19話 武術大会予選①
硬いベットの上で目がさめる。
うん。この布団硬い。学生寮だから仕方ないんだろうけど、これじゃゆっくり休めないよ。
僕の部屋は1人部屋なのだが二段ベットがある。本来2人部屋だったのを一応特待生って事で一人で使っていいことになったみたいだ。
つまり、お持ち帰り自由なのだ。
まぁ、持ち帰る相手もいないけど。それにこのベットじゃな…
少し早いが起きる事にする。インナーに鎖帷子。上から浴衣のような服を着る。んー。今は6月の中旬。ちょっと暑い。
共同の水道に行って顔を洗う。
あ、水道や、トイレ、お風呂は共同だ。嬉しい事にお風呂がある。
旅の途中は濡れタオルで体を服くらいしかできなかった。
まぁ、ライラさんの下着姿を観れたのは良かったけど
大きかったです。何がとは言わないけども。
「ソラ君おはよう」
「おう、おはよう」
部屋に戻る途中で茶髪の小柄な少年に声をかけられた。コイツはとなりの部屋にいるヴィクトル。昨日ライラさんとの買い物から帰ってくるとすぐに部屋に押しかけてきた。今年入学してきたらしく、僕と同級生だ。
「あれ?ジュストは?」
「まだ寝てるよ。僕たち1年生は今日が模擬戦デビューなのによく寝てられるよね。僕は緊張しちゃってダメだよ」
ジュストというのはヴィクトルと相部屋で青みがかった少し長身の少年だ。長身って言っても年齢10歳なのでまだまだ小さいが…
「そうなんだ。僕も目が覚めちゃって。」
まぁ、理由はちがうけど…
「これから軽くジョギングするけど行く?」
旅でできなかった日課のジョギングを行うのにヴィクトルを誘ってみる。旅の途中は魔力操作の練習や馬車が止まった時にライラ先生と剣術の稽古しかやっていないので体力面では少し不安だ。
ウォーミングアップくらいならちょっどいいだろう。
「せっかくだけど遠慮しとくよ。これからトーナメントで戦うのに今更走っても疲れるだけだよ」
「そう?まぁ、慣れてないならそうかもね。じゃあ、僕は言ってくるね」
「うん。いってらっしゃいー」
走るルートは校内一周。距離的にもソコソコあってこの時間だと生徒はほとんどいないから走りやすいだろう。
そんな感じで校内を走ってから学生寮に戻ってくる。
すでに何人かの学生が起き出して来ていて、水道で順番待ちしている
ちょっと汗掻いちゃったけどすぐには水道が使えそうにないな。
旅の途中でライラさんに教えてもらった魔法を自分にかける
「綺麗好きの精霊よ。清潔にして。【クリーン】」
うん。魔法って便利。詠唱魔法もこういうイメージしにくい魔法を使うときは助かる。
そのあと自分の部屋に戻り持ち物を再度確認して闘技場に向かった。
途中のパン屋でサンドイッチを買って食べながらむかう。
なんでもこの前行ったハンバーガー屋さんを真似して作ったらしい。
具材は野菜と卵だけだ。んー。不味くはないけど、イマイチ
闘技場に着くと案内所に行って自分の出番を確認する。
割とすぐに出番みたいだ。
四半期に1度行ってるだけあって特に予選では開会式とかはないらしい。そもそも上級生は来ていない事が多いようだ。
ちらほら緊張した様子でおどおどしている生徒が見える
一年生かな?
「ソラ君なんで先に行っちゃうのさー」
「俺が起きる待ってろよ」
観客席で自分の出番を待ってるとヴィクトルが声をかけてきた。
よくわからん事を言ってるのがジャストだ。2人と自分の武器を腰にかけている。両方片手剣使いのようだ。
「あれ?ソラ君は武器を持ってこなかったの?刀使うんでしょ?」
「あぁ、僕のは格納石に入ってるよ」
そう言って左手の腕輪を見せる。
「うぁ、いいなー。僕も格納石欲しいけどまだまだ高くて」
「そうなんだよな。俺は、武術トーナメントに向けて武器を新調しちゃったからスッカラカンになっちまった。」
「魔石さえ手に入れば作れるんだけどね。」
「「えっ!?」」
あ、やべ、格納石使ったの僕って事、話してなかった。
「あー。今のは聞かなかった事にして。魔石が手に入ったら2人に格納石作ってあげるから」
コクコク
お、了承してくれたみたいだ。
「じゃ僕はそろそろだから言ってくるね」
「頑張ってー」
闘技場はかなり広い。
サッカーコートが丸々2つ入るほどの広さだ。なんでも軍事演習も行えるようにと広く設計されているらしい。
観客席を降りていくと石で作られたゲートがあった。
ゲートを、潜ると自動的に魔法、物理攻撃完全無効の【訓練用プロテクション】が貼られる。
通常のプロテクションは一度限りの完全無効なのだがここで貼られたプロテクションは模擬戦用という事で少し特殊だ。
なんでも、身体的ダメージは無効にするが痛覚のみ無効にしないらしい。なんでも緊張感を持って戦って欲しいとのことだ。
また、この訓練プロテクションが剥がれると自動的に所定の位置場所に転移させられるらしい。今回は自分が入った入場ゲートとの事だ。
ゲートをくぐると四角く限られたマスが4つが見えた。
予選はあのマスの中で行われる。同時に4組が模擬戦を行うようだ。
「君はソラ君だね。一応規則なので学生証を提出してもらっていいかな?」
「はい。よろしくお願いします」
係の先生に声をかけられた。言われた通り学生証を提出する
「はい。確認できました。ソラ君は次の次だね。そこの椅子で座って待っててください。君の番が来たら呼びます」
「はい」
会場の端っこに椅子が並んでいた。イメージ的にはベンチっぽい
そこには緊張した様子の一年生が何人も座っている。
一年生は一回戦の前に必ず一年生同士で対戦する0回戦がある。
なんでもいきなり上級生と対戦になったら模擬戦の意味がないからだそうだ。まずはお互い始めて同士で戦う。その後からが本番だ。
少し待っているとすぐに名前を呼ばれた
「ソラ君。トビ君Cコートで対戦です。」
おおう、拡声魔法かな?闘技場中に、声が響く。
案内に従いCコートに行くとすでに審判と対戦相手がいた。
「それでは模擬戦を開始します。両者準備はいいですか?」
「はい」
「よろしくお願いします。」
「では、両者コートの端まで移動してください。その後私が手をあげます。そこで問題あれば声をかけてください。特に声が上がらなければ手を下ろします。それが戦闘開始の合図です。
魔法の詠唱は手を下ろしてから行うようにしてください。」
縦60メートル。横45メートル。そのあと両端に両者が移動する。
体感結構広い。魔法使いは近接が接近する前に倒す必要があるが60メートルって結構長いな。
対戦相手の少年は魔杖を持っていた。おそらく魔法使いだろう。
審判が両手を上げる。格納容器から幼刀【十祭】を取り出す。
「はじめ!」
お、相手が詠唱を始める。
魔法で倒してもいいけどなるべくこちらの手の内を明かしたくないのでいけるとこまでは身体強化のみで戦うことにする
あと50メートル。
相手から小さな炎の玉がこちらに飛翔する。
うん。速度も遅く、動きが直線的。余裕で避けられる。
あと40メートル
第二射が放たれるがこちらも余裕をもって回避。さらに近づく。
あと30メートル
あ、詠唱を噛んだ。ダメだこりゃ。一度詠唱を失敗してしまい、急いで詠唱し直すが、それ以降は近づく僕の姿を見ながら固まってしまった。
そのまま近づき0距離
「く、くるな~」
「そういわれてもね?」
腰に構えた木刀に手をかける。【抜刀斬撃】。
刀術レベルが2になった時に武術として使用可能になったのだ。感覚的にはエクストラスキルの時間魔法のくくりの体内加速とかに似ている。まぁ、任意タイミングで発動できるって点だが。
刀を腰に掛け左で添える。右足を踏み込み武術の発動をイメージする。すると剣を振る瞬間に身体強化[刀]が自動発動されて通常使用している身体強化と効果が重複して常人では見えない速度で剣が振られる。
ぶっちゃけソー〇スキルだ。ただし、詠唱魔術同様に同じモーションでしか技を発動できず、斬撃位置の調整は詠唱魔術と同様に追加で魔力を消費して微調整する必要がある。
光る木刀が対戦相手の少年のおなかにクリーンヒットする。
「ぐぅへぇ!」
あー。痛そう……
苦痛の声を漏らしながら転移していった。
審判の先生が負けた生徒の安否を確認する。まぁ、プロテクションでダメージはなんだけどね
うん。相手が初心者ってこともあって余裕だった。
「勝者ソラ君。
では次の試合はおそらく午後になると思いますが、一応観客席で待機をお願いします。トーナメントの10個前の試合までには先ほどのようにゲートをくぐり受付をお願いします」
「はい。」
それから観客席でヴィクトルとジュストの試合を観戦しようと順番を確認するがまだまだ先だったみたいだ。二人がいる観客席を見つけて二人の横に座る
「おつかれさま。まぁまぁやるじゃん」
「お疲れ様です。ソラ君はすごいですね。さっきの武術ですか」
「うん。刀術のレベル2で覚えたんだ。」
「いいなー。僕も武術使いたいな~」
そんな感じでくだらない会話をしながら待ち時間をつぶす
うん~。なんかあれだな、0回戦は1年生同士の対戦と言うことでひどいな……。中にはまともな戦いになっている者もいるが基本的には近接同士の対戦はチャンバラごっこ。近接と遠隔の場合はさっきの僕の時と同じように近接が近づいて何もできずに遠隔の者がやられる。一番ひどいのが遠隔通しの対戦だ。お互い60メートルの距離から魔法を打ち合って全然当たらない。お互い1歩も動かずに魔法を打ち合い、満足そうな顔で魔力切れで倒れている。そう思うとさっきの僕の対戦相手は一応僕に向かって直線に魔法を飛ばせていたことを考えるとなかなか優秀な生徒だったのかもしれない。
「じゃぁ俺達行ってくるわ」
「ソラ君のように勝ってきます!」
「おう。ガンバッテこいよ」
まぁ相手も1年生なのでそこまで無様な試合にはならないだろう…たぶんだけど
ヴィクトルの相手は魔法使いだった。かなりひやひやしたがやはり魔法が不慣れな1年生はなんちゃってチャンバラのできる近接武器持ちが有利なのか、一度近づいたら瞬殺していた。
一方、ジュストの方は相手も剣士でかなり接戦だったが勝つことができたみたいだ。
みたいだと言うのはヴィクトルとほぼ同時タイミングでの試合だった為、ヴィクトルの試合を見てて気が付いたらジュストの方は終わっていた。そのことをヴィクトルに話すと…
「そりゃねーぜ。俺様の事眼中になしかよ」
いやまぁ、眼中にないんですけどね。
「さぁ、そろそろ昼の時間ですね?ソラ君はお昼どうするんですか?」
「その辺の屋台で何か買って食べようと思ってたんだけど、すごく混んでるね」
武術トーナメントはまだ予選だがすでに街の住人がかなり見に来ている。生徒たちは生徒用の観客席がある為それほど困らないが、一般開放の方は立ち見している者もいる。
「なんでも本戦からは賭けが始まるらしくその下見に来てるらしいぞ」
「へぇ~。」
「そうなんですか。父さん達何にも言ってくれなかったです」
ヴィクトルとジュストはの両親は。農村地で農業を行っているらしい。王都が近いということもあり、週末は王都に買い物に来たり、遊びに来たりするそうだ。
異世界っていうと農民が苦しめられているイメージがあったが、すでにそっち系の勇者さんが革命を起こしたらしくかなり安定した生活ができているようだ。
「賭けって本人にかけてもいいのかな?」
「え?ソラ君それってどういうこと?」
「いや、自分に賭ければ勝てば勝つほどお金たまるかな~って」
「いいなそれ!俺も自分に賭けようかな?」
「いや、ジュストはやめといた方がいいと思うぞ」
「なんでだよ!」
「「いや、だってね?」」
「そこではもるなよ!」
まぁ、実際学生が賭けをやっていいかもわからないから今度ライラ賛成にあったら聞いてみよう。
どっちにしろ賭けは本戦に入ってからみたいだし。
それから3人でそれぞれ別の屋台の行列に並んで観客席で分け合いながら食べた。
フランツ領での食事は質素な物が多かったが、さすが王都。歴代勇者の影響をかなり受けている。
僕が買ったのが焼きそば
ヴィクトルがタコ焼き
(この世界にタコってあったんだ。って思って食べてみたらタコは入ってませんでした。そのことを二人に聞くとタコって何って言われました。いつか二人に本物のタコ焼きを食べさせてやる)
ジュストは唐揚げを買ってきた。
(こっちはきちんと鳥の唐揚げでした。醤油もあるみたいで下味がきちんと効いてておいしかったです)
【ステータス】
[ヴィクトル] レベル13
魔力保持量(MP):4,100
最大魔力出力:200
最大魔力制御:60
使用可能スキル(魔法)
通常スキル
【生活魔法】
【片手剣術】レベル1
【軽量盾術】レベル1
属性スキル(魔法)
強化スキル(魔法)
エクストラスキル(ギフト)
【ステータス】
[ジュスト] レベル13
魔力保持量(MP):3,900
最大魔力出力:260
最大魔力制御:52
使用可能スキル(魔法)
通常スキル
【生活魔法】
【両手剣術】レベル1
属性スキル(魔法)
強化スキル(魔法)
エクストラスキル(ギフト)
ヴィクトルが敬語の方。ジュストが俺様キャラ。
ヴィクトルが片手剣に丸盾。ジュトスが大剣を使ってます。
両方とも農村育ちでまともの剣術や魔法の訓練を行ってこなかったので非常に弱いです
と、言うかソラやココが異常なだけでほとんどの1年生(入学2か月)はこの程度です。
次回からはちゃんと戦闘するかな?




