表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/59

〈閑話10〉縦島くんのお見舞い

 彼はうなされていた。眉間には皺がより、布団の端を苦しげに握りしめる。意識は未だ戻っていない。病院のベッドから辛そうな唸り声が薄く空気を震わせる。


 その彼、縦島の顔は苦悶に歪み、額には汗を浮かべながら、うわごとのように呪詛を吐く。


「だ、大胸筋が……」


 唇がかすかに動く。


「大胸筋が……せ、迫って来る……やめろ……やめてくれ……ぴとってしないで……むにってしないで……」


 病室に、沈黙が落ちた。


 瑠衣は腕を組み、ベッドを見下ろした。


「……これは酷い」


「何かとんでもないトラウマを植え付けられたみたいね」と遥が眉を寄せる。


「もう三日も意識が戻らないと聞いている」


 郁佳は枕元にそっと歩み寄り、苦しそうな顔の縦島をじっと見つめた。


「縦島君……。いったい君に何が……?」


「すっごい辛そうね」


「うん……」


 しばらく、モニターの電子音だけが鳴っていた。


「……ふみちゃん」


 瑠衣が口を開いた。


「私に考えがある。もしかしたら正気に戻させることができるかもしれない」


「え?」郁佳が振り返る。「瑠衣の柳流古武術に何か特別な活法でもあるの?」


「……特別な活法であることは間違いない」瑠衣は一拍置いた。「ただ、私一人では不可能。ふみちゃん、縦島くんの頭の横に立って、目を瞑ってほしい」


「へ?」


「瑠衣ってもしかして気功的な技か何かできるの?」と遥。


「よく似たもの。協力してほしい」


 郁佳はしばらく瑠衣の目を見ていたが、やがて小さくうなずいた。


「……わかった」


 二、三歩、歩く。ベッドの頭側に立ち、目を閉じた。


「これでいいかい?」


「大丈夫。始める」


 遥が固唾を飲んだ。


 衣擦れの音。


 次の瞬間、


 *ぷに。*


「ぶふぅっ!」


 遥が盛大に吹き出すのと、郁佳の叫び声が重なった。


「っきゃ! っきゃあ!! ちょっ、胸! 胸ぇっ!」


「そう、ぱいタッチ」


 瑠衣は何でもないように言った。


「えっちな縦島くんなら、目が覚めるかもしれないと思った」


「じ、自分のでやりなよ! なんで僕の……ちょっ! 揉まないで! 無意識なのに揉まないでよ!」


「瑠衣とはるちゃんではおそらくサイズが足りない」


「ぐふぁっ!」


 遥にも流れ弾が命中した。


「遥にまで流れ弾が!?」


 そのとき。


「ん……うんん……」


 縦島の瞼がかすかに動いた。


「ここは……?」


 かすれた声。ゆっくりと、目が開く。


「今……なにか素敵な感触が……?」


「た、縦島君っ!」


 郁佳の声がひっくり返った。


「目が、目が覚めたの!? 看護師さんを呼んでこないと!」


 ばたばたと足音が遠ざかる。


 残された瑠衣が、静かな病室でぽつりとつぶやいた。


「ふーみん縦島カップル説は、あながち間違いではないかもしれない」


「あ、あははははー」


 遥の乾いた笑いが、白い天井に溶けた。

面白いと思ってくれたひと、続きが気になると思ってくれたひと。

評価とブックマークをよろしくお願いします٩(^‿^)۶

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ