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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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〈閑話16〉四姉妹、本当に姉妹になる 〜お兄ちゃんと出来の悪い弟〜

 ある日の放課後。


 瀬戸際高校騎士部部室。


 いつものように四人が集まっていた。


 遥がスマホを眺めながら、ふと眉を寄せる。


「ねえ」


「なに?」


 瑠衣が顔を上げた。


「最近さ、ナイツゲームがテレビ放送されてるじゃない?」


「うん」


「私たち、本当の姉妹だと思われてるらしいんだけど」


「…………」


「…………」


「…………」


 結女が、にこりと笑った。


「あらー?」


「いや、『あらー?』じゃなくて」


 遥はスマホを机の上に置いた。


「四姉妹って呼ばれすぎて、普通に姉妹だと思ってる人がいるっぽい」


「僕たち、苗字全員違うんだけどね」


 郁佳が苦笑する。


「そこを超えてくる」


「ファンのみなさんの認識力、すごいわねー」


「認識力なの、それ?」


 結女は少し考えた。


「では、せっかくですしー」


「……結女?」


「本当に姉妹ということにしましょうかー?」


「なんで!?」


「面白そう」


「瑠衣も乗っちゃった!」


 瑠衣は小さく頷いた。


「新しい家族」


「増やすな増やすな」


 郁佳が腕を組む。


「でも、仮に姉妹だとしたら……」


「郁ちゃん、何を考えてる?」


「誰が長女なんだろう?」


 沈黙。


 四人は互いの顔を見た。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 結女が、手を挙げる。


「私ですかねー?」


「自薦!?」


「一番長女っぽいんじゃないかしらー」


「どこが!?」


 遥が即座に食いついた。


「結女、一番妹っぽくない!?」


「あらー?」


「その『あらー?』で全部流そうとするところとか!」


 郁佳が結女を見る。


「でも、結女は確かに年上っぽく見える時あるよね」


「わからないでもない」


「みんなが騒いでるのを一歩引いて見てる時とか」


「でしょうー?」


「ただし大体、その騒ぎの原因もだいたい結女」


「…………」


 遥の笑顔が固まり、


「それはだいたいあってる」


 瑠衣が肯定する。


 結女は微笑んだ。


「では、長女は私ですねー」


「押し切った!」


 瑠衣が頷く。


「長女、結女ちゃん」


「決定しちゃった!」


「じゃあ次女は?」


 郁佳が聞く。


 三人の視線が遥へ向いた。


「え?」


「はるちゃん」


「なんで!?」


「元気な次女」


「説明になってない!」


 結女が頬に手を添える。


「でも、はるちゃんは真ん中っ子感あるわよねー」


「真ん中っ子感って何!?」


「上にも下にも噛みつくし可愛がられるところとかー」


「犬!?」


「猫かな?」


「コツメカワウソ?」


「瑠衣、マニアック!!」


 瑠衣が遥を見る。


「次女」


「決定早いな!」


「じゃあ、次女ははるちゃんねー」


「本人の意思!」


「三女は僕?」


 郁佳が自分を指さした。


「僕、ぜったい長女って言われると思ってた」


「お母さん」


「ぶふっ! ちょっ、瑠衣っ!?」


「長女を通り越した」


「僕まだ高校生なんだけど!?」


「わかる! 郁佳ってばお姉ちゃんっていうよりお母さんなんだよ!」


「遥まで!?」


「お弁当忘れたら持ってきてくれそう」


「それは……まあ、気づいたら持っていくけど」


「ほら!」


「何がほらなの!?」


 結女がまとめる。


「なので三女ですねー」


「理屈が一切わからないよ!」


「そして」


 三人の視線が瑠衣へ向いた。


「…………」


 瑠衣は無表情のまま自分を指さした。


「末っ子」


「「そこだけ異論の余地がない!」」


 遥と郁佳が同時に叫ぶ。


 結女も少し考えてから頷いた。


「瑠衣ちゃんは確かに末っ子っぽいわねー」


「自由だから」


「自分で言うんだ」


「間違っていない、たぶん」


 こうして。


 なぜか。


 長女、結女。


 次女、遥。


 三女、郁佳。


 四女、瑠衣。


 という謎の姉妹構成が完成した。


「いや待って」


 遥が机を叩く。


「何ひとつ解決してないよね!?」


「新しい家族ができた」


「できてない!」


 その時。


 部室の扉が開いた。


「みんな何を騒いで――」


 重音先輩——和音が入ってきた。


 四人が振り返る。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 和音が足を止めた。ちょっと引いている。


「……なんだ?」


 四人は顔を見合わせた。


 そして。


「お兄ちゃん」


「お兄ちゃんですねー」


「お兄ちゃんだね」


「兄」


「待て」


 和音の顔に縦線が入る。


「待て待て待て」


 遥がにこっと笑う。


「お兄ちゃん♡」


「遥、これは一体なんの悪ノリなんだ?」


「重音先輩、今日からお兄ちゃんですー」


「結女さん、勝手に僕の家族構成を変えないでもらえる?」


 郁佳が申し訳なさそうに笑う。


「でも、なんか重音先輩ってお兄ちゃんっぽいですよね」


「郁佳まで!?」


 瑠衣が重音先輩を見上げる。


「先輩」


「瑠衣……?」


 和音の顔に一瞬、安堵が浮かぶ。


「お前だけはまとも――」


「お兄ちゃん先輩」


「……なわけないよね! そうだよねっ! だいたいいつも瑠衣が一番おかしいよね! 混ぜるな!!」


 和音の絶叫が部室に響いた。


「はぁ……いや、そもそも何の話なんだ」


「最近、私たちが本当の姉妹だと思われてるらしくてー」


「たしかに、四姉妹なんて呼ばれてるな」


「なので本当に姉妹になりましたー」


「どういう論理だ!?」


「で、重音先輩がお兄ちゃんっぽい」


「なぜ僕まで巻き込まれた?」


「適任」


「何の!?」


 そこへ。


 再び扉が開いた。


「うーっす。何騒いでんだ?」


 田中よしおが入ってきた。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


 四人がよしおを見る。


 よしおが止まる。


「なんだ?」


 そして四人がよしおから和音へと視線を動かす。


 和音は嫌そうな顔をした。

 だって絶対何か企んでる顔だもの。


「なんで今度はこっちを見てるんだ?」


 もう一度四人の視線がよしおに集まる。


「……な、なんだよ!」


 四人はほぼ同時に言った。


「弟」


「弟ですねー」


「弟だね」


「弟だ」


「なんでだよ!!」


 よしおの絶叫が、重音先輩のものと綺麗に重なった。


「いやいやいや待て! なんの弟だよ!」


 遥が腕を組んだ。


「私たちの」


「聞いてねえよ!」


 結女が微笑む。


「よしお君は末弟ですねー」


「山ノ井より年下扱い!?」


「出来の悪い弟」


「瑠衣ちゃぁぁん!!」


 よしおが絶叫する。


 郁佳が慌てる。


「瑠衣、さすがに言い方が」


「じゃあ手のかかる弟」


「フォローになってねえ!」


 遥がうんうんと頷く。


「でも、よしお君は弟感ある」


「どこが!?」


「なんか放っとくと変なことするし」


「お前にだけは言われたくねえ!」


「なんでよ!」


「お前の方がするだろ!」


「しないし!」


「する!」


「しない!」


「する!」


 ぎゃあぎゃあと言い争い始めた二人を見て、郁佳が微笑む。


「……やっぱり弟枠ね」


 結女も頷いた。


「出来の悪い弟ですねー」


 瑠衣が小さく頷く。


「満場一致」


「待てよ、あれだろ? このメンバーを兄弟姉妹にしたらどんな列になるかって話だろ?」


 よしおが口を挟む。


「そうよー?」


「重音が長男、郁佳さんが長女、次女が結女さんで、遥が三女、瑠衣が四女だろ」


「あ。なんかすっごいしっくり来た」


「ウェーイ……って、あれ? この並びだと俺やっぱ末弟??」


「確定ねー」


「一応、俺先輩のはずなんだけど?」


「僕の票は!? 長男確定されてるんだけど?」


「家族会議では少数派」


 和音の顔の縦線が増える。


「確かに妹はいるけど……」


 よしおが、和音を見る。


「…………」


「なんだ」


「兄貴」


「やめろ」


「ジュース奢って」


「順応するな!!」


「兄貴、俺コーラ」


「知らん!」


「お兄ちゃん、私はオレンジ」


「遥まで便乗するな!」


「私は紅茶でお願いしますー」


「結女さん!?」


「僕はブラックコーヒーで」


「郁佳まで!?」


「先輩」


 瑠衣が呼ぶ。


「……瑠衣、もう何も言うな」


「牛乳」


「飲み物の注文だった!!」


 和音は天井を仰いだ。


「……俺はいつから七人兄妹の長男になったんだ」


 独り言のように喋る和音、一人称も変わっちゃう。


 郁佳が首を傾げる。


「七人?」


「俺、君ら四人、よしおで六人だろう。音符がいるからな」


「あ」


 遥が声を上げる。


「お兄ちゃん、自分から家族に入った」


「違う!!」


 結女が嬉しそうに笑う。


「認めてくれたんですねー?」


「認めてない!」


「兄」


「瑠衣は少し黙ろうか」


 よしおが重音先輩の肩を叩いた。


「諦めろよ、兄貴」


「元凶みたいな顔をするな!!」


 こうして。


 瀬戸際高校騎士部に――


 長男、重音先輩。


 長女、郁佳。


 次女、結女。


 三女、遥。


 四女、瑠衣。


 そして。


 出来の悪い末弟、よしお。


 唯一の実妹、音符。


 という。


 和音からすれば一人を除いて、誰も血の繋がっていない大家族が誕生した。


「誕生してない!!」


 和音の絶叫が、今日も瀬戸際高校に響き渡る。


 なお。


 よしおは帰りに、本当に和音にジュースを奢らせた。


 その後、縦島がやってきて、


「俺は?」


 と聞いた。


 瑠衣の答えは、


「近所のお兄ちゃん」


 だった。


 たぶん、お母さんから「あの子と遊んじゃダメよ」とか言われる系の。

お盆明け一発目ですね。


ガルナイはどうも夜にPVが伸びがちなので、しばらく夜の読者さんに拾ってもらいやすそうな夕方18時アップでやってみます。

イマイチだったら元に戻すかなー(゜ω゜)

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