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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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波理日サイド、筋肉は今日も元気です。

 その頃、波理日(ぱりぴ)松栖流(まつする)連合軍の陣地では、開戦前とは思えないほど濃い空気が漂っていた。


 理由は単純だ。空気が濃いのではない。そこにいる連中が濃いのである。


大殿(だいでん)ちゃん、配置はどうなってるのかしらぁーん?」


 波理日校長は、相変わらずねっとりとした声音でそう言った。派手な化粧も、無駄に艶っぽい仕草も、朝っぱらから一切の遠慮がない。


 大殿欣二(だいでんきんじ)(うやうや)しく一礼し、胸を張る。


「はい❤ 最前列には松栖流高校の歩兵部隊を展開。規律ある長槍隊で前線を制圧し、その後方に波理日本隊を鶴翼陣で配置しておりますわ❤ 筋肉特戦隊は本陣守備を担当。もしもの突破にも対応可能な布陣ですの❤」


「んふふふふ❤ 悪くないわねぇ」


 波理日校長は頬に手を当て、満足そうに目を細めた。


「松栖流の堅実さで削って、波理日の本隊で仕留めるって構成ね。分厚いかべをやっと抜けたと思ったら、その奥には、さらなる強敵❤️ あたしと筋肉特戦隊が待ち構えているだなんて❤ とってもいやらしくて、最高じゃなぁい❤」


「お褒めに預かり光栄ですわぁ❤」


 大殿がうっとりした顔で頭を垂れる。


 後ろでは大胸金之助(おおむねきんのすけ)が大胸筋を誇示し、三角近一郎(みすみきんいちろう)が無駄に肩を回し、僧帽欽也(そうぼうきんや)がござるござると頷いていた。見ているだけで胸焼けしそうな光景だった。


「それにしても……」


 波理日校長の視線が、筋肉特戦隊の面々を舐めるように流れる。


「いいわねぇ、若さって❤ 芳しい筋肉と♂の香り……あぁ……実にいいわぁん❤」


「ああ、我らが筋肉の神よ❤ ありがたきお言葉にございますぅ❤」


 大殿が感極まったように言うと、波理日校長の笑みが一瞬で冷えた。


「……ちょっと大殿ちゃん?」


 場の空気がぴしりと凍る。


「は、はい❤」


「あたしは神なんかじゃないわ❤」


 波理日校長は両手を広げ、高らかに宣言した。


「漢字の(かん)に、女神と書いて――漢女神(おとこめがみ)!! そう! あたしは漢女神の化神! オトメガミよ❤」


 筋肉特戦隊は一瞬だけ顔を見合わせ、次の瞬間には焦ったように背筋を伸ばした。


「Sir! Yes! My Ma’amh!」


 何語なのかよく分からない敬礼が、朝の冷気の中に力強く響く。


 だが波理日校長は満足げに頷いた。


「よろしい❤」


 波理日校長は満足げに頷くと、今度は陣営全体を見渡した。


「それじゃあ、作戦の最終確認よぉん❤」


 その一言に、波理日・松栖流連合軍の視線が一斉に集まる。


 松栖流の長槍隊は規律正しく背筋を伸ばし、波理日本隊は妙に艶やかな熱気を漂わせ、筋肉特戦隊はなぜか胸筋を順番に震わせていた。


 情報量が多い。


「作戦はシンプルに❤ 筋肉で押し切れ!! 筋肉で圧し潰せ!! よ❤ 細かい指示は追って出すわ❤ 以上❤」


 雑だった。


 恐ろしく雑だった。


 だが、不思議なことに波理日陣営の士気は下がらない。


 むしろ、上がった。


 彼らはそういう者たちだった。


「円陣を組むわよ❤」


 波理日校長が艶やかに片手を上げる。


 大殿欣二が真っ先に膝をつき、大胸金之助が大胸筋を震わせ、三角近一郎が二本の大剣を肩に担ぎ、僧帽欽也が静かに頷く。周囲の波理日部員たちも一斉に集まり、暑苦しいほど濃い円陣が組まれた。


 松栖流の選手たちも、波理日校長を崇めるように片膝をつき、腕だけでマッスルポーズを取る。


「せーのっ! 我らはマッスル❤」


「「マッスルマッスル!」」


「輝け筋肉❤」


「「マッスルマッスル!」」


「撫子ファイっ❤」


「「マッスルファイっ! 撫子ファイっ! オ――っ!!」」


 叫びが、冬の空へと突き抜けた。


 濃い。


 あまりにも濃い。


 波理日校長は、そんな彼らの反応すら楽しむように、ゆっくりと笑みを深めた。


「んふふふ❤ 気合十分ねぇ❤ 絶対に勝つわよ❤ さぁ、行くとしましょうか❤ レッツパーリィ―❤」


 だが、その足はまだ動かない。

 そして、その笑みにまた粘ついた愉悦が戻る。


「さあて……種はもう蒔いたのよねぇん❤ なら、あとは勝手に育って、勝手に絡まって、勝手に壊れてくれればいいのよぉ❤」


 そして、その笑みにまた粘ついた愉悦が戻る。


 その言い方はあまりにも優雅だったが、やっていることは恐ろしく陰湿だった。


 大殿がくすりと笑う。


「田中よしおは、狙い通りに動いてくれるでしょうか❤」


「動くわよぉん❤」


 波理日校長は、確信を疑わぬ声音で言った。


「恋する子っていうのはねぇ、視野が狭くなるものなの❤ そこへ都合のいい一枚を差し込めば、あとは勝手に燃えてくれるわぁん❤」


 その笑いは、勝利のそれではない。


 もっと質の悪い、他人の感情がこじれて壊れる様子そのものを楽しむ笑みだった。


 実に厄介な敵である。

濃いいぇ:(;゛゜'ω゜'):

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