本編に戻る。全国大会編!
本編に戻ります。
キャッスルブレイク編は後日公開で、こちらはキャッスルブレイク編より時系列は未来になっています。
よろしくお願いします
波理日戦から半年。
全国大会ベスト8の宇恵井高校を併呑し、1位と2位の波理日、松栖流連合軍も下した。
今や瀬戸際高校は最弱ではない。
恐れられ、目指されるチームだった。
ある日の放課後。
瀬戸際高校騎士部部室。
「…………暇」
牛島遥が、机に突っ伏していた。
「平和でいいじゃない」
長谷部郁佳はそう言いながら、騎士部の備品を整理している。
「暇」
「二回言ったね」
「だって暇なんだもん」
遥は机に頬を押しつけたまま、ぐりぐりと顔を左右に動かした。
「この前まであんなに戦ってたのに」
「あれだけ立て続けにやり合っておいて、また戦いたがる方がおかしいんだよ」
「そりゃあねー、四人揃ってこうやってだべってるの好きだし、そのために騎士部入ったんだけどさー、暇」
「三回目だね」
郁佳が苦笑する。
「郁佳、細かい」
部室の隅。
山ノ井瑠衣は無言でスポチャン剣を磨いていた。
磨く必要があるのかどうかはわからない。
「瑠衣は暇じゃないの?」
「暇」
「だよね!」
「だから刃を研いでる」
「スポチャン剣だよ!?」
「有意」
「何が!?」
いつもの部室だった。
あれだけの激戦が嘘だったかのように。
波理日高校。
そして――波理日高校校長。
騎士部の歴史を辿っても、あれほど無茶苦茶な相手はそうはいない。
まあ、その後に起きた色々は、また別の機会に話すことになるんだけど……。
いや。暇だ。
高校生の部活動で校長と戦っている時点で、何かがおかしい気もするが。
勝った。
瀬戸際高校は勝ったのだ。
どれだけ大きな戦いに勝っても、勝ってしまえば、翌日からまた日常が始まる。
「あらー?」
窓際でスマートフォンで何かしていた日野結女が、小さく声を上げた。
遥が顔だけを上げる。
「なに?」
「波理日高校戦の動画、また伸びてるわよー」
「え」
遥が跳ね起きた。
「どれどれ!?」
結女の横まで一瞬で移動する。
「速いな……」
郁佳が呆れる。
「ほら、ここ」
大胸金之助選手をぶっ飛ばしたシーンだが、その時のやりとりの音声までしっかりと拾われてる。
「…………」
遥が画面を見る。
そして固まった。
遥は胸がない、全国放送……。
「なんでここ切り抜かれてるの!?」
「人気みたいねー」
「もっと格好いいところあったでしょ!?」
「コメント欄では好評」
瑠衣がいつの間にか背後から覗き込んでいた。
「瑠衣! いつ来たの!?」
「今」
「そうじゃなくて!」
郁佳も作業の手を止め、少しだけ画面を覗く。
「……まあ、遥らしくていいんじゃないか?」
「よくない!」
「再生数は?」
瑠衣が聞く。
結女が答える。
「昨日から二十七万くらい増えてるわねー」
「…………」
遥が画面を二度見した。
「にじゅう……ななまん?」
「うん」
「なんで!?」
「人気者」
「この場面で!?」
瀬戸際高校騎士部。
知らないうちに、少しずつ有名になっていた。
以前なら、試合をして。
勝って。
学校に帰れば、それで終わりだった。
だが今は違う。
ナイツゲームそのものが注目され始めている。
テレビで放送され、動画が切り抜かれ、選手の名前が知られるようになった。
そして何より――。
「最近さ」
遥が自分のスマートフォンを取り出した。
「学校でも知らない人に声かけられるんだけど」
「僕もだよ」
「郁佳も?」
「『鉄壁の人ですよね』って」
「鉄壁の人って」
遥が苦笑いする。
「笑うな」
結女がにこにこしている。
「瑠衣ちゃんはどうー?」
「昨日、一年生に握手を求められた」
「おお!」
「両手で握った」
「普通だね」
「柳流の握りで」
「何したの!?」
「悲鳴を上げて喜んでた」
「それ喜んでないよ!?」
「あと、倒れ込んでいた」
「絶対だめなやつ!」
「あらー?」
結女が笑う。
「それにしても私たち、随分遠くまで来たわねー」
その一言に。
三人が、ほんの少しだけ静かになった。
最初は。
こんなものではなかった。
寄せ集めみたいな四人だった。
それぞれ得意なことも違って。
考えていることも違って。
戦い方だって、最初は結女が作戦を考え、郁佳が守り、遥と瑠衣が好き勝手に暴れ回っていただけだった。
それでも。
いつの間にか、四人でいることが当たり前になった。
そしていつしか、四人で戦うことも当たり前になった。
なんだか感慨深いようなそうでもないような……。
そして今では。
いくつもの強豪校を倒し。
あの波理日高校を倒し。
校長まで倒した。
「……確かに」
郁佳が小さく笑った。
「結構、遠くまで来たかもしれないね」
「でも、まだまだでしょ」
遥が言った。
迷いのない声だった。
「だって、まだ終わってないし」
郁佳が遥を見る。
瑠衣も見る。
結女だけは、最初からわかっていたように微笑んでいた。
「次も勝つんでしょ?」
「もちろん」
「相手も決まってないのに?」
「誰でも一緒!」
「遥らしい」
郁佳が苦笑する。
その時だった。
――ガチャ。
部室の扉が開いた。
「お、みんな揃ってるな」
重音和音が入ってきた。
それぞれが個性通りの挨拶の言葉を交わす。
その和音の手には、一枚の封筒。
四人の視線が、そこへ集まる。
「重音先輩、それはなんですかー?」
結女が先に気づいた。
「ああ」
和音は封筒を軽く掲げた。
「来たぞ」
封筒にその文字が事務的に書かれてあった。
——騎馬戦全国大会のお知らせ——
目を輝かせた遥が立ち上がる。
瑠衣がスポチャン剣を置く。
郁佳の表情から、さっきまでの緩さが消える。
そして結女は。
いつもの柔らかな笑みのまま、ほんの少しだけ目を細めた。
「全国大会が始まる。この期間は学校対抗騎馬戦は行われない。そして初戦の対戦相手が決まった」
一瞬。
部室が静まり返った。
その直後。
「よっしゃあ!」
遥の声が響いた。
日常は終わった。
瀬戸際高校騎士部。
新たな四人の次の戦いが、始まる。
外伝もまたやりますからね(`・∀・´)
楽しみにしててください⭐︎




