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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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本編再開8 全国放送だから全部残るよ?

 ドボン!


 そして。


 一拍遅れて。


『試合終了――!!』


 場内にアナウンスが響き渡った。


『厨二岳高校、全騎リタイア! 勝者――瀬戸際高校!!』


「っしゃあ!!」


「勝ったぁぁぁ!!」


 瀬戸際高校から歓声が上がる。


 剣を掲げる者。


 その場に座り込む者。


 騎士役を下し、騎馬役同士で肩を叩き合う者。


 そんな中。


「…………」


 郁佳だけが。


 じっと。


 結女を見ていた。


「なあにー?」


「いや……」


 郁佳は何かを言いかけ。


 やめた。


「……ううん。勝ててよかったよ」


「あらー?」


「僕、もう深く考えないことにする」


「どうしてー?」


「そういうところだよ……」


 郁佳が疲れたように肩を落とした。


 そこへ。


「結女ぇぇぇ!!」


 遥が駆けてきた。


 結女に飛びつくように抱きつく。


「はーい?」


「途中から考えてたって何!?」


「途中から考えてたのよー?」


「それであれ!?」


「うんー」


「怖っ!」


「あらー? わーい、褒められたー」


「褒めてない!」


「そうなのー?」


「そうだよ! ちょっと恐怖を感じたよ! どこの李牧かヤンかと思った!!」


 遥が叫ぶ。


「ヤンって誰なのー?」


 結女は笑い、少し考え。


「でもー」


「何?」


「菅田くんも褒めてくれたわよー?」


「最悪って言われてたじゃない!」


「あれ、褒め言葉じゃないのー?」


「違うと思う!」


 笑い合う遥と結女。


「…………」


 そのとき。


 遥が何かに気づいた。


「……あ」


「んー?」


 結女も視線を向ける。


 一人の少女が。


 とぼとぼ。


 とぼとぼ。


 歩いてくる。


 頭から足まで赤いローション塗れである。


 黒いマントも、黒い防具も。


 見る影もない。


 ただし、猫耳だけはなぜか無事だった。


「……恋ぬちゃん?」


 遥が声を掛けるが、


「…………」


 返事がない。


 とぼとぼ。


 とぼとぼ。


「……え、えっと、お疲れさま」


「……お疲れさまですぅ……」


 めちゃくちゃ、しょんぼりしていた。


「あらー。猫ちゃんー」


「…………」


 ぴたり。


 恋ぬの足が止まった。


 ゆっくりと。


 顔が上がる。


「……黒姫さん」


「はーい?」


「猫耳……」


「うんー?」


「わたしの猫耳を作戦に使いましたね……?」


「あらー?」


「『あらー?』じゃないですぅ……」


「でもー」


 結女が。


 にっこりと笑った。


「かわいかったわよー」


「そこじゃないですぅぅぅ!!」


 復活した。


「人のチャームポイントを戦術に組み込まないでくださいよぉぉぉ!!」


「だってー」


「だって!?」


「効いたしー」


「効いたとか言うなぁぁぁ!!」


「まあまあ」


 遥が間に入る。


「猫耳、本当にかわいいんだからいいじゃん」


「…………」


 恋ぬが止まった。


「?」


「…………」


「どうしたの?」


「……動いてませんからね」


「ほんとに?」


「…………」


「でも、かわいいよ」


「…………っ」


 恋ぬがぷるぷると震え始めた。


「え? 何?」


「なんで……」


「ん?」


「なんでそんな普通に褒めるんですかぁぁぁ!!」


「ええ!?」


「もう知りません!!」


 くるりと背を向ける。


 両手で顔を押さえ、しゃがみ込んだと思ったら、恋ぬは立った。すぐ立った。耳は真っ赤だ。


「ブラックキャットは闇へ帰還します!」


「その前に着替えた方がいいよ?」


「現実的なこと言わないでください!!」


 また。


 とぼとぼ。


 とぼとぼ。


 去っていく。


「…………」


 遥が首を傾げた。


「何だったの?」


「猫ちゃんー」


「それは分かる」


「ブラックキャットー」


「それも分かる!」


 少し離れた場所で。


「……日野結女」


 声がした。


「はいー?」


 菅田だった。


 赤いローションを払いながら。


 こちらへ歩いてくる。


 先ほどまでのブラッドリーレイヴンでも。


 黒翼を率いる騎士でもない。


 ただの高校生の顔だった。


「完敗だ」


 菅田が頭を下げる。


「俺たちは、強かったか?」


「うんー」


 結女は即答した。


「強かったわよー」


「……即答か」


「だって強かったものー」


「そうか」


 菅田が少しだけ笑った。


「だったら、余計に悔しいな」


「そうねー」


「次は勝つ」


「うんー」


「覚えておけ」


「大丈夫よー。これ、全国放送だからー。

『全部記録に残っていく』ものー」


 結女が、ふわりと笑った。


 そう。

 ふわりと笑いながら。


「次はー」


「……?」


「もっと面白いことしてねー?」


 厨二構文、全国放送である。


「…………」


 菅田が固まった。


「それは」


 一拍。


「試合の話だよな?」


「んー?」


 就職活動の時も。

 結婚式のスピーチでも。

 なんなら葬式の日まで。

 ブラッドリーレイヴンさんと呼ばれる可能性があるわけで……。


「試合の話だよな!?」


 本人はまだ気づいていない。


 結女はにっこり。


 でも答えなかった。


「怖ぇよ!!」


「分かる!!」


 遥が叫んだ。


「はるちゃんー?」


「ごめんなさい!」


「…………」


 郁佳は静かに空を見上げた。


「僕、なんか疲れた……」


「いつも通り」


 隣で瑠衣が頷く。


「瑠衣も原因の一人だからね?」


「?」


「その顔やめて」


 こうして瀬戸際高校、全国大会初戦。


 厨二岳高校戦。


 勝利。


 選手達が戦場を後にしていく。


 その姿を。


 観客席の一角から。


 じっと見つめる者がいた。


 ぱち。


 ぱち。


 ぱち。


 ゆっくりと。


 拍手をする。


 一人の少女。


 長い髪。


 その両側には。


 綺麗に巻かれた。


 縦巻きロール。


「ふふ……」


 少女は。


 遥の背中を見つめ。


 口元に手を添えた。


「相変わらずですわね」


 遥はまだその声に気づいていない。


「——遥」


 少女の口元が。


 にやりと吊り上がった。

ブラッドリーレイヴン。

全国放送です。


……南無。笑

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