実況席は今日もうるさい。
試合当日の空気は、独特だった。
冬の冷たさの中に、張り詰めた熱が混じっている。校庭を改装した特設フィールドの周囲には、朝から多くの観客が集まり、ざわめきは時間が近づくほど大きくなっていた。吐く息は白いのに、空気だけがどこか熱っぽい。
やがて、軽快なジングルとともに中継席のカメラが回る。
「こんにちは! キャスターの木戸菜月です!」
「同じく、羽月鋼です! さて本日もやって参りました、騎馬戦騎馬戦のお時間です!!」
羽月がいつものように無駄に元気よく叫ぶと、木戸も負けじと身を乗り出した。
「今日の試合は、もう最初から大注目です! 昨年の潔岳戦以来、勢いに乗り続けている瀬戸際高校に対し、全国ランキング一位の波理日高校、そして二位の松栖流高校が同時に宣戦布告! 本日の試合は、騎馬戦史上でも極めて珍しい――合従戦となります!」
「学校対抗騎馬戦では初の大規模連携戦ですねぇ!」
羽月がわざとらしく唸る。
「はい! ここで改めて、ルールの整理をお願いしましょう。木戸さん?」
「任せてください!」
木戸は咳払いをひとつして、いかにも“ちゃんとした説明をします”という顔を作った。
「合従戦では、複数校が一つの陣営として攻め込む形になります。参加校ごとに総大将が存在し、時間内に勝敗を決するには、相手陣営の総大将全員を倒さなければなりません。今回で言えば、瀬戸際側は波理日高校と松栖流高校、両方の総大将を倒して初めて勝利確定。逆に攻め手側も、瀬戸際側と連合した尼剃根栖高校、その両方の総大将を落とさなければ完全勝利とはなりません!」
「つまり単純な殴り合いじゃなく、どの総大将をどう狙うか、どこで人数差を作るか、戦術がものを言う試合というわけですね!」
「その通りです!」
木戸が勢いよく頷く。
「なお、参加人数の上限は一校につき百二十人! つまり今回、各陣営の最大兵力は二百四十人! 単純な人数だけ見ても、過去最大級のスケール感です!」
観客席のざわめきが一段大きくなる。
その熱気を受けて、羽月がますますテンションを上げた。
「しかも攻め手には、伝説の四騎士の時代に魔王の名で恐れられた波理日校長自らが大将として参戦! 対する守り手も、黒姫・日野結女を総大将とする瀬戸際高校に加え、尼剃根栖高校を引き入れて迎え撃つ万全の構え! いやあ、これはもう面白くならないわけがありません!」
「そうですね! 盤面、因縁、陣容! どれを取っても見どころしかありません!」
木戸はそこでぐっと声を落とし、意味ありげに笑った。
「そして何より——瀬戸際高校が、ここまで連勝してきた勢いを本物にできるかどうか。その真価が、いよいよ問われる試合でもあります」
中継席の向こうで、旗が揺れる。
冷たい風が吹き抜け、歓声がわずかに波打った。
決戦の時は、もう目前まで来ていた。
ここまで追いかけてくれている読者の方、ありがとうございます!ブックマークとか評価してお願いします(*゜∀゜*)




