014. 〈反撃〉と〈報酬〉
休火山の山肌に存在する、巨大な洞窟。長い長い暗闇を抜けてたどり着いたのは、冷え固まった溶岩が敷き詰められた火口内。上を見上げれば、ぽっかりと開いた火口から青い空が見える。
その青空を埋め尽くすように、何匹もの『ワイバーン』が飛び回っていた。
「――っ!? ふっ!!」
急降下の勢いを乗せた、尻尾の鉤爪による一撃。完全に背後を取られるも、レオナさんは難なく剣で防いだ。しかし反撃に転じる間もなく、ワイバーンは空へと戻ってしまう。
このままじゃ埒が明かない。なんとかあいつらを、レオナさんの剣が届く範囲まで……!?
「レオナさん!!」
「あっ……!? くっ……!!」
私の声に、彼女は慌ててこちらへ駆け寄る。彼女が滑り込むのと同時に、身を屈めて杖を掲げると、間一髪で展開した魔法の盾が、空から降ってきた『火球』を防いだ。
轟音とともに炸裂した爆炎の隙間、影が視界を覆う。ワイバーンよりもさらに巨大な体躯を誇りながら、優雅に空に留まり私たちを見下ろす、火山地帯一帯を統べる支配者級、『ドラゴン』の姿だった。
「戦いづらいね……」
珍しくレオナさんが愚痴を言っている。……無理もないか。さっきから防戦一方で、ろくに反撃もできていないのだから。
「ですね、まずはあいつらを叩き落さないと……」
「なにか、方法はない?」
「……もちろん、ありますよ!」
そう言って、私は立ち上がった。
「そして今! 準備が整いました!」
――レオナさんが攻撃を凌いでくれていたおかげで、火口内はすでに、私の魔力で満たされている。
「……先に謝っておきますね、ごめんなさい、レオナさん」
「えっ?」
きょとんとした顔で聞き返す彼女を横目に、私は地面に杖を突き立てた。
「『グラビティフィールド』!」
瞬間、火口内一帯の『重力』が、『三倍』に増幅された。
「んぐぅッ……!?」
「おっっっも!!」
想像以上のキツさに耐え切れず、思わず叫ぶとともに膝を突いた。……まあ、体重×2の重りをいきなり背負わされたようなものだから、当然ではある。
しかしそのおかげで、飛んでいられなくなったワイバーンたちが次々と地面に墜落していき――そしてひときわ大きな落下音とともに、ドラゴンが地面に叩き付けられた。
「れ、レオナさん……! これであいつらは……もう飛べません……! そして私も……一歩も動けません……!」
……自分の魔法なのに情けないとは思うものの、問題はない。
「でも……! レオナさんなら……動けますよね……!?」
なぜなら私のパートナーは、世界で一番強いから!
「――うん、もちろん……!」
そう言って、彼女はゆっくりと立ち上がる。杖代わりに地面に突き刺していた剣を引き抜き、両手でしっかりと構え直した。
「勇者様、魔導士様……この度は本当に、ありがとうございました……!」
休火山のふもとにある街、サルヴァ。下山した私たちを、たくさんの人たちが迎え入れてくれた。
「おかげでようやく、ワイバーンにさらわれる心配をせずに済みます……!」
「ドラゴンのせいで止まってた採掘も、やっと再開できるぜ!」
「ん……それが、役目だから」
「喜んでいただけて、何よりです!」
……レオナさんとともに旅に出てから、だいたい二ヵ月が経った。討伐した支配者級もこれで三体目。旅は順調に、そして着実に前へ進んでいる。そしてそのたびに、こうやってたくさんの笑顔に囲まれて……みんなの嬉しそうな顔を見ると、なんだかこっちまで嬉しくなって、それまでの疲れも一気に吹き飛んでしまうような気がした――。
「あんな化け物を相手に戦って、疲れましたでしょう? 宿もお食事もご用意させていただきますので、どうぞゆっくりしていってください!」
「わっ、いいんですか……!? じゃあ、お言葉に甘えて……!」
――ウソついた。すっごい疲れてる。ここ数日野宿続きだし、火山の斜面めちゃくちゃキツかったし、この辺気温も高いから汗でベタベタだし……今すぐにでもお風呂入らないと死んじゃうかも……。
「地熱を利用した温泉や、蒸気浴なんかもありますから、旅の疲れを取るにはピッタリですぞ!」
「温泉!? いいですね!! レオナさん!! 早速入りましょう!!」
「えっ、あっ、うん」
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