44話 進級試験
「それでは始めてください」
季節は冬。いや、もう少しで春かな?
僕は現在上級学園に通う為の試験を受けている。
上級学園はより専門的なことを学ぶため、試験自体は自分の学びたいことを学ぶに足るかの試験を行うのだ。僕が受ける試験は冒険者学部。
試験内容は座学による一般的な基礎知識と
実技試験にによる魔物に対する戦闘技術があるかどうかの試験だ。
座学の試験自体は一般常識のような問題なので簡単だった。
「ソラ君どうでした?」
「たぶん大丈夫かな?そっちは?」
「僕は大丈夫だったけど…」
座学の試験が終了し、ヴィクトルが話かけてくる。
そして二つ隣の机に方に指を指しす…
そこには机にぐったりしてるジュストの姿があった。
さらばジュスト。君のことは忘れないよ…
「できた。」
「ん?エルサも大丈夫だった?」
「うん」
「よかったね。これで来年度から冒険者だね」
「まだ、実技、ある」
「そうだね。がんばろうね」
「うん」
「イチャイチャしてんじゃねーよ」
お、ジュストが復活した。
お帰りジュスト。
「では続けて実技の試験ですので各自戦闘が行える服装に着替えて校庭へ集合をお願いします」
今回冒険者試験を受けるのは全部で10名。
え?なんでそんなに少ないのかって?
そもそも冒険者になれるのは成人になってからだ。この世界での成人は13歳だ。
つまり通常の学園を卒業することですでに冒険者にはなることができる。
なので冒険者になるだけならすでにできるのだ。
では、なぜ僕らは上級学園に行くのか?
それはより専門的な知識を学ぶためだ。
冒険者とはなんなのか?
この世界には魔物が存在する。
では、魔物はどこから来るのか?
それはこの世界に乱立するダンジョンからあふれ出てくるそうだ。
ここまではこの世界の常識。
では、ダンジョンとはなんなのか?
洞窟など閉鎖された空間に魔力がたまり時間が立つと魔石が自然発生する。
その魔石がさらに長い年月をたち魔力を吸収することでダンジョンコアになる。
ダンジョンコアになると意志を持つように洞窟自体を構成し直しそこに宝物を設置する。
そしてその宝物を目指して冒険者がダンジョンに挑む。
そこで冒険者が魔法や剣技をつかうと洞窟内の魔力濃度が濃くなる。
するとその魔力を吸収してダンジョンコアが成長するのだ。
で、ダンジョンコアは魔力を使い強力な魔物を作ったり、より良い宝物を作成する。
宝物目当てに来た冒険者を作成した強力な魔物と戦わせる。
冒険者を倒せれば体内の魔力製造の臓器を吸収して魔力を作成する。
倒せなくても戦闘で魔力を放出させればそれでOK。
そうして時間をかけてダンジョンは巨大化していくのだ。
え?なんでそんなに詳しいかって?
それは、カグラさんが勇者から聞いた話を教えてもらったのだ。
でだ、話がだいぶそれてしまったが、この世界の冒険者はどんなことをするのか?
冒険者の仕事は3つある。
依頼業務、素材売却、宝物捜索
一つ目は依頼業務。
街で起きた雑用や周囲で発生した魔物や動物の駆除。等々を街の住人や商人が依頼をだして、それを冒険者が受注、実行するのだ。
比較的簡単な内容が多いが、依頼主が基本街の住人と言うこともあり旨みはあまりない
(中には緊急でギルドや国が発行するものもあるが…)
だって、街の近くに依頼料を払ってまで討伐してほしい者なんてそうそう出ない。
せいぜい僕がこの前やった護衛任務だ。
二つ目は素材売却。
ダンジョンからあふれた魔物を狩ってその素材を売却する。
これが主な冒険者の収入源だ。もちろん討伐難易度によって素材の買い取り額は大幅に違ってくる。
要は自分の背丈にあった魔物を狩ろう。
また、報酬は少ないが、街の周囲に生えている薬草を採取して売却…と、言うこともできる。
ほとんどが本職の副業程度の買い取り料だ。
3つ目は宝物捜索
ダンジョンに潜り、その中にある宝物を探す。
無事見つけることができれば一獲千金。しかしその大半はダンジョン内の魔物の素材を売却…(結局素材売却)という者は多い。ダンジョンも早々貴重な魔力を使った宝物を取られるわけにはいかないので、だいたい宝物の目の前にはボス級の魔物が配置されている。
この世界はゲームではない、実力のわからないボスに挑んで死んでしまっては元も子もないのだ。
基本は隠し宝箱を探してダンジョン内を捜索。ボス部屋まできたら挑まずに帰る…と、言うのが多いらしい
僕たちが上級学園に行く理由。
それは勿論ダンジョンを攻略して宝物をゲットする為だ。
自身の実力に合った魔物を討伐して生活していくだけなら別になんの問題もないと思う
(まぁ、途中で死ぬリスクはあるけど…)
しかし、僕らが目指すのはダンジョン攻略。その為の知識を集める必要がある。その為の上級学園だ。
勿論、現在の冒険者活動を行っている人に弟子入り?傘下に入り自身の技術を磨くのもいいだろう。
(てか、ほとんどがソレ。ふつうは上級学園に行ってわざわざお金を払って学ぶ人はいないよね。まぁ、僕は特待生だから授業料タダだけど…)
でも、僕たちが目指すのはダンジョン攻略。
ならば、まずは知識だ。経験はその後でも問題ない。
「では、これより実技試験を開始する。各自訓練用の動物相手に5分間立っていろ」
実技試験は簡単。校庭に設置された直径10mの檻の中にイノシシに似た動物が1匹
檻に入り5分間立っていられれば合格。
真剣の武器は使用不可。学園が認めた訓練用の武器(木剣・盾・槍棒)は使用可能。
5分間逃げ続けてもいいし、さくっと動物を無効化しても良い。
ただし、殺傷することは不可。
あくまで自身の知識(魔法)と実力(武技)のみで対応すること。
「じゃぁ俺からだな」
最初はジュストからのようだ。武器は両手用木剣を選ぶ。
「かかってこいやー」
檻に入りイノシシを挑発する。
イノシシっぽい動物だし呼称イノシシで良いよね?
ってかそもそも僕はそんなに動物に詳しくない。あれがイノシシなのかすら正確にはわからない。
イノシシはジュストに向かって突進を開始する。
ジュストは再度ステップでかわして横から斬りかかる。
ほう、無効化する作戦かな?
しかし、イノシシもかわされても速度を緩めず檻の壁まで速度を緩めず走ることでジュストの斬撃を回避した。
うん、まぁそうなるよね?
結果、イノシシは檻の壁に激突。あー、痛そう…
そこにジュストが一太刀。
「グブィィッィイイイイイ」
「おっと!?」
もう一匹のイノシシがジュストに突進をする。それを回避する為に一太刀浴びせることができなかった。
そう、檻の中には複数のイノシシがいる。
その数5匹。
今度は複数のイノシシが同時にジュストへ突進を開始する。
檻の外周を回るように走り突進を回避する。
しかし、方向転換したイノシシはは同じように外周を回りながらジュストを追いかける。
追われる人間と追うイノシシ。
…立場逆じゃね?
「ギィヤァァアアアアアアア!」
結局5分間、発狂しながら外周を走り続けてジュストは合格した。
いやまぁ、いいんだけどさ、それってどうなのよ?
どれから2.3.4人と合格してくる。
そもそも入学者自体100名規模でいたのだ。その中で冒険者になりたいと思う者は10名のみ。
いや、ダンジョン攻略を目指したい者が10名のみ。
つまりその10名は基本的にかなりの向上心がある者なのだ。
向上心は人の実力を伸ばす…と、どこかで聞いたことがる。
まぁ、やる気ないよりかはあった方が良いだろうから当たってる気がするが、
結局の所、この試験自体落ちる者などほとんどいない。
あくまでも、やる気がある、ない。を確認するだけのようだ。
だって、5分間全力で走り続ければ実技は合格なのだから。
(捕捉しておくと【身体強化】の魔法を授業で習ったので、ほぼすべての生徒が多少は【身体強化】が使える…まぁ、強化倍率は低そうだけど…)
「では、次は僕ですね?行ってきます」
「がんばってこーい」
次はヴィクトルの番のようだ。
片手盾と片手剣を持つ
ヴィクトルも出合った時は僕と同じくらいの身長だったのに、いつの間にかジュスト並みの身長になった。
信じられるか?知り合い二人が気が付くと身長160㎝くらいあるんだぜ?
いや、引くわ~。いや、だってまだ13歳ですよ?
僕もそのうち大きくなるもん!
「こい!」
茶髪をなびかせ、イノシシを挑発する。
いやー、かっこいいね。ほら、周りで見ている女子が黄色い悲鳴を上げてるよ。
その様子をすごく微妙な顔でジュストが眺めている
入学当初は高身長でイケメンのジュストはかなりモテただろう(性格は酷いけど)
それが今ではその友達の方がイケメンボーイになってしまった。
はてさて、ジュストはこれから持ち直せるのだろうか?
え?僕はって?
僕はイインダヨ。だってカグラさんやサクラ先輩いるもん。両手に花だよ
「光の精霊よ。我を土と同化させよ【ウェイトアップ】
からの…【ガード】」
光魔法?による自身の体重を上げて突進に対する耐性を上げて、なおかつ盾の武技を発動させてイノシシの突進を受ける
「「「キャアー カッコイイー ガンバッテー」」」
あ、ジュストが俯いちゃった。
「【ガード】」
1匹目の突進をはじき、次の突進に備える
盾の武技の【ガード】は発動後直後の盾に接触した物理攻撃の衝撃を半分にしてくれるスキルだ。
基本中の基本スキルで盾役を行う者は必須スキルらしい。
この世界での武技所得は完全ランダムだ。
本人が使いたくても武術のレベルを上げたごとに覚えられる武技で自身の使う武器を選ぶ者が多い
それは上級者になればなるほどそう言う傾向にある。
ヴィクトルの場合には運よく盾のレベル2の時に覚えることができた為何の問題もなかったのだが、
中には高レベルまで上げても【ガード】を覚えられない者もいる。
そう言う者はどうするのか?
盾役を諦めざる負えない。
(まぁ中には自身で【ガード】に相当するエクストラスキルに目覚めてしまう者もいるそうだが)
「【ガード】」
その後も基本は横移動で回避して、直撃コースを武技を発動させて突進を受け止める
複数同時に突進してきた時は…
「【シールド1】」
自身の周囲1メートルに全方位の不可視盾を発動する武技を発動させる。
もうそれ武技でもないんでもないじゃん。ただの魔法だよ。
って思ってしまうほど優秀な武技だ。
ずっと【シールド1】を貼っていればいいと思うのだが、後で本人に聞いたところによると
【ガード】も【シールド】も再使用までにリキャストが存在するらしく、
【ガード】はリキャスト5秒 【シールド】はリキャストは発生範囲×60秒らしい
ちなみに【シールド〇】の〇の部分は範囲指定をしているらしく、最大自身の周囲3メートルまで不可視盾を発生できる【シールド3】まで使えるらしい。まぁその場合リキャストは通常の3倍かかるけど…
「はい。5分間経過しました。ヴィクトル君合格です」
そんな感じで特に危なげもなく5分間耐え切る。
さて、数人ヴィクトルに黄色い悲鳴を飛ばしていた生徒が合格して今度はエルサの番だ
あ、意外と黄色い悲鳴女子の実力は高かったです。
はい、そりゃぁもうジュストよりも…
「行ってくる」
エルサは短剣サイズの片手剣を2本持つ
二刀流ってやつだ。
いいなー。僕もやりたいな…
まぁ、エルサの場合には少し使い方が違うけど…
エルサは特に挑発等せずにイノシシがこちらに来るのを待つ。
1匹が様子見で突進をする。
エルサは当たる直前にイノシシをかわして、さらに背中にまたがる。
そして、その両目に片手剣を突き刺す。
うわぁ、痛そう
「ヒヒッィィィイイイイ」
イノシシが悲鳴を上げながら暴れる。
それをエルサは両目に突き刺して短剣と両足でイノシシの腹部を挟み落ちないようにする
「癒しの精霊よ。我が傷つけし傷を癒したまえ。【ヒール】」
で、5分後に試験が終了するとイノシシへ回復魔法をかけて目を直す
ふつうは部分欠損は初級ヒールでは直せないんだが、『自身が傷つけた』という条件の元で回復効果を指定することで通常よりも高能率された回復魔法をかけられるそうだ。
うん、これ、いろいろ応用が利きそうだな。
「では、最後にソラ君。どうぞ」
「あ、はい」
どうやら僕の試験は最後だったようだ…
片手剣を1本持ち、檻の中に入る。
うわぁー。さっきの目刺し攻撃で完全にイノシシたち怯えてるよ…どうしよう?
「では、はじめ!」
「・・・」
5分後
「終了。ハイ合格です」
いや、何もしてないよ。
5分間なにもしないで立っているだけだ。
まぁいっか。合格できたし
こうして僕ら4名は上級学園冒険者学部への進学が決定したのだった。




