一狩り行こうぜ
「社日が近い!猪を狩りに行くぞ!」
ことの起こりは祝言の日取りや西行探吏への仕官やらをいろいろ準備している最中、楊家の屋敷中の男どもにかかった招集だ。
暑さもだんだん感じられなくなり、日の沈む時間が早くなっていく。秋である。
春と秋の戊は「社日」という、春には五穀の種を供えて豊作を祈願し、秋にはその年の収獲に感謝する祭りがある。
「社日の祭りでは猪を焼く匂いで村中がむせる」
そんな言葉があるくらい社日=猪なのだ。
そして都では社日の猪狩りは屋敷ごとに狩った猪の大きさを競う、ちょっとしたイベントみたいなノリで行われている。
かくして、義親父殿(お義父様と呼ぶとなぜか嫌がられ昌済殿と呼ぶと他人行儀な感じだったのが紆余曲折してこう呼ぶようになった)の一瀉千里により秋は社日の猪狩りと相成った。
摩周はもちろん俊峰氏もいる。そして見ない顔も…。
「婿殿、紹介しよう。儂の部下で今回の要だ」
俺とさほど変わらない背丈だが、分厚さがある。浅黒い肌に包まれた鍛えられた右腕にクロスボウを下げている。
「伯虎です、楊中尉の隊で弩手を勤めております」
南の訛りを感じる発音だ。
伯虎と山の猟師が中心になり今回の狩りが行われるようだ。
門前に屋敷の者や義親父殿の部下たちが集まり、そして支度も整った。
開慧と劉夫人に見送られ、俺たちは都から西北に七十里離れた山に向かうのだった。




