味はまぁ、お察しだ。
だって調味料なんかないもん。
本当の意味で肉本来の味だ。
二度と狼の魔物は食べないと誓うような味だった。
太陽が沈むころ、ついに光を発するソコに着いた。
ソコは10メートルはあるような塀で囲われていて門以外中に入るのは不可能だろう。
塀の先からは太陽のごとく明るい光に満ち溢れている。
僕が目印にしたソレは線路。
途中にすれ違ったのは明らか電車だった。
先頭は、戦車のような轢き殺す気満々の外見で2両目以降は客車に、なっていた。
客車の窓から人間のような者が見えたがよく分からなかった。
選択肢として電車を止めたり、飛び乗ったりする方法もあったがここは魔大陸。魔族の国という事も考えて不正をなるべく働かないようにした。
電車を止めて袋叩きにあって殺されたのじゃ話にならない。
あくまで穏便にしていこう。
街の門は線路上にあり、それ以外はなさそうだ。
もしかしたら魔大陸の住人は街の外へは出ないのかもしれない。電車を使い街から街へ移動のみ。
まぁ、この魔法もまともに使えない荒野じゃ仕方ないか…
当たり前だから門をノックしても返事はない。
街の外周を歩き見張りがいないか確認する。
時計回りに歩くがなかなか見張り台が見つからない。この街を見つけた時を思ったがかなり大きそうだ。
30分ほど時計回りに確認するが一向にないので引き返す。
最初の線路の所まで移動して電車が来るのを待つ。
一応【射出】で塀を超えることも出来るがそれは最終手段。まずは穏便に街に入る方法を探す。
予想通り10分ほど待つと電車が地平線にからやってくる。
何度か電車とすれ違いだいたい3時間おきにここを通る事を確認していたのだ。
しばらく待っているとゆっくりと速度を落とした電車が近づいてくる。
線路の横に立ち手を振る。
うん。運転手は見向きもしないね。いや、角度的に見えないのかな?
電車は門の前で止まり門が開門する。電車と一緒に横を歩いて街の中に入る。
閉門。
さて、ここからは鬼が出るか蛇が出るか。
先を行く電車を追いかけて線路を進む。




