本編再開4 かくして法螺貝は戦の始まりを告げるのだが
自陣にて、いつも通り鶴翼の陣を敷く瀬戸際高校。
鶴翼の中央より少し右寄りに瑠衣と、瑠衣直属の玉狩部隊。
左翼の翼のすぐ後ろには、遥率いる遊撃部隊。
右翼最前列にはよしお。
その後方、翼の可変部分に和音。
左翼最前列には縦島、可変部分に元副部長。
そして鶴翼中央最前列には、郁佳率いる守備部隊。
その全体を、後方から結女が見る。
結女の近衛兵部隊には三人騎馬が三騎。
結女率いる瀬戸際高校。
万全の布陣である。
ただし。
いつもと違う精神状態であった。
遥を含む瀬戸際高校のメンバーは全身を粟立たせ、さらにそのうちの何人かは自ら古傷でも思い出したのか、顔を押さえて座り込んでいる。
さながら。
戦が始まる前から、すでに負傷兵にされたようであった。
この惨状は。
五分ほど時間を巻き戻してみれば、理由が判明する。
【五分前】
――目の前では厨二岳の生徒達が、試合前の挨拶を丁寧に。
本人達的には。
非常に丁寧に行っていた。
悪い人たちではない。
むしろスポーツマンシップに則った好青年達であった。
ただし。
その言動を除いて。
「初めまして。僕は厨二岳高校騎士部、深淵の翼を纏めし部長、ブラッドリーレイヴンこと、菅田騎士さ。今日は僕の右手に宿りしルシフェルの名にかけて、勝たせてもらうよ」
「え、あ、はい。こちらこそよろしく」
遥が部長だという情報は得ていても、対外的には和音が部長に見えるのだろう。
菅田くんが和音に握手を求める。
微妙な笑顔のまま右手を差し出す和音。
だが。
「おっと、すまない。僕の右手のルシフェルが悪さをしてはいけないから、左手で握手をさせてもらうよ」
「あ、はい」
変な汗を服で拭い、左手を差し出し直した。
ブラッドリーレイヴンこと菅田騎士は、次に結女へと向き直る。
「貴女が黒姫さんですね。噂はかねがね」
「あらー。どんな噂かしらー」
「ふふ。貴女に宿る勝利の女神アテナと、我がルシフェル。どちらがより高みへ昇れるのか、今から楽しみでなりません。お手柔らかに頼みます」
「アテナねー。私は日野結女よー。そんな変なもの宿らせたりしないしー、黒姫なんて名前じゃないわー。周りがそう呼んでるだけよー。よろしくねー、ブラッドリーレイヴンくん」
「……ブラッド、と呼んでくれて構わない」
「じゃあ菅田くんでー」
「…………もちろん、それでも構わない」
軽くピキる菅田くん。
だが彼は大人だった。
「そして貴女が――雷光を纏いし者、《電光石火》牛島遥……」
態度だけは。
「普通に牛島遥でいいです」
「その身に宿る雷神インドラ――」
「宿ってないです」
菅田くん鼻白む。
それでも気を取り直し、瑠衣へ向き直った。
「貴女からは……深い闇を感じる」
「よく言われる」
「もしかしてお仲間?」
「瑠衣は本物」
「?」
淡々と答える瑠衣。
だって瑠衣ちゃん、本物の陰陽師だから。
「……まあ、良いでしょう」
軽くため息をついたあと。
最後に郁佳へウインクする菅田くん。
郁佳の周囲だけブリザードが吹き荒れた。
「貴女こそがこのチームの柱、《鉄壁》の郁佳さんですね。対戦、楽しみにしていました。よろしくお願いします」
ついでとばかりに白い歯をキラリと輝かせる菅田くん。
……もう菅田でいいや。
は、郁佳に握手を求めた。
全身にもはや鳥肌と呼んでいいのかわからないほどブツブツを浮かべた郁佳は、それでも常識人の殻を破れない。
震えながらその手を差し出した。
「……よ、よろしく」
「ありがとう。いい試合にしましょう」
某花輪氏を彷彿とさせる動きで。
前髪を。
ふぁっさー。
菅田は爽やかに笑った。
「……はい」
郁佳のHPが、試合開始前にごっそり減った。
……いや。
SAN値の方かもしれない。
そしてこの時点で瀬戸際チーム全員の顔に縦線が入ったことは、ここに記述しておこう。
両者が並び。
向かい合い。
礼を行う。
数分後。
それぞれ配置についた。
そして——
物語は冒頭へと戻る。
審判が旗を掲げた。
大きく息を吸い。
笛を鳴らす。
試合開始。
少し遅れて、法螺貝の音色が高らかに鳴り響いた。
「黒翼第三騎団っ! 黄昏の門を開け!」
瀬戸際チーム真向かいから、精神を削るような指示が響き渡った。
陣形戦の始まり始まりー(´・∀・`)
結女さん、布陣がパネぇっす!




