30話 武術トーナメント本戦⑦
「では決勝を開始します。両者開始地点にて待機ください。
観客の皆様は対戦ステージには魔術障壁を張りますので、観客の方はぜっていに手を出さないでください」
いつも通りに開始地点について合図を待つ。
審判の先生による魔法で開始される。事前の調査(雑誌情報)では魔剣術使いらしい。
まぁ、その詳細は全くわからないのだけど…
ただしその剣はすべての者を切断する切れ味を持っているらしい。本当かどうかはわからないが、一応鍔迫り合いはしないようにしよう。
移動方法は全開の準決勝同様【空駆・改】を使用し空中に上がる。高度は10メートルほど。
もっと高度はあげられるが、前回の戦いを見ているだろうから上空も警戒していることが考えられる。
正直空中での移動はそこまで使いこなせているわけではないので魔法で狙い撃ちされたら面倒だ。
場合によっては地上から攻めることも考えいつでも着地できる高度を維持することにした。
「【ボルテージショット】」
岩陰を通り過ぎると後方から魔法が飛来する。
さっきの岩陰に隠れていたようだ。
白髪の長身の少年の手から稲妻のような二筋の電気がうねりながら迫ってくる。
【空駆・改】を使用し足場を作成して横に回避。その後自身を真下に【射出】し緊急着地。
「雷神よ、我にその雷を貸したまえ。【ボルテージショット】」
再度電気の攻撃が放たれる。威力はかなり低いがおそらくこの魔法も純度100%の魔法だろう。
あぁ、対処がめんどくさい。
【射出】による緊急回避で横にずれながら距離を詰める。あとすこしで【抜刀斬撃】の間合いに入るというところでエドモンド先輩はバックステップをして距離を取る。
「ふむ。お前はカグラのような加速魔法が使えるのではないのか?」
「お望みとあれば!」
【体内加速】4倍。まずは小手調べ。
どちらにしても、この距離からの16倍速はMPを無駄に消費してしまう。
再度自身に【射出】を使用して距離を詰める。
相手は魔法による迎撃を行わず腰に掛けていた銀の筒を手に持つ。
【飛剣+抜刀斬撃】。
抜刀斬撃の間合いの少し手前で【飛剣】による魔力の刃を発生させる。近距離からの範囲攻撃だ。
そういえば予選で同じ戦法をとっていた人がいたなー。
「その程度か!」
まぁ、予想はしていたが、手に持つ筒から緑色の光の刃が伸びる。
あー、ライ〇セイバーですね。
縦に一閃。
魔力の刃は切断される。
【射出】による勢いをそのままに自身を回転させながら木刀で斬る。
エドモンド先輩は振り下ろした光の剣を斜めに上に切り上げて木刀を迎撃。
木刀が真ん中から両断される。
ッチ! 事前に注意しようとしていたのにやられてしまった。
一度距離を取り【体内加速】を解除する
「その剣どうしたんですか?」
「コレか?これは…そうだな、カグラの魔法銃と同じ入手先だ。ちなみにこの剣の名前は電剣と言うらしい。なぜか回りからは魔法剣と言われている。」
まぁ、だいたい想像していた通りかな?現代の勇者が調子に乗って作ったのだろう。
しかし、魔法(魔力)も物質(木刀)も切断?するのか…
厄介だな。
「それよりお前はいつまでその木刀で戦うのだ?決勝まで来て訓練用の武器で勝てると思ったか?」
「いやいや、そんなことないですよ。でもこの木刀気にいってたんですよね。父さんからのプレゼントでして…」
「そうか、それはすまなかった。しかし、大切な物ならばそれを扱う技量をみにつけていないお前が悪い。次は何を出す?お前武器をすべて切断して見せよう」
あー。だいぶ自信家ですね。一応貴族の息子だからからかな?
まぁ実際強いのは本当だと思うし、正直4倍速の飛剣をかわされるとは思わなかった。
「ようやってポコポコ斬られるとこっちも困っちゃうんですよね。まだ、王都に来たばかりでまともに武器屋にも行ってないんですよ。」
「そうか…では降参するか?」
なんか、悲しそうな顔してるし
さっきの自身に満ち溢れた顔はどうした?もしかして戦闘狂と言うよりかは単に対戦機会がないだけなのか?
「いえ、降参なんてしませんよ。ちょっとその剣相手に馬鹿正直に斬り合うとこっちの予算が持たないので戦い方を変えさせてもらいます。」
「ほう。良いぞ。どっからでもかかってこい」
嬉しそう…はぁ…
ちなみに一応腰に掛けた格納石4個には、投擲用の投げナイフ2本、予備木刀1本(幼刀【十祭】以前に使ってたもので刃渡りが若干短い子供用)にMPポーション(30)がある。
さらには本家【格納魔法】の中に【射出】起動済みの投げナイフ8本とMPポーションが8個入っている
まぁ、【格納魔法】のことは隠したいのでできる限り使用したくない。
「では行きます。」
【体内加速】×4速 【無限魔力炉】
二つの魔法を発動させて【射出】で後方に下がる
そして岩の弾丸を複数作成してそれに回転を加えて威力まして【射出】で連続発射する。
「ふむ、斬り切れない魔法で圧倒するか。ならば一つ一つ相手にする必要はないな。【縮地】」
エドモンド先輩は左右に高速で移動しながら弾丸を回避する。そして自身が回避不能な攻撃のみ剣を払い岩の弾丸を切断する。
うん、さっきと立ち位置が逆転している。
しかし、先ほどのエドモンド先輩のように近接側に接近を許さない。その為に複数魔法を同時起動する。
対剣士用魔法プランA
縦に10個の岩の弾丸を並べて同時【射出】。
横に回避してもその先にも岩の弾丸がある。それをエドモンド先輩に合わせて連続使用
「ふむ。ならば…【殺電襲】」
うわ~。人のころ言えないけど中2くさい技名。
電剣を横に振ると電気がほとばしり、3回分の岩の弾丸をすべて切断して消滅させる。
むむむ、ならば…
再度バックステップをして距離を取る
対剣士用魔法プランB
地面に手を突き岩壁を作成。一度こちらの姿を相手の視界から隠す。
相手から見えない位置に魔法陣を作成。作成したのは魔法陣の近くに足を踏み入れると起動する、爆発魔術。岩壁破壊してきたら魔法陣が軌道。迂回してきても魔法陣の起爆範囲だ。
「小細工など通用しない【皇蒼真斬】」
岩壁を超える高さにジャンプして雷剣を天にかざす。
すると刃が延長され刃渡り10メートル近くになる
あ、不味くね?
慌てて横に回避。
ジャンプの着地ど同時に剣を振り下ろす。
あー。岩壁と魔法陣ごと切断された。
っく、めんどくさい!
ならばシンプルに!正直コレに対処されたら困る。
対剣士用魔法プランC
相手の体内の魔力の流れを崩す【マジックショット】を複数起動。その数50。
先ほどのプランAは物質を射出していた為雷撃で破壊されたが今回は魔力の塊(波動)なのでおそらくすべてを打ち消すことはできないだろう。
「【マジックショット50】」
「ほう、必殺技の打ち合いだな。こちらも応じよう【皇真暴襲剣】」
技名は無駄にかっこ良いけど、何をしてくるか全く想像できない!
エドモンド先輩は雷剣を地面に突き刺す。
するとエドモンド先輩の周囲に光の剣が8本生み出される。
その剣は1本1本が意志を持つように動きまわりマジックショットを消滅させていく!
やべぇ、かっこいい! ファ〇ネルじゃん!
しかし、こちらも驚いているだけではなく、【マジックショット】も魔力の波動を微調整して相手の光の剣にダメージを与えていく。結局追加40個のマジックショットで光の剣を消滅させた。
対剣士用魔法プランD
めんどくせぇ
格納石かわMPポーション30を取り出して加えながら飲む。
「【ロックウェーブ】!」
予選で使ったステージ破壊魔法。地面に魔力を通し砂一粒一粒をサラサラに分解してそれを魔力で包み、水のように扱う。砂を操り波を作り出す。
予選の約4倍の場所だ。決勝と言うこともあり魔力を全力で注ぐ。ステージのそこらじゅうに存在していた地割れや岩壁は細かく分解されてエドモンド先輩に全方向から襲いかかる。
もちろんエドモンド先輩の立っている地面も同様に僕の魔力に浸食している。
その影響で足が沈む。
「っく!ここまでやるとは想定外だな。雷剣技レベル4。私が今使える最強の剣技だ。【覇天襲閃】」
技名がかっこいい!
あー、どんな技か気になるが砂の波で相手の様子が見えない。
砂がエドモンド先輩を押しつぶした。
ど、思うと砂の山から一筋の光が突き出る。
おー、って、これ、負けフラグじゃん。
エクスカリバーとか、叫びそう。
光の線を中心に砂が弾かれていく。
やがてエドモンド先輩の姿が見えてくる。
両手で剣を握り剣を上に突き出している。剣が光、光の筋となり空高く突き出ている。
先ほどの刃渡り10メートルの技の上位互換だろうか
「私は負けない。この一振りで勝利する。エクスッ」
「そのセリフは言わせない」
「なっ!?」
エドモンド先輩が倒れ、転移する。
え?何をやったかって?
別に今までと何も変わってない。
ただし今回はエドモンド先輩の実力の高さから失敗の恐れがあった為、確実に勝利できるように準備をした。
常に距離をとり魔法攻撃主体で攻めてこちらは魔法攻撃で攻めると誤認させる
そして一度こちらの姿を見えなくして相手が大技の発動に集中したときを狙ったのだ。
【体内加速】+【視界内転移】(連続使用)+【抜刀斬撃】
王都に来てからは一度も使ってない、決勝まで取っておいた切り札。
自身の視界内2メートルに一瞬で転移できるエクストラスキル「」
【視界内転移】
さらに連続使用する事で、実質相手との距離は意味をなさない。一瞬で近づき必殺の一撃を放つ。
その必殺の一撃になるのが【体内加速】により16倍まで加速して使用する【抜刀斬撃】。その一太刀はどんな人間でも回避不能。
本来はプランBの時に魔法陣の爆風の陰から実行する予定だったが
予想外の剣技で突破されてしまった為一度別の魔法を挟んで警戒心を解き最後の魔法の対象後を狙わせてもらった。
エドモンド先輩のセリフからカグラさんと同様僕が加速して動ける事は分かっているようだったから念に念を入れたのだ。
「勝者。ソラ選手。今年度武術トーナメント春の部は1年生、ソラ選手の優勝です。国王よりお言葉を承りますので、その場に待機をお願いします」
ふむ、決勝という事で何かあるのか。
その場で待っていると国王が席を立つ。
ここからだとかなり距離があり見えない。仕方ないので【空駆】を使用し国王のいる観客席まで移動して国王の前に跪く。
「その場で良かったのじゃが…まぁよい、表を上げよ」
「はい」
あぁ、その場で良かったのか。
顔をあげる。
国王は【拡声魔法】の付与された魔道具を受け取り観客にも聞こえるように話始める
「武術トーナメントの決勝戦、見事であった。ソラ選手は特待生ということでここからはるか北にあるフランツ領から先日やってきたばかりだ。この王都にわずかな期間しか滞在していないと思う。それで優勝である。おそらく日ごろからの鍛錬のたわものではないだろうか?」
ん?雲行きがあやしいぞ…
「近頃の学生は武技や魔法の練習ばかりを行い、基礎的な訓練をおろそかにしておる。余は悲しいぞ。この王都の最高の環境で学び励んだ学生が、田舎から来た独学で学んだ剣士に優勝を譲るなんて…
おぬしら学生は恥をしれ。そしてこのソ選手から学ぶがよい。
武術を極めるには日ごろの鍛錬あるのみじゃ。目先のことにとらわれてはならぬのじゃ」
ん~。なんか僕を引き台にして語ってる。
学校でのあたりが強くなりそうでこわいな~
「話はそれてしまったが、おぬしの実力はよくわかった。お主には序列2位を許可する。」
「はい」
「それと今回の優勝報酬として、これを貸し出そう。今後とも励むのだぞ」
そう言って、国王は配下から布に入った棒を受け取り僕に渡す。
国王から受け取り包みを取る。
中から出てきたのは一振りの日本刀
「これは?」
「これは先代勇者が使っていた武器じゃ。記念品として飾るのもよし、おぬしは木刀を使っておったから実際に使ってもよいぞ。」
国王は【拡声魔法】の付与されて魔道具を一度離し、小さな声で教えてくれる
「もらっていいんですか?」
「それはダメじゃよ、あくまでも貸出じゃ。
先代勇者からの掟でな、4半期に一度の大会で優勝するものにその武器を次の大会まで貸し出すのじゃ
なんでもその武器の適正者を見極める為に…と、理由らしいのじゃが、どうやって見極めるかはわかってないんじゃ。
勇者からの伝承では、適正者が剣を抜けばわかるそうじゃ。」
「はぁ。では貸していただきます」
国王が魔道具を再度近づけ宣言する
「では、今回の武術大会優勝者、ソラ選手に勇者の刀を付与する」
「「「おぉぉぉおおおおお」」」
ん~?盛り上がる意味がよくわかんない。
何か理由があるのだろうか?
そう考えていると、対戦ステージの真ん中から声が響く。
「その刀は拙者がもらうでゴザル」
声の方を見ると、漆黒の翼と頭に2本の角をはやし仮面をかぶった人間?が立っていた。あ、尻尾も生えている。
おそらく【拡声魔法】を使っているのだろう。しかし国王の使っている魔道具によるものよりも明らかに効果が大きい。頭に響くような声がする。
「勇者の刀はこの大魔王、ルシファー様がいただくでゴザル」
ん~。いろいろ台無しだな。
自称大魔王は漆黒の翼を広げ宙に浮く。そして急加速。こちらに急接近する。
まぁ僕が刀をもっているから当然か。
とっさに後ろにいる国王を後ろに蹴り飛ばして鞘に入ったままの刀で相手の手刀を受ける。
っく、かなり重く、膝をつく。
「なかなかやるでゴザルな」
「おま、コタロウだろ、いろいろ台無しですよ」
「ほう、拙者の正体がわかるでゴザルか?こまったでゴザルね。」
「その口調で隠せると思ったのんですか?」
魔王は一度手刀を引いて下がる。
こちらも立ち上がり国王の盾になるように構える。
護衛の騎士は何をやっているんだ。そう思い横目で後ろを確認する
「うそだろ?」
先とほどの手刀による斬撃に余波でだろうか、国王は僕の後ろにいたから無事でいるが
それ以外の人は全員胴体が真っ二つに切断されている。もちろんその中には王妃もいる
「あぁああ。マリン、大丈夫か!」
「あはははは。さぁ、その刀を渡しすでゴザル。渡してくれれば国王の命で我慢するでゴザルよ。」
「おまえ、なんで?」
魔王は腰に下げた刀をき上段に構える。
僕は腰に刀を持ってきて構える。【抜刀斬撃】の構え。
「拙者にもいろいろあるでゴザルよ。本当に妹のことは任せようと持っていたが残念でゴザル
まさかソラ殿が優勝するとは思わなかったでゴザルよ。
あ、妹は今回の件とは無関係なので責めないで上げてほしいでゴザル」
「ちゃんと説明してください」
「説明している時間はないでゴザルよ。早くしないと今代の勇者がかけつけてしまうでゴザル
では、邪魔をするならその腕ごともらっていくでゴザル」
「っち」
話にならない。ならば先手必勝。すでに向こうから引導は渡されている。
相手の動き出しを確認せずに斬りはじめる。
人間は、目で見たものに反応できる時間は0.2秒と言われている。
つまり、僕が剣を振り始めて0.2秒以内に相手に着弾させられれば、僕の剣の振り始めを相手が認識して反応するよりも早く相手を斬れる。
【体内加速】×3回分 64倍。さらに【身体強化】と【抜刀斬撃】で剣の初速を極限まで早める
勝った。
腕が宙を舞う。
刀を握る僕の腕が。
「人間としての拙者はソラ殿に劣っているでゴザル。しかし魔王をなめるな。
我に勇者でもない人間が勝つなどはなはなしいわ!…でゴザル」




