21話 武術大会予選③
王都、武術トーナメント二日目。
「これより6回戦を始める。両者準備を始めよ」
今日は特に見せ場もなく順調に勝ち進み6回戦にやってきた。この試合に勝つとベスト16に入り明日以降に本戦トーナメントを行うことになる。
昨日の夜遅くにライラ先生が僕の部屋にきて教えてくれたのだが、
(別にいやらしいことしてないよ!)
本戦に参加する16名の序列順でパラマストーナメントを行うようだ。
これが旅の時にライラ先生が言っていた辛いトーナメント戦だ。
本戦は予選の生き残り者8名と今回予選免除された序列上位8名によるトーナメント戦だ。
16名のなかから序列の低い2名が対戦して、その勝者が次に序列の高い者と対戦する。その繰り返しで1位を決めるのだ。つまり、序列が一番低い者が優勝しようとしたら15連戦をこなさねばならない。
なぜか僕の予選トーナメントには序列上位者があまりおらず、勝ち進んにもかかわらず僕の序列が56位だ。このままだと必然的に一番下から対戦することになる。
15連戦はつらいな~。
「「よろしくお願いします。」」
両方コートの端に移動する。相手は魔杖を持ち黒のローブを着ている。おそらく魔法使いだろう。
ヴィクトル曰く、対戦相手の魔法使いはなかなかのやり手らしい。なら序列もきたいできるかな?
まぁここで負けたら本戦に参加できないからどっちにしても勝たなきゃいけなんだけどね。
幼刀【十祭】を左手に持つ。
相手の魔法使いも両手に杖を構える。
「では、はじめ!」
「火の精霊よ。矢となり敵を狙い打て!【ファイアアロー】」
【身体強化】と【思考加速】を自分にかけて相手の元へ走る
相手から炎の矢が放たれる。
横に迂回しながら炎の矢を避ける
「くっ」
厄介なことにあの矢はこちらに誘導してくるようだ。
ならと、諦めて魔法使いの方へと一直線に、移動を開始する
他の対戦を見学していたあることに気がついた。
遠隔魔法使いと近接が対峙した時に、近接は遠隔との距離を詰めようと走る。
遠隔は近接に近づかれまいと魔法にて迎撃を行う。
近接が取れる対策は二つ。ひとつが回避。
もう一つが魔法による迎撃。しかし魔法の発動には通常詠唱を行う必要がある。
その為、どちらも近接側はその場で足が止まってしまう。
その隙に遠隔側はさらに魔法を発動する。近接側はその魔法に対処しながら距離を詰めなければならない
追いつかれたら近接の負け。そういう試合をよく見た。
では、自分の時はどうするのが良いのだろうか?
今まであれば【体内加速】で周りの速度を遅くして相手の魔法を直前で回避したか、魔法が着弾する直前で魔法の先へ【視界内転移】を実行し強制的に距離を詰める。
しかし両方の魔法は非常に燃費が悪く乱射できない。明日以降のことを考えてなるべく使いたくないし、今後ライラさんクラスの生徒が出てくる可能性がある。そうなった時のためにも切り札として温存しておきたい。
なので、別の魔法を使うことにする。
「【プロテクション】」
自分に防御魔法を発動させて強行突破。
しかし僕はイメージのみで魔法を発動できる。一応周りに気づかれないように声にはだしてるが
火の矢が着弾するがプロテクションの効果で一度のみ物理、魔法問わず攻撃を無効化する。
火の矢が着弾して爆風が広がる。
「【ファイア…なっ」
驚き相手の魔法使いが詠唱をやめてしまう。
その隙に一気に距離を詰めて、薙ぎ払うように木刀で切る。
「なめるな!【身体強化】【縮地】」
相手の魔法使いは一気に身体強化と縮地を発動させ強制的にサイドステップをして刀の斬撃をよける。
こちらも追いかけるようにして剣の突きのモーションをする。
イメージするのは昨日行った自称エアスラッシュ(突き)だ。
「その技は昨日見させてもらった。大地精霊よ我の前に盾を生み出せ【ロックウォール】」
「(自称)【エアスラッシュ!】」
僕と魔法使いの間に岩でできた分厚い壁が生えてくる
魔力による生み出した岩の弾丸が岩壁に激突して爆音を響かせる。両者の魔法はともに魔法による物理創成。術者の意志を持った魔力ではない為、通常の物理法則が適用される。
結果、壁を貫くことができたが、そこには魔法使いはいなかった。
「大地の精霊よ。風の精霊と協力し火の槍を生み出したまえ【ファイアランス】」
岩壁の崩壊により発生した砂埃により一瞬相手を見失ってしまった。
岩壁を出してこちらの視点を切り、その後岩壁を僕の魔法を利用して崩壊させて砂埃を発生させ
その隙に魔法使いはさらに縮地によるステップでコートの真ん中まで移動したのだろう。
なかなかやる。さっくり勝たしてくれないな。
相手の魔法使いから直径3メートル近くなる炎の槍出現して回転しながらこちらへ迫ってくる。
あれはやばい。さっきのようにプロテクションで着弾時のダメージを無効化しても断続的に訪れる炎の熱量までは無効化できないだろう。
仕方ない、プランBだ。ほんとは剣術として通そうと思ったんだけどな。
「【ロックウェーブ】」
地面に手をつきそこから土壁を作成。そしてその土壁を相手抜向けて飛ばす。
イメージは地面の土を細かく分解して砂場のサラサラの砂のようにする。それを水に見立てて波を起こす。土の波は火の槍に激突して相殺される。が、波は一つではない。複数の波を発生させて魔法使いへ押し寄せていく。
「な、なんだそれは!そんな魔法初めて見たぞ!っ【縮地】」
魔法使いが縮地を連続使用して後方へ下がっていくが、波は威力を収まることなく追い詰める。
コートで戦っている都合上一番端まで行ったらそれ以上は下がれない
「くっそ!」
久々の魔法発動で減り始めた魔力を補うべく勇者専用魔法を発動させて、さらに追い打ちをかけるように魔法を発動させる
「【魔力無限炉】【ファイアアロー】」
火の矢を山なりに放ち相手魔法使いの頭上から火の矢を振らせる。
相手魔法使いを囲むように土の波が遅い。その頭上からは火の矢が降り注ぐ。
うん、火の矢は50本作成した。
「う、うぁあああ!」
「しょ、勝者ソラ!」
「「「うぉおおおおおお!」」」
「すげぇー」
「あの1年剣士だと思ってたが魔法もつかえるのか!」
周りの観客から歓声が上がる。明日は本戦と言うこともあり今日はソコソコ観客がいる。
ほんとは予選は剣術だけで行こうと思っていたのだが仕方ないか……
さて、これで少しは序列が上がってくれればいいんだけど……
名前[ソラ]
レベル[28]
王都第2学園1年生
序列[39位]
使用可能残高[84万ギル]
備考欄[特待生]
おぉ。序列が上がっている。明日からの本戦を頑張らなけば。そう意気込んで観客席に戻ろうとした時に審判の先生から呼び止められた。
「ちょっとソラ君。えっと、これじゃコート使えないよね?直すの手伝ってもらっていいかな?」
「……」
僕が対戦したコートは方端から地面が大きく削られていて、その土がコートの反対側に押し寄せている。
やりすぎたかな?いや、でも地面の土を使っちゃいけないって規則なかったしな~
他の先生方が集まってきて溜息交じりに土のかたずけを始める
いや、ちょ、手伝わないとダメか…
「はい。手伝います」
その後先生方と協力してコートを平らにした。結局3時間くらいかかった。魔法を使えば一瞬で戻すこともできたんだけどもいくら魔力無限炉を使ったとはいえさっきの魔法は思っていたよりも消費が激しくこのままだと明日の朝までに回復しきらなそうだったのでケチったのだ。
時間がかかりそうだのでヴィクトルとジュストには先に帰ってもらった。
本人たちは一緒に手伝うと言ったのだが、申し訳ない気がして断ってしまった。
だってこんなに時間かかると思わなかったもん!手伝わせればよかった!
ってか、ここまで時間かかって肉体的に疲れる思いするくらいなら魔力はあきらめてサクッと魔法を使って早く自室に帰って寝ればよかった…
コートのが大方片づけ終わったころに魔法使いの先生がやってきて、最後の仕上げを行ってくれた。
なんでもたまたま土魔法の得意な先生は外の見回り等でこちらにこれなかったそうだ。
っくそ!
自分の荷物をまとめて帰路に就く。すでに本日の大会は終了したが会場の外ではまだ出店がやっていて大人の方がお酒を飲んでした。
今日は疲れたし出店でなんか買っていこうかな?でも結構どの店もこんでるなー
少し広場をうろうろしているとすいてそうな出店があったので夜ご飯を買いに寄ってみる
「いらっしゃいませー」
あ、ハンバーガーショップだ。なぜに出店?
「なんで出店やってるんですか?あ、チーズバーガーください」
「大会中は店舗の方には誰もこないからよ。みんな大会を見に来るからね」
あ、いつもと違う店員だ。
と言うかうちの学校の制服を着ている。
あ、めっちゃかわいい。すらっとした体系で黒髪ポニテだ。どことなく日本人っぽい。
あ、ライラさんから聞いたハンバーガー店の店主の子供か!
ってことは転生者?でも黒髪ポニテってことは転移者なのかな?でもこの店の店主の子供ってライラさんは言ってたきがする…
「あれ?第ニ学園の生徒ですか?」
「あー。うん。そうだよ。私はサクラ。昨日の予選で負けちゃったんだけど、一応見学も授業の一環らしくて日中は見学してたんだー。今日の試合も終わったからお父さんと店番変わったんだ。」
「なるほど。サクラさんこの後時間ありますか?」
「えっ?」
「あ、いや。ナンパとかではなくて……少しお話しを聞きたくて。えっと、このハンバーガーって食べ物だれが発案したのかなーって」
「いや、それナンパでしょ?」
サクラさんがシド目で睨んでくる。
あー、やばい。めっちゃかわいいなー。相手は12,3歳だろうか?
ん~。僕ってロリコン?。いや、今は10歳だし向こうが年上だ。……
って、ちがーう。この子転移者じゃないかと思って話を聞こうと持ってたんだ。久々の日本人っぽい感じにやられてしまった。
「えっと、ポテト……ん~。ハッピーセットとかって作らないんですか?」
「!?」
「取り敢えず、チーズバーガーください。ほら、後ろにお客さん並んじゃってますから。」
「え、えぇ」
「そのあたりで適当に屋台の物食べてるんで、店番終わったら声かけてもらっていいですか?
あ、別にあなたに害を与えようとか思ってるわけじゃないんです。
僕は転生者です。同僚とすこしお話がしたかっただけです」
「わかった。じゃぁ、あの空いているベンチで待っててもらっていい?」
コートの片づけをするのに魔法を使ったのをケチって肉体的に大変だったけど、まぁ転移者?と話す機会ができたのはよかったな。
明日以降は本戦だから対戦回数はさらに増えていくだろうか。
今までよりもなるべく魔力使わないように立ち回らないと先が持たない。
なるべく燃費よく相手を倒せないか考えないと…
そんなことを考えながらベンチでチーズバーガーを食べながら時間をつぶしていると、わりとすぐにサクラさんがやってきた。
「ごめんソラ君、父さんお酒飲んじゃったらしくてこの後店番最後までしなきゃいけないから、お話は今度でいい?」
そう言って申し訳なさそうに少し離れたベンチの方に指をさすと
その先には顔を真っ赤にして陽気仲間たちと歌っている中年たちがいた。
あの中のどれかがこの子の父さんなのだろうか?
「そっか、まぁ急ぐ話じゃないから後ででいいよ。ってかなんで僕の名前知ってるの?」
「それは今日の大会をちゃんと見てたからよ。本戦出場おめでとう」
「あぁ、なるほど。」
「それじゃ店番戻るね?明日も大会の見学が終わったら店番する予定だから、またこんな感じになっちゃうだろうけど、明後日大会が終わったらら必ず時間つくるからその時でいい?
あ、私のことばかりじゃなくて、あなたの事も聞いてもいいんでしょ?」
「もちろんいいよ。僕も情報交換したいし。あ、明日の大会見学くるってことは会場にはいるんだよね?」
「ん?いるわよ」
「明日お昼一緒にたべませんか?」
「あー。ごめん、友達と食べてるだろうからダメかな?」
「そっか、わかった。じゃぁ大会終わったらね」
「うん。ごめんね」
あー、お昼誘わなければよかった。
そうだよね、同じ異世界人とは言っても初対面でランチ誘ってもことわられるよね。
最近僕の周りの女の子(ココとライラさんの二人しかいないけど)が好意的にしてくれているからついつい自分はモテるのかと思い込んでしまった。
少し自重しよう。
そう思いながらトボトボと帰り、お風呂に入り明日に備えて早目に寝るのであった。
あ、明日の本戦の戦い方考えるの忘れてた。
…まぁ、何とかなるでしょ。今日はもう寝よう……




