25話 武術トーナメント本戦③
「それでは8回戦を開始します。対戦ステージには魔術障壁を張りますので、観客の方はぜっていに手を出さないでください」
初戦以外は順調に勝ち進むことができ8回戦。
今回の対戦相手は近接さんだと思われる。予選ではなんでも刀を使っていて語尾が特徴的だったそうだ。
「む?」
前回までと同様に岩陰に隠れながら対戦相手をさがしていると、すぐに見つかった。
どうやら相手は初期位置から一歩も動いてないようだ。
向こうもこちらに気が付いたようなので、こちらも隠れずに前に出る
「拙者東の国から留学に参ったコタロウでゴザル」
うん。侍かな?ちょんまげ?はしてないけど黒髪の長髪で頭の後ろにまとめている、
服装は着物に羽織。腰に刀を2振かけている。
「おぬしも東の国の出身か?その手に持つ木刀は刀とお見受けする。」
「近いですが違いますね。この木刀はおそらくそちらの言う東の国の刀を模したものだと思います」
「そうか。なら一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
一応聞いておく。
絶対面倒なことになる気がする。そもそも対戦中に話しかけてくる時点で怪しい。
おそらくだが身内がいるから守ってほしいとかそんな所だろうか
一応聞いてみよう。何か事情があるかもしれないし
「拙者今年で上級3年でゴザル。」
「ほう。そうですか」
「少し早いがこの戦いが終わったらこの国をでなければならない」
「あれまぁ」
「実は拙者には一緒に留学中の妹がいるのでゴザル。拙者が国に帰ると妹一人残すことになるでゴザル」
「それは大変ですね」
「妹が卒業するまで守ってもらってはくれないか?」
「はい?」
予想的中かよ。
「拙者の家はすでに没落気味なのだ。拙者たち兄妹が留学に来たのも、父上と母上が醜い分家争いから守る為なのでゴザル。しかしいつまでも逃げ回っているわけにはいかない。なんでも父上が毒をもられたらしく衰退しているらしい。なので長男の拙者が一度国に戻り父上に協力してなんとかするでゴザル。」
「お、おう。それと妹さんにどんな関係が?」
「拙者はこの学園で魔法を学び、刀による戦闘と魔法による補助を身に着けることができた。しかし妹はおぬしと同じ1年生でゴザル。正直戦闘センスもなく、まだ魔法もろくに学んでない為自分を守ることもできないでゴザル」
「うん?あの僕もその妹さんと同じ10歳なんでですが?」
「ご謙遜を。お主ここまで勝ち残っているってことは年齢に見合わない実力でゴザルな」
「なにから守るんですか?やっぱ分家の者の暗殺とかですか?僕にはそんな守ることなんてできませんよ」
ある程度戦闘技術は他の人よりかは持っているかもしれないけども基本は攻撃用の魔法やスキルばっかりだ。それに今回の大会で僕の弱点もよく分かった。MP問題がないのは前からだが、相手を認識しないと後手に回ってしまう。
1対1の見合いなら正直体内加速で負ける気がしないが、相手の位置を認識することができないと能力をフルに生かせずに先制攻撃を許してしまう。ある程度レベルが上がってきた為、甘い攻撃でなければ即死はしないだろうが、それでも【プロテクション】を貼っていない時に不意打ちされるとかなり厳しいだろう。
まぁ、そういう意味ではこのコタロウさんには勝ったも同然である
「守ってほしいのは魔物とかでゴザル。お主もそのうち体験すると思うが実践研修として授業で森に魔物狩りに出かけるでゴザル。妹も冒険者に興味をもっているのでほぼ間違いなく参加するだろう」
「はぁ。でも授業ならそんなに危険はないのではないか?」
「そうだといいのでゴザルが。拙者の勘では何か嫌なことが起こるでゴザル」
「はぁ。」
よくわかんなな。その勘は今日会った他人に妹を託すほど信憑性があるのだろうか?
「とにかく守るほしいでゴザル。拙者はその時は守ってあげられないでゴザル」
「ん~。僕にできることならわかりました。そもそも目の前で女の子が魔物に襲われていたら助けるとおもいますよ」
「そう言ってくれると助かるでゴザル。いえ、拙者の勘はよく当たるので困っていたでゴザル
お礼に今日の大会が終わったら夜ご飯をごちそうするでゴザル。拙者の家に遊びにくるでゴザル」
「お、おう。あれ?寮暮らしじゃないんですね?」
学生は全員寮暮らしだと思ったが違うらしい
「そりゃそうでゴザルよ。拙者が入学した時に妹は4歳でゴザル。付き人がいると言っても拙者が守らなければならないでござったから特別に王都の家から通わせてもらったでゴザル」
あ、特例だったのね。
確かライラ先生が学校で集団生活も学ぶという理由で生徒が基本寮暮らしって言ってた気がする
そうだとするとサクラ先輩は大変だな~。寮でくらしてて毎日店の手伝い等で家に帰っているのだろうか
「ずいぶん話し込んでしまったでゴザルな」
「そうですね。ではそろそろはじめますか」
「拙者はいつでもいいでゴザルよ。話している最中にいつ斬りかかられてもいいように注意していたでゴザルよ。こちらの話に付き合ってもらったお礼に先制攻撃は譲るでゴザル。好きなタイミングでかかってきていいでゴザル」
「ほんとですか?」
かなり全然警戒しているようには見えなかったけど。
「ではは行きますね。」
「いつでも良いでゴザル」
【身体強化】+【思考加速】
うん、まずは基本の身体強化で様子見。距離を詰めて体内加速で一気に決めよう
まずは木刀を腰に構える
「【飛剣+抜刀斬撃】」
あ、さっきの戦いで刀術がレベル3になり【飛剣】を覚えました。
うん、神様ありがとう。便利なスキルを作ってくれて。
【飛剣】は斬撃に魔力を振ることで、魔力の刃を対象へ飛ばすことができるスキルだった。
その基本的には意識して剣を振ることでその太刀筋の斬撃が放てるようだが、ならとレベル2の時に習得して【抜刀斬撃】に【飛剣】を使った見た。
予想通りで【飛剣】は剣を振る速度によって威力や飛距離が変わる。
【抜刀斬撃】は【身体強化】と【抜刀斬撃】による身体強化[刀]の2種類の身体強化魔法がが2重でかかり神速で刀を振る。その斬撃を【飛剣】で遠距離に飛ばす。
構えてから、相手への着弾までは一瞬。瞬き一つしている間に上半身と下半身がお別れすることになる
まぁ、【訓練用プロテクション】が貼られているから敗者の場所へ転移するだけだけど……
「甘いでゴザル。【受け流し】」
コタロウさんが一瞬で刀を抜き魔力の斬撃を受け流す。刀によって軌道をずらされた魔力の刃は後方に飛んでいき観客席までステージを切り刻みながら進み魔術障壁に当たり爆散する。
新技は失敗に終わったか。
しかし相手に刀を振らせることはできた。ならばと距離を詰めながらもう一度スキを作る
「【飛剣】(エアスラッシュ)」
今度は突きのモーションから【飛剣】で突きを飛ばす。と、ほんの一瞬差をつけて剣先から【(自称)エアスラッシュ】をとばす。【飛剣】の魔力の刃を回避しても一瞬後にくる(自称)エアスラッシュによる岩の弾丸を回避することができないだろう。
相手は予想通り横に突きの【飛剣】を回避する。そこに魔力で誘導してきた岩の弾丸を再度武技を使って受け流そうとする。
いやいや、おかしいでしょ。この世界では完全な無詠唱(思考のみでの魔法の発動)ができるのは知る限り僕だけで、この大会ではわざわざ技名を叫んで使ってきた。それなのになぜエアスラッシュを認識することができたのだろうか?
「【受けなぁ…グフゥ!?」
明らかに相手の強さは異常だった。おそらく先ほど話していた勘なのであろう。
未来を読む魔法なんて存在しないと思う…いやある可能性もあるか…
考えられるのはエクストラスキル?。まだこの世界で認知されていないスキル。もしくは神様からのギフト
どちらにしてもこの侍相手に長期戦は危険だ。なので切り札の一つを切らせてもらった。
【体内加速】(16倍速)
世界が自分の1/16の速度になるなから自分だけは通常通り動ける。
その代償に消費魔力は尋常ではない。現実(術者以外の体感時間)で4秒間使用するだけ僕の魔力は0になる
岩の弾丸よりも早く移動して背後に回り、岩に対して相手の武技【受け流し】が発動したのを確認して背後から切った。その一撃で試合が終了してコタロウさんは転移する。
即座に【時間加速】を切る。この次も試合があるのでなるべく魔力の無駄使いはしたくない
「勝者。ソラ選手!」
「「「うぉぉぉぉおおお!」」」
ほどなくして審判の先生がやってきて試合の終了をつげる。
うん、観客席から疑惑の声が聞こえる
「な、なにがおこったんだ。俺には全く見えなかった」
「ああ、俺も見えなかった。小さい坊主が剣技を放ったのは分かったんだが、その後突きを出して、気が付いたら侍ボーイが転移していた」
「今年の1年はすげーな」
「今からでもあの坊主に賭けてくるかな?」
観客席に戻ると先にコタロウさんが僕の席で待っていた。あ、知らない同い年くらいの女子もいる。
あ、ヴィクトルがコタロウさんに握手を求めている
「ソラ殿はすごいでゴザルな!拙者ソラ殿の動きが見えなかったでゴザル。何をやったでゴザルか?」
「あー。気のせいじゃないですか?」
一応シラを切る。僕がエクストラスキル使いと認識されると今後の試合もだけど、後々面倒そうだから…
「まぁお互いのスキルの詮索はマナー違反でゴザルから詳しくは聞かないでゴザル
それよりほら、この子が拙者の妹でゴザル」
そう言って金髪ツインテールの女の子を前にだす。僕と同じくらいの背丈で口をへの字にしている
「……?」
「ソラ殿忘れたでゴザルか。先ほど話した拙者の妹でゴザルよ」
「全然似てない!」
「そうでゴザルか?ほら自己紹介するでゴザル」
「エルサです。」
うん。絶対妹じゃないよね?
なんだろうこの違和感。だまされた?
そしてツンデレなのだろうか、これはこれでかわしいな。腕組して口をへの字とかどこのアニメキャラだろうか
「なんか信用されていないようでゴザルが、とにかく頼んだでゴザル。今日に大会が終わったら迎えにいくので寮の自分の部屋で待っててほしい」
「はぁ」
そんな感じでその後序列上位らしいコタロウさんを見て興奮するヴィクトル
金髪少女(同い年)を見て話しかけようとするがシカトされるジュスト
ジュトスを無視しながら終始僕のことを睨んでいるエルサ
…
居心地が悪いので昼前にアイテムショップで買った雑誌で次の対戦相手の情報を読む。
え?コタロウはって?
「では拙者は自分の学年の観客席に戻るでゴザル」
とか言ってそうそうに逃げて行きました。
「それでは9回戦を開始します。対戦ステージには魔術障壁を張りますので、観客の方はぜっていに手を出さないでください」
…
「勝者。ソラ選手!」
9回戦の相手は魔法使いだった為いつものお見合い先制攻撃で一方的に勝った。
学生証を確認すると自分の序列が20位になっていた。
相手の序列が上がってこともあってこちらの先制攻撃は詠唱を中断することで回避されたが、結局その隙に僕は距離を詰めてなおかつ魔法の第二射を放ち相手に回避を強要させてさらに近づく。
結果、それを5回ほど繰り返しこちらの斬撃の間合いに入る前に勝利した。
大会は今日は後1戦行い。明日5戦で終わりだ。
全部勝てればだけど…
「それでは10回戦を開始します。対戦ステージには魔術障壁を張りますので、観客の方はぜっていに手を出さないでください」
…
「勝者。ソラ選手!」
うん。ここまで来ると我ながら[魔術師殺し]の通り名も悪くない気がする
実際相手が遠距離魔法に頼る人の場合には本当に一方的な試合になる。
それよりもふと気になったのがこの大会“武術トーナメント”なのに魔法使い多くないだろうか?
これは勝手な予想だが、この世界の戦闘能力はそのレベルによって大きな格差がある
初心者(入学当初かな?)は同士の対戦は近接が圧倒的に有利
理由はそもそも遠隔が標的に魔法をうまく飛ばせないから
ある程度武術を習ってくると、(上級学園1年生クラスかな?)その者通しの対戦では遠隔が圧倒的に有利
理由は簡単で遠隔(魔法使い)は詠唱によってある程度レベルの高い魔法を使えるから。
逆に近接は【身体強化】を使える程度でそもそも魔法を回避できないことが多い。それに剣術等のレベルが低くて武技の幅が狭い
イメージとしては短距離走の選手とアサルトライフルを持った新兵の対戦。
うん、我ながらひどい例えであるが実際詠唱してしまえば魔力が足りれば大魔法も行使できる。
引き金引けば弾がでるのと一緒だね(まっすぐ飛ぶとは言っていない。けど、的が近寄ってくる選手ならあたるんじゃないかな?)
そしてある程度武術を極めてくると(上級学園3年生や優秀な生徒)その者通しの戦いになってやっと遠隔と近接は互角の戦いができる。
理由はお互い自分の技術を磨くだけではなく相手への対策を行えるようになるから。
遠隔なら近づかれないように妨害魔法や索敵魔法を使えるようになる
近接なら遠隔攻撃を避けて近づくように工夫する余裕ができてくるし、武技の選択肢が広がる。
では僕はどうなのだろうか。
遠隔相手の場合には、索敵魔法をはまだ使えないが相手を認識できれば詠唱時間の差で一方的に勝てる
近接の場合には、あまり使いたくないが、近づいてしまえば【体内加速】で一方的に勝てる
いやー。幼馴染から受け継いだ魔法チートですわぁ
この世界に詠唱を必要としない銃がなくてよかった。
そう思って次の対戦相手の項目を雑誌で見ておどろいた
[使用武器:魔法銃]
マジ?




