↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/105

【外伝】陰陽師、山ノ井瑠衣 四話 〜遥とえっちな触手と絶望と〜

「なにアレ……?」


 ゴキブリの大群でも目にしたかの様な反応をする遥。

 這い回る悪寒が鳥肌となって全身を襲った。


 扉の隙間から見える赤黒い不気味なナニカは、左右どちらに向かって動いているのかすら不明だった。ただ蠢き続けている。 ただ、そこに存在している。 おそらく、この世に存在してはいけないナニカ……


 一瞬だけ眉を(ひそ)めた瑠衣が、懐から護符を取り出し、(しゅ)を唱える。


 静かに右手の薬指を折る。左手の人差し指と中指を右手の掌に添えた。小指、中指、人差し指を立てた。


「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」


 空気が、ピンと張る。


「四方清浄。五行鎮定。道を開け」


 そして、最後だけ少し低く。


「急急如律令」


 目の前で誰も触っていない両開きの扉が内側へと開いていく。


 かすかな音とともに、部屋の空気が廊下へと流れ出した。


 湿った、魚が腐った様な臭いが鼻をついた。


 部屋の中は広く、学校の教室四つ分ほどはありそうに見える。

 かつては舞踏会でも開かれたのだろうか。天井が高く、シャンデリアの残骸が吊り下がっている。


 そして、部屋の中央に、それはいた。


 蛸に似た、何か。


 人の背丈をゆうに超える巨躯。赤黒い皮膚がぬめりと光り、無数の触手が床を這っている。目が、ある。大きな、濁った目が、こちらをじっと見ていた。


 いや、どう見ても巨大な蛸だった。


「……へ? (たこ)?」


 拍子抜けしたように遥が呟いた。


「違う。触手魔神」


 瑠衣が静かに答えた。


「……蛸よね?」


「タコに似た怪異」


「でも、蛸よね」


「タコに似た怪異、触手の王」


 譲らなかった。


 瑠衣が印を結ぶ。


 静かに、しかし確実に、術式が展開されていく。


 遥はピコピコハンマーを握りしめたまま、一歩瑠衣の左後ろ側へと下がった。瑠衣の邪魔にならず、飛び出し、心臓を守る位置である。


 巨大な蛸の足が持ち上がり、打ち下ろしの攻撃をして来る。


「危なっ!」

「ちっ」


 だが騎馬戦(ナイツゲーム)で鍛えられた二人にとっては、難なく避けられる速度の攻撃である。遥が左へ、瑠衣が右へと飛び避ける。


 そのときだった。


 二人が怪異の巨大な足で引き離され、瑠衣の意識が術式に向いた、ほんの一瞬の隙。


 怪異の触手が、するりと動いた。その動きは先ほどの打ち下ろしとは違った。ノーモーションで地面を這うように走る。


 目標は——瑠衣ではなく、遥。


「しまっ……! はるちゃん!」


 印を結び直すが、間に合わない。


「きゃぁー!」


 赤黒い触手が、遥を絡め取る。

 退魔のピコピコハンマーが弾き飛ばされた。


「あ、ヤバ!」


 ぞわり。遥の身体を這い上がっていく。


「えっ! ちょっと、まって! これって! 絶対、なんかエロいことされるやつ!」


 足首に絡みついたそれは、遥の袴の中へ。ねちゃねちゃと粘つく音を立てながら、脹脛(ふくらはぎ)をなぞり、太腿(ふともも)鼠径部(そけいぶ)を通り臀部(でんぶ)を撫で、腹部へと到達する。その間わずか二秒。


「あ、や、だめ、だめ、だ……っ、あ……!」


 さらに上へ。


 逃げ場を塞ぐように、肩口まで巻き付いて——


 止まる。


「……え?」


 一拍。


 胸の辺りを「ん?」と言った感じで上下に触手が動いた。


「ちょっ、や、あんっ!」


 直後、空気がスンっとなった気がした。


 遥はぺいっと放り出され、床を転がる。


「きゃあ!」


 べっちょん。ごろりん、ごーろごろ。


 身体に纏わり付いた粘液が床にシミを作る。


 怪異は、触手を下から上へと二度、払うように振った。


 しっしっ、と。


 …………


「……は?」


 瑠衣は目を細め、静かに意識をなぞる。精神感応の術式を展開した。


「……」

 瑠衣が微妙な顔をした。


「はるちゃん、今、精神感応の術式で怪異の感情を読んだ。聞きたい?」


「う、うん」


「“帰れ”と言っている」


 一瞬の間。


「……質量が足りなくて、絶望したらしい」


「( ゜д゜)」


 瑠衣は無表情のまま、続けた。


「苗床にするには、胸が足りない」


 遥だけが、この場面で白黒になった。


 部屋全体はカラーのままだった。遥の周辺だけが、くっきりと白黒だった。


「……待てコラ」


 一瞬の間を置いて、遥が黒いオーラを纏う。言葉遣いまで変わっちゃう。


「今、わたし、捨てられたのね? 胸がないから」


 拳を鳴らす乙女がそこにいた。


「そう……」


 瑠衣が静かに肯定した。フォローする気はないらしい。


 まさに巫女服ヴァルキュリー。


 遥は右足を大きく前へ踏み出した。その足底が地面に着くより僅かに早く、拳が目標へと到達する。


 左脚が地面を噛む。

 股関節から膝、足首、足先へと伝わった力が地面を穿ち、全ての抗力、反力が逆流する。

 ノーモーション。

 全ての運動エネルギーが拳の一点へと収束した。


「せりゃぁっ!!」


 ズドンっ!!


 それはおよそ女子高生が出して良い威力でも、音でもなかった。


 拳が、怪異の体に深々と突き刺さる。

 次の瞬間、怪異は吹き飛び、部屋の調度品を散らばらせた。言葉にならない悲鳴が響き渡る。


 残心。

 教えられたわけでもないはずの、完璧なストレートリードを撃ち込んだ遥の勇姿が、そこにあった。


 怪異は、何が起きたかわからない。もしかしたらそんな表情をしていたのかもしれない。


 瑠衣がスタスタと近づく。

 護符を手に呪を唱える。


「急急如律令、払え、払え、幽の世界へ。惡き御霊よ、自らの地へ。戻り給へ。——退魔滅尽——」


 空間が歪む。

 ノイズの様に触手の王が消えていく。

 粘液まみれの遥。

 何故か鼻血を出す瑠衣。

 なんだか締まらない空気がそこには流れていた。

えっちな展開期待したやつ。


……正直に指を上げろ。


よし。


その指でブックマークを押すのだ⭐︎


評価ボタンも忘れるなよ?( ̄∀ ̄)¬こうだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。