一狩りいこうぜ・2
「隊を三つに分ける。一つは弩手と弓手の部隊、二つは猪追いの部隊だ。」
道中で義親父殿の語る作戦は模範的ともいえる猪狩りだった。
半日かけて目的の山の麓に到着し、休憩がてら案内役の猟師を雇う。年若いが、手練れの雰囲気を纏った男だ。
これで準備万端と思ったら、猟師の言い分がおかしい。
「楊の旦那様、山に猪がおらんのですよ」
猟師曰く、最近北の方の山から順に猪をはじめとする山の獣が姿を消しているという。
「ご覧ください。この木の実は栗鼠などがよく食うのですが、熟れたまま地に落ちている」
熟れた実を獣が食べていないのだ。
稼ぎ時だから案内の猟師もすんなり捕まらないだろうと、そう覚悟してたがあっさりこの猟師が雇えたのは獲物がいない山に猟師が入らなくなったからだ。
山に獲物が出てこないなら畑の方が稼ぎがいいのと、そして
「それに…近頃獣に喰われたのが何人か出ましてね…」
獣がいない山なのに獣に喰われた死体が出る、この異常事態に猟師たちも及び腰なのだ。
「しかし、その人を喰らった獣を放置する訳にもいかんな。人の味を覚えた獣はまた人を喰うと聞く」
義親父殿はむしろ標的が強くなったことに目を輝かせ
「放って置けば都にも害を及ぼすでしょう。調べなくては」
俊峰殿は官吏の顔になった。
伯虎と猟師は乗り掛かった舟という諦念を感じる面持ちになり、摩周はなにやら目を爛々とさせている。
「これは東幻の外から入ってきた魔獣やも知れませんぞ御館様!」
「ならば首都警備隊中尉として益々この件、手を引けぬな摩周!」
楽しそうだな、あの二人。
かくして、楽しい社日の猪狩りは謎の人喰い獣狩りになった。




