48話 ゴブリンの王
「【ドライスピア】」
「ゴゴォブゴォゴブ」
サクラ先輩の槍がゴブリンの胸に突き刺さる。
と、同時にゴブリンから水分が失われていく。
本日3回目のゴブリン襲撃。サクラ先輩が察知してすぐに自分で討伐する。
あれ?僕いらなくね?
まぁ、それはそれでいいか。これから先にサクラ先輩が安全ならいいか。
それに僕の課題もわかった。
「やっぱり探知系の魔法がないと困るな~」
「ソラ君は使えないんだっけ?」
「はい。どうしても周囲の魔力を感知することが苦手で…」
「ソラ君は魔力の貯蔵量が多いからなのかな?」
「そうみたいですね。おんなじことを魔法の先生にも言われました」
探知系魔法を使うには周囲に自身の魔力を拡散して察知するのが一般的らしい。
しかし僕の場合は拡散はできるのだが、拡散した魔力を感知しようとしても僕自身が大量の魔力を所持している為、妨害元になっていて察知できないのだ。
拡散する魔力を増やしたりとかいろいろためしたのだが、うまくいかなかった。
「冒険者になるのに探知系魔法が使えないのは致命的ね」
「そうなんですよ。だから何とかならないかといろいろ考えているんですけど、なかなかいいアイディアが浮かびません」
「たいへんねー。探知魔法なんて基礎中の基礎だからできないことが逆に驚きね」
「この先何とかできるように努力します」
「3年後が楽しみね」
「はい。それまでには…」
「ゴブゥ!」
「今日は多いですね。」
「ほんと、1日4度も襲撃されるなんて…」
ゴブリンの死体を処理していた時に襲われる。
サクラ先輩探知魔法ができるはずなのに今回は完全な奇襲だった。
なぜ?
(ソラ君気を付けて、このゴブリン私の探知魔法に引っかからなかった)
(むしろあえてここで姿をさらしたのが気になります。考えられるとしたら囮ですかね?
もしかしたら同様に探知魔法に引っかからにゴブリンがいるかもしれませんね。)
サクラ先輩と念話で情報交換する。
格納石から[勇者の刀]と木刀を取り出し腰に掛ける。
まだ抜刀はしない。
刀に手を当てて低く構える。
(左の木の影に1匹います)
(ソラ君の背後から3匹近づいてきます)
(カウント3で行きましょう。僕は背後の3匹を足止めしますので、サクラ先輩は木の影をお願いします)
別に探知魔法だけが探知する方法ではない。
周囲に注意を向ける。小さな草の根の音。何かが風に当たる音。森で感じられるすべての音や感覚を意識して感じる。それは常にできることではないが、戦闘中となれば話は別。やるかやられるか。やらなければ死ぬだけ。
(3、2、1、0!)
カウント中に後方の物音をよく聞き感じ取る
カウント後に自身の体を後方へ倒して自身に【射出】の魔法をかける。
空中で体を回転させてゴブリンが隠れている木の奥の木の側面へ着地。
そこを足場にしてゴブリンを背後から切り裂く
「【抜刀斬撃】」
武技発動を発動して空中にいるにも関わらず関係なく一撃必殺の斬撃を放つ。
【抜刀斬撃】は刀を左腰にさしている状態で自分自身に強化魔法をかける武技だ。
なので[勇者の刀]の特性の魔力吸収の影響を受けない。
ゴブリンを切り捨てながら着地。
その速度についてこれずに2匹は固まっている。
左手で木刀を抜いてそのモーションのまま1匹に投擲しながら【射出】。ゴブリンの心臓を貫く。
木刀といえど【射出】による運動量の操作によるその貫通力は驚異的なものになる。
しいて問題点を上げるとすれば本来木刀は突きを行う為の設計はされていない。
僕は本物の木刀はよく知らないが、少なくてもこの世界の木刀は叩くことを目的としている為に木がしなるようになっている。
そんな木刀に貫通力を与えるほどの衝撃が本来想定されていない方向からかかればポッキリ逝くだろう
「お前も!」
3匹目へ【射出】して瞬時に切り裂く。
さて、僕らで確認できた5匹がすべてならいいけど、
ほかにも感知できないゴブリンがいるかもしれない。
(こっちに大型のゴブリンがいる。そっちかたず居たら来れる?)
(今行きます。【空駆・改】【射出】)
【空駆・改】で空中に足場を作成してそこを思いっきり蹴ってジャンプする。その時の運動エネルギーを【射出】で増大させる。
魔法のコンボでサクラ先輩の方へ瞬時に移動して周囲を確認する。
最初に発見して囮ゴブリンはサクラ先輩によって氷漬けにされて転がっている。
僕が目視してゴブリンの方を確認すると今まさにサクラ先輩の槍で貫かれた所だった。
「しまった!」
(カバー入ります)
槍を深く差しすぎてて一瞬で抜けない。その隙を大型のゴブリンが遅いかかる
身長3メートルくらいありその頭には王権がある
ゴブリンキングかな?
「【分剣】、【飛剣】」
【分剣】の武技を使い刃だけの魔力の刀を作り出す。この【分剣】も勇者の刀本体に魔力を使ってるわけではないから魔力吸収は発動されない。
その魔力でできた刀を振るい、それに【飛剣】の武技をかけて斬撃を飛ばす。
一応応用技だが魔法の刀作成→飛剣発動と1テンポ遅いためなかなか使い勝手は悪い
ゴブリンキングは魔力の刃を左手に持つ盾で受け止めていなす。
うん、なかなかやる。
左手に大型の盾。右手にはクレイモアのような大型の剣。
よくその刀を振れるな。
って、関心してる場合じゃないか…
(たすかったよ)
(お互い様です。)
サクラ先輩がゴブリンから槍を引き抜き僕の左手側に合流する。
(それより周囲にほかのゴブリンはいませんか?)
(そんな周囲の心配なんでできるじょうたい?あれってゴブリンキングよね?)
(たぶん。)
(ゴブリンキングってB級の魔物よ。E級の私達じゃ倒せないわ。ここはまずひきましょ)
(それはできないです。ここでコイツを野放しにすればこの森に根ずいてしまいます。)
そう、ここで僕らが逃げると、フランツ領の森であったようなゴブリンの集落が発生する。
いや、今までの統制ぶりからもしかするとすでに集落は存在するのかもしてない。
どちらにしてもここで処分する。
(サクラ先輩はさがっててください。ここからは本気でやります)
(いままで手をぬいてたの?)
(常に全力ですよ?魔法の出し惜しみはしてましたけど…)
「【無限魔力炉】」
この魔法は異世界転移者のみに与えられる専用魔法。
転移者は僕の前世の…通常の人間の体をしている為に魔力の精製器官が存在しない。
その為神様は転移者へ代用として魔力を生み出すエクストラスキルを与える。
僕の場合は神様が機転を利かせて【魔力無限炉】を教えてもらえるように取り計らった。
僕は転生者。その為僕の体には魔力を精製する器官が存在する。
つまりこのスキルを発動させることによって本来の2倍の速度で魔力回復を図れる
(正確には魔力を精製する器官は寝ている間にしか活動しない為、意味合い的には回復しないはずの魔力が日中に回復する…ということだ)
「【ロックウォール】」
ゴブリンキングとの間に岩の壁を生み出す
久々の土魔法の気がする。この頃は武技でのごり押しがおおかったからな。
「サクラ先輩下がっててください。」
「え?は、はい」
サクラ先輩には後方に下がってもらい【空駆・改】を使い土壁を跳び越す
え?なんで壁をつくたかって?
ゴブリンキングがサクラ先輩の方に行かないように防波堤のつもりだ。
「いきます!【視界内転移】」
「ゴォゴブゥォゴォゴブゥ?」
ゴブリンキングよの距離を一気に詰める。
右手に魔力を集める。
「【マジックショット】!」
右手から魔力の波動を生み出しゴブリンキングの腹にお見舞いする。
魔力の波を受けてゴブリンキングな苦痛を浮かべ一瞬怯む。
右手で腰に掛けた勇者の刀に手をかける。
「ォォゴォゴブゥォォゴォブゥ」
ゴブリンキングが盾でこちらを殴ってくる。
【体内加速】を発動させてしゃがんで回避する。
うん、この程度なら4倍速のみで対応できそうだ。
前回戦ったのは6年近く前になるのか。その間に僕の身体能力も向上している。
「【抜刀斬撃】」
武技による補助を受けて刀を振るう。
しゃがんだまま放った一撃はゴブリンキングの盾を持つ腕を切り裂く。さらに返しの刀で胴体に刀を振る
しかしそれはクレイモアで受け止められる。そのまま剣を下に振られ押しつぶされそうになる。
相手は身長3メートル以上あるゴブリンだ。つば競り合いに持ち込まれて覆いかぶさるように体重をかけられてしまいだしゅつできない…
ちょっとまずいな。
いくら【体内加速】で高速に動けるようになっても動けないなら意味がない。
「【ォォォォブゥゴォブゥ】!」
その状態からゴブリンキングが詠唱を行う…
「な!?」
僕の周囲の土が盛り上がりゴブリンがはい出てくる。
なにそれ聞いてない?
はい出てきたゴブリンは3匹。うーん、数的不利だな。
ゴブリンキングの後方を見る。
【視界内転移】
瞬時にゴブリンキングの後方に転移する。
僕のいた場所にクレイモアが突き刺さる。
【飛剣】
左手で木刀を取り出し魔力の刃を生み出す。
ゴブリンキングは手下のゴブリンを掴みこちらへ投げる
ぐちゃ
空中で魔力の刃をもろに受けたゴブリンが絶命する。
ゴブリンキングは残りの1匹を掴み、食べる
「こいつゴブリンキングかよ」
パクっと丸呑み。
ボキボキと骨が砕ける音がする。
何のために?
あまりの光景に絶句して眺めていると…
ゴブリンキングの腕の切断部の肉が盛り上がってきて、失われた腕が再生される。
「ゴブリンキングってそんなこともできるんですね?悪いけどそっちの雑魚からやらせていただきます」
【射出】を駆使してゴブリンとの距離を詰める。ゴブリンは手荷物こん棒でこちらを迎撃しようとするが…
【視界内転移】ゴブリンの後方へ転移。
そして左手でもつ木刀で打撃。【身体強化】も発動して力任せに振る。
ゴブリンが苦痛に顔を歪める。その表情を見ることなく今度は右手の刀で首筋を切り裂く。
「【ォォォォブゥゴ」
「させるか!」
【視界内転移】を連続使用してゴブリンキングとの距離を詰めて詠唱中の口へ木刀を突き刺し詠唱を妨害する。これでしばらくは魔法をつかえないだろう。
あいた左手で右手に持つ刀をにぎり両手で力を込めて突き刺す。
先ほどと同じようにゴブリンキングはクレイモアでガードしようとするが先ほどと違い今度は武技を発動させる
【分剣】
僕の左右から2本の魔力でできた刃を発生させる。魔力でできた刃と同時に攻撃をおこなう
僕の持つ刀はクレイモアに受け止められるが左右か魔力の刃がゴブリンキングに突き刺さり深く傷つける。
しかしゴブリンキングは苦痛に顔を歪めながらも怯まずに力で僕を押さえつけて再度手下を出すために詠唱を開始するが、そうはさせない。
くそ、口内に木刀突き刺しても詠唱するとかもしかして言語に意味はないのか?
「【視界内転移】」
この手を使うと一方的になるから使いたくなかったけどこのまま切り合ってもらちが明かなそうなので勝負にでる。
てか、さっきもすぐにこの手で行けばよかった。正直サクラ先輩に本気で行くと言っておきながら手を抜いていたことを後悔する。
よく考えたら何が楽しくてゴブリンキングと斬り合いをおこなわなければならないのだ。
【視界内転移】は自分の視界内の2メートル以内の好きな位置に転移できる魔法だ。
なので、つばぜり合いを行っている最中に一瞬にして後方へ転移することができる。
相手が振る剣は空を切り、こちらは剣はあいての背中は引き裂く。
悲鳴をあげながらゴブリンキングは回転し僕のいた場所に剣を振る
しかしそこには僕はもういない。
再度【視界内転移】を発動させて相手の死角へ移動していのだ。
勇者の刀を左腰に構える。
【抜刀斬撃・分剣】
武技による強化された腕でで刀を振るう。それと同時に今度は最大出力の6個魔力の刃を生み出し同時に攻撃する。
「ゴォゴブゥゴォォォゴブゥゴゴブゥ?」
ゴブリンキングが斬撃を受けた倒れる…
おきあ・・・・がらにね
「さくらせんぱーい。おわりましたよー」
叫んでから思った。念話を使えばよかった。
(【パーティ】登録してるんだから念話で話せばいいんじゃない。)
(叫んでから気が付きました)
サクラ先輩が岩壁を横から回ってくる。
「大丈夫だった?」
「はい。ちょっとびっくりしましたけど何とかなりました。」
「ソラ君ってやっぱすごいね?B級の魔物をひとりで倒すなんて…」
まぁ、一応2回目なんだけど、それは言わぬが花かな?
しかしあれだな、僕のなかではゴブリンキングはすでに恐れるに足らないな。
これでB級なのか…王都にもどったら魔物のランク表とかを調べてみよう。
ゴブリンB級とか、もしこの世界にドラゴンがいたらランクはどうなるんだろう?
S級とかなのかな?




