〈閑話14〉 忘れられていた元副部長を救いたい
忘れられていた元副部長さんを救いたい、の回笑笑
病室は静かだった。
まるで時間が止まってしまったかのような静けさの中、点滴の音だけが、規則正しく時を刻んでいる。
ドアが静かに開いて、一人の少女が入ってきた。受付で名前を告げたはずだが、ナースステーションでは三回聞き返されたらしく、諦めた顔をしていた。彼女にとってはいつものことだった。
ベッドの傍らに腰を下ろして、少女は眠る元副部長の顔をしばらく見つめた。
「わたしと、同じですね……」
小さく呟いて、少女は困ったように少しだけ目尻を下げた。
少し躊躇いがちに、うなされる元副部長の額を撫でるその手はとても温かくて、優しい。
「……いつも、応援してましたよ」
誰に聞かせるわけでもなく、静かに言った。
部長の陰に隠れがちで、いつも名前を呼んでもらい損ねて、それでも要所要所でちゃんと仕事をしていた人。気づいていた人間が、この学校に何人いたかはわからない。
少女の横顔に、窓からの光が落ちた。
長いまつ毛が、艶やかな光を静かに返している。
この世界では何故か隠され、多くの人はその美しさに気づけない。
「元気になったら、アルバイト先のカラオケに来てください。わたし、バイトしてるんで」
くすりと微笑みかけた少女は立ち上がり、紙袋からお見舞いの品をサイドテーブルに置いた。
信楽焼のタヌキだった。
三十センチほどの、堂々とした体躯。なぜお見舞いにタヌキなのか、その理由は誰にも語られなかった。
ただ、その立派な金の玉袋の下に、一枚の紙切れが挟まれていた。
『カラオケ焼き狸、割引券』
少女は満足そうにそれを置き直して、一度だけ振り返り、静かに病室を出て行った。
元副部長は、眠ったまま。
たぬきだけが、部屋に残った。
本編2ndシーズンの冒頭で、筋肉にやられた縦島君と元副部長。
本編を見返すと、元副部長氏だけ救われていなかった!
忘れられていた。
ごめん笑笑
ってことで、元副部長の、しもナントカ君を救う回。
この謎の少女が活躍する回は以下の二話です。
https://ncode.syosetu.com/n4403mc/45/
https://ncode.syosetu.com/n4403mc/55
次回また【外伝】に戻ります。
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