〈閑話6〉瑠衣と遥と薄い本
瑠衣ちゃん回
わたしの名前は山ノ井瑠衣。
柳流古武術の師範代で、家が陰陽師の家系なだけの、ただの普通の女の子だ。
いま、机の上にはノートが一冊ある。
表紙には何も書いていない。
書いていないけれど、内容は決まっている。
遥ちゃんの薄い本の構想メモだ。
なお、本人にはまだ見つかっていない。
見つかったらたぶん死ぬ。
ぼっちだったわたしを見つけてくれた遥ちゃんに、敬意を表して始めた創作活動だった。
最初はもっと健全だった気がする。
たぶん。
おそらく。
きっと。
けれど創作には、時として制作者の予想を超えて転がり出す瞬間がある。
だからしかたない。
では誰と組ませるか。
そこが今の最大の問題だった。
遥ちゃんは妙に主人公属性が高い。
真っ直ぐで、強くて、雑で、たまに人のパーソナルスペースを自分色に変える。
ああいうタイプは誰と並べても、それなりに絵になる。
でも、やっぱり。
「……結女ちゃんが一番面白……げふん。絵になりそう」
誰もいない部屋で、わたしは小さく咳払いをした。
今のは失言。
訂正する。
遥ちゃんの直進力を、あそこまで変な角度で受け止められるのは結女ちゃんくらいだと思う。
ふみちゃんはどうしてもツッコミに回ってしまうし、構図としては少し堅い。
安定感はある。
でも、爆発力は結女ちゃんの方が上だ。
うん。
やっぱり第一候補は結女ちゃん。
問題は第二候補だった。
わたしはペン先を唇に当てて考える。
ふみちゃんは少し違う。
結女ちゃんを第一候補にした以上、横に並べるには役割が被る気もする。
となると、残るのは――
ペン先が、さらさらと紙の上を滑った。
書かれた名前を見て、わたしは止まる。
第二候補。
わたし。
「……」
部屋が静かだった。
「…………」
心臓の音だけが、やけに大きい。
いや。
ない。
今のはなし。
忘れてほしい。
誰も見ていないのに、わたしは反射的にノートを閉じた。
耳が熱い。
なんで。
意味がわからない。
ただ候補を書いただけだ。
ただ、可能性を検討しただけ。
創作における客観的な視点の問題であって、そこに私情は一切――
「……あるみたいで嫌」
自分で言って、自分で沈んだ。
わたしはしばらく机に突っ伏し、それから観念したように起き上がると、問題のページをそっと開いた。
第二候補。
わたし。
改めて見ると破壊力が高い。
主にわたしへの。
さっくり刺さる。
「……無理」
わたしは静かにそのページを破った。
びり、と薄い音が部屋に響く。
証拠隠滅完了。
よし。
何も問題はない。
第一候補は結女ちゃん。
それでいい。
それが平和だ。
世界のためにも、その方がいい。
そう自分に言い聞かせながら、わたしは新しいページを開いた。
遥ちゃんを総受けにしたらどうだろう?
そうしたら誰が入ってても、もんだいはない。……はず。
うん。まずはネームだ。
……あ。
郁佳ちゃんファンクラブの会報、今月号まだだった。
騎馬戦記ガールズナイツ2
閑話二つ目。
瑠衣に惚れた!とか、瑠衣になら股間スマッシュされたい!とか、気に入っていただけた方は、❤️とか⭐️とか、メッセージとか……
……下さいっ!(土下座)
ブクマとか感想とかブクマとか、全部つけてってください笑笑
よろしくです!!(血涙)
次回:郁佳と靴箱ちなみに、音声ドラマ版はこちら
⬇️
https://youtu.be/gRI-3_WpV20?si=oSTRsGV91S3PhCWZ




