〈閑話3〉男たちの夢——チチ・シリ・フトモモ——
閑話シリーズ3つ目
次回パート4のあとから本編に戻ります(・∀・)
——縦島 & モブメンズ——
ある晴れた日の瀬戸際高校騎士部。
部室の中で、男子生徒たちは腕を組み、いかにも重大な軍議でも始めるような顔で向かい合っていた。
その中心で、縦島が重々しく宣う。
「やはり前側も捨てがたいが……後ろの方が良いと、俺は思うんだ」
その言葉に、モブAが即答した。
「ああ! 合法的に腰とか尻とかうなじとか見放題だもんな!」
最低である。
モブBも勢いよく頷く。
「しかも曲がる時とか、きっと脇腹のあたりが腕に当たるぞ!」
「そうだよな! きっといい匂いとかもするぞ!」
「ああ、間違いねぇ!」
縦島が拳を握りしめ、深く同意する。
もう一度言おう。最低である。
そこで頷いていた男子生徒の一人が、はっと目を見開いた。
「……いや! ちょっと待て! 前も捨てがたいぞ! 必ず頭に手を乗せてもらえる! 結女さんに頭を触ってもらえるぞ!」
「うほっ! しかも急ブレーキとか反転した時とか、もしかしたら素敵なフワフワが頭に乗っかるかもしれない!」
「「おお!」」
盛り上がる男子生徒たちとは対照的に、縦島は舌打ちした。
「ちぃっ!」
空気が変わる。
さっきまで同志だった二人が、すっと目を細めて縦島を見る。
「……貴様、気づいていたな?」
「……縦島」
「……くっ! 仕方ねぇ! お前ら、恨みっこなしだぞ!」
「ああ、わかった」
「了解だ」
三人は無言で向かい合う。決闘前のひりついた空気があたりに立ち込める。言動は最低なのに、なぜか妙に青春っぽい熱さだけはあった。
縦島が気合いを入れる。
「いくぞ! せぇーの!」
「「最初はグー! じゃんけんぽん! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」」
全員が本気だった。目が血走っている。
あまりにも本気すぎて、もはや戦いの配置決めではなく、人生の分岐点にでも立っているような顔になっている。拳が何度も宙に突き出され、勝負はなかなか決まらない。誰ひとり譲る気がないのだろう。醜い。だが、ある意味では清々しいほどに欲望へ真っ直ぐだった。
そんな三人に、ぱたぱたと軽い足音が近づいてくる。
「あ! いたいた! 縦島君、谷口君、御門君。配置が決まったよ! 僕と同じ歩兵の守備部隊だ! よろしく!」
郁佳が明るく声をかけた瞬間、三人の動きが止まった。
「「「え?」」」
あまりにも見事に揃った声だった。
郁佳はきょとんと目を瞬かせる。
「仲良くしてくれると嬉し……ちょっと三人とも大丈夫? リアルな血の涙とか初めて見たんだけど!!」
三人の目から、すうっと赤い筋が流れていた。
夢が潰えた男たちの絶望は、時に言葉を超えるらしい。
ついさっきまで、前だ後ろだと熱弁を交わし、じゃんけんにすべてを賭けていた彼らは、結局どこにも乗れず、誰も乗せない、一人騎馬――すなわち歩兵守備部隊へと平等に振り分けられていたのだった。
その事実はあまりにも残酷で、あまりにも無慈悲で、そして少しだけ面白かった。
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