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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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【外伝】陰陽師、山ノ井瑠衣 拾弐話 〜遥のお着替え〜

現在本編から数えて70話目です。

100話が見えて来ました。

 前方で「めっ」なのか「滅っ」なのか、判定しづらい感じで、雑魚敵を次々と消去する瑠衣。

 その後ろでは、手にした退魔のピコピコハンマーで、気配と反射だけを頼りに片手間に周囲に寄ってくる幽霊たちをしばき倒す遥。もう慣れてしまったようだ。


 歩きながら、遥は空いた左手でスマホを取り出した。


「ねえ、札子ちゃん」


『なんでしょう』

 画面から上半身だけがにゅっと出る。


「のわあっ!!」


『あ、すみません。驚かせてしまいました』


「はぁ、はぁっ! お、驚かさないでよもうっ!」


『めんぼくない』


「……あんた、ここの中ボス的な役だったんでしょ? ラスボスとか、ここのダンジョンコアの場所、知らない?」

 ため息と共に尋ねる遥の台詞を、


「ダンジョンコアではない。鬼穴核」


 瑠衣が静かに訂正した。


 スマホの画面に札が浮かぶ。


『核のある場所は知っています。ただ——』


 一拍。


『そこに行くまでの道に私を含む、四天王のうち、あと三人が控えています』


「四天王!?」


『ちなみに私が最弱です』


「それはめんどくさい! ショートカットとかない?」


『……あるにはあります』


「あるんだ!?」


『ただし、その道にはスライムがいます』


「スライム?」


『服を溶かしてきます』


 遥の顔が引きつった。


「それは嫌! 絶対溶かされる役、私じゃんか!!」


 瑠衣が、すっと手を挙げた。


「行こう」


「ノリノリじゃない!! なんで!?」


 瑠衣は答えなかった。


 ただ、わずかに目が輝いていた。


 遥は嫌な予感がした。


 この目は知っている。


 写真を撮りたい時の目だ。


「……瑠衣、まさか」


「大丈夫。お母さんの体操着なら無くなっても大丈夫。家にはたくさんある」

 とっても嬉しそう。


「たくさんあるんだ!? って、いや、他にないの!?」


「……あるにはある」


 瑠衣がまたどこからともなく取り出した。

 ド◯えもんでも袖の中に飼っているの? とか聞いてはいけない。出て来たのは……


「スクール水着じゃん!! しかもまた瑠香さんの名前入り! ……なんでよ!!」


 うん。紛れもないスクール水着だった。

 しかも胸のところにはまたもや、山ノ井瑠香と書かれていた。


「嵩張らないから」


「体操着と同じ理由!!」


「動きやすい。溶けても惜しくない」


「そういう問題!?」


 遥は水着を見た。


 水着を見た。


 もう一度、水着を見た。


「……体操着は?」


「それしかない」


「これを着て戦って、もし溶けちゃったら」


「バスで帰る」


「バスっ!?」


「そう」


「スクール水着で?」


「そう」


「瑠香さんの名前入りで!?」


「うん」


 遥は三秒考えた。


「着替える」


「あとこれも、ある」


 瑠衣がさらに何かを取り出した。


「なんでっ!?」

 ゴ◯ラの着ぐるみである。地の文の解説より先に突っ込むのもやむなしだった。


「なんでゴ◯ラ!?」


「念の為」


「念の為にゴ◯ラを持ってくる人がいるか!!」


「嵩張るけど、溶けても惜しくない」


「体操着とスクール水着と同じ基準で語らないで!?」


 瑠衣は着ぐるみを遥に押しつけた。


「水着の上から着て」


「なんで!?」


「溶けたら脱げる。二段階」


「二段階で羞恥を味わうシステムになってるじゃない!!」


『合理的だと思います』


「札子ちゃんは黙っていようか!!」


 遥はゴ◯ラの着ぐるみを見た。


 スクール水着を見た。


 瑠衣を見た。


 瑠衣は無表情だった。


 でも、目が輝いていた。


 写真目的だった。


 絶対に写真目的だった。


 なんか色々、諦めた。


「……着替える」


 だって、スクール水着でバスに乗るのを想像しちゃったから。まだ体操着の方がマシだから。


 ——数分後。


 ゴ◯ラの口から顔だけ出した遥が、廊下に立っていた。


 右手にはピコピコハンマー。

 ゴ◯ラの中は友達のお母さんの名前入りスクール水着を着た遥である。

 悟った顔をしている。


その隣には、もう一匹のゴ◯ラが立っていた。


「……瑠衣」


「なに?」


「なんで瑠衣まで着たの?」


「一人だけだと、はるちゃんが恥ずかしいと思って」


「優しさの方向がおかしい!!」


 瑠衣はどこからともなくカメラを取り出した。パシャパシャと場違いな音が鬼穴に響く。


「……」

 遥は無になっている。ただの抜け殻のようだ。


『記念に一枚どうぞ』


「札子ちゃんまで!!」


 カシャ。


「撮った!!」


「記録は大事」


「何の記録よ!!」


 ゴ◯ラ(中身・遥/装備:瑠香のスク水)は肩を落とした。


 鬼穴。


 もう嫌だった。早く帰りたい。


 ちなみに遥たちがショートカットを選んだので、必然的に残り三人の四天王は出番が無くなった。どこかで「え?」とか言ってるかもしれないが、仕方がないのである。

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