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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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80/106

【外伝】陰陽師、山ノ井瑠衣 弐拾弐話 〜君の名は〜

ついに80話到達!

100話まであと少し!


100話まで行ったら俺、結婚するんだ。


……いや、もうしてたわ(笑)


※死亡フラグ(笑)

 二人は同時に床を蹴った。


 瑠衣が軍神——坂上田村麻呂の右手側へ


 遥が左手側へ。


 瑠衣が先に仕掛ける。


 床すれすれまで身体を沈め、滑るように一気に間合いを詰めた。


「柳流、水切り」


 顔の前へ双剣を八の字に構える。

 よくある忍者漫画の様に刀を下げたりはしない。

 あれはあくまでも漫画的表現である。

 実戦では腕一本分、反応が間に合わない。


 狙いは右脚付け根、人であれば大動脈が通る場所、そして足首。手首と肘を返し、挟み込むように、斬る。


「疾っ!!」


 田村麻呂の軍刀が、それを受け止めた。


 カカッ! と甲高い音が響く。


 だが、瑠衣の一撃は囮だった。


「フッ!!」


 死角から遥が飛び込む。


 脱力。地面の反力、体重、全身を乗せた右拳を放つ。


 側頭部少し下、首を狙う。最短距離を貫く最速の一撃。ストレートリード。


 避けられない。


 そう思った瞬間。


 田村麻呂の左肘が遥の拳を正確に打ち払った。


「いっ……!」


 骨の芯まで痺れる。


 遥の拳が外へ弾かれた。


「……ったいわねぇ!」


 着地直前の右脚を僅かに手前へ引く。そのまま、スイッチングと同時に左足の前蹴りを足先(そくせん)で叩き込む遥。


 着撃と同時に、田村麻呂が胴体を滑らせる。

 遥の知っている漫画で言うならば消力(シャオリー)だろうか。脇腹に突き刺さる遥のつま先の衝撃をいなす。


 いなした遥の力をそのまま剣先へと繋いだ。

 瑠衣の双剣が押し流される。


 そのまま空いた胴へ、黒い刃が走る。


「瑠衣!」


「柳舞」

 

 下から切り上げる軍刀を双剣で受ける。そのままバク転で距離を取った。

 流れるように圧縮印を組む。

 

「令っ!」


 風が爆ぜた。


 壁に細い亀裂が走る。


「危なっ!」


 間一髪で、バックステップする遥。


 二人は床を転がり、それぞれ反対方向へ跳ね起きた。


 田村麻呂は追わない。


 軍刀を片手に下げ、静かに佇んでいる。


 一歩も動いていなかった。


『ふむ。よい連携であるな』


 無数の瞳が、左右へ分かれた二人を同時に捉える。


『互いの不足を補い、信じ、互いを刃とする』


 軍刀の切っ先が、ゆっくりと持ち上がった。


『だが』


 瑠衣の背筋に悪寒が走る。


『余りに正しい』


 田村麻呂の姿が消えた。


「はるちゃん、下!」


「えっ?」


 遥が反射的に身を沈める。


 頭上を黒い刃が薙いだ。


 髪が大きく揺れる。


 避けた。


 だが、終わっていない。


 返す刃が、沈んだ遥の肩へ落ちる。


「やばっ!」


 そこへ瑠衣が横から双剣を差し込んだ。


 刃と刃が噛み合う。


「ぐっ……!」


 瑠衣の膝が床についた。


 重い。


 先ほどよりも、さらに重い。


 まるで館そのものが軍刀を押し込んでいるようだ。

 遥が右へ旋回、両手を地面に付けた。


「っりゃあっ!」


 土下座の様な姿勢から両手を伸ばし、左足を跳ね上げる。

 遥の海老蹴りが田村麻呂の脇腹へ。


 だがその足が届くより早く、田村麻呂は軍刀を引いた。


 瑠衣への圧力が消える。


 遥の蹴りも空を切った。


 二人は再び距離を取る。


 短い攻防。


 それだけで、息が上がっていた。


 一方。


 田村麻呂は最初と同じ場所に立っている。


 呼吸すら乱れていない。


「……何なのよ、もう」


 遥が痺れる右手を振った。


「こっちが二人なのに、向こうの方が手が多いみたいじゃない」


「軍服姿は消えた。今は黒い塊。なのにさっきから手はあの二本のみ。……いくつもの腕を出せるはずなのになぜ?」


「……なにか、ありそうね」


 瑠衣は答えながら、田村麻呂の軍刀を見つめていた。


 切っ先。


 肩。


 腰。


 足。


 目。


 全てを見る。


 今の攻防を、頭の中で繰り返す。


 自分が斬り込む前。


 遥が拳を放つ前。


 田村麻呂の刀は、既にそこへ向かっていた。


「……はるちゃん」


「なに?」


「もう一度」


「え?」


「同じ形で行く」


 遥は一瞬だけ瑠衣を見る。


「何かあるわけね?」


「確認したい」


「わかった」


「はるちゃん、絶対死なないで」


 瑠衣は双剣を構える。


「当たり前っ!」


 遥は不敵に笑い、


「行く」


 二人が走る。


 先ほどと同じ。


 瑠衣が軍神の右手側


 遥が左手側。


 瑠衣が足を狙い、右の剣を振り上げる。


 田村麻呂の軍刀が動く。


 刃が交わる――その直前。


 瑠衣は攻撃を止めた。


 右足を床へ突き立て、強引に身体を後ろへ引く。


 同時に叫んだ。


「はるちゃん待て!」


「うぉっ!?」


 遥も拳を引いた。


 勢いを殺し切れず、その場で大きく踏鞴(たたら)を踏む。


 田村麻呂の軍刀だけが振り抜かれた。


「おっと!」


 遥が声を漏らす。


「……やっぱり」


「わたし、犬じゃないんだけど!?」


 瑠衣が何かに気づいたように目を細めた。


 田村麻呂の無数の目が興味深そうに瑠衣を見る。


『ほう』


 遥は瑠衣の隣へ戻る。


「どういうこと?」


「見てから防いでいない」


「速すぎるってこと?」


「違う」


 瑠衣は首を振った。


「私たちが動く前に、次の位置へ刀を置いてる」


 遥が田村麻呂を見る。


「未来視!?」


「たぶん違う。おそらく未来予測」


「予測!?」


「経験による、とても高精度な予測」


 瑠衣の声が僅かに沈む。


「立ち方。視線。呼吸。重心。筋肉の動き」


 一つずつ確認するように言葉を重ねる。


「全部見て、次に何をするか読んでる」


『然り』


 田村麻呂が軍刀を肩へ担いだ。


『戦場において、人は言葉より雄弁だ』


 無数の瞳が蠢く。


『恐れれば退く。怒れば踏み込む。守ろうとすれば、その身を差し出す』


 遥が軽く構え直す。


『心が決まれば、身体は動く』


『ならば』


 軍刀の切っ先が遥へ向けられる。


『斬るべき場所も自ずと決まる』


「……なるほど」


 遥が低く呟いた。


「腹立つわねぇ。全部分かったみたいな言い方して」


「実際、分かってる……でも」


 瑠衣は田村麻呂から視線を逸らさない。


「絶対じゃない」


 遥が瞬きをする。


 瑠衣は考える。


 こちらの動きが読まれる。


 技を出す前に、身体が答えを教えてしまう。


 なら。


「はるちゃん」


「今度は何?」


「私の動きは無視して」


「は?」


「巻き添えおーけー」


「は?」


「最悪当たっても、はるちゃんの武器はボクシンググローブ。私は死なないし消えない。たぶん」


「たぶん!?」


「冗談。……でもそれくらいやらないと、勝てない」


 遥はぽかんと口を開けた。


 だが。


 すぐに、その意味を理解する。


 瑠衣が作戦を知らない。


 遥自身も、直前まで決めない。


 最悪、瑠衣は巻き添えしても死なない。


 それなら田村麻呂が読めるのは、動き出した瞬間だけ。


「……要するに」


 遥が戸惑い気味に


「出たとこ勝負?」


「うん」


「……ほんとに当てちゃったらごめん」


「大丈夫、最悪死ぬよりマシ」


「……了解。出たとこ勝負とか、私の得意分野じゃない」


 遥が拳を構える。


 田村麻呂が低く笑った。


『策を捨てるか』


「違うわよ」


 遥は腰を落とす。


「策を考えるのは瑠衣」


 瑠衣も双剣を構え直す。


「壊すのは、はるちゃん」


「そういうこと!」


 二人が再び左右へ散る。


 瑠衣が先行する。


 右。


 左。


 双剣を細かく刻み、田村麻呂の視線を引きつける。


 田村麻呂は全てを軍刀一本で受け流す。


 火花が連続して散った。


 遥が背後に回り込んで、踏み込む。


 狙いは後頭部。


 そう見えた。


 田村麻呂の軍刀が背後へ回る。


 その瞬間。


 遥は止まった。


『!?』


 田村麻呂の、刹那にも満たない思考の間を瑠衣が拾う。双剣を捨てた。


『何?』


 初めて。


 田村麻呂の声に、僅かな揺れが混じった。


 瑠衣の両手が高速で圧縮印を組む。


「四方清浄!」

「『そう来たか!!』」


 遥と田村麻呂が同時に叫んだ。護符が四方へ飛ぶ。


 狙いは——床、壁、天井。


 四枚の護符が同時に炸裂した。


 閃光が館を白く染める。


 轟音。


 舞い上がる粉塵。


 無数の瞳が、一瞬だけ視界を失う。


 その中を。


 遥は走らなかった。


 床に転がっていた瑠衣の双剣を蹴り上げる。


 回転した二本の剣が、粉塵の中へ飛び込んだ。


 軍刀が反応する。


 黒い刃が双剣を弾き飛ばした。


 そこへ。


「こっちよ、みょんみょん丸!」


 真下から遥が跳び上がる。


 右拳ではない。


 左でもない。


 頭だった。


「どっせぇぇぇいっ!」


 全力の頭突きが、田村麻呂の顎へ叩き込まれた。


 鈍い音が響く。


 二人の身体が弾けるように離れた。


「いったぁぁぁぁっ!」


 遥が頭頂部を押さえ、その場で転げ回る。

 締まらない……。


「硬っ! 何よこいつ! 硬ったっ!?」


 粉塵がゆっくりと晴れていく。


 田村麻呂は立っていた。


 僅かに上体を反らしたまま。


 顔のあるべき穴の中で、無数の目が見開かれている。


 館に沈黙が下りる。


 瑠衣が双剣を拾いながら、遥の隣へ立った。


「当たった」


「頭、割れるかと思った……」


「でも当たった」


「こっちの頭もね!」


 田村麻呂がゆっくりと姿勢を戻す。


 そして。


『くっ』


 肩が揺れた。


『くく……』


 低い笑いが、次第に大きくなる。


『ははははははっ!』


 田村麻呂、軍神の哄笑が鬼穴を震わせた。


『我が読みを破ったか』


 軍刀を握り直す。


 先ほどまでとは違う。


 片手ではない。


 両手。


 腰を落とし、切っ先を二人へ向ける。


 館の床が軋んだ。


 空気が沈む。


 遥の笑みが引きつった。


「……ねえ、瑠衣」


「なに?」


「これ、ちょっと本気にさせた?」


「かなり」


「やっぱり?」


 田村麻呂の無数の瞳が、歓喜に歪む。


『名を聞こう』


 遥と瑠衣は顔を見合わせた。


 先に遥が胸を張る。


「牛島遥!」


「山ノ井瑠衣」


『覚えたぞ』


 黒い軍刀が、音もなく振り上げられる。


『ならば次は』


 鬼穴そのものが震えた。


『死ぬ気で来い』

田村麻呂さんつおい……(゜ω゜)めっちゃ

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