あかちゃんはどこからくるの?
「でかした摩周!」
「やりましたぞ銀雄殿!」
俺たちは書架で出来るだけ小さい声で叫んだ。
摩周とは科を経て友人とも言える、そして少しバカな話を出来る仲になった。
あの巌のような義父を倣って最初は婿殿と呼ばれたが、いつの間にか名前で呼び合うようになった。
来年の仕官の支度をする合間を縫って、つるんで市場に行き、書物を漁ったり買い食いもする。
そしてある時、摩周が掘り出し物を見つけてきたのだ。
房 中 術
この手の話が出来る相手がこの世界でも見つけられたのは本当に良かった。
「銀雄殿はまだ女を知らんのですか?」
「恥ずかしい話だが、まぁ…」
「…自分もです」
「…同志よ!」
お互いの共通点を見つけるとより親密に感じるものだ。
楊家の書架はかなり立派だが、この手の書物は医術のほんの少しの部分しかない。
(後に知るがこの手の書物は基本的に夫婦の寝室に置くのだそうだ、わーお。)
この世界の女性の衣服は露出が低い、というか体の線が出る衣服はほとんどない。
しかし体の線を巧みに隠したシルエットは見てる分には楽しいが、そこまで盛り上がれるかというと否だ。
開慧はこの世界の女性にしては体の線が出る衣服を着ることが多いが、それも肘膝より少し長い丈まで。健康的ではあるがもう少し…という感じである。
「操を立てる身はつらいですね…」
「わかってくれるか同志!」
こんなバカ話を出来るほど健康的な日々を送れるようになった。
話を戻して、摩周の持ってきた掘り出し物だ。
二人して頭を突合せ、この立派な書架の片隅で、胸をときめかせながら表紙を開く。
が、いくらそれなりに自動書記器が普及し書がそれなりに出回るこの世界でも、やはり元の世界のキュンキュン萌え萌えな二次元美少女たちを知っている手前、ちょっと、ほんのちょっと俺にはハードルが高かった。
「ま、まあ趣はある…よな?」
そう取り繕う俺の横で、摩周は静かに熱をためている。
(うわぁ…気まずいぃ…)
一通り観賞した所で、この掘り出し物をどうするかという算段になった。
俺の使っている離れに…と思ったが使用人が掃除に来るし、しょっちゅう開慧が訪れる。うらやましいとか言うな、コレで結構大変なのだ。
「自分の房の寝台の下にでも隠しましょうか?」
そう言った摩周を俺は即座に咎めた。
「寝台の下は…駄目だ。前にさる御仁から聞いた」
「銀雄殿がそこまでいうほどの御仁なのですか?」
「ああ…とても義に篤い御仁でな。その人の言葉は守りたいんだ」
結局木を隠すなら森理論で義実家の書架の隅っこのほうに紛れ込ませることにした。
こういうバカがどの世界にもいる。そして俺達が隠した掘り出し物をいつか手にする次世代のバカがいると信じて…。
その日はお互いに部屋に戻り、なぜか一言も言葉を交わさないまま寝た。
そしてものすごく開慧に不振がられた。多分また目つきの悪さが出たと思いたい。




