013. 〈プレゼント〉と〈贈り物〉
晩ご飯にはまだちょっと早かったから、気分転換に街の外へ出た。夕焼けで赤くなった街を横目に見ながら、川に沿ってのんびりお散歩。風が涼しくて気持ちいい――。
「……アイラちゃん、どうしたの?」
「ふえっ!? あっ、いやっ、そのっ……!」
――なのにさっきからなんだか、もじもじし始めたのが気になって、声をかけた。
「お腹すいちゃった?」
「あっいや、それもまあ、ありますけど……じゃなくて!」
そう言って、彼女はわたしに向き直った。
「あ、あのっ! レオナさん、これ……受け取って、もらえますか……?」
彼女が取り出したのは、細長い小さな箱。手のひらより少し大きいその箱には、綺麗なリボンが掛けられている。
「ん……開けてもいい?」
「は、はい……!」
少しだけ震える彼女の手から、箱を受け取って開けた。中に入っていたのは、アイラちゃんの髪と同じ、綺麗な黄色の紐。
「……これ、髪紐……?」
「はい……。いま使ってるやつ、少しほつれがあったので……」
「……いいの?」
「は、はい……! わ、私からの、プレゼント……です……!」
「わぁ……!」
アイラちゃんからのプレゼント、すごく嬉しくて……胸がぽかぽか、あったかくなる。
「一昨日買って、ずっと渡そうと思ってたんですけど、その……気に入ってもらえるか、不安で……」
……そんなの、気に入るに決まってる。だって、アイラちゃんがわたしのために、選んでくれた物だから。
「ありがと……! すっごく嬉しい……!」
「はぅっ……!」
笑顔でお礼を言うと、アイラちゃんはなんだか、うっとりしたような顔になった。
「これ、付けてもらってもいい?」
「――あっ、えと……ポニテに戻すってことですか?」
「うん。この髪型も、すごく好きだけど……やっぱり、元の髪型のほうが好きだから」
「わかりました! じゃあ……」
彼女が背後に回ったのを見て、わたしはその場にしゃがみ込んだ。
アイラちゃんの指が、わたしの髪を優しくほどいていく。そのくすぐったさが、なんだかすごく気持ちよかった。
「……はい! できました!」
「ん、もうできたの?」
立ち上がって、軽く頭を振った。尻尾みたいになった髪の束が、ゆらゆらと揺れる感覚がある。川の水面を鏡代わりにしようと覗き込んだけど、流れがあるせいでよく見えなかった。
「アイラちゃん、どう? 似合ってる?」
彼女に向き直って、軽く頭を傾けて見せた。
「わっ……! はいっ! とっても!」
アイラちゃんは、すごく嬉しそうな顔で、そう言ってくれた。
「お肉もあるみたい」
「それは……早めに食べないとマズいですね……」
晩ご飯を食べて宿に戻ったあと、昼間に街の人たちからもらった贈り物を並べて、何があるのかを見ていた。
「わっ、お酒もありますよ」
アイラちゃんはそう言って、瓶を一本手に取った。
「……うえぇっ!? こ、これ! すごく高価なワインですよ!」
ラベルを見て、彼女は目をまんまるにして驚いている。
「そうなの?」
「はい! なんか、そもそも生産数が少ないうえに需要も高くて、滅多に手に入らないんだとか……!」
「へぇ」
お酒は、ほとんど飲んだことないし、良さもあんまり分かってない。
「……ちょ、ちょっとだけ、飲んでみません……?」
――けど、アイラちゃんは飲みたそう。
「ん、いいよ」
「やった! じゃあグラス用意しますね! たしかこっちに栓抜きも……」
そう言って、彼女は楽しそうに立ち上がった。
「――お待たせしました!」
彼女が持ってきたグラスの、半分くらいまで、真っ赤な液体が入っている。
「わぁ、綺麗な色……」
「ですね! すごく鮮やかな赤で……!」
グラスを傾けて眺めてみると、少しだけ向こうの景色が透けて見えた。
「……じゃあ、えっと……か、かんぱーい!」
「ん、かんぱい」
グラス同士を軽く当てると、チンっと綺麗な音がした。そのまま、口を付けて少しだけ飲んでみる。
「――わっ、すごく飲みやすい……!」
「ん……変わった味だけど……嫌いじゃないかも」
「ですよね!」
……お酒なんて苦いだけだと思ってたけど、こんなのもあるんだ。
「このワインだと……たぶん、こっちのチーズとかと合わせると、もっとおいしくなると思います!」
「そうなの? 詳しいね」
「えへへ……! ちょっとだけ、勉強したことがあって……!」
照れるアイラちゃんを見ながら、贈り物の中にあったチーズを少しちぎって食べる。そのまま、ワインをもう一口。
「――ん……ほんとだ、おいしい」
……よくわからないけど、なんだかどっちもがおいしくなった気がする。これならわたしでも、お酒を楽しむってことができるかも。
「んー! チーズのまろやかさが、ワインの刺激をさらに抑えてくれるから、余計飲みやすくなりますね!」
へぇ~、そういうことなんだ……。
「……けどこれ、結構度数高いので、控えめにしておいたほうがいいかもですねー」
「ん〜……」
……あれ? なんか、頭がふわふわする……。
「私お酒弱いので、こういうの飲むとすぐに酔っちゃって……ってぇ!? レオナさん!? 顔真っ赤ですよ!?」
「んぇ……?」
体もぽかぽかしてきて……ねむくなってきた……。
「め、めちゃくちゃお酒弱いじゃないですか!? 先言っといてくださいよ!!」
「ひゃぅ……おめんらひゃい……」
「呂律回ってないし!! ほらこれ! お水飲んでください!!」
「ふぁ〜い……」
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