47話 馬車
「それではソラさん、冒険者への本登録を行いますので学生証の提示をお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
この世界は自分の情報を専用の身分証明カードに発行できる。
そのカードにすべて学生証や冒険者手帳等の情報を登録することができるのだ。
万が一なくしてしまっても僕の魔力情報から再発行が可能だそうだ。
魔力情報と本人の情報が紐づいている為、逆に複数登録することができない。
例えば冒険者ギルドの鉄則を破り、出禁になった場合、その身分を隠して新たに冒険者登録を行おうとしても魔力情報から出禁になった方の情報が出てきてしまう。
まぁ、普通に暮らしている分には便利な機能だけれどもね
あ、ついでに言えばこの身分証明カードの情報(魔力情報)は知りうる人間の国すべてで共通しているらしい
前世でいうインターネットみたいなものだろうか?そういう魔力が確立されているらしい
いやー、先代勇者様、マジぱねぇです。
ただし、あくまでもカード情報のみの共有でそれ以外の機能は一般にはないそうだ。
カグラさん曰く、国民には開示されていないが、各国の国王には一応メールのような機能が専用の魔道具で使えるらしい。
「はい、おまたせしました。えっと、ソラさん13歳。王都第二上級学園1年生ですね。あってますか?」
「はい。ありがとうございました」
受付の女の子から学生証を受け取りサクラ先輩の所に向かう
「お待たせしました」
「ずいぶん早かったね。大丈夫だった?」
「大丈夫もなにも学生証わたしただけでしたよ」
「あれ?ふつうはG級冒険者として問題ないかいろいろ質問されるんだけど…」
「特に聞かれなかったけど…名に聞かれるんですか?」
「学園での成績とかかな?13歳未満の冒険者見習いはあくまでも冒険者のお付きとしてしか活動できないからそれまでの冒険者としての実績はすべて0になってるの
だから、一応学園の卒業報酬としてG級冒険者に登録はできるけど、そもそも冒険者として活動できる技量があるか質問されるんだけどな。私の時は序列とかきかれたかな?」
はて、何も聞かれなかったな
「あ、ちなみにソラ君は冒険者の階級はいくつになってる?」
「ちょっと待ってくださいね」
学生証を取り出しカードに魔力を込めると…
名前[ソラ]
レベル[28]
王都第2上級学園1年生[冒険者学部]
序列[2位]
使用可能残高[1億3000万ギル]
冒険者登録[E級]
備考欄[]
あれ?E級になってる。なんでだろう?
サクラ先輩にも見せる
「サクラ先輩、なんかE級になってます。普通G級から開始ですよね?」
「え?・・・ほんとだ。何かの間違えかな?」
「ちょっと聞いてきますね」
「あ、うん。私も行く」
受付嬢にさっき登録したばかりなのE級に昇格しているのはなんでか聞くと…
「あぁ、それはですね。…」
本来冒険者としての階級を上げるた為には下記のことを行うことが必要とされる
1 冒険者ギルドを通した依頼を達成する。
2 魔物の素材を売る際に討伐したとして冒険者ギルドに申告する。
上記のことを行うことで冒険者ギルドが設定したポイントが加算されるらしい
そしてそのポイントが一定以上になると昇格できるようだ。
(一応、C級以上になるには昇格試験があるらしいが…)
今回サクラ先輩が護衛依頼を出すのも、僕の冒険者のランクを上げる為だ。
一応レベリングってことかな?
あ、普通にズルです
ただし、仲介に冒険者ギルドが入って依頼料からいくらかの金額をしょっ引いているので、コソットやる分には見逃してくれるようだ。
でだ。
本来であれば見習い期間中の者は正式に冒険者に登録しても、その期間中に討伐した魔物や依頼の達成情報は反映されないらしい。
しかし、僕の場合は2年前に魔王迎撃作戦にカグラさんと参加したときのポイントが冒険者ギルドの本登録時に反映されたらしい。なんでも国王の指示で特例として認められたようだ。
まぁ、魔王を迎撃してもE級ってところが妙に現実味がある
普通異世界なら…
「あ、あいつ冒険者ギルドへの登録と同時にA級だってよ!」
とか
「なんなんだあの新人!?新入りのくせにS級冒険者だと!?」
ってなるもんでしょ。
「って言う指示の元、特例としてソラさんには王都での魔王襲撃時の戦闘報酬としてポイントが加算されていますので2階級特進されております」
「ありがとうございます」
「いえいえ、何かありましたらなんでもお聞きください。あ、それとそちらの女性は?」
横で話を聞いていたサクラ先輩のことを指して受付嬢が聞いてくる
「あ、私は…ソラ君の婚や」
「僕の先輩です。これから旅に出るみたいのでお見送りです」
「むー」
サクラ先輩が危険なことを口走りそうだったので止める
なんだよ婚約者って。
「ほほう。旅にですね~。これは狙ってもいいんですよね?」
「え?何をですか?」
「だめです」
ん?いったい何のことだろう。
よくわかんないな…
「ほら、ソラ君そろそろ行きましょ?」
「え?護衛依頼は?」
「もうE級でしょ?ほらいくよ」
「そっか、はーい」
サクラ先輩がステステと歩いていく
そう言えばサクラ先輩はこれから旅をするのに大した荷物は持っていない
背中ほどの大きさのリュックサックくらいだ。あ、あと槍をもってる
「サクラ先輩。荷物ってそれだけですか?」
「え?あぁ、これだけよ。実はね、冒険者として稼いだお金で魔法鞄を買ったのよ」
「お~」
いいなー。僕もほしいな~
「ソラ君も頑張って稼いで自分で買うことね。すごく便利よ」
「いくらくらいするんですか?」
「このバックは友達のツテで安くしてもらって買ったんだけど、もしきちんとしたところで買ったら1,000万ギルくらいかしらね」
「あ、なら即買いできますね」
「え?」
「そういえばサクラ先輩には話してなかったですね。実は僕…」
武術トーナメントの賭けで大儲け
がっぽがぽ
そして残高1億ギル以上…
「・・・」
あ、サクラ先輩固まっちゃった
いや、この2年間特にお金使わなかったからな~
武器も国王から借りた[勇者の刀]があるしな~
防具は今朝返してしまったけど3年間鎖帷子をレンタルしたのでほとんどお金は必要なかった。
そんな感じでほとんど使ってない為3年間でほとんど貯蓄額は変わっていない
「サクラ先輩?ほらそんな所で固まってないで行きましょ?」
「私が必死に勉強して何とか実家の経営を軌道に乗せたのに、ソラ君は4日で1億以上?理不尽だ…」
「まぁまぁ」
それからしばらくサクラ先輩の放心状態が続いた。
「ほら、機嫌直してくださいよ。ここのお店のクレープ美味しいですよ?
あ、こっちのイチゴクレープとハムクレープください」
「そんな物でつられるような年じゃないよ…」
「どっちがいいですか?」
「イチゴ…ッハ。図ったな!?」
「なんなんですかもう。はい、イチゴのクレープ。」
「ありがと」
それから侍の国発祥らしいクレープを食べて王都を出る
…なんでも侍の国って言えば許されると思うなよ!?
王都から北の森へた基本乗り合い馬車は出ていない。
森自体がそこまで強くはないがダンジョンからあふれ出た魔物が多いため危険なのだ。
ではどうやって移動するのか。
それは馬車をレンタルする。
僕たちも王都から北の村までの片道馬車をレンタルする。
え?帰りはって?【空駆・改】で飛んでくるので必要ない
そもそも行きも本当は飛んでいきたいのだが、
サクラ先輩の自分の力で歩いて旅をしたいと言う意見で馬車で行くことになった
歩きたいと言いつつなんだ馬車なのか聞いたら…
「いや、一応街道があるとはいえ森の中を数か月とかヤダよ
夏になったら虫が出ちゃうじゃん…」
と、本人はもうしておりました。
「前にも思いましたけど、サクラ先輩って馬車の操作できるんですね」
「一応ね。これでも商人の子供ですから。たまに材料の仕入れとかで馬車を運転してたからね」
「へー。王都の中をですか?」
「もちろん。だから狭い道をか、急にとびだしてくる子供とかに注意しながらだから我ながら操縦技術もあがったと思うわ」
「難しそうですね」
「そんなことないわよ?そりゃきちんと操縦しようとしたら練習する必要あるでしょうけど、こんな道幅の広い場所なら走らせること自体はできるでしょ」
「そんなもんですかねぜー?」
「やってみる?」
「やりません」
いや、だってめんどくさそうじゃん
それに、それを練習する暇があったらもっと快適に空を飛ぶ魔法を開発したいな…
僕の【空駆・改】は一応高速移動には向いているが【射出】で無理やり運動ベクトルを操作して移動しているので乗り心地は最悪らしい。
自分じゃわからないけど…どうなんだろうか?
「あ、魔物来ます」
サクラ先輩が馬車を止める
いまだに僕は探索魔法をまったく覚えていないので事前察知は他人任せだ。
「前方から…ゴブリン3匹」
「はい」
サクラ先輩は自前の槍を取り出し構える
僕は勇者の刀をとりだしてサクラ先輩の前に立つ
「ゴブゥ」
「なに言ってんだからわかんねぇ」
「むしろソラ君はわかったんですか?」
「子供の時はね。」
ゴブリンがこちらに走り出す。
2匹は棍棒。一番後ろにいるのは杖を握ってるかな?
ゴブリンシャーマン。
まれに出現する知的なゴブリンだ。
「ゴォゴォゴゴブゥゴゴォブゥゴォゴォゴゴォゴォブゥ」
ゴブリンシャーマンが立ち止まり呪文を詠唱する。
杖から火の玉を生み出し打ち出した。
前を行く2匹の間を抜いて僕に向かって飛んでくる。
弾速はまぁまぁかな?
格納石から木刀を取り出し左手で振るう
「【飛剣】」
右手に持つ[勇者の刀]は特性として魔力吸収を持っている。それは刀の部分に触れる全ての魔力を吸収して刀の所持者に魔力を供給する。
一見かなり優秀な効果に見えるかもしれない。
いや、実際かなり強力ななんだけどね。
しかしその勇者の刀の特性の魔力吸収にも欠点がある。
それは一部の武技を発動できないのだ。
僕の場合【飛剣】は剣に魔力を集めてそれを剣を振る動作に合わせて対象に飛ばす。
しかし魔力吸収によって剣に集めた魔力が吸収されて自身に返ってきてしまうのだ。
そのため訓練用の木刀を取り出してそちらで武技を放つ。
相手の魔法を吸収しても良かったがその場合、魔法の着弾後すぐに近接型のゴブリンに対応しなくてはならない
ならば先手を打って魔力の刃を飛ばす。
放たれた魔力の刃は火の玉とぶつかり爆発する
爆煙の中からゴブリンが出てくる
「私の事も忘れてない?」
サクラ先輩が槍を構えて僕の右手側からゴブリンに、向かっていく
僕は左手側から距離を詰める
「【アイススピア】」
サクラ先輩の槍の先が白く輝く
その槍てゴブリンを突く。
ゴブリンが棍棒を向かって槍を弾こうとして…
「ご!?」
「くらえー」
棍棒が凍っていく。
その異変に気付き、ゴブリンが棍棒を手放そうとするがすでに遅い。ゴブリンの腕も氷始める。
「ソラ君今です!」
「はいよー」
木刀をサクラ先輩の方へ投擲する
ここまでは事前に念話で打ち合わせた状態だ。
視点を目の前のゴブリンをもどす。
「ってあぶね!」
気をそらしてしまった。
そのスキをゴブリンに突かれる。
体をひねり回避する。
そのまま回転を活かして刀で切り裂く。
ゴブリンの左腕に、あたり肉を斬る。
しかし、不安定な体制からの一撃だった為骨を斬ることは出来なかった。
しかし苦痛でゴブリンが、のたうち回る。
今度はきちんと地面に足をつけてゴブリンの胸に刀を突き刺す。
この世界の生物には魔力を生成する臓器がある。
その臓器により身体中に魔力が行き届かせる。
逆に魔力が身体中からなくなると身体の器官が正常に機能しなくなる。すると意識喪失を起こす。
それは人間も魔物も同様。
刀を突き刺されたゴブリンが、最初は痛みを感じて叫ぶが徐々に静かになる。
魔力吸収により身体中の魔力を吸い取る
もともと低級の魔物のゴブリンは大した魔力を持っていないが相手からしたら痛手だろ。
てか、意識失ってるし。
刀を引き抜きサクラ先輩の方を見ると、ちょうどゴブリンシャーマンにアイススピアを突き刺さて冷凍しているところだった。
「サクラ先輩お疲れ様です」
「ソラ君のフォローのおかげだよ。ありがと」
「いえいえ、サクラ先輩お見事でした。」
そのあとゴブリンのから魔石を取り出し燃やす。
森に死体を放置するとその死体に魔力がたまりゾンビ化するのだ。
なので基本的に魔物は殺したら即処分するのが一般的だ。
あ、ちなみにだが、この世界では魔物の肉も食用として認識されている。ゴブリンの肉も同様に食用として取り扱われている。
まぁ、味はやばいけど。
一度食べたことあるけど肉自体が火を通してもねちょねちょしていてかなりまずい。
二度と食べるか!
片付けをして馬車に再び乗る。
馬車の旅は続くのだった。




