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三月も残り少なくなった
「……有力情報ゼロ」
「………」
カランカランと氷をかき回している二人は、さすがに疲労がたまっていた
先日の襲撃は、最終的に報復なしですんでいる。しかしそろそろ疲れてきている
「ヘイお待ち!《ホットケーキ》!!」
店員はそんな二人の空気を気にせず元気に、丸々膨らんだホットケーキを両者の机に置いた
「あ、ありがとうございます」
「……どうも」
「うーん、にしても性格真逆な二人に見えるのに仲良いね」
「幼馴染みなんで」
「………」
「あっそ。うちにも幼馴染みいるんだよ。じゃあ美味しく食べていってくれ。あ、これはサービスな」
そう言うと、ホットケーキの横に紅茶を置かれた。さっきまで氷水を持ってた手を置いて、紅茶に手をかけた
「…美味しい!」
「……すごい」
「店長の奢りだ。ここ最近来てくれているからな」
「それだけじゃないさ。ほらお前も飲め」
「お、あざーッス!」
テンション高めの店員に店長は紅茶を出した
「すまないねお客さん。あいつ少し騒がしすぎるでしょ?」
「いえ……なんか和みます」
「……同じく」
「そりゃよかった。……そういや君達、何歳?」
「えーと……14歳です」
「…わたしもです」
本当ではある。こことの時間はある程度ズレているから、こっち換算だと1年半くらい違う。こっちの方が都合がいいし
「そっかー。じゃああいつと同じ学校に進学かい?」
「あいつ?」
「ほら、そこの元気馬鹿」
「酷いっすよ店長!」
そう言って店員は椅子を持ってユウカの隣に座った
「いや何、こいつの進学祝い兼ねてサービスしているんだよ」
「オレに直接くださいよ!」
「それは無駄」
「ちぇー」
口を尖らせた店員は、しかし楽しそうだった
「…ま、あいつが来てからここら一帯は変わったかもな」
ふいに店長は懐かしむ目で語り出した。それに店員は同意している
「確かに、あいつが来て変わりましたよね。特にこの商店街では店長が!」
「一番変わった君に言われたくないね」
「ちげぇねえ!」
「……あいつはすげーやつだよ」
「えーと、その方って?」
マオはついに話に割り込んだ
「あ、そいつはこの馬鹿と同い年なんだけどね。元々ここは暗かったり治安が悪いところだったんだよ」
そうは見えなかった。歩いてきたときは確か賑やかさ一色だった。ただ、この商店街には三月中間ぐらいからの通いだけど
「ここはゴロツキでいっぱいであまり店は開かない場所だったんだよ」
「その一人がお前だがな」
「え、そうなんですか!?」
「あ、やっぱそう見えなくなった?」
「……知らない」
「こりゃ冷たい。……始めの改革はオレから始まったな。ゴロツキを叩きすぎて集めた張本人だからな」
「迷惑なやつだったよ」
「うるせぇー!」
「…しばくぞ」
「すません」
どうやら上下関係は明らかなようだ。若い店主に媚び売る元ゴロツキ男、これは少し笑えるかもしれない
「……それからゴロツキの一掃をして、それから活気を取り戻していったんだよな」
「……そしてこの商店街の最後の改革はここで起きたな」
「ま、あいつは改革を促しただけで何もしていないけどな」
「いや、今こうして君らを雇っているのは彼のおかげさ」
「……ま、湿っぽい話になったな」
いきなり店員は完結させた
「で、彼は今?」
「あ、あいつは受験勉強中だ」
「へー」
テレビてみたくらいだけど、受験勉強は大変そうだ
「ま、そんな訳でオレとあいつは明日受験なんだ」
「ま、こいつは落ちるだろう」
「ひでえよ店長は!」
「ジョークさ……頑張れよ」
「おう!」
「……そういえば君達はどうなんだい?」
「あ、君らももしかして『葉坂高校』か?」
「「ハサカコウコウ?」」
「あ、知らない?最近開校した高校さ。確か三年で名門校にまでしたらしいぜ!」
「そんなとこ行くか普通」
「大丈夫さ!偏差値はある!」
店長は頭を抱えてしまった
「オーケー。今度君の幼馴染みに聞いてあげるよ。ついでに牽引しているコンビニ店長にもね」
「まって!オレ殺されるから!」
「え!バイト掛け持ちしてるんですか!?」
「あ、そっち……まあ、あいつも同じでな。ちょっと金銭的事情でな」
「おいおい、現実の厳しさを離すなよ」
「さーせん」
どうやら、そのもう一人の人も含めてこの人たちは見た目以上にタフらしい
「……体壊すなよ」
「はいはーい」
…この若女店長がすごく心配しているくらいにすごかった
「あ、そうた。わたしは『上木 リウ』。以後よろしく!」
「じゃあオレは『小中 信木』って言います。身内からは『ノブ』って呼ばれているから気楽に呼んでくれ」
礼儀として、彼女たちも自己紹介をした
「へー、リアルお嬢様、かー。羨ましいね〜」
「こらこら、客の機嫌を損ねるな」
「あ、別に気にしてませんよ」
「……問題ない」
ある程度打ち解けたとき、時計から鳩が出てきた
ポッポー、ポッポー♫
「…っと、もうこんな時間か。そうだ!あんたら『葉坂高校』受けるって言ったよな?」
「ええ」
「……そう」
つい流れとはいえ、葉坂高校のことを聞いていると、入ってみたくなった二人は明日の受験をできるように手配する予定だった
「ならさ。もしか近場じゃなければ、オレの家、アパートなんだよ。家賃は払ってもらうけどすまねえか?」
「先払いします」
「……わたしも」
「お、よかったな小中!これで入居者は三名だな!」
「うっしやった!これで尻拭いできるぜ」
「……三名?」
「あと1名は?」
「あ、さっきから出ている少年だよ。そうそう、名前まだだったね。あいつの名前は––––」
––––『平和 湧磨』だ




