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騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ  作者: mutsu!


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31/59

部室にて

 翌日。


 瀬戸際高校騎士部の部室には、いつもより重たい空気が流れていた。


 始業のチャイムが鳴り終わるのを待っていたかのように、重音和音が静かに口を開く。


「みんな揃ったね。早速本題に入ろうと思う。どうやら他にも何人かの生徒達も同じような被害に遭っているみたいなんだ。部隊長クラスで言うと田中君も襲われたらしい」


「えっ?」


 結女の声が小さく跳ねた。


「よしおくんも!?」


 遥も目を丸くする。


「何かの意思を感じる」


 瑠衣が低い声で呟き、郁佳も真面目な顔で頷いた。


「そうね」


 和音は表情を崩さないまま続ける。


「とりあえず誰も大きなケガとかはしていないみたいだから、その点に関しては安心してくれていい。ただ、田中君は上手く撃退出来たそうなんだけど……縦島君と元副部長の方は暫く復帰は難しいと思う。現在会話もままならない状態なんだ」


「会話もままならないって……」


 遥の顔が強ばる。


 和音は少しだけ言いにくそうに間を置いたあと、説明を続けた。


「うん。救急車が来た時……『ブーメランが!』とか『大胸筋は嫌だ!』とか……良くわからないことをぶつぶつと言いながら、白目を剥いていたそうなんだ」


 部室の空気が、一瞬だけ止まる。


「い、一体何が起きたんだろう!?」


 遥が素で引いた顔になる。


 郁佳も困ったように眉を寄せた。


「ほんとによく分からない事になっているね……でも、良かった。とにかく三人とも怪我はないんですね?」


「うん。幸いな事にね。一体何が起きたのかを田中君が話してくれたらいいんだけど……思い出したくもないって怒りだしてさ。関連性が在るかの確証もないし、これ以上聞きだすのは難しそうなんだ」


「それにしてもこのタイミングで宣戦布告はやっぱり、って感じですねー」


 結女が静かに言う。


 遥がすぐにそちらを見る。


「結女? やっぱりってどういうこと??」


 その問いに答えたのは和音だった。


「遥、うちの生徒が襲われたこのタイミングで、第三学区に波理日高校と松栖流高校が連携して宣戦布告をして来たんだ。そして、縦島君の『大胸筋は嫌だ!』って言葉……」


「あ、まさかそれって!」


「ああ。三人を襲ったのはおそらくそのどちらか、もしくは両方だと考えられる」


「汚い連中! 通報とかできないのそれ?」


 遥が机の上で拳を握る。


 だが和音は苦く笑って首を横に振った。


「誰も怪我とかはしてない上に、残念だけど物的証拠もなくて訴えようがないんだ」


「ぐぬぬぬ!」


 遥の顔が悔しさで歪む。


「上手いことやられたって感じねー」


 結女の声はいつも通り間延びしていたが、その目は笑っていなかった。


「うん、悔しいけどね。だから今は次の騎士戦をどう乗り切るかを考えないといけない。最大百二十人の縛りは、学校一校に対してだからね」


「げっ! てことは……」


 和音の説明に、遥は顔を引き攣らせた。

 嫌な予感、いや突きつけられた事実が背中を駆け抜ける。


 郁佳がその先を引き取るように口にした。


「敵の総数は最大二百四十人……ははは」


 笑ってはいたが、まったく笑えていない。


「とても厳しい戦い……」


 瑠衣が淡々と言う。


「そうなるだろうね……」


 和音も表情を引き締めたまま頷いた。


「潔岳高校はうちのチームに編入させたばかりだしー、指揮系統の統一も、まだ完全には済んでいないものー。私が波理日校長でも、この期は逃さないわー」


「……なるほどね」


 郁佳が納得したように呟く。


 だが次の瞬間、結女はふっと口元を緩めた。


「まあ、とはいえ……もう手は打ってあるんだけどねー。校長先生も巻き込んで❤ さっき話に出てた尼剃根栖高校を味方に引き込んでいるわー」


「え?」


 和音が固まった。


 一拍遅れて、今度は素で声を上げる。


「それ俺、何も聞いてないんだけど!? どういうこと!? めちゃくちゃ頑張って情報集めたんだけど!?」


 昨日までの冷静な部長の顔はどこへやらである。


 結女はそんな和音を見ても慌てる様子もなく、ふわっと微笑んだ。


「重音先輩に言わなかったのはー、私達の対策が失敗しても対応出来る様に、ですねー。ごめんなさい」


「は、あははは……」


 和音の笑顔が少し引きつる。こいつには勝てない。


「さすがは結女ちゃん」


 瑠衣がさらりと褒めた。


 結女は軽く肩をすくめる。


「とは言え、うちの生徒たちが襲われたのは予想外だったんだけどね……。私達は大体いつも四人一緒にいるから、小人数でいた縦島君たちが狙われたんでしょうねー……」


「あれ?」


 遥がふと首を傾げる。


「そうなると重音先輩は狙われたり襲われたりしなかったの?」


「ああ、僕はほら……最近、いつも誰かしら女の子達の視線があるから……」


 その瞬間。


 四姉妹の声がぴたりと揃った。


「「あ~……」」


 全員が一様に、なんとも言えない顔になる。


 確かにそれなら、襲撃には向かない。


 向こうが仕掛けるにしても、人目が多すぎる。


 和音はどこか気まずそうに咳払いをしたが、否定はしなかった。


 部室の空気がほんの少しだけ緩む。


 けれど、状況そのものが軽くなったわけではない。


 敵は二校。

 しかも、こちらに混乱を作り、そこに乗じて仕掛けてきた。


 真正面からぶつかっても厄介なのに、盤外でも揺さぶりをかけてくる。

 面倒で、陰湿で、そのくせ妙に手際がいい。

 瀬戸際チームの守備の要を一つ、駒落ちにされた状態で戦わなくてはいけない。


 厄介極まりない敵だと、認めざるを得なかった。

 


 ……あ、元副部長氏も入れたら二枚の駒落ちである。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

面白い、続きが気になる、4人が可愛い♡


どれか一つでも該当した方はぜひブックマークと評価をお願いします。

よろしくお願いします٩(^‿^)۶

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