015. 〈蒸し風呂〉と〈熱中〉
街の人たちがドラゴン討伐のお礼として、一番人気の湯屋を貸し切りで用意してくれた。レオナさんを連れて直行し、まずはさっと汗を流す。大勢で入っても余裕がありそうなほど大きなお風呂に、足を伸ばしてゆっくり浸かっていると、 旅の疲れもすっかりほどけていく気がした。
浴場内には川の水を引いた水風呂もあるらしい。そして街の人が言っていた蒸気浴……『蒸し風呂』も併設されていたので、今度はそれを試してみることにした――。
「………………あっつー……」
――けど、暑すぎる……。
「火山の中より暑いね」
「ですねー……。温度的には、熱めのお風呂と同じくらいらしいんですけど……」
木造りの部屋の中、一段高くなっているところに二人、並んで腰かけている。吸い込む空気はもはや熱く、むわっとした熱気が体にまとわりついていた。……入ってまだ五分も経ってないのに、なんか頭もボーっとしてきたし……のぼせちゃう前に出ないと……。
「――わっ……! レオナさん、汗すごっ……!」
「ん……どんどん出てきちゃって……」
「あー、代謝いいんですねー……」
頭から水を被ったのかと思うくらい、レオナさんの体は汗でびっしょりだった。しかし暑さ自体は苦ではないらしく、平気そうな顔をしている。
「……んっ、ぐぐっ……ふぅ……」
かすかに吐息を漏らしながら、レオナさんは大きく伸びをした。両手を上に、ぐっと胸を反らし、そしてだらりと手を下ろす。
……何度見ても慣れない、好きな人の裸……。視界に入るたび胸がドキドキして、ダメだと思っても、目が離せなくて……。しかも今は、汗で濡れてるから余計に……。
「………………わたしの胸、何か付いてる?」
「あっ!?!?」
やばい!!! 油断してガン見してた!!! しかもバレた!!!!!
「ちっ、違います!! 違うんです!!!」
慌てふためく私を、彼女は怪訝そうに見つめている。
「そのっ!! き、筋肉が!! 腹筋すごいなーって思って!!!」
……ただでさえ暑いのに、焦って大声まで出したせいで頭がくらくらして、良い言い訳も思いつかない……。オークに襲われたとき以来のピンチかも……。
「ん、ありがと。鍛えてるから」
しかし幸いなことに、彼女は私の邪な気持ちには気付いていないようだ。得意げな表情でぐっと背筋を伸ばし、自慢の腹筋をアピールしている。
……凄まじい存在感を放つ大きな胸の下、形がはっきりわかるくらいに、ほどよく浮き出たレオナさんの腹筋。きゅっと引き締まったくびれとも相まって、もはや美しさすら感じるほど魅力的に見える。その柔肌の上を、玉のような汗が一粒、ゆっくりと伝い落ちていった。
「……あ、アイラちゃん……? よだれ出てるけど……」
「んぐっ!!!???」
ぎゃあああああ!! 夢中になりすぎた!!!
「ご、ごめんなさい!! その、あつくて!!!」
とっさに出た叫びは、もはや言いわけにすらならないものだった。……いいかげんに出ないと、マジでやばいかも……。
「……触りたい?」
「――えっ」
……まって??? そのとおりではあるけど……なんでそうなったの???
「アイラちゃん、わたしが着替えてるときとか、お風呂のときとか、ずっと見てるでしょ?」
「そっ!?!? そんなっ、ことは……!!」
あぁ……そっちもバレてたんだ……。私もうおしまいかも……。
「触りたいなら、触ってもいいよ」
そういって彼女は、私が腹筋をさわりやすいようにするためか、両手でじぶんの胸をもちあげた。……なんですかそのえっちなポーズは!!!!! さそってるんですか!?!?!?
「……じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」
しかし誘惑にはあらがえず、手がかってに、レオナさんのおなかへと吸い寄せられていく。……やばい、こうふんと暑さで、ぶったおれそう……!!
「――んっ……」
震えるゆびでそっとお腹にふれたしゅんかん、れおなさんはかすかに声をもらした。……なんですか!!! そのえっちなこえは!!!
「……あっ、ふっ……」
ゆび先にすこし力をこめると、しずむような柔らかさのなかに、しっかりとした弾力をかんじる。あせでしっとりとした肌ともあいまって、ずっとさわってたいくらい、ふしぎなかんしょくだった。
「……んぅっ……!」
ふっきんのたにまにそって、なぞるようにゆびをすべらせると、れおなさんはまた、こえをもらした。めをぎゅっとつぶって、かすかにからだをふるわせて、くすぐったさをがまんしている。あつさのせいか、かおもあかくなってしまっている。
……え、えっちすぎる!!!!!
「――はぁっ……!! はあっ……!!!」
「あ、アイラちゃん……? 大丈夫……?」
「はひっ! れんれんっ! らいりょーうれふっ!」
……ここまできて、とまれるわけない!!! もっとさわりたい!!! もっとこえをききたい!!! もっとえっちなすがたをみたいの!!!!! うおおおおおぉぉっ!!!!!!!
「――きゅぅ……」
「あ、アイラちゃん……!?」
……あれ、なんか、からだにちからはいんない……?
「だ、大丈夫……!? のぼせちゃった……?」
だめだ、あつくてもう、なんにもかんがえらんない……。
「んと……外、連れてってあげるね……?」
……あれ、からだがふわっとういて、ゆらゆらしてる……? なんだかきもちいいし、このままねちゃおっと……。
「――ごめんなさい……迷惑かけちゃって……」
「ん、気にしないで」
いつのまにか、私は浴場の床の上に寝かされていた。どうやらのぼせてしまったらしい。目が覚めたとき、レオナさんは心配そうな顔で私を見下ろしていた。
「無理しちゃダメだよ?」
「はい……すみません……」
――いっそ、なにも覚えてなければよかったのに。暴走中の自分については、しっかりと覚えている。レオナさんに「触ってもいいよ」って言ってもらって、すごく興奮して、暑さで正常な判断もできなくて……我ながら、情けないなー……。
……しかもレオナさん、たぶん私を外に出してくれたとき、お姫様抱っこしてくれたっぽい……? はぁー……もっとちゃんと味わいたかったな……。
「……お腹、触りたかったら、いつでも触っていいからね?」
「んぐっ……!? ……あ、ありがとう、ございます……」
……私は終始、邪な気持ちしかなかったのに、彼女はなんの疑いもなく私を受け入れてくれている……。罪悪感で、しばらくレオナさんの顔が見られなかった。
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